大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
自分の望みは叶えたい。
そのためにこの世界にやってきた。
自分がやることはそりゃあ良くないこととは思っていた。
マスターハンドを屠るということは、この大乱闘の世界の存続を脅かすこと。
前者で直接倒してしまうのは当然悪いこと。
そして後者もまた悲しむ誰かがいるはずだ。
ここでしか会えない者。
ここで悲しみを癒す者。
大乱闘を楽しむ者。
実行してしまえば、彼らの苦しみはどうなるのだと。
自分の悲しみをまるで誰かに押し付けるように。
なら、自分の感情はどうすればいい?
自分は苦しんでもいいと言うのか?
だからこそこの道を進んだ。
現状以上の罰はないと確信して。
だが、友人と敵となり、相対し、悲しみをうませることになるとは、想定もしてなかったのだ。
直接対峙することも。
決定的に、想像力というものが欠けていた。
チゲン自身の不運がこう巡ってくるとは、彼にも予想がつかなかったのだ。
もう自身の頭は信じられなかった。
もう自分で判断できなかった。
自分の力では、道を選べない。
「カムイ……」
「……?」
各地にはボディが散らばっており、ファイターもまた散り散りのままに戦っている。
そうとは思えないような静寂が2人の間で流れている、ような。そんな錯覚が。返ってくる言葉が怖かったんだ。
「構えて。他の人達も」
「チゲン……!!」
「違う。違わないけど違う。僕はどう歩むかを選択しなきゃいけない……選べないなら、一局打ってでも決めなきゃ」
「だから、戦うと?」
唯一口を挟めるのは一心別体の弟だけ。
「チハクはどうする? 別に君は君で好きに選んでいいんだよ? 僕とは違うから」
「……私は、お前が選べないというならば……」
「えっと、だからそうじゃなくて……」
「……違う。私は……お前の選択を、さも自分の意思のように語っていたのは私自身の咎。付き合う義務がある」
「え、急に何? いつからそんなこと……」
「何故か彼らと戦う気が乗らない。だが、チゲンの願いは叶って欲しいと思う」
結論は同じでも、過程は違う。
何故だろうか、今会ったのがはじめてのはずなのに、懐かしさすら覚える。
意志は同じだと思考放棄して、ずっとそうだったはずなのに、この感情はどこから来たのか不思議だ。
はじめての感情も、チゲンの夢も応援したい自分がいる。選べないのはチハクもそうだった。
「この白黒の世界に知らしめてみせろ。スマッシュブラザーズというとりどりの色を。絆を取るか、未来をとるか……」
「実は、1人で戦わなくてもいいのは、実のところ、ちょっと嬉しい。もう、どっちの選択にも忖度しなくていいんだよ。本気でやるだけ」
「チゲン……」
「本気でやって決まった道なら、納得できる」
陰りのない笑顔は演技でも嘘でもなく、負の感情をまったく感じさせない。
少しだけ、この大乱闘の世界に戻ってきたような感覚だった。
闘志はあっても殺意はない。命を取り合う戦いではなく、競技としての戦いが。
「わかった。君でそれで納得するなら」
「でもさ、あんまり余計な戦いはしてる暇はないんじゃないのかい?」
「えー、ここで断るのあり……? そっちが勝ったら僕達が知ってることは教えてあげるからー!!」
いまいち重苦しくならない現状にチハクはため息しかでない。そんないつも通りに朝食を用意するような軽さで指を構え、武器を構え、戦闘体勢に入った。
「元よりそのつもりだったがな。戦うならそれでもかまわん」
「それで構わない。往くぞ──!」
宙一帯に浮かばせる白石。数で劣るのであれば、行動を制限させる。
それも構わず、タックルを仕掛けてくるガノンドロフ。グルリと円を描けば彼の姿が消えて、背後から弾幕を潜り抜けてきたシークの目の前にガノンドロフを出現させてぶつけさせる。
「ッ!」「いっ……!?」
「とお!」
守勢で戦っていくチハクとは逆に縦横無尽に動き、神弓シルバーリップの双刃を逆向きに取り付け、通りすがりに斬りつけていく。
同じ神器が互いにぶつかり合い、回転のついでに振り払うように衛星ガーディアンズを直接ぶつける。
「カムイッ!」
「チゲン!」
