大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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135話 いつしか双星はロッシュ限界へ

 

ラスボスの居城って聞いたから、どんなところだって思った。

 

もっとおどろおどろしくて気持ち悪い世界だと思っていた。

 

 

もっと、子供が見られず泣くような血の雨が降っているようなそんなイメージだった。

 

 

「ここは……」

 

「ぷぃ……」

 

「道路……高速道路か?」

 

 

マリオとカービィはどこか既視感がある程度の反応だったが、ジョーカーはとても見慣れたコンクリートの上であることに気づく。

 

車が走っておらず、どこか遠巻きに眺める他の運転手達に異様な不気味さを感じる。

 

 

「これは……!?」

 

 

ああ、遠巻きになるはずだ。

天へ向かう黒煙は火の粉を巻き上げる。その火元は一台のひしゃげた車だった。何の色かもわからずに炎を纏わせる車。枠だけの窓から黒い人影が見えて、思わず口を覆った。湧き上がる吐き気。きっと、あの人は生きてはいまい。

 

 

──『これは、我々の最古の記憶。まだ、我々が全てを喪う前、何かであった頃の、最後の記憶……』

 

「ダブルなのか!?」

 

──『……ドッペルゲンガーの力を継承し、残りの短命を限りなく伸ばすために、生きるためだけに全てを捨てた』

 

「……そうか」

 

 

心の怪盗団は確かに悪人を改心させ、見知らぬ誰かを、身近な誰かを救っていた。だが、人災だけだ。

 

事故は未然に防げない。

失った命は取り戻せない。

天命を覆す力は、ない。

 

取りこぼしたのではなく、はじめから両手に収まらなかった。それは、どう足掻いてもこの結末に辿り着くことの証明のように。

何度同じ座席に座ろうが、演目の道筋は変わらないのだ。

 

 

──『だが、全てを取り戻す。それを為せる力がある。我々に役名のつく世界を新たに創造する!!』

 

『それは貴様には役不足だ!!』

 

 

神々の啖呵によって、世界は変わっていく。

記憶の世界は、一面の黒にカラフルな糸屑を散らばしたような空に、ネイビー一色だが足元から水紋の広がる地に。

 

 

「あなた達……!」

 

「っ! 君がキクか!?」

 

 

籠のように彼女の周囲を囲う光の鎖。宙に浮かぶ鳥籠の中、緑の服を着たゼルダのボディ、少しだけ聞いたキクという少女そのものだった。

 

そしてその前方、機械的な顔と肉体。腕らしきものは雫型になっており、肉体と繋がってないのにも関わらずその機能を維持している。

脚部は完全に人の形を忘れ、1つの先が尖った物へ。浮かび、3人を見下す位置にいる。

 

 

『1人の女性を救うのが、おまえ達主人公なのだろうな。ならば、我々はラスボスか? 悪くはない』

 

「だったら、倒されるのもラスボスの役目だね!」

 

 

太いブーツの音を鳴らし、飛びかかっていくマリオ。小手調べにパンチを振りかぶる戦士に対して、ダブルの心はあまりにも冷静な判断を下した。

 

 

『甘い』

 

「う……あっ……!?」

 

 

体が凍りつく。

腕の先を向けて放った技は、アイスクライマーの使うブリザードそのものだった。

それはくらったマリオも、他の2人も、ジョーカーの内側のマスターハンドも気づいた。

 

 

『そして次』

 

「なっ……!?」

 

 

知恵のトライフォースにマリオを一時封じ込め、吹き飛ばす。唖然とするジョーカーの背後を一瞬でとり、背中を斬りつけた。振った腕には確かにディメンジョンマント、メタナイトの太刀筋と鋭さがあったのだ。

 

 

「んーん!!」

 

 

ウルフの持つブラスターでカービィの足元を狙い、後ろへ後ろへと逃げる彼の足元には、クラッシュボムがあった。

爆発し、空中へ吹っ飛ぶカービィをブラピの狙杖で射抜き堕とす。それらは全てダブルの腕の先から、または生み出した実態のない幻から自動で放たれていた。

 

 

「これは……!!」

 

『まさか……スマッシュブラザーズの力を自在に引き出すだと!? 貴様は……今、()()()()()()()()()()()()のか!?』

 

「……! ナカツナの力で自分自身の存在を曖昧にすることで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()した……!」

 

『その通りだよキク……故に何でもないこの姿で全ての力を使える。それは最早スマッシュブラザーズだけではない!!

