大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「あれは……」
自らのボディから、刺した神剣を引き抜いたマルスが顔を上げた。
空を自在に飛び交う集団。
栗のような体に緑の羽が生えたような一団。
黄色の目が特徴的な、まるで軍隊のように。
それに見覚えのあったのはピットだ。
「あれは……自然軍!?」
彼らは自然軍。
自然王ナチュレの率いる、人類の抹殺を目的とする軍隊だ。
「まさか……あの一兵に至るまで全てがそうだというのか……!」
長い付き合いのサムスも、マスターハンドのその行動は予想を超えていた。
ああ、そうだろうな、軍隊の全てがファイターと言うならば、ボディ達もひとたまりもないだろうな。
「おーい!!」
「あっ! あなたはどこかで……」
背後から走って前に飛び出した少女。
しずえはその少女に見覚えがあった。
短く切られたベリーショートの、濃いピンクともマゼンタともとれる髪。
フードのついたシンプルなワンピース。
名前は聞いたことはないが、確か彼女は……
「リュカさんのお友達の方ですね!」
「おう! クマトラだ!」
「ワンッ!」
「おまえら……置いてくな。いつもいつも……」
男まさりな少女、こげ茶色の犬、足を引き摺るナイスガイ。
クマトラ、ボニー、ダスター。
リュカと共に戦った頼もしい友達。
「赤毛の子供に手を貸して欲しいと言われてきた。おまえ達はリュカや他の奴らと合流しろ」
「赤毛……ロイ、ですか?」
「名前は聞いてない。ともかく行ってやれ」
リーダー的存在にあたりをつけて、マルスにそれを話した。赤毛の子供で思い浮かぶのはロイだが、彼とどう知り合ったのだろうか。
……実際は本来の姿であるルネなのだが。
「行ってやれと言ってもどちらに向かえば……」
「登ってるヤツがいるぞ」
「スティーブ?」
空中に作られた梯子。いや、ホッチキスか?
それのてっぺんまで登ったスティーブが指を刺すように腕を動かし、エリトラで飛んでいく。
「そっちネ!」
「ファイターなら……命を落とすことはない……スマッシュブラザーズを集めているのか。何か意味が……?」
「とりあえず行こう! どのみち指揮官がいるだろうし、そっちを叩けば……!」
ピットとて、親衛隊長。敵の頭を叩くことの重要性は理解している。いや、兵がボディならば、それ以上の意味があるだろう。
「安心して行ってこいよ! PKスターストーム!」
「不安ならネネ達でオテツダイするも! マイルドダウン!」
ボニーが噛みついて動きを止めて、クッパクラウンから砲丸が撃たれて、キノのライフルが火を吹く。
「ここは任せておこう。おそらく援軍はまだ来る」
「…………」
スマッシュブラザーズのみが、戦場を離れていく。高所から見渡したスティーブを追って、最後にダークサムスがミサイルを撃ってスマッシュブラザーズが離脱した。
丸い面を取り、霧の中で響かせ合う葉。
その森の、微細な空気の変化を、こどもリンクは感じ取った。
「……雰囲気が変わった……何かが起きている……」
「ああ、さっきマスターハンドの声が聞こえた。俺たちにボディ達の相手をして欲しいそうだ」
「えっ、そうなの?」
光の勇者リンクにとって、この感覚は初ではない。かつてファイターだったもの。だからこそ飲み込みが早かった。
「首謀者のところへ向かうんだ。今、俺たちはファイターとなっている」
「懐かしい感覚だ……いいだろう、請け負ってやる」
「亜空軍の件を帳消しにしろとでも交渉すればいいんじゃな〜いか〜?」
「黙っていろ」
勇者の弓を構え、首長竜の頭部を狙い撃つ。しかし竜のように唸る水流が矢を叩き落とす。
その水流から飛ばされた弾を発射。ガノンドロフはそれを蹴り落とし、胴に殴りかかった。
仰け反りながらも振り回した首が彼を横へ薙ぎ払った。
「ぐぅッ……!」
──グリュオオオオオオオッ!
「しまっ……!」
「アンタ……!」
プレシアの長い首に締め付けられたリンクが、キツめに縛られたまま湖へ引きずり込まれていく。それをこどもリンクは盾を放り捨てて飛び込んだ。
「(…………! あの戦い方……どことなく似ている……!)」
こどもリンクはリンクの戦いに僅かな既視感を覚えていた。ひとつひとつの細かな技に。
自分の使うそれに似ていたのだ。
そして、彼は勇者。時代も世界も違うだろうが、勇気を引き継ぐ勇者に間違いない。だって手に持っているのは間違いなくマスターソードなのだから。
もし、未来、自身が継いだ技ならば。
例え確証も保証もなくても、その可能性が僅かでもあったなら。
それを喪うと想像したら。
足を止めることは、できなかった。
──プルオオオッ……!
