大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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Super Smash Brothers Ultimate
137話 これでホントにサヨナラ


 

全ては終わった。

囲碁の付喪神、片輪車の妖怪、時間軸の観測者。

彼らはもう敵対する意思がなかった。

 

正体不明の観測者もスマッシュブラザーズの預かり知らぬ間に討たれていた。

 

そして、創造主が完全復活した中で、唯一敵意を持ちながらに、精神は健在のネッシー単体で好きにはさせないだろう。

 

 

つまり、キーラとダーズの遺物であるボディを仮初の器とし、それを永遠のものとしようとした彼らの野望は完全に阻止されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、物語の幕は完全に閉じた。ま、今後この世界がどうなっていくかは、まあ想像におまかせしますってとこかな」

 

 

崖の先に座って足をぶらぶらさせていた異質な赤毛の少年、ルネ。

彼はそう、異質過ぎた。ある意味、あのドッペルゲンガーよりも。

 

 

「……おっと。あのね、僕、スマッシュブラザーズに誘われたって言ったら、驚く?」

 

「え、えええ!?」

 

 

後ろからルネを見つけて歩いてきていたのはシュルクだった。まるで()()()()()かのように彼はシュルクを認知することなく、彼に話しかけたのだ。

 

 

「マスターハンドがってこと?」

 

「亜空軍のことを知らない君にはその反応もおかしくないか。紆余曲折あったとはいえ、ワリオやクッパをそのままファイターと認めているのは、最終的にタブーの討伐に手を貸したという理由が大きいんだよ」

 

「それで、同じように君も?」

 

「断ったに決まってる。Mii連中でもないのに僕がファイターとかヤダ、無理、解釈違い」

 

「は、はあ……」

 

 

そこまで嫌なのか、と現ファイターのシュルクは少しだけ傷ついた。

 

 

「別に肉体を取り戻したかった訳じゃない。だからこのことに恩義を感じる理由はないし、観測されるより観測していたい派なの」

 

「そう、なんだ……あのさ。君が裏で色々していたのはわかったんだけど、どうしてそうしていたのか、それを知りたくて君を探していたんだけど」

 

「因果だからじゃない? 適当だけど」

 

「適当なの!?」

 

「でもまあ、適当じゃないことをひとつだけ」

 

「えっ!?」

 

 

ふっと、瞬きの刹那、彼の姿は完全に消えていた。前触れもなく、最初からいなかったかのように。

唖然としたシュルクだけがそこに残されていた。

 

そして、風が、最後の彼の言葉を運んでくる。

 

 

── 右腕、無くさないように気をつけてね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傷も癒えて、精神的な疲れもようやく落ち着いてきたところ、ルフレは待っていた。

揃えられた石造りの砦、塀に腕を乗せて待ち合わせをしていた。

 

 

「ルフレ!」

 

「マルス」

 

 

遅れてきたのがマルス。そしてその後ろにいるのが、話に聞いていたその人だろうと確信した。

 

理屈じゃない。自分とカムイにどことなく似ているようで、他人に思えない何かがある。

立場も何もかもが違うのに、その彼は近い何かを持っていた。

 

 

「……確かに。マルス様の言うほどはある。貴方が似ていると言った理由、わかりました。説明できない所で自分に近しい何かを感じる」

 

 

影の英雄、クリス。

そもそも似ているから、ルフレと会ってみないかというのが、彼を大乱闘の世界に連れてきた理由なのだ。

 

 

「うん、確かにカムイと同じ印象を君に感じるよ。はじめまして、僕はルフレ。イーリス王国の軍師だ」

 

「アリティアの宮廷騎士クリス。マルス様の近衛を務めている。ところでカムイというのが……」

 

「ああ……ごめん、もう1人くる予定だったんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前にドン、と大きな音を立てて風呂敷で包まれた荷物が置かれた。両手で抱える程度の大きな荷物だ。

 

そのなんてことのない小屋の中で、チゲンとチハク、そしてカムイが向かい会っていた。

 

 

「本当にいいのかい? 僕にはよくわからないけど、これは君達自身と言っていいものなんだろう?」

 

