大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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132話 神殺しの法

 

「──全ての暗雲は晴れた。いい感じに霧も晴れたようだね。ヴォーパルの剣が君を君にした」

 

『……ッ!!』

 

 

存在を明確にする剣。

魔法やエネルギーといった実体のない攻撃を無効化し、曖昧な存在をはっきりさせる。

元々の持ち主であったナカツナの、存在を曖昧にする力の解除も可能だ。

 

その力を使った現状が今のダブルなら、それを完全とは言わずとも力の解除はできる。

 

 

「誰でもない存在から誰でもある存在に。

誰でもある存在から今の君に。()()()()()()()()()()()に……猿真似しかできない存在に……」

 

『ふざけっ……!!』

 

 

電光を走らせたアームを剣代わりに振り回すが、ルネはヴォーパルで防いだ。

その頭上から落とされる大火球。それを見もせずにヴォーパルを振り回して打ち消した。

 

 

「さて、僕はそろそろ退場だ。出しゃばり過ぎないのが、脇役の絶対条件なんだし。君もそうだよ」

 

「私……!?」

 

「そう、キクちゃん。邪魔しちゃいけないよ。せっかくのスマッシュブラザーズの戦いなんだ」

 

 

ふざけるように態々敬称をつけたルネ。

そしてその相手であるキクの元へ向かう。

ケンに降ろしてもらった彼女は、敵であるダブルを除けば、ルネと共に部外者と言える。

 

 

「……うん、もうこれ以上、足手纏いになる訳にはいかない、ね」

 

 

創造主に近い力を持っていても、絶対ではない。それだったら捕まったりしないのだ。

 

 

「私、戻るよ。その代わり……ケン、あんた、じゃなくて、あなたも後で戻ってきて。伝えたいこと、あるから」

 

「え、いや、あの」

 

「キャー!!」

 

 

よそを向きながら頬を赤らめるキク。

話を聞くだけのゼルダは有頂天である。

色々重要なことを知らない様子だが、訂正する間もなく、内に秘めたマスターハンドの力で大乱闘の世界に帰っていく。

 

 

「ど、ドウシヨ……」

 

「後で考えたら……?」

 

 

彼女は悪くない。強いて言うなら見惚れた相手が悪い。そんなケンは既に妻子持ちである。

 

シークが未来に任せるのを勧める中、ルネがいなくなり、プリンに押しつぶされたままのダブルがテレポートの類で脱出する。反撃の強風で弾かれたプリンの腹部には、ダブルの抵抗の跡として無数の切り傷があった。

 

 

『……! 腕が……!』

 

 

直接繋がっていない腕の片方が肩になかった。

見渡すと、ソード、パックンフラワーでドン引きしている視線の先に、観察するように腕を捕まえて眺めるベヨネッタの姿があった。

 

 

『お前……』

 

「ふぅ〜ん、離れ過ぎると動かせないのかしら」

 

 

ソードとの一戦やパックンフラワーの毒の霧に紛れてこっそりと捕まえていたのだ。

不快程度の感情表現をしたダブルは数瞬の間に新たな腕を生やしていた。取られた腕は飽きた様子のベヨネッタの銃によって蜂の巣に。

 

 

『じこさいせいの類か……?』

 

「あるいはイレブンが使うような治療の術…… どちらにしても、あの厄介さで回復を許すと数で勝っていてもいずれ押し負ける」

 

「ならば、回復を許さなければいいのですね……! 攻撃を増やさないと!」

 

 

ルカリオとロイが、失った腕が消えなかったことから自己を対象にした回復の類だと推理する。ならば、回復の隙を与えぬように、Wii Fit トレーナーがヘディングでボールを弾く。

 

 

『……!』

 

「……! クゥガッ!」

 

「エレキ、フィールド……? だ、そうです!」

 

「ナイス通訳! しかし、いかにも痺れそうな……ゼニガメ! ピカチュウ!」

 

