大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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125話 時空の章

 

別に君が何を望もうが勝手だけどさ、他でもない僕の意見は無視なのかい?

 

 

『言っただろ? オレはてめえが気に入った』

 

 

ったく。

こうやって故郷に戻ることになるとは想像つかなかったな。

 

 

『おまえみてぇな奴にも一丁前に故郷を懐かしむなんて思考があったとはな』

 

 

な訳ないでしょ。

感覚からしてもそれこそ途方もない時間が流れてる。

 

一部だけでも覚えてるだけ奇跡だよ。

 

 

『何がどうしてお前みたいな捻くれ者が育ったのか気になんな〜』

 

 

言って欲しいんでしょ? 別にいいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた、大乱闘の世界とは遠く離れた世界。

 

そこは魔王の侵攻を受けている訳ではない。

勇者が存在している訳ではない。

気分が悪くなるほどの差別が存在している訳でもなく、上級階級がまるで神の如くのさばっている訳でもない。

 

強いて言うならば、機械技術は発展している方だろうな、程度のよくある面白みのない世界だった。

 

 

『つーまんな、どんな世紀末かと思ったんだがな』

 

 

──僕をどれだけ勝ってるのさ君は。言うて、僕の家庭環境も面白みのあるものじゃないよ。父親と母親がいて、兄弟なし。そんな感じ。

 

 

『ま、なんかあったんだろうな。異常ってもんは内側からじゃわかんねーもんだしよ』

 

 

まあ、誰しも自身が普通であり、平均であると思いたいものだからね。

 

どうしようもない不運故の不幸も、自分ではない誰かも同じ目に遭っていると考えれば耐えられるものさ。下がいれば安心するのが心のサガだし。

 

 

……まあ唯一珍しい点で言ったら、父方の祖父がいなかったくらいかな。

他はしっかり揃ってるのに、意図的に穴を開けたみたいにそこだけいなかった。

 

死別ではないよ。

息子である父親はその祖父にあまりいい思いをしていなかったらしい。不仲故の距離だね。

 

 

『……へー…………』

 

 

つまんなさそうだね。

家庭環境がよくなかったんだろうな。

僕と配偶者を持ったからこそ、憎しみは抑えきれなくなった。

もっといい環境で育つことができたと、頭の悪い父親は時を越えたのさ。

 

 

『ルキナみてえな?』

 

 

彼の場合、ただの技術さ。タイムマシンの技術は既にできてたから。

後、流石に彼の目的とルキナの目的を同列視するのはやめろ。

 

 

『おっ、怒ることができたのか』

 

 

楽しんでるなコイツ……突っかかってたら話進まないや。

父親のいっちばん頭悪いところは、時を越える目的地に自分が生まれる前を選択してしまったことだ。ちなみに、身籠ってもない時期だ。

 

自分を産む前の親を殺してしまったら……

どうなると思う?

 

 

『自分が生まれなくなるから消滅する。しかし、その場合、親の死因が存在しなくなるから元の道筋通り親を殺す子を産むことになるな』

 

 

そして子が親を殺す……

時間軸と因果の流れの中で矛盾してしまった2人は切り離された時の中で永遠と殺し合っている。

未来永劫、これからもずっと……

 

元の時間では2人はそもそも存在しないことになってる。誰の記憶からも抜け、あらゆる記録から抹消され、生まれなかった存在に……

 

 

『……なるほどな。殺し合った親子の、子であり孫であるのがお前ってこったぁ』

 

 

うん。

父親が消えれば僕は当然生まれないけど、消えなければ生まれてくる。僕もまた、時の矛盾の体現者なんだよ。

 

ただしどちらであろうと、切り離された時間軸に僕が存在することはない。

 

 

だからかな、僕がこうなったのは。

全ての時間軸から切り離され、ただ意思のみが残る、幽霊……みたいな存在さ。

 

 

『やたらファイターのことに詳しいのは、誰にも気づかれないまま、実際に見てきたからか』

 

 

うん。

さて、残る母親だが、父親のことは覚えてなかった。

 

ただ、僕のことは忘れていなかったんだよ。

実際に僕を産んだのが彼女本人だからかな?

 

相手もいないのに息子がいて、行方不明なんて言うもんだから、狂って狂って……最終的には心の病院さ。結局2度と出ることはなかった。

 

 

『そっちはどうでもいい。おまえの話が聞きたいんだよ』

 

 

えー……

こういうの全部知ってこそでしょうよ。

全ての登場人物を把握し、隅から隅まで調べ尽くし、あらゆることを試してみるのが僕と盟友のサガなんだが?

