大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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131話 ラストリゾート

 

「隙……だって?」

 

『そう、隙。ぶっちゃけボディ無くした僕の身体能力はそこらの子供モブぐらいだし。隙もなしに当てられるとは思わないんだよね』

 

「ルフレさん……?」

 

 

ルフレの頭の中に届く声。

思わず口にした返答に、側のルキナは不思議そうに彼の顔を見る。彼にしか、届かせていないこの声は誰なのだ。

 

 

『ま……君は君らしい活躍をしてくれればいいや。そもそも、彼らは僕たちの英雄。あの程度の相手にわざわざ君の頭が必要だとも思わないけどさ。僕が仕立てておいてアレだけど』

 

「待て……! お前は」

 

「ルフレさん!」

 

「ッ!!」

 

 

はどうだんの接近と、ルキナの声にハッと我に返ったルフレは即座に彼女を連れてエルウィンド。機動力がないなりの緊急回避である。

 

 

「集中してろよ!」

 

「ごめん!」

 

 

リフレクターの乱立に、ケンは力技で打ち砕いていく。ダブルとの距離を縮めながら、辺りを見渡す。しかし、混戦の中、ファイターの誰でもない緑のローブの姿は見受けられない。

 

 

「(キクちゃんの姿はなし……どこに隠してるんだ……)……!」

 

 

目の前に立ち塞がった者に動揺したのはほんの一瞬。握りしめた拳が敵を穿つ時には、一切の迷いがなかった。

その、ダブルに捕らわれた敵の少女。それは最後に見た彼女と同じ姿、色をしていながらも中身の伴わないがらんどうだと気づいたからだ。

 

 

「うわっ、またボディだよ。芸がないし……」

 

「それにこの霧、プレシアが使っていたものだ」

 

「天の光……パルテナの奇跡だね」

 

 

気づかぬうちに敵に超微弱なダメージを与えるHuron・Michigan《ヒューロン・ミシガン》と天の光のコンボ。

双方を知っている、むらびと、ジョーカー、ロックマン他、プレシアとの会敵した者達は即座に理解した。

 

ルネがやり直す前にも使用していたコンボに、ボディ達の数が加わり、隙のない構成に思えるが、実際には。

 

 

「こんなもの単なるパクリではないか!!」

 

『昇華と言え。いずれ子は父を超えるものなのだろう? それと変わらん』

 

「そんな訳ないだろー!! ボクがお父さんを超える時には!! 絶対!!」

 

 

それ以降の言葉は出なかった。

だが、言いたいことはわかった。

 

 

「その時には、笑って頭を撫でるんだよ! 上辺だけ真似したテメェにはわかんねェよ!!」

 

 

クッパJr.のクラウンから放たれた砲弾が、マリオのボディをぶっ飛ばしたのち、テリーがそれをダブルの元へ蹴り飛ばす。

 

 

「貴方は全てが表面だけ……その姿になっても、私の前に現れた時と何も変わっていない!」

 

「どれだけ取り繕おうと、別のものに成り代わろうと、他人の気持ちをなぞっただけのお前の言葉に中身はない!」

 

『茶番が……!!』

 

 

ダブルの背後から幻影の如く半透明の姿。

巨大な長い角と6枚の翼。

邪竜ギムレー。敵の背後に存在して、戦う姿はかつての最終決戦を思い出させた。

だが、あの時と同じようなプレッシャーはあっても、あの時ほどの恐怖はない。

やはり、ハリボテだった。

 

封剣ファルシオンにて、幻の頭部を上空へ向けさせる。邪竜のブレスが上へと打ち上がった。

同じように投げた封剣を、受け取ったルキナが2対のファルシオンを手にXの字に邪竜の首を斬りつけた。

 

 

「ホンットに焼き増しばっかなんかよ! こりゃ、知らねえのもどっかの誰かの力なんだろうな!」

 

 

リフレクターを貼ったガンナが割り込んで、ダブルへブレスを跳ね返す。

 

 

『今なら記憶すら簡単に読めるぞ、己の子ではないだろう、偽りの絆が……人のことを言えるのか!』

 

「しゃしゃり出るなよ他人がよ! 側から聞いてるだけで腹立つんだよ、真贋の問題じゃねえだろうがアァ!!」

 

 

クッパの腹部から、クッパ自身を蹴り飛ばす。

甲羅の棘がダブルへ向けて飛んでいく。

 

 

「ワー!?」

 

「ブロウ、キサマァー!!!」

 

 

と言いつつ、丸まることで最大限に飛び道具としての火力を上げる辺り、ファイターとしての場数が違う。

 

 

「ブロウ、もしかしてイライライング(してる)?」

 

 

自分のペースを崩さずにソードが周囲のボディを切り捨てている中、スッと頬を撫でる指の感触があった。

 

 

「ベヨネッタ?」

 

「ちょっとお灸を据えるだけのつもりだったのだけどね、彼を見ていたらね」

 

ビット(ちょっと)……?」

 

「手を貸してもらえるかしら、いじめてみたくなったのよ」

 

「ウィッス」

 

 

拒否権はなし。

 

 

「パックンパックン、ヘルプミー(手伝って)

 

「面倒クセェ!」

 