白の石に囲まれて豪腕デンショッカーをぶつけるチゲンと、夜刀神・終夜を刺突として掻い潜って攻撃を仕掛けるカムイ。
互いの攻撃が互いにぶつかり、相打ちとなる。
「……っ! チハク!」
黒の石を斜めに並べて、そのまま直線にぶつけていく。牽制しながらチハクの元に戻り、背中合わせになる。
「いくよっ」
「「
6つの碁石が分裂していく。渦巻く様子が逆再生になるように、圧倒的な数による空間の支配。
「この数……!」
「石だから吹き飛ばすのは有効だが、数が多いな……!」
「でも一時的に弾は減らせる……! インクリングにパルテナ様! 弾の対処をお願いできますか!」
「りょーかい!」
「おまかせを。シャドーカービィ、あなたもお願いできますか?」
「………………」
コクリと頷く。
トルネイドのコピー能力、ホットブラスターを構え、風を起こして吹き飛ばしていく。パルテナもブラックホールの奇跡で石を吸い込んでいく。
「絶やすな! 掻い潜ってくるぞ!」
「ピチュウ!!」
弾幕が薄くなった直後の隙に、潜り抜けてくる小さな黄色い影。
「
「ピッ!」
「あばばばば」
白石が壁となり、ピチューの進出を阻む。追撃のチゲンは咄嗟のほうでんに巻き込まれた。白石の壁では隙間を縫う攻撃は完全には防げない。
「まったく……!」
チハクの扱うパルテナの神弓は、自在な軌道を描く。白石の壁を潜り抜けてピチューに直接ダメージを与える。
ドンキーコングが両手で地面を揺らし、後ろへ飛ぶ2人。
カズーイによって低空飛行してきたクロムが斜め下からチハクへ斬りかかる。神器で受け流し、着地したチハクに向かって、カズーイと合流したバンジョーのタックルにぶつかり、吹き飛ばされる。
「カオスコントロール、必要か?」
「ううん、いいよ。勝てても、選べなければ意味がないんだ」
時間の流れを乱す力。
確実に勝つためには有効な力だが、その使用をカムイは選ばない。
この戦いに重ねられた問いに、決着をつけなければならない。
「サンダー!」
「来たね……こういうのが
魔導書から電撃の魔法。チハクが電撃を囲い込み、夜刀神と神弓の双刃が重なる。チゲンの足を竜穿で防ぎ、刀の防御を潜り抜けて届いた刃。
竜化で深傷を防ぎ、腕を変える。
刺突を避けて衛星ガーディアンズの後ろへのダッシュ射撃。盾型の弾が自然と2人の間に距離をつくる。
「チハク! こっち!」
「足止めがなくなるぞ」
「大丈夫! お願い!」
弾幕を増やし、他ファイターの動きを封じていたチハクがチゲンの元へ向かう。交差した人差し指と中指だけを立て、印を結ぶ。まずは十字に切ったチゲンが宙へ浮かぶ。
「これが僕達の一番の手……!!
遅れてチハクが円を描く。彼はチゲンの後ろで静止した。白と黒、明暗の際に目が痛くなりそうな閃光が乱雑に、一面に。
紛れる碁石の不可視の攻撃、それ以外を合わせた、2人の新たな道がそこにある。
『グワアアアアアアァァァ!!!』
「最後の力!!」
パルテナの奇跡が、竜化したカムイの生命力を限界まで削り、その分、防御力と速さと攻撃力を底上げする。口から放たれるその激流は最後のきりふだに匹敵するほどの威力。
「盤上を文字通りひっくり返した……!?」
「うん……うんっ! よかった、君でよかった! はじめての友達……!!」
最強の技を正面から負かされた。
気持ちいい。
やられたのはこっちだと言うのに。
笑いさえ込み上げてくる。
「楽しかったよ……大乱闘……!!」
「……ああ……!」
黒と白の兄弟が、同じだった2人が。
隣に並んで横になって。
快活な笑顔と穏やかな笑みを浮かべていた。
…………ああ、なるほど。
ナカツナが負けたからチゲンが殺されることもなかった訳か。
これが俗に言う、生存ifってやつかな。
おっと、ベレトたちもいるね。
たどり着いたよ、マスターハンドの場所。
最終決戦の場所────!
◯タイトル
ファイアーエムブレムifの無章、6章タイトルであり、BGMであり、主題歌の歌詞であり……とにかくifとは切り離せない文言。
◯チゲン
まさかの生存ルート。
ナカツナを先に屠った結果、生存しました。
ルネ的にはついで。チハクがトドメを刺した後、残されたヴォーパルの剣を拾うという手はありましたが、時間が足りなかった模様。