「ニィガッ!!」

「ピッガァ!!」

 

 

鋭利な棘のような足を地面に突き刺し、足元に通る電流。ゲッコウガが見抜いた技をリュカが通訳する。

 

レッドの指示の元、リザードンに乗って空中から飛び出したゼニガメがダブルを中心にスプリンクラーのように水を撃つ。そして、その下からはほうでんを放つピカチュウ。水流に乗った電撃が即席の檻を作り出す。

 

 

「「ここだ!」」

 

「よし、撃て撃て!!」

 

 

アイスクライマーの2人が檻を凍らせ、フォックスのブラスターとベヨネッタのバレットアーツの連射力に優れた銃が檻ごとダブルを破壊する。

 

 

『この程度……!』

 

「キキー!」

 

『……ッ! しつこいんだよッ!!』

 

「うぃ!?」

 

 

咄嗟にアイスクライマーのボディを肉壁に呼び寄せたダブルに、ディディーコングがストーン化したカービィを蹴り飛ばした。

攻撃を絶やさないという状況に鬱陶しくなったのか自らに電撃を纏わせて、クロスサンダーで手駒であるボディごとカービィと氷の檻を蹴散らす。

 

 

そして、移動しながらに雷魔法ライトニングやサンダガン、ギガデインを乱発する。そして、その移動速度は電光石火の如くの速さ。

 

 

「クソッ、なんて速さだ!」

 

「電光のエレカのスピードでこの電撃……! このフィールドのおかげで威力が上がっているようです!」

 

 

反射板で防ぎつつ、爆炎の広範囲攻撃でダブルが突っ込むことを期待するも、速度の制御も本人並み。

自分以外の誰に攻撃が当たってもいい敵側は、簡単に広範囲に強力な攻撃ができる。

吹き飛ばされたカービィに向けてリフレクターを蹴り飛ばして電撃から守るファルコ。飛び道具の反射や吸収ができない者達は背後に隠れるかなんとか回避するしかない。

 

全員がやり過ごすことに苦戦する中、無言で最低限に避けて電撃を弾くルフレ。

そして、本当に珍しく、挑戦的な笑みを浮かべた。

 

 

「……パックマン、ガオガエン、しずえさん、ダークサムス、スティーブ、リドリー。君たちはあれを止められるか?」

 

「ああ? な〜んだ突然?」

 

「…………」

 

「ど、どうしたんですか?」「コクコク」

 

 

「君たちならできる。僕の策があれば」

 

 

ある種、鬱憤を晴らせるような爽快感すら感じられる笑みに本当に珍しいなとガオガエンは感じていた。

軍師ゆえの、一歩引いた立ち位置がそうさせるのか、自分が戦いの中で浮かべるような相手を嵌めてやるという、まけんき。それに応えない理由はなかった。

 

 

「グウアッ!」

 

「コクコク」

 

「私でお役に立てるなら勿論協力させていただきます!」

 

「…………」

 

 

そして、ピンッと手を挙げるスティーブ。

 

 

「まー、今回ばかりは乗ってやるぜ。ヘマしたらぶっ殺してやるからな〜?」

 

「お前じゃ、策を思いついても誰かと協力なんてできないだろう?」

 

 

長く時間をかけて、最後の1人との協力者とも話がついた。策の内容を軽く話し、ルフレ1人が離れていった。

 

 

 

 

 

「これで……! きゃあ!?」

 

「速過ぎて反撃も当たらねえ……!」

 

 

キノピオを自身の前方に呼んで、ダブルへ反撃しようとするピーチだったが、直接タックルしてくるダブルの速度が早過ぎたために反撃をした時にはとっくに通り過ぎている。

スネークが地雷の如く爆弾を作っても同様だ。起爆する時には遥か遠く。

 

 

「……ッ!! クソッ、この雷さえッ! なけりゃ!!」

 

 

何の障害もなければソニックなら追いつけるだろうが、めちゃくちゃに落ちる雷魔法と、それを受けながらも活動しているボディが邪魔をする。

 

