大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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13話 Battle Against a True Hero

「はあ…」

 

 

不安で仕方ないが、やれることはない。

カムイはため息をついた。

 

走り出したインクリングに何かを言おうとして、結局なにも言えなかった。そのせいで、今から追いかけようとしても今更都合がいいんじゃないか、という思いが頭をよぎる。

 

リリーナのことで手伝えることはない。

ピチューは落ち着きなくあちこち歩き回っている。

 

 

「(でも、どうにかしなきゃ)」

 

 

奴らの居所を探る。

大乱闘の世界に連れていく、というのだから、もしかしたら自分達もそこから行けるかもしれない。それなら仮に連れて行かれたとしても後を追うことができる。あの兵力差は覆せなくてもせめて後から優位になるように。

 

 

「ピチュー」

 

「ん?」

 

 

ピチューが足を突っつきカムイを呼ぶ。そこには手紙があった。天幕の隙間から入れられたものだった。

紙を一度折っただけの簡素な手紙。肩によじ登ったピチューとともに紙を開く。

 

 

 

 

まず、勝手に飛び出しちゃってゴメン。

あの時は怖かったんだ。ロイが死んじゃうかもって。あたしでも死ぬってことがどういうことなのか知識としては知ってた。だから本当に怖かったんだ。

でも、一人で戦おうとしたらあたしだって危ないこと、あたしが死んだらロイが頑張ってくれたことも無意味になるって教えてくれた人がいた。

だから、あたしは戦います。今度は一人じゃないけど、それでも死んでしまうかもしれない。ロイのこと、無意味にしたくはないけど、今まで平和のために頑張ってくれた人の思いだって無意味にしちゃいけないものだと思うから。

一緒に来てくれたら嬉しいけど、強制はしたくない。それでも一緒に戦ってくれるなら私がきっと守るから。(^_^)

インクリング

 

 

 

 

「……インクリング。」

 

「ピチュ…」

 

 

平和を望むものは誰かのために戦える人だ。

この戦いで死んでいった名前も顔も知らない人。彼らのために彼女は戦う。

戦いがなくたって、その歴史ごと消えていたって。

 

平和の望む心は受け継がれていく。

 

 

「カムイ! またあの見えない敵が動き出したって!」

 

「…! インクリングが攻めていったから!? …行こう! ピチュー!」

 

「ピ…! ピチュッ!」

 

 

それは望んでいた答えだ。

もう誰も置いて行かない。受け継がれた思いは同じだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギラで足元を封じ、ヒーローシューターで足を捕らえ、転ばせる。

 

数は圧倒的に上だ。なら湯水の如く溢れる敵共にいちいち構ってはいられない。

 

 

「インクリング、もっとスピード上げられるか!?」

 

「もちろん! そして今の私は3号だ、アルス」

 

 

後ろから束になって襲いかかる連中をスプラッシュボムで追い払う。シューターで作ったインクの道をイカの姿で進む。

アルスを追い越し、道を塞ぐ敵をヒーローブラスターで吹き飛ばした。

 

ヒトの姿になった3号はヒーロースーツを纏っていた。ヒーローを冠したブキで身を固めた姿は、決して名だけのヒーローにはならないという決意の証だった。

 

 

「…!」

 

 

前方に割り込んできたのは、剛腕を持つ兵士。顔へ向かって殴りかかった拳をかわし、すれ違いざまにヒーローローラーをぶつける。

 

 

「頼んだ、アルス!!」

 

「はあああ!」

 

 

崩れ落ち、防御も回避もできない敵には急所に当て、会心の一撃で倒した。敵が溶けて消えていく。

 

 

「よし、先に進むぞ! ギガディン!! トドメだ、インクリング!」

 

「ああ! 用意! くらえ! メガホンレーザー!!!」

 

 

雷で痺れた敵に無慈悲な一直線の攻撃が襲いかかる。吹き飛ばされ、壊れ、消え失せていく。

 

 

「(あのナカツナもこういう風に消えるのかな?)」

 

 

それならば、やっぱり殺すことになるのだろう。

 

 

「(ううん、相手の全てを奪うことになっても、やらなきゃいけないことがある。)」

 

 

折れたりしない。

揺れることはない。

進め、抗え、戦え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電撃の牢屋に閉じ込められていた3人。そこで見たのはコロシアムの円を少しかけさせるように引かれたなにかの予告線。

 

 

「…? これは…」

 

 

不思議に思って3人でそれを見る。応急処置を受けたロイは全快で… とはいかないが、少なくとも電撃による痺れは取れて動けるようにはなっていた。

 

 

ガガガガガッ!!

