大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
ケアルガは?
じこさいせいは?
回復の奇跡は?
ピーチが使っていた癒しの技、
果ては、奴らの認識外、スマッシュブラザーズの繋がりまで辿ってあらゆる癒しの術を使ってみたというのに、何一つとして自分の傷は癒やされない。
──やっと気づいたの?
──まさか……!
違う。治療をしても効かないのではない。
治療の力が自分に向かないのだ。
──勝たせなんかしない。おまえの舞台はどこにもない……!
亡霊とでも言うのか、それとも魂? 幽霊?
目の前に冷たく見つめる幻。キクの残響がダブルに勝たせまいと残り続けていた。
ダブルの希望を根こそぎ奪い取っていく呪いという名の怨念。愛しき人が笑えるように、キクが残したお
悪役でないダブルにヒールはできない。
──今更正義の味方ぶる気か? 魂を奪う化け物が逆立ちしたところで醜悪さは変わらないさ……!
──役名なんて飾りなのよ。そこからどうだってなれるんだから……私は気づくのが遅過ぎたけどお前は一生気づけないわね
──そう求めたのは世界だ!!
──周りを言い訳にするからお前はお前であれないのよ!!
幻が現実へ戻ってくる。
ジョーカーの周りから出た、火球。彼の内側のマスターハンドすら一時的に攻撃に入れる程に多大な隙を見せていた。
『ふざけ……ッ!』
「マカラカーン!!」
慌てて跳ね返した火球は全く同じ技で跳ね返された。マスターハンドの言うところの猿真似すら、そもそも彼の専売特許ではない。
「うりゃああッ!」
『ハンマーの……! じゃない!?』
炎に包まれた槌、頭をかち割ろうとするカービィの頭に鉢巻はない。
コピー能力スマブラ。
ファイター達の総称を冠するその力。
大乱闘に触れることでカービィが目覚めた1つのちから。
「はあああっ!」
『この力……! まるでファイター……!』
バルカンジャブの嵐に真っ向から競るのは、ダブルの足先。炎を纏った飛び蹴りというところか。
「ぷっ……!!」
「カービィ!」
吹き飛ばされたカービィをスーパーマントで跳ね返して真っ直ぐダブルの元へ。
その勢いのままにいしころへんしんして、激突する鉄砲玉。
『なら……!』
『ブラックホールの奇跡か!! 結局カービィと考え方が同じじゃないか!』
『黙ってろ!!』
空中に現れ出た無の見える黒い穴。
あらゆるものを吸い込む空間。ブロックすらも吸い込んだ後では己の体しか信じられない。
「んむぅ〜……!!」
「が、頑張れカービィ〜!!」
いしのままのカービィにしがみついたマリオ。
ジリジリと吸い込まれていくが、少なくとも今この瞬間にどうこうなる訳ではなさそうだ。
「くっ……!」
── 『ああなるほど……やはり奴は後追いだ。常に先手と攻撃を続けよ! 奴の頭脳は、数多の力を使いこなせる出来ではない!!』
「……常に……攻撃を…………」
地面にナイフを突き刺して耐えていたジョーカー。マスクの裏の眼光が自身の真のペルソナが、討つべき仮面を射抜く。
「はぁっ!!」
大きく振った手からワイヤーを投げ出す。まっすぐダブルを捉えていた筈の先はブラックホールの元へ──
『無駄なことを……』
『どうかな?』
『……! マスターハンドォ!!』
ワイヤーは単なるフェイク。
視線を逸らさせた挙句、半端なブラックホールのお陰で速度の上昇したマスター印のミサイルを避けられる余裕はない。被弾の衝撃でブラックホールも消えていく。
「よしっ! いくよカービィ!!」
「ぅんっ!!」
マリオの拳を虚空から呼び出したハイリアの盾で受け止め、ジョーカーのナイフをみがわり人形でガード。
真下から狙ったファイナルカッターは土星のような光輪で相殺し、リーフシールドで全員を弾き返す。
「続けろ……攻撃を続けろ!! 大した攻撃じゃなくてもいい! 決して対応させるな!」
