大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「……! おまえは……!」
「やれやれ、あっちにもボディ、こっちにもボディ。やることが単純だから配役がないんだよ。そう思わない?」
妖しく笑うその姿。
キーラの兵とは違う赤い光を宿す瞳。
マスターハンドの肉体を守り、ただひたすら襲いくるボディ達と戦っていた者達。
マリオを中心にチゲン達を追ってたどり着いた者達。
彼らが巡り合うのは新たな異物。
「えっ……え〜!? クラウドが3人目!?」
「誰が3人だ」
「くっふふっ……3人て……!」
本人とはかけ離れた子供のような笑いは、合っているようで、でもやっぱり異様な気もした。
「さて、僕ことルネはちょっとここに用があったんだよね。ベレトもここに来ていたのならば話がはやいや」
「……?」
「さて、報酬分は働いてよね。様々なフォドラの世界の未来から、その武器を拾ってきたんだから」
「武器……? まさかお前が……!」
「そ、僕が依頼者」
愕然とする。
天帝の剣と同格の力を持った3つの武器。
それらを譲り、これからの脅威に備えろと、忠告という名の依頼をしたのが彼だった。
「ベレト、知り合い?」
「……意味深なことを言ってすぐに消えた。お前は一体……」
「僕のことは良いんだよ。例え誰が報われなくとも、僕は面白い物語が完成すればそれで良い」
そっと白刃の美しい剣を振ると、それだけで周囲のボディが消え去っていく。
くるりと手の中で回転させて逆手で持つと、ベレトへヴォーパルの剣を差し出した。
「はい、これ。今後必ず必要になる。これで僕の出番も終わりだ」
「まだ物を寄越すと言うのか……」
「これは報酬とかじゃなくて必要なだけだよ、はい」
戸惑い、不審に思って受け取れない。
依頼依頼と言うが、自分が貰ってばかりなのだ。まるで自身が都合よく操られているような。
「まあ、待て。せっかくのその姿だ。少し遊んでいかないか」
「……あー。そういや、このボディだからこそ反応するのがいるの、頭から抜けてたな……」
うっかりしてたと、呆れと少々の興奮が混ざった声をだして、差し出した刃を逆手のままに動かす。
政宗とヴォーパル。互いに名刀と呼ばれる刃が交わる。
「暇なのかなぁ? 君レベル相手だとうんざりでもあるんだよ、しつこいもんねクラウドに対して」
「気になるものは仕方がないさ。付き合ってくれ」
「嫌だよ、時間ないし。最短ルートでいかせてもらう」
空いていた左手でバスターソードを抜き、振り回してセフィロスを退ける。十分に距離ができたことを確認すると、虚空へと喋り出した。
「とっくに見てるんだろ? でておいでよ、
クレイジーハンド?」
えっ、と漏らしたのは誰だろう。
誰でもいいけど。
とにかく空から聞こえた思念のような声は、確実にあの左手のものだった。
『気っづいてんたんか?』
「クラウド、クレイジーハンドって?」
「マスターハンドと対になる存在……破壊欲の化身、と呼ばれている。この大乱闘の創成には関わってないが、たまに顔を出してくる」
おっと、ソラはクレイジーハンドを知らないそうだ。これはどうやら後からのファイターは知らないのかも?
「未来の僕がね、セフィロスとあーだこーだしてたら君が来たんだよ。気に入ったーとかなんとか」
『自分で言うか? つーか、お前と会ったことはねえだろ』
「会ったのは今じゃないよ。それに、今まで1回も顔を出さなかったのに今更どういう風の吹き回しだい?」
そう、色々やった。
右の人を左にいかせたり、あれやこれして……
たまには僕自身ラスボスになってみたり。
あの時は……確か、僕の過去を知る機会を与えて、
『僕の幾億、幾京の刻を超えてみろー!』なーんてこと言ってたっけ?