「(……しまッ!?)」
水を自在に操る攻撃。
空中でそれを操り、それで攻守に転用していた。
それは、空気の中にある異物だったからこそ視認できていた。
それを水中で行えば、視認の難易度は格段に上昇する。
深い場所へ進むプレシアを追っていたこどもリンク。使おうとしたゾーラの面を、プレシアの攻撃によって手放してしまった。進行方向の真逆へ浮き上がっていく。
「(いや……そのまま進む!)」
小さな体では泳ぐ速度も出ないが、幸いなことに湖はそこまで深くない。追いつくことは不可能ではない。が、
「(ぐうう……)」
視認のしづらい渦が彼を巻き込んでいく。
例え認識できても、水中では速度が出なくてかわせない。
どうすれば、助けるどころじゃない。
「(……!?)」
何かに引っ張られるように急上昇したプレシアにぶつかって、空中まで勢いよく戻ってきた。
「うわー!?」
「一本釣りぃ!! ようやく役に立ったーーー!!!」
なんと、ファイターに戻ったむらびとが、釣り針を引っ掛けていたのだ。勢いよく引っ張り上げられたおかげで空中へ戻ってきたのだ。
「き……みっ……!!」
「……!」
未だプレシアの首が緩み切っていないために、可動域の少ない腕をギリギリまで伸ばして、こどもリンクは
「「こどもリンクー!!」」
ゴムジャンプで飛び出したポポを踏み台にしてこどもリンクは勢いよくジャンプした。
「はあああああああ!!」
そして、その、身体に合わぬ
──ガゥッ……ギャッ……!?
落ちて落ちて、湖に大きく水柱が上がった。
「カメ! 炎! ネス、回復!」
「誰がカメだキサマ!」
「そうだそうだ!」
カメ親子がテリーにぶつくさ言いながらも、適度に火を吐く。焚き火でも作れればよかったが、周りの木々は戦いの中で水分を吸っていて期待できなかった。
「あっ、テリー、できないんだ、今はもうファイターで回復のPSIが制限されてて……」
「アウッ……!?」
「そこまで急を要していない、大丈夫だネス」
なんとか上がってきた4人は、疲労は見えるが、確かに切羽詰まるほどではなさそうだ。
戦闘がひと段落して、大きく息を吐いたこどもリンク。そこで彼は思い出した。その手に握る聖剣。
「あ、リンク……だっけ。これ返す、ありがとう」
「…………」
礼を言って返した聖剣を何かを考えるように見つめるリンク。少し考えたのち、いや、と首を振った。
「少し貸そう。ぜひ役立ててくれ」
「は? なんで……」
「きっと俺よりも使いこなせる」
「…………」
軽く聖剣を振ってみる。
今の子供の姿では、明らかに大きく、重いはずのマスターソード。なのに、本当にしっくりくる。これ以上ないほどしっくりくる。
もう、己が勇者であることはないだろうに、未だにその魂を時の勇者と認めていた。
「声が、聞こえた気がした。無機質のようでも強い意志があった。
「あんたはどうすんのさ」
「もう一本あるから大丈夫さ」
マスターソードには及ばないだろうが、かなり業物の剣。下手なボディに遅れはとらないだろう。
「ふん、何をそんな小僧に……」
「とりあえず、君達はジョーカーだったか? 彼らを追っていくべきだ。ボディはこちらで引き受ける」
「はい、わかりました……みなさん参りましょう」
置いていくことに拒否感を感じる子供達を引っ張るのはロゼッタだった。彼女を先頭に進む最後尾、こどもリンク。
「…………」
同じ緑衣を身に纏う青年、光の勇者リンク。
彼の姿からなかなか目を離せなかった。
彼を見ていると湧き上がる謎の感情。
──その感情を彼自身が理解するのは、遥か未来だ。
──技を伝授せし師として。
◯タイトル
説明不要のアクションアドベンチャー。
そういえば、この前発売決定されたゼルダ主人公の新作、知恵のかりもの。あれで初めてリンクはゼルダじゃないと知った方がいたんですね。
知らないからややこしいのかもしれないですけど、知ってる身とすればびっくり。
ま、サムスはメトロイドじゃないし。
ピットはパルテナじゃないし。
◯自然軍
自然王ナチュレ率いる軍勢。
木や土など自然由来の戦士が多く、ナチュレてずから奇跡で生み出す戦士も。
ちなみに幹部はエレカ、ロッカ、アロン、ブラピ(ED後)の4人が登場してますが、おそらくもっといるものかと。
これで数の利も帳消しです。ダブルからしたらたまったもんじゃない。
◯クマトラ、ボニー、ダスター
MOTHER3のリュカ以外のパーティメンバー。
男まさりなお姫様、魔法使いタイプだが、案外硬めのクマトラ。
はやいけど食べもの系アイテムを使わせるとたまに食べられちゃうリュカの家の飼い犬ボニー。
前衛タイプだが、意外と技巧派でもあるダスター。
私、ダスターがアシストフィギュアになると思ってたんですよ。
2.3のパーティメンバーでハブられるとは思ってなかったんです。
カベホチで梯子をつくるとか。うってつけの新システム(梯子に登りながら攻撃)もありましたし。
◯プレシア
あっさり退場。
個人的に前周で彼の戦いは終わっていると認識してます。
◯マスターソード
しばらくこどもリンクが使います。
戻ってきた聖剣。
サイズが合わないのですが、なぜか使いこなせます。