 

頼まれる方も方でそこそこ強引気味である。

乱暴に茎部分を持ち、ガンナ、ルキナ、クロムの3人とダブルの間に割り込み、片方の腕を剣にて抑え込む。

更にもう片方の腕もパックンフラワーが頭部を振り回していなす。

 

 

「パックン、ポイズンミストッ!」

 

「ぽけもんジャネエヨ!!」

 

 

間近で毒の霧を浴びたダブルは手早く離れようとするが、巻きついたつるのムチがそれを許さない。フシギソウが掴んだままなのだ。

 

 

「プリィ〜!!」

 

「ギャー!! ペッタンコォ!?」

 

 

更に巨大化したプリンがフシギソウごとダブルを押し潰す。巻き込まれかけたソードが急いで退避する中、プリンが自発的に戦いに参加し、そのうえに毒に身を埋めるような戦法を選ぶなんて。

 

 

「プリン……」

 

 

マルスは、彼女の覚悟を感じていた。

 

自分が傷つくこと、

敵を傷つけること、

仲間が傷つくこと。

 

妥協したのだ。

敵を傷つけることと自分が傷つくことを諦めて、できる限り仲間が傷つかないように。

 

大乱闘に必要な妥協ではないだろうけど。

それでも。

 

 

──『それでも、今は必要だった。』

 

『この声……! ルネェエ!!』

 

──『だって、そんな覚悟、結局君にはわからないものだろう?』

 

 

このステージとも大乱闘の世界とも言えないこの場所。

そこにいた全員に、その声が届いていた。

 

 

──『満足かい? 僕達の英雄を、その宿敵を、その力だけを我が物顔で振るって。まるで英雄志願の子供のようだ』

 

「ルネ、だと?」

 

──『軽く数年ぶりにすら感じるよ。アイクやシュルク、ソニックとは戦ったことがあるもんね』

 

 

警戒。

当たり前だ、ルネとの出会いは敵だったのだ。

声の主と思わしき者が、プリンに潰されたダブルの前に降り立つ。アイク達3人には見覚えのない、赤い外ハネヘアの少年の姿。

 

 

「彼らに憧れるのは勝手だ。尊敬するのもおかしくはない。ただ、同一化はしてもいいけど成り代わるなんておこがましいにも程がある」

 

『君はなんなんだ……!』

 

 

 

 

 

「君に上手くいって欲しくない、彼らに今までもこれからも劇的な冒険を続けて欲しい……そんな願いを持つ、ただの1ファンであり、傍観者だよ」

 

 

 

 

 

白刃の刀を上空へ向けて振るい、闇のような空に白い裂け目が出現した。そこから落ちてくる1人の少女。

 

 

「わっ……!」

 

「キクちゃん!」

 

 

ケンが両手にて少女を受け止める。膝の裏と背骨の辺りに腕があって。

 

 

「だ、大丈夫かい? ケガとか……」

 

「あ、いや、えっと……」

 

 

顔を真っ赤にして挙動不審となり、あちこち視線を動かす少女。

 

 

「えっと……えと……わた、私は……」

 

「ゴホン……ケーン?」

 

「まあ……!」

 

 

背後にシーク。

わざとらしい咳払いに、この短時間でキクの感情に気づかれた。憧れがあるのか、ゼルダの目は輝いてる。

 

 

「あれはいいとして。相応の強さもないくせに犠牲がなければ勝てないなんて、面白くないだろう?」

 

「もしかして、その剣はナカツナが使ってた……」

 

()()()()()()()。曖昧な存在を明瞭にする刃。何があっても決して刃毀れ1つしない名刀。一度は実体を失った僕が、切り離された時間に残っていた身体に宿ることができたのはコレのお陰」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、お前が全てと存在を共有した者ではなく、悪魔で誰でもない単なるドッペルゲンガーとして消滅することになるのも、コレの所為だ」

 

 

頭上で振り回し、両手で柄を握ったヴォーパルの刃が白く、純粋に光り輝いた。

 





◯タイトル
キングダムハーツシリーズのキーブレード。
不思議の国のアリスをモチーフとしたキーブレードであり、トランプやスートのモチーフが散りばめられている。
他キャラがメインで使っていたりもしないのだが、一番くじでキーホルダーになっていたり一般的な知名度は高め。

ちなみに意味は「最後の切り札」。


◯キク
彼女の役目はヒロインでした。
しかし、敵側である以上、少ない時間でそれっぽくしなくてはいけませんでした。片思いしてしまった設定はそこから。
彼女とダブルの力を組み合わせればこんなこともできるんじゃね? みたいなリアル思想を考えてしまった結果、マスターハンド誰に匿ってもらっているか問題がややこしくなってしまった感があります。


◯ルネ
隙をつくれと言ったため、自重せずいいタイミングで登場。
本当に作者の代理という側面を持たせたせいで、食えないキャラになりました。彼の行動は、ラスボスのミスリードの側面もあったのですが……どなたか引っかかった方います? いない? あ、はい。


◯作者の気まぐれコメント
吉◯家の戦争は大敗でした。
こういうことの状況を赤裸々に話しても傷口をえぐるだけなので、詳細は語りません。チクショウ
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