 

 

マスターハンドすらも本気で絶句するしかない。

寿命を奪うという都合上、生きている者にしか成れなかった。本名を知らなければドッペルゲンガーの力は使えなかった。

そんな縛りすら、もう飛び越えていたのだ。彼は。存在さえあれば、もう誰でも。

 

 

『だが、勝ち目がないのは大人気ないか? スマッシュブラザーズと二柱、ついでに我々達相対した者達に限定してやろう』

 

「限定って……そんなこと……」

 

 

もう、戯れでしかない。

キクが、よく知っていた。だって、まるでハンデのように言っているが、自分の力だけで完封できてしまう。

魂を抜く力も、非実態の攻撃を吸収する力も、反則じみた自分の呪いであり、能力。もう、本当に遊びでしかない。本気になればそれを使うだけでお終いだ。

 

 

「(いざとなれば私の力も絶対に使う。かといって存在が曖昧である以上、私が魂を抜くこともできないし……)」

 

 

どうすれば、厄介な自分の力を攻略できる?

 

 

「(あ……そうか……)」

 

 

戦いの場を見届けながら、震える覚悟が握り拳に宿っていた。それを選んでしまえば、でも。

 

 

 

「さっき最後の切りふだまで使ってたよね!? どこまでできるんだ……!」

 

『こんなこともできるぞ?』

 

 

どことなく気の抜ける音楽と共に、マリオの動きがゆっくりになる。周囲の色覚もおかしくなり、何もないのに転ぶ姿もスローモーション。

 

 

『ネガティブゾーン!! 前の切りふだまで使うか!?』

 

「くっ!」

 

 

ワイヤーで手繰り寄せて、歪んだ周囲からマリオを脱出させる。先程までいた場所にはブルーファルコンが通り過ぎていった。

 

 

「ま、まだ目が……あ、ありがと〜……」

 

「……どうすれば……!」

 

 

仕掛けなければ勝つことはないとエイガオンを撃つが、同じエイガオンで相殺される。それどころか、ギガサンダーとPKフラッシュが複数個お釣りで飛んでくる。

傍から飛び出したカービィが吸い込んで星型弾としてお返しするも、容易に避けられる。

 

 

「ふぅう〜……」

 

「同じ技で相殺されるなら……力押しは無謀か……隙を作って叩き込んでいけばあるいは……」

 

 

だが、それをどこまで許すか?

 

 

『……今はそうするしかあるまい。幸い数では勝てている。囲んでいけば隙はできる。それに……今の私でもこれぐらいは可能だ』

 

「これぐらい……? あっ、」

 

「ぅわーぃ!」

 

 

一瞬だけ見えたそれを飲み込み、カービィの頭には六角形状の鏡を額につけた、二股の帽子。

 

 

『これは彼が普段使っている力、今君以外は行儀良くファイターをできないからな』

 

「あっ! マスターハンドだね! ズルいボクにも!」

 

『急かすなよ、とりあえずこっちでやってみてくれ』

 

「OK、いくっぞー!!」

 

 

届かないはずのマスターハンドの声だが、やり取りとしては成立した。

 

スーパーこのはを掴んだマリオは、助走をつければ空も飛べるしっぽマリオへ。

カービィは攻撃能力は低めだが、飛び道具を反射するミラーカービィへ。

機動力と防御力を2人に割り振るなら、攻撃はジョーカーへ任せることになる。

 

 

『まあ、簡単に負けてもらってもつまらんか。支援程度多めに見てやろう』

 

『そうか。その言葉、撤回するなよ?』

 

 

異空間の中が歪み、星ブロックやレンガブロックといった即席の足場が乱雑に生み出される。

戦術の幅はこれで広がる。

 

 

「よし! ナイスだよマスターハンド!」

 

 

飛び回るマリオを狙うスターピースは、星ブロックを砕くだけで終わる。飛び上がり、頭上を取ったマリオはヒップドロップを仕掛けた。

 

 

『その程度……』

 

「ふんっ!」

 

 

アルセーヌと共に握ったナイフが光る。

防御に回したのは片腕だけ。まだ片腕が残っている。飛び込むジョーカーに対して、暗い色のピクミンが4匹投げられた。

 

 

「はあぁ!」

 

『……っ!』

 

 