「うん、これは僕達の気持ちみたいなものだから」

 

 

ブラックピットのボディのままで、チゲンは少し控えめに笑った。

 

 

「僕達の分身、大切に使ってくれると嬉しい」

 

 

風呂敷の中の荷物は彼らそのもの。

2人の精神を宿した碁盤と碁石なのだ。

それは自分自身を他者に預けるようなもの。

 

 

「うん、絶対に壊したりしないよ」

 

「壊したら2人まとめて御陀仏……否、肉体がある以上確実なことは言えぬか」

 

「2人はこれからどうするの?」

 

「本体も、この器も失うためにこの世界からは離れられない」

 

「マスターハンドがね、変なことしなければこの世界にいていいって。大乱闘の時は応援するからー!」

 

 

のびのびとにこやかに笑うチゲンに、薄く、だがしっかりと笑ったチハク。()()の光景がここにあった。

 

 

「……どうやら招かれざる他人が来た。出るぞ愚兄」

 

「え、ちょっと待ってよ、うえええええっ!?」

 

「ちょっと、」

 

 

突然何かを感じ取ったかのようにチゲンの首根っこを掴み、でていく2人。

そしてそこから時間も経たないうちに、同じ姿の別人が中に飛び込んできた。

 

 

「オイ、カムイィ……!! あのパクリどもはどこにいるゥ……!!」

 

「えっ、ブラピ?」

 

「パクリって、ブラピが言えることじゃないでしょ……」

 

「チッ、逃げやがった……追うぞ!!」

 

「ジャーネー」

 

 

そして先に出て行った彼ら兄弟と同じように、ブラックピットに首根っこを掴まれて引っ張られていくピットだった。

 

 

「……なんだったんだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、もう1人。

 

 

「……どう、かな」

 

「あー、気持ちは嬉しい。けど悪いな。妻と子を裏切るつもりはないんだ」

 

「……そう」

 

 

生まれて初めて恋をして、生まれて初めて失恋した。

 

思ってたより、呆気なく終わった。

 

 

悔しくて、悲しくて、落ち込んで、

でもはじめて好いた人が、今持っている縁を捨ててまで靡く人じゃなくてよかった。

 

 

「ありがとう。あんたが私のはじめての相手でよかった」

 

「エッ!?」

 

 

ガタガタッ!!

 

 

「はじめてって……ま、まさか……そういう……! キャー!!

 

「おーい、ゼルダー? 戻っておいでー」

 

「付き合わされた……」

 

 

何を想像したのかそばの木に隠れていたゼルダが飛び出してきた。シークとリュウは呆れ顔である。

人に告白の場面を見られるという赤面不可避の光景だが、キクは気にしなかった。というか気にしてなかった。見られることは彼女にとって恥じることではなかった。

 

 

「私は、この世界で生きる。生きていく。チハクとチゲンが掛け合ってくれて、首の皮が繋がってるのよ」

 

「あー、仲間?」

 

「まあ、そんなとこかな。2人やルネと違ってほとんど攫われただけだったから……減刑の余地がなくて……」

 

「減刑って……」

「生々しいね……」

 

「つまり当分は下働き。まあ、未来のことはゆっくり考えていくわ」

 

「そうか、………………で、はじめてってなんのことだい?」

 

「はじめての恋」

 

「あ、そう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邂逅、別れ。

そして、未来。

 

 

 

 

 

オレンのみを齧りながら、レッドの顔へと見上げる。

彼の空を仰いだ姿は遥か未来を見ていた。

 

 

「なあ、ピカチュウ、オレのてもちになってみないか?」

 

「ピカ?」

 

「オレ達、きっとチャンピオンにも負けないぐらい強くなれると思うんだ。大乱闘で、今回の件で一緒に戦って、思ったんだよ」

 

 

ピカチュウは微妙な顔をして何か不安そうにしている。レッドはそれに気づいた。

 

 

「ああ、ゼニガメ達のことなら気にしないでくれ。キミのこと以外にも色々あったから」

 

「ピカッ!?」

 