吹き飛ばされたまま、すぐに起き上がりジャンプして回し蹴りを放つ。真っ向から火のブレスを浴びつつも一切攻撃の動きをやめなかった結果、炎を纏ったキックをくらうことになった。
「うぃや!」
ファイナルカッターに宿る呪怨の術。
斬撃と共に飛んでいく。
真正面から炎を放った結果、視界を潰してしまった故にかわせない。大乱闘という枠組みのエイハが少しずつダブルの体力を奪っていく。
『ダメージが無視できない程になってきたか……演出は結構か? 終幕を飾る時がきた……!』
「させるものか……!」
本能で何かを始めようとすることを察した。演劇に例えて奴のやることなど、碌なことではないのだろう。
届かない上空まで行こうとするダブルのコートの裾へワイヤーを引っ掛け、置いていかれないように。
『しつこいぞ……!』
「そうさ……しつこいに決まっている……!!」
ブレる利き手ではない腕で銃を撃つ。
右へ左へ回転して飛び回り、どうにか振り払おうとしながら銃撃をかわす。
ワイヤーを掴んだ手に力を入れて体を引っ張り上げる。胴の真ん中に蹴りを決め、ダブルごと落ちていった。
「ジョーカー!」
馬乗りになり、足で腕を押さえつけてナイフを眼前に突き立てる。
「最後の警告だ……この世界から出ていけ……!!」
『我々に指図するな……!!』
ナイフを一度上げて、振り下ろす。
『終幕と言った……!』
「……なっ…………にっ……!?」
波導の力を込めてジョーカーの胴体にはっけいを打ち込む。上体から後ろへ倒れ込んでいくジョーカーの身体を凍りつかせる。
『凍りつけ……!!』
「や、やばい……!?」
『ジョーカー……? しっかりしろ!!』
──これが終幕か?
──叛逆の果てがこの結末か?
──慈悲を見せた結果、多くで悲しみが生まれるぞ
おれは──
アニメやコミックのヒーローのようにはなれないし、なろうとも思わない。
きっとこれから先も、全てを助けることはできないんだと思う。
でも、俺は俺を貫きたい。
色んな悪人と戦ってきたけど、色んな過程や過去があった。ダブルもそうなのかもしれない。
やり直すチャンスは誰にでもあっていい。
手を伸ばすことに理由はいらない。
それが、俺だから。
それにまだ終わるつもりもない。
もう、自分を見失って、諦めたくはないから。
──フッ、要らぬ世話だったか
いや、いつも感謝してる。
俺を見失っている時に気づかせてくれる。
「ペルソナッ!!」
「もう! びっくりさせないでー!!」
『……ッ!?』
あれから再起するのは予想外だったのか、咄嗟にファントムを召喚し、盾とするが、1人でに組み立てられていく鎧の隙間を鋭く見抜いていた。
「はあああああああッ!!」
『うっ……ぐっ!?』
アルセーヌと共に突撃し、突き刺さる刃。そこから漏れ出す光。
「……ッ!(身体が上手く動かない……!)」
だが、思った以上に力が入らない。
さきほどブリザガで凍りついたのを無理やり吹き飛ばしたが、一度凍りついたことがなかったことにはならない。
『ジョーカー!!』
「押し付けろぉ!!」
「くらぇーー!!」
『ふざけるな……! 我々は……我々は……我々を求めぬ世界を……!!』
ソードを持つカービィが、掌底を打ち付けるマリオが、サイドからファントムを破壊しダブルへダメージを与えていく。漏れる光が増えていく。
『お前だけの世界はない……誰かと共に生きていく……それが世界だ……お前がお前だけの世界を望み、破壊し望んだだけの世界を創ると言うならば……俺達は俺達の世界を守る!!!』
ダブルの腕が、足が、胴が、頭が、割れて剥がれるように吹き飛んで大きな光を発生する。
『嫌だ……嫌だ!! 我々は……俺は……僕は……自分は……!!』
光が収束し、消えていく。
全てが、この異空間が、世界が消えていく。
「勝っ…………」
言葉は、響かない。
音は途切れた。
何もかもが存在しない、文字通りの無。
色を失った、1つのフィギュアだけがそこに倒れていた。
あーあ。
やらかしちゃった。