大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
効かないことは知っていた。
だからこそ、躊躇なく攻撃ができたのだ。
それが特殊な能力によるものだとは知っていた。
それで問題ないと思ったのだ。その筈だったのだ。
──しかし、そうなるはずの現実は違っていたのだ。
「ふ、ふ……勝ち逃げってやつかしら……」
「何故……!」
「私を相手にするのは嫌でしょう……?」
「え……?」
訳がわからない。
相手って、経緯はともあれ今は共に戦っていたではないか。
『貴様……!!』
「ざまあ見なさい……! 私のものはずっと私のもの……! 呪いだって真似できない……! だってあなたの胸に私の苦しみはないでしょう……!!」
キクは、自分の力が、呪いが、ダブルの武器になることを恐れた。
エネルギーを元とする攻撃を吸収、自分の力にする能力はまだいい。
しかし、自分の姿を見た者の魂を抜き取る力。
自分は主に脅しに使っていたが、どれほど強力かは自分が一番知っていた。
だから使われる前に終わらせた。
表層だけを知った気になっている奴に、自分を演じられてたまるものか。そんなものは猿真似だ。
力、呪い、苦しみ、経歴、嘆き、孤独、想い。
恋と、希望と、光と、救いと……
ボディの身で呪いを使うか使わないかを選べるならば、それが元となったエネルギーを吸収するただの力も当然そうだ。
吸収せずに、終わらせただけ。
負荷がかかり過ぎたボディは、精神ごと殺す。だってファイターではないから。
「(赤い……なぁ……)」
自分の体を燃料に、未だ完全には収まらぬ炎。
手や足や服で燃える複数の小さな火。
消そうとするマリオを止めた自分の言葉はほとんど聞こえなかった。
「(この、赤で、終われてよかった)」
脳裏に浮かぶ赤い格闘着。
その最期の感情を、あのドッペルゲンガーは知ることはないのだ。
「ぷ……」
消えていったその体に手を伸ばす。
自分がやってしまったことで、理解を拒んでいた。
『彼女が選んだことだ。……気に病むことは……覚悟を侮辱することでもある!』
『面倒な……!』
文字通りに必殺となる呪いの力。
悪用されぬように自分の存在と命を終わらせた。
「(ごめん、ケン。上手くできなかったみたいだ)」
気づけていたら、いや、もっと信じられるぐらいに立ち回れていたら。
でも、もうどうしようもない。
「エイガオン……!」
消した呪怨がダブルに切なく牙を剥く。
その次にマリオが飛び出した。その姿は氷のように純粋な透明さを持っていた。
「勝つよ、それがあの子の望みなんだ……!」
スケートのように滑る姿は、地上でもかなりの速度だ。ワイヤーで飛び交い空中を制するジョーカーと共に、上と下とで挟んでいく。
「とりゃあ!」
『チッ……! キミはッ……!』
「逃すか……!!」
ダブルの眼前に躍り出て銃を撃つ。
ヒットアンドウェイに攻撃してくるマリオを避け、遥か上へ浮かぶと、濃霧と天からの光を呼び出した。
「プレシアのダメージを蓄積する霧か!」
『パルテナの天の光を加えて何もせずにダメージを稼ぐ……本当に猿真似しかできない奴だな』
『利口で頭が回るだけだ!』
「自分で言ってちゃ世話ないね!」
「(ツッコミ待ちか……?)」
とはいえ、回避不可能のフィールドギミックをどう攻略すればいいか。
一度くらったからこそわかる。空気に当たらないように気をつけるようなものだ。
こどもリンクは湖に潜ることでやり過ごしていたが、そんなものはここにあるはずもなく。
「ん〜ッ!!」
「カービィ!? うわっ!?」
どうしようかと悩んでいると、涙を浮かべたままのカービィが駆け出す。なんと、今までにないほどの吸引力で霧を吸い込み始めたではないか。
その威力は、ジョーカーやダブルは勿論、付き合いの長いマリオですら味わったことのないほどであった。ジョーカーは慌ててブロックにしがみつき、マリオはスケートで必死に逃げるが徐々に距離が縮んでいく。
『霧を吸い込むか……! ならばありったけを突っ込んでやる……!』
『させるものかッ!!』
ダブルの予備動作はみっつのちかい。炎は猛々しく、水は激しく、草は深く。その力はさんみいったいであることにマスターハンドは撃つ前から気づいた。
故に、カービィの口元へ吸い込ませるように創り出したのはオレンジ色のリボンのようなもののついた果実。きせきの実だった。
「ふんわあああああああああああ!!」
「ちょっと待て……!!」
「巻き込まれる巻き込まれる!!」
『ぐうううう……!!』
マリオの手をなんとか掴み、ジョーカーは必死にレンガブロックへしがみつくが、引き離されるどころかブロックごとカービィへ引き寄せられている。