ただその時も、どんな時も、クレイジーハンドが出てくることはなかった。
今回がはじめてだ。
『今までだぁ? 悪くねえ。未来って言ったよな。未来のことを知ってるってことか?』
「まあねえ」
『てめえが干渉しなかったらどうなっていた?』
「そうだねぇ……」
どこまでを干渉だと言うのか。
多分彼的にはここに来なかったら、って聞きたかったんだろうけど。
「見るに耐えない上につまらないグダグダな結末だったよ」
敢えてこう言ってやった。
本当の最初を。僕のいなかったこの世界を。
『そのためにお仲間さんまでやったってんのか?』
「おや、どこから見てたんだろ?」
盟友と同じだね。
今の僕は観測される側でもある。
ちょっと楽しい。
『いいじゃねえか。いい破綻っぷりだ! で、そのグダグダな結末を回避するのにお前はどうするつもりだった?』
「け、結末? ルネだっけ、君はどこまで知ってるんだい?」
マリオが話に入ってきた。
さて、どう答えるか……
「数多の可能性。数多の結末。繰り返し続けた観測者。そして、トライアンドエラーの終着点」
未来が存在している限り、僕に限って知らないなんてことはない。
できること、やれること、いっぱいある。
「さて、僕が具体的に何をするか。本当はベレト辺りに任せて終わりにする予定だったけど」
『気が変わった?』
「そうだね。マスターハンドの肉体がまだ囚われてないならば、復活さえさせればこんなこともできるんじゃない?」
「こんなこと?」
「それは────
それは、信じられない驚愕の。
「まさかそんなことが……!?」
「単独じゃ戦闘力があまりない君だってそうなんだ。確実に不可能じゃない。規模は広がってるけどそれ以外に難しいことは何もないよ」
ざわざわと、戸惑いの声。
本当にそんなことができるのか。
そうしたらこの状況をどれほど逆転できるのか。
『クククッ……アッハッハッハ!! いいぜいいぜいいぜ!! この定期囚われ状態のコイツの器はオレが預かってやる』
「うん。楽しめればいいんだよ」
『ああ、それじゃあこっちの要求も聞いてもらおうか』
不審げな顔をして、それからすぐに微妙そうな顔をした。嫌ではないし、乗っても別にいい。不利益がある訳ではないし、不可能なことを言われている訳でもないのだ。
だがなんというか、棚から牡丹餅のような唐突感があって、実に微妙な感情しか湧いてこないのだ。
「何の意味があるのさ……」
『話さなくてもわかるのは便利だな。いいじゃねえか、オレはお前を気に入った。お前の未来を見てみたくなった』
おいとけぼりにされるスマッシュブラザーズ達。
おずおずと、控えめにマリオが口を挟んできた。
「あ、えっと、なんとなく予知みたいなことができるのはわかったけどさ、結局何を頼んだんだい……?」
「聞きたいの? 君たちにはどうでもいいことだろう?」
『知りてえのか?』
愉快さが止められない、と噛み殺しきれていない笑いが聞こえる。
『なーに、おかしいことじゃねえ。ボーナスだボーナス』
「……彼はね、僕に元の体を取り戻すぞ、って言ってる」
元の体。
そう、ルネの今の体はクラウドのそれ。
スピリットである彼は、元から霊体などという例外でなければ、本来の肉体があるはず。
「元の?」
「元の体が違うのか」
「まあボディなんてレプリカみたいな扱い方してるだけだし、元の体ぐらいどっかにあるよ」
なんでこの片翼は残念そうなんだ、とボソッと呟いた。
「でも、できるの? 僕の体は、というか僕の存在は普通じゃないよ」
『できるさ、オレは不可能すらもぶち壊す気狂いさ』
それは、とある場所の時空の話。
過去を悔い、過去へ飛び、
その矛盾の負債を背負ったなんて事のない、
ただ普通の少年だった、観測者の話。
◯タイトル
ゲームボーイアドバンス、ゼルダの伝説 不思議の木の実。
ポケモンよろしく2バージョンの片方側。
しかし、マップやダンジョンが大胆に違う2バージョン。
正直ポケモンでも見てみたいですけど、今のグラフィックでそれは難しいですよね……
◯「クラウドが3人目!?」
KH、FF7(スマブラ )、ルネ(完全に偽物)。
これを言わせたかっただけに、ソラをここに配置したとかそんなまさかかかかか
◯英雄の遺産
裏設定として、アイムールは蒼月の章、アラドヴァルは翠風の章、ファイルノートは紅花の章のED後からルネが収集していたという裏設定があります。
みんな行方が追えなくなっているので、持っていっても問題ないと判断しました。
◯ルネ
次回、過去話。