 

得意げに2つのモンスターボールを見せた。

ファイターの3匹の誰でもない。

なし崩しに共に戦うことになった、ラプラスとカビゴンだった。

 

 

「懐いていたブロウやソードにも託されたんだ。だからてもちが増えたからアイツらが、とかは考えなくていい」

 

「ピカ……」

 

「なんかブロウがさ、何故か誰かから隠れてて全然話できなくて……」

 

「ピ……」

 

 

ちょっと俯いて少し考えた後、

真顔で首を傾げた。

 

 

「保留……でいいのか?」

 

「ピカチュ!」

 

「わかった、その時が来たら……」

 

 

 

 

「あの、頂点で一緒に……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな切り株に座りながら2人は旧交を温めていた。1人はヨッシー。そしてもう1人はリンクだった。だが、今ファイターである復活の英傑ではなく、黄昏を進む光の勇者だ。

 

 

「来てたなら言ってよー!!」

 

「悪かったって、それどころじゃなかったの、知ってるだろう?」

 

「そうだけどさー」

 

 

ヨッシー、拗ねていた。

亜空軍との戦いでマリオ達と合流する前は2人で戦っていたのだ。ただここに来たことも知らず、共に戦えなかったことが悔しかったのだ。

なんとか宥めている2人に黒い外装の男が近づいてきた。

 

 

「すまない、名前が同じだからややこしいが、こどもリンクに剣を貸したリンク……であっているか? 返してきてほしいと言われたのだが」

 

「ベレト、おつかいなの?」

 

「まあ、そんなようなものだ。彼は一時的に元の世界に戻っている。会いたくない人がいるらしいからと頼まれたんだ」

 

「理由が……いや、語るまい。わかった受け取ろう」

 

 

そう言ってベレトからマスターソードを受け取った。そのタイミングで背負っていた武器同士が擦れ、その存在にヨッシーが気付いた。

 

 

「ねえ、背中の武器ってなに?」

 

「ああ、これか? ある理由で貰ったものだが、どうやら自分の世界に持ち帰っていいものではないらしい。が、大乱闘には是非使ってくれと言われた」

 

「ワーオ! まさかの強化!? どうしよ……」

 

「覚悟してほしい」

 

「アワアワアワアワ……」

 

「ふっ、いいな。俺も久々に大乱闘に参戦してみたいな」

 

「リンクに言って、たまに入れ替わってもらったらどうだ?」

 

「流石にそれは……」

 

「あっ! それいいかもね!」

 

「よくはないだろう……」

 

 

試しにと押し切られたリンクが戦場に立った結果、マスターハンド本人にバレてしこたまに怒られた模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォックスそこのリストの部品、探してきてくれるー?」

 

「おう、このリストだろー?」

 

 

不完全だったグレートフォックスの修理に、スターフォックス全員で取り掛かっている様子をソラとファルコは見ていた。

 

 

「ファルコは手伝わなくていいのか?」

 

「ムキになってどこかぶっ壊すって思われてんだよ、クッソアイツら……!」

 

「あー、確かに……」

 

「納得してんじゃねェよ……!!」

 

 

モバイルポータルを手で弄りながら、視線を逸らしたソラ。ファルコがどんな顔をしているのか想像するのが怖い。

 

 

「オレのことよりおまえのことだろ。あのデッカい剣使った時に隣にいた奴のとこに帰りたいんだろ?」

 

「あー……」

 

 

言いたいことを納得したように言葉を選ぶソラの顔に陰りはなかった。

 

 

「大丈夫だよ。どこに居ても、直接会えなくても。オレ達はつながってる。どんな世界にだって同じ空が広がってるんだ」

 

「そうかよ……」

 

「諦めたりしない。それを忘れなければ絶対にまた会えるんだから」

 

「…………」

 

「ファルコー! マスターハンドに頭下げに行ってくれないか? 用意してほしい部品があるんだー!」

 

「ふざけんな、オレに何させようとしてんだフォックスゥ!」

 

 