アイスマリオだった彼から、フラワーが離れてカービィの餌となっていったと言えば、彼の今の強大な力は説明がつくだろうか。
肝心のダブルは器用に空中で踏ん張っていた。さんみいったいも難なくカービィに吸い込まれ、無機質なようなその声には明らかに焦りが混ざっていた。
「ぽん!!」
『星型弾……! かわすかころすか……』
「させるか……!」
『何ィ!?』
はきだした星型弾をかわそうとするダブルの動きが止まる。星に紛れて、ジョーカーはワイヤーでダブルを縛りつけていた。
『ああなるほど……やはり奴は後追いだ。常に先手と攻撃を続けよ! 奴の頭脳は、数多の力を使いこなせる出来ではない!!』
頭数では上回っているのだ。
相手に攻撃させないように常にこちら側から仕掛けていく。いかに超人的な力であっても、対処のための頭は常人程度だ。
「ぽょっ!!」
『アイスだと……!? いつの間に……あの時か!!』
『アイスフラワー……』
アイスマリオから引き剥がしたアイスフラワーだ。ビックバンすいこみで吸い込んだソレをカービィはコピーしたのだ。
マスターハンドも意識の外だった一打。
「んーぅ!!」
「マスターハンド〜!! ボクにも何かちょーだい!」
『急かすなよ。これでどうだ』
彼に与えたのは、Vの形をした不思議な花だった。ブーメランマリオとなった彼が放ったブーメランに冷気がこめられる。掠めた胴が一部凍っていく。
一瞬動きが止まり、その隙とばかりにカービィが放ったこちこちといきが脚部と胴を凍らせた。
「はあああああ!!」
『うおおおお!!』
アルセーヌと共に放つ斬撃。
氷を溶かすためを兼ねたフレアドライブが激突する。
「があっ!?」
『ぐうっ……!』
巨大な衝撃が生まれ、双方が吹き飛ぶ。
凍って動きが悪かったからか、ダブルが打ち負けた。しかし、ジョーカーも決して完全に打ち勝っているわけではない。一時的にペルソナを維持出来ず、仮面の内側へ戻っていく。
「んぐうぅ!」
背後から回っていたカービィとマリオ。こちこちブリザードでダブルが氷となった山。
「やった!?」
──ピシピシ
内側からひび割れた氷が吹き飛び、回転しながら現れたダブル。
『ああそうかい、どうしても実力の差を思い知らされないといけないようだなッ!!』
『この力……!! 治療の……!!』
ベホマ。
イレブンが使用する回復の魔法。
使えたのに使えなかった、否使わなかった。
どれもこれも、結局はダブルが世界をおちょくっていただけ。加減して、接戦を演じていただけ。
また同じだけ戦わなければ。癒す力のない彼らに、2度以上を戦う体力はない。
姿があれば目に見えて焦っていただろうマスターハンド。
『ベホマ……!』
『……傷が癒やされない…………!?』
◯タイトル
ペルソナ5 ロイヤルで追加されたラスボス戦、ボーカル無しバージョン。
利用規約で実況が禁止されてる箇所……もういいんだっけ?
訳は「信念を貫け」。ラスボスもまた、信念を持つ世界への叛逆者。
◯キク
リタイアとなります。
ちなみに修正した前々話ですが、消滅したはずのナカツナの力を使えてたら、彼女が倒される理由ねーじゃんということです。禊としてここに書き残しておきます。
実際、彼女を負かした章も自滅があってこそです。
+色んな力ならまあ厄介だよねと。
◯プレシアの霧+天の光
クソゲー。
ラスボスがやる所業じゃない。みみっち過ぎる。
ちなみに天の光は相打ちにした時に消えました。
◯アイスマリオ
同じ名前の変身形態はありますが、今回はギャラクシーのアイスマリオ。
全身が氷みたいになり、常時スケートのように移動できる。また、水面を凍らせて進むことも可能だが、時間で解除される。
2つの滝を凍らせて壁キックで進むのが印象深い。CMにもあった覚えがあります。
◯ビックバンすいこみ
トリプルデラックス固有のシステム。
ワールドツリーになったきせきの実を取ることでこの形態に変身。
大木も攻撃もブロックも体力バーもなんでも吸い込む。本作でもマリオからアイスフラワーを引き剥がしました。
◯アイスカービィ
夢の泉の物語から登場する最古参のコピー能力。
やっとスパデラ以外から登場するコピー出せた……!
凍らせるブレスだけだったのだが、フリーズと統合したり氷を蹴飛ばしたり多芸になっていった。アイスだけじゃないけど。
◯ベホマ
ドラクエの単体回復呪文の最高峰。
完全に体力を回復できます。
こんなんやっぱりラスボスが使っちゃいけないよ。ホントウニネ。
◯作者の気まぐれコメント
おそらく次辺りがダブル戦の最後になるかと。