それでも、今の奴に追いつけるならば自分くらいだろう。接敵も回避も最低限にひたすら足を動かすソニックと、静止しているルフレとすれ違った。

 

 

「お、おい」

 

「お前がやれることはもっと多いはずだよね。馬鹿の一つ覚えのように同じことばかり繰り返して。さっきの彼の言う通りだ。猿真似しかできないって」

 

『………………』

 

 

攻撃が止んでいる。

ダブルの姿は遥か上空に。

 

 

「自分の真似もしてるし、突っ込んでは辺りに攻撃を撒き散らすばかり。お前、そんなに頭良くないな?」

 

「どれだけ多くの武器を持っていようと、お前の頭はそれらを的確に使い分けれるほどの判断力はない。使う分だけ、毎回引き出しから取り出している……だけ」

 

「一度防がれたら、別の力に取り替えるだけ。本当に単純な奴だ。つまらないね」

 

「対策もできないほどにひとつを極めるなんて思考、ないんだろうね。手本を見せてやろうか? 剣と魔法どっちがいい?」

 

 

──お前ッ!!

 

 

ギュンと音速の如きスピード。

ルフレに向かって、腕を向けて刺突を仕掛けるダブル。しかし、それは黄色の膜に止められた。

 

 

『(なっ、何だこれは!? ……パックマンのトランポリンか!)』

 

 

にっこりとサムズアップの本人の傍で、ルフレが持った黄色の魔導書。少なからずトランポリンでスピードが落ちている。その上に攻撃のくる位置が決まっていると仮定すれば、対策は用意。

 

 

「ギガサンダー! ガオガエン!」

 

「ウガオオォ!!」

 

 

吹き飛ばされたダブルはガオガエンのラリアットの餌食に。完全にスピードが死んだ時、ダークサムスのグラップリングビームがダブルを縛りつけ、宙にて拘束する。

 

 

「オラオラッ!!」

 

『……ッ!!』

 

 

人で言えば心臓の箇所と地面を縫い付けるようにリドリーは尻尾を突き刺した。

その周囲を囲うように、スティーブがブロックを積んでいく。そして、TNTを3つほど用意した。

 

 

「リドリーさん、離れてっ! やああ!」

 

 

空いていた天井からリドリーが脱出すると、しずえがしまっていたギガデインを落とした。

衝撃の逃れられない包囲網、そして火力を追加する爆薬。

 

黒煙の中では、横に倒れ、目にあたるバイザーのような箇所にヒビが入っていた。

 

 

「まだだ!! 回復の隙を与えるな! 攻撃を続けるんだ……!! 奴が倒れるまで!!」

 

 

体に傷をつくりながらも、ルフレは戦いをやめない。思考を止めない。

 

 

軍師がそれを終えるのは、勝敗が決した時のみなのだから。

 





◯タイトル
FE覚醒の終盤も終盤の25章タイトル。
復活したギムレー討伐のため、力を得て向かうものの、それでも完全に滅することはできない。だがルフレの正体を考えれば完全に滅することはできるかもしれない……という最後の選択肢に直結する話をする章。


◯ヴォーパルの剣
ダブルに使用することで、全ての存在との繋がりを断ち、単なるドッペルゲンガーという真似しかできない存在となりました。
戦闘力としては微塵も変わっておりませんが、前周のような繋がりのせいでファイター以外全員と心中することにはなりません。

前周でもチハクが捨てさえしなければ、同じように戦える可能性はあったのです。


◯煽ルフレ
ダブルですが、たくさんの武器や力を抱えていても使いこなしていないのはルフレの指摘通りです。ま、ヤケになるのは図星だからって聞くぜ?(ブラピ風)まあそういうことです。
パッと切り替えてパッと対処できればもっと圧倒できました。それぐらいにはチート級なのに持て余しているのがダブルなのです。

え? 作者の力量が足りないから? アハハハハハ。
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