しかし、割り込んだカービィのリフレクトガードがそれを防ぎ、不思議な光弾となってダブルの元へ返っていく。

ガードを足場にして加速し、光弾とアルセーヌと共にナイフで斬りつけた。

 

 

『反射なぁ……』

 

「よし、通った!」

 

 

無数の技は無敵にも感じるが、ダブル本体が対処できるキャパは多くない。つけ入る隙はある。

 

 

「今度は、もっと深く……!」

 

 

ナイフを握る力を強くする。

マスクの裏側には今までで一番の闘気。

 

その戦いの様子を、キクは最初から変わらぬ焦燥感で見守っていた。

 





◯タイトル
星のカービィ ディスカバリーのラスボス戦BGM。
本作のメインテーマのフレーズを取り入れた6分越えという超大作。
ポケモンとかでもあるインタラクティブミュージックを取り入れ、前作ラスボス戦の星羅征く旅人だって超えてやるぞと言わんばかり。

しかし、私はカービィのBGMの長さの話をするたびにこう思うんです。外伝の上に一面ボスなのに長らくトップの長さだったドドワンはなんなんだと……


◯虚無の残骸 ダブル
二つ名今話内で出すの忘れてました……
以前投稿しましたが、再度ドット絵を掲載。

【挿絵表示】


ナカツナの固有能力、存在を曖昧にする力を使用することで、◯◯でありながら◯◯ではないという状態に。姿は誰でもないので誰かと怪我を共有、なんてことにはなりませんが、誰かの技と技を組み合わせるなどが可能になり、戦闘力は格別に上がっています。
マスターハンドでもあるので、彼の知識を見ることで他は知らないインクリングやリュウなどの本名も知ってしまったのでスマッシュブラザーズ全員に成ることも可能。
??「この↑辺り、実は僕も手を出さない領域なんだよ。君達もだから当然なんだけど」

そしてファイター達の技だの切りふだだのを自在に操ります。勿論原作能力も。カービィのコピー能力やらマリオの変身も扱います。
その他、マスターハンド、クレイジーハンドが対戦時に使う攻撃技、ナカツナ、キク、チゲン、チハク、プレシアの敵陣営だった者達の固有能力も可能。ポルターガイストのリールはただの巻き込まれた側なので、そもそも彼は彼女の存在を知りません。
??「……誰か忘れてるって? ダブルの誰かに成る条件を知ってて、誰かに本名を晒す必要があるかな?」

一応それ以外の能力を使うことは可能です。本人が勝手に縛ってるだけ。

自分でデザインしててアレですが、この鋭いだけの腕から昇竜拳とか出てくると思うと笑っちゃいます。

※消滅しているナカツナの技は使えませんので訂正。存在を曖昧にする力はダブル自身の力も関わってくるので消えずに残りました。そういうことにしておいてください……(追記:2024/05/12)


◯マスターハンドの支援
ナビ的な立ち位置に。
戦況の整理の他、カービィとマリオにアイテムを供給するぐらいは可能。


◯ミラーカービィ
だいしゅき。
じゃなくて、カービィのコピー能力の一つ。SDX初出。
シミラという魔法使いみたいな敵からコピー可能。
分身で攻撃したり、敵の飛び道具を反射する。アニメでの無尽蔵な分身は最強の2文字を頭によぎらせた。


◯しっぽマリオ
スーパーこのはで変身する。3で初登場。
タヌキマリオとの違いは、着ぐるみではなく、耳と尻尾だけの変身だというところ。私も混同してました。地蔵にはならない方。
空飛ぶ能力は後からいっぱい出てきたので、助走がいるこっちは今となっては扱いにくいかも? 私はレッドスターのフライングマリオが好きです。その存在は幼き私の厨二心に火をつけた。


◯作者の気まぐれコメント
キングダムハーツミッシングリンクの追加ベータテスト当たりましたー!!

なんで?
いや、嬉しいけど2回目ぞ?
特にTwitterとかYoutubeで情報公開してる訳でもないのに連続?

個人的にそういう情報公開とかするような方や最新機種の方が優先されてると思っていたのですが、どっちでもないので完全に運ですかねこれ……ヒャッフウウウ!(調子乗)

ストーリーの方も、前回と比べてちょっと増えてていいですね。
ユニオンクロスのプレイヤーくんちゃんの最期に人生狂わされた作者なので……エフェメラ……

前回言ってた点も直ってたし正式リリースも遠くないかもしれないです。つか気になるストーリー!!ああああああああ!!
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