 

 

『オレ、どっちでもねーし』

 

 

………………僕自身は。その後。

ずっと見ているしかできなくなった。世界が動いていく光景を。

 

最初からこうだった訳じゃないんだよ?

時間遡行の技術だけは発展してたからさ。

いつか助けがくると待って待ってうんと待って。

でもくることはないってわかった。

 

その根拠が、未来の自分の記憶だったんだ。

 

 

戦争が起きて、

食べ物がなくなって、

人と人が殺し合って、

人類が滅亡して全く別の生態系の仕組みが完成してしまえば、諦めるのも仕方ないよね。

 

 

『おおー……気になんなーそっちも』

 

 

それで僕は色んな世界を回った。

 

 

スーパースターが駆け回り、

勇者が大地を踏み締め、

どこかのあきれかえるほど平和な星で、

透明よりも綺麗な輝きを追って冒険に出る。

 

静かな銀河の闇の中で、

銀の翼が敵を撃ち、

母なる居場所と歩き出す小さな冒険譚が、

誰よりも速く駆け抜ける。

 

平和を願う戦乱の中、

空と大地を飛び回り、

果てしない山の頂へ、

何度も何度も続けて繰り返す古の世界。

 

因縁を背負い戦い続け、

閃光のスピードが、

増えて戦い食べられて、

ただ孤独に残った黒い箱の中の世界の語り部。

 

のんびり続く生活と、

正義の為に自ら立つ、

自分の心身のために動いて動いて、

その拳で栄光を掴む。

 

パクパク食べてやられて、

狙い撃って煽られて、

世界という因果の中で、

無窮に極め続けていく。

 

最後の幻想が立ちはだかるなら、

華麗に残酷に美しく、

世界を塗り替えるのだ、

その血脈の運命すら。

 

真なる己を曝け出し、

使命と剣をその手に持って、

救うべき者を救い出せ、

彼の伝説はここから始まる。

 

その腕を伸ばし続けても、

世界の果ては届きやしない、

殺し憎み続ける親と子も、

全ての空が繋がっている数多の世界の──

 

 

 

本当にほんの一握りなんだよ。

 

 

『収集が、つかねえな。一体どれほどの時間を使えば、全てを観測できるんだ?』

 

 

飽きるほど続く、永遠を。

 

 

『途方もねえな──』

 

 

さて、僕の身体についてだけど。

ヴォーパルの剣で、僕の存在を明確にしてしまえば肉体を取り戻すことは不可能ではないだろうね。

 

でも正直理解できないね。

僕に今更肉体の有無が重要になるとは思わないけど。

 

 

『そういう意味じゃねえんだよな。ま、サービスってもんだ。ありがた〜く受け取れ』

 

 

ふ〜ん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっと、真紅の目を開く。

今まで使っていたボディのような鋭い瞳ではない。内面相応の、丸く大きな瞳。

外はねの同じ色の髪。青い色の上着に後ろ腰にぶら下げたヴォーパルの剣、そして片足の半端な位置で結ばれていた紫のバンダナが印象的だった。

 

 

「だ、誰?」

 

「さっきのクラウドさん。ルネ(ほんらいのすがた)ってやつかな」

 

 

目の前に指差すルネ。その相手のソラと同程度の年齢に見えるが。彼自身の認識だとどれほどの時間が経っているのか、わかったものではない。

 

 

「みんな!」

 

「おっと。ちょうど良いところに来た。待ってたよ、僕の切りふだ(ジョーカー)

 

 

たどり着いたワイルドカードは、怪訝と戸惑いの目をしていた。

 





◯タイトル
前話タイトルのもう一つのバージョン。
ゼルダの伝説 不思議の木の実の片割れ。


◯ルネ
ルネのモチーフは親殺しのパラドックスとなります。
子を産む前の親を子が殺せば、今話に記述通りの矛盾が発生します。
最も、彼自身は孫の立場です。それに巻き込まれた結果、実体を失ってあちこちの世界の観測者となった訳です。
名前の由来は親殺しのパラドックスを題材とした作品の作者です。
ルネ自身も言った通り、ホウエン地方の某シティとは関係ありません。

↓イメージ画像です。
{IMG}

ちなみに外見年齢はソラと同じくらいとしてますが、実際には(父が祖父を殺しに過去に戻った時期が)14歳です。厨二病ですね。


◯ルネの裏設定
彼が構想初期から1番変化がありませんが、
一時、彼の知る全ての技が使用可能という構想がありました。
傘でアバンストラッシュを真似するイメージの延長です。
なんなら使ってないだけで使えるかもしれません。

その時はバイキルトだのスカラだのありとあらゆる自己強化魔法を重ねがけして襲いかかってくるでしょう。それはそれで世紀末ですね。
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