怒りのままに拳を握り、殴りかかっていくファルコは、1人ソラを置いていく。

懐から取り出したのは、星を形取ったアクセサリーだった。胸に近づけてぎゅっと握りしめた。

 

 

「つながる心が……オレたちの力だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大戦場。

いつも通りの大乱闘がこの世界に戻ってきたのだ。

 

 

ケンの竜巻旋風脚を竜化したカムイが受け止める。彼のカウンターを掻い潜り、ヒト状態に戻ったインクリングのローラーが踏み潰そうとしていた。

 

彼女を吸い込んだカービィがあたりをインクで染め、空中からソニックレイヴで襲いかかるソラ。2人をまとめてトロンで薙ぎ倒すルフレ。

 

そして空中のスマッシュボールに気付いたのはマリオとジョーカーだった。

 

 

「いただいていくぞ!」

「それはどうかな!!」

 

 

跳び上がった2人に遅れて、他の6人もとびだしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを満足そうに眺める二柱の神々。

 

 

『今回ばかりはどうかと思ったぞ……』

 

『そうかァ? キーラやらダーズに比べりゃスッカスカの敵だったけどな』

 

『どちらも変わらんよ。私の選んだスマッシュブラザーズならばな。大乱闘は永遠だ。この世界も永遠なのだ!!』

 

『あーはいはい。大袈裟な自己陶酔だな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これでホントにサヨナラってね。

まさかダブルとかナカツナも救えとか言わないよね? 言ったとしても聞かないけどさ。

 

 

 

………

 

でも、これは言ってなかったかな。

どうして物語を改変させてまで、僕が君達の元へ物語を届かせたのか。

 

 

 

 

これは数あるお話の一つだ。

物語はそれこそ、星の数存在する。これはその一つに過ぎない。

それこそ自分以外に告げてもいない物語だってある。

 

いずれ君達も僕もこの物語を忘れてしまうだろう……

溢れるその数にとって、この一つはひとつまみにすらならないのだから。

 

 

 

でも、それは仕方ない。

過去に見た思い出深い物語には敵わないだろうし、未来でより良い物語に負けてしまうかもしれない。

それはどうしようもない。君達にその場で重力に逆らえっていうぐらい無茶振りだ。

 

 

それでも、付き合ってくれた決して短くもない間、楽しんでくれていたならそれでいい。

きっと多くの物語は、一人に一生読まれ続けることを想定して作られてないし、僕もそこまでの熱意を持って変えてない。

 

もしかしたら、僕が物語に仕立て上げるところまで織り込み済みだったから、手をつけていない世界は不完全だったのかもしれないね。

 

 

 

 

それじゃあ僕もそろそろ単なる傍観者に戻るよ。

存在を明確にできるからやろうと思えば他の物語にも干渉できるけど…… 多分もうやらない。

 

 

だから僕の言葉はもう君達に届かなくなる。

でも悲しむ必要はない。気づかなかっただけで今までもずっと一緒にいたんだよ?

 

つまり、未来でも何も変わらない。気づかないだけでずっと君達と共に物語を見ている。

 

 

でももし、物語を見て感情を共有できたなら…

その時は一緒に語ろう?

 

 

 

 

同じ物語を見て、

 

 

違うことを感じて、

 

 

互いのことを認め合って、

 

 

でも同じことを感じたら共感して、

 

 

永遠にそうしていよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

盟友……

世界は不思議と魅力に満ちているのだから!

 





◯タイトル
UndertaleのPルートスタッフロール……もといクラウドファンディングにて寄付された方々の名前を使用した避けゲーの時の曲である。
エンディングで遊べるゲームは神ゲー。
ひたすら余韻に浸るのもいいんですけどね。


◯ 「つながる心が……オレたちの力だ」
名言をちょこっと改変して使用。
実は決戦時に言う案もありました。

KHシリーズ1番(独断)の名言。
時系列では、まずはヴェントゥス、そしてソラにドナルドと受け継がれています。


◯お知らせ
2024年9月22日 正午
あとがき投稿予定です。
つもる話はそちらにて……

→活動報告にて投稿しました。
よければそちらもどうぞ。
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