 

 

「うおおい!?」

 

「これって…」

 

「メガホンレーザー…!?」

 

 

地殻ごと抉ったメガホンレーザーは土台を無くした上の観客席も木っ端微塵にした。建物が壊れて、外から直接フィールドへ行けるようになった。

 

 

『あの状況から性懲りも無くきたのか…!? なんという無茶な…!』

 

「…インクリング!」

 

 

ロイの言葉にはどうしてここに来たのかという怒りと、来てくれたのかという安堵が混じっていた。

 

 

『通告する!! 侵入してくる敵を滅せよ! そして敵の拠点を討ち滅ぼせ!!』

 

「随分と余裕がねえじゃねえか」

 

『おまえ達に言われたくはない! どちらにせよ、魔法でもなければお前たちはどうすることもできん!』

 

 

焦らせれば、という意図で発した言葉は見事に効果あり。姿が見えなくてもわかるほどの苛立ちを抱え、指揮のために視線を外した。

それを確認し、こっそりと裏の話をする。

 

 

「さっきの話だけど… キミの推測が事実だとしても、ボク達やインクリングではどうにもならないんじゃないか?」

 

「ああ、でも伝えればどうにかなるはず。リリーナが()()()()()()を持っていれば嬉しいけど、なくてもどうにかなる。」

 

「俺にはよくわかんねー類の話だが、それよりも俺たちがどうにか脱出する方が重要そうだ」

 

「そう、だね」

 

 

電撃の壁を見上げる。自分達が捕まっている限り、奴が取れる手段は多い。自分達の命を盾にされれば、先程の焼き増しだ。

建物の一部分が崩れたこともあって、周囲の監視は薄まったが、まだ脱出を企てられるほどではない。また頭を捻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天幕からとび出る。既に断末魔や武器の交わる音が聞こえる。ここまで戦場が広まっているのだ。

 

 

「インクリングのことも心配だけど… このままだと大勢犠牲がでる…!」

 

「どうしよう…!」

 

 

指導者不在で、なおかつ相手が正体不明。

そんな状態では勝てるものでも勝てない。未知というものはそれほどまでに心に侵食するのだ。自分は何と戦っているのか、倒せるのか─

その条件で戦意を保っていられる人間はそうそういない。

 

 

「どうすればいい… どうすればみんな助かるんだ…!」

 

 

目の前が暗くなりかける。痛いほど拳を握る。悔いても何も変わらない。変えたいならば選択をしなければ。でもできない。何をすればいいのかわからないから。

 

誰でもいい。

何か戦況を変えられる何かを…!!

 

 

「ピ…!」

 

 

真っ先に気づいたのはピチューだった。

 

何もないのに優しく熱さ。

肌に感じる猛々しい刺激。

血の匂いが消えていくような静謐さ。

 

 

「グオウオオォォ!!」

「グウオオォォォ!!」

「コォォォォォ!!」

 

「これは…!」

 

 

目の前に降り立つ3つの伝説。

3人に前に立つ救世主。

 

 

エンテイ。ライコウ。そしてスイクン。

 

 

真のヒーロー達が集結する。

 




○タイトル
Undertaleの楽曲の一つ。不死身のアンダイン戦のBGM。
他のアンダイン関係のBGMとは違うシリアスな曲調から始まり、ZUN節。楽曲タイトルにすると毎回思うんですけど、素人の話聞くより直接聞きに行ってください。


○サイレスの杖
FEシリーズに登場する杖。一ターン魔法を封じる。


○エンテイ、ライコウ、スイクン
ポケットモンスター金銀に登場する準伝説。通称三犬。
スマブラではモンスターボールからエンテイ、スイクンが登場。しかし、ライコウだけXでリストラ。映画でも二体登場しているが、ライコウはゾロアークの映画まで待たされる。ライコウに何か恨みでもあるのだろうか。


○お知らせ
あけましておめでとうございます。よいお年になりますように。
「テリー・ボガードはテレビゲーム総選挙の結果に物申したいようです」明日七時に投稿予定。pixivでも公開予定。ここの設定も使用してます。ただし、小話以上のはっちゃけぶりです。作者のページからどうぞ。



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