大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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15話 心に剣を持ち、誰かの楯になれ

 

ナカツナが居所を探していたカムイ達は、一斉に雷が落ちたのを見逃さなかった。あのナカツナが乱雑に放った技が逆に自分の居所を知らしめる結果になったのだ。

 

 

「って、鹵獲された武器に変なものが混じってると思ってたら!」

 

「変なもの使いで悪かったな…!」

 

「ロイ! 無事でよかった!!」

 

 

だが、すぐには向かわず、彼らは3人の武器を回収していた。それで捕らえられているのはロイだけではないことを知ったのだ。とはいえ、実際に確認したら驚くものだ。

 

 

『チッ… 見慣れないものもいるが有利はこちらにあるんだぞ!』

 

「うぐ…!」

 

 

3人の捕らえられている電撃の檻が狭くなっていく。ロイとの戦いでやったのと同じだ。

 

 

『お前たち、こいつらが焼き殺されたくなかったら…!』

 

「コウオォォ!!」

 

 

ナカツナの脅しを遮るように、ライコウが吠えた。途端に3人を苦しめていた檻は上空に塊となり霧散していく。

 

 

「よし! これで思う存分戦える!!」

 

「助かった…! 足手まといになるところだった…!」

 

「形勢逆転、だよ」

 

『貴様ら…!!』

 

 

ナカツナが電撃の扱いに長けているといっても、でんきタイプの伝説のポケモンにそうそう敵うものではない。それが、長い間形成され続けていたものなら尚更だった。

 

 

『ほどほどに相手をしなければ逃げることもできんか…!!』

 

「覚悟して… 逃しはしない!!」

 

 

3号、ロイ、ピチュー、カムイ、スネーク、シーク。

 

リリーナ、アルス、ライコウ。

 

 

凶刃をも折る牙となれ。

 

 

「ロイ! 捕まっている間、杖がどうとかって言ってなかった!!」

 

 

その真の開幕はシークが仕込み針を投げたことから始まった。ヴォーパルで防いだナカツナは3号のスプラッシュボム、スネークのロケットランチャーをバックステップで回避する。

 

 

「サイレスの杖! リリーナ、持ってる!?」

 

「ごめんなさい! 輸送隊にはあると思うんだけど…!」

 

「カムイは?」

 

「持ってないし… 持ってても僕はそれを使えるほど杖に長けてない」

 

 

望みは絶たれる。

でもそうした方が有利というだけで、必須というほどではない。

リリーナとカムイが治療と魔法での牽制に回っている。2人との共闘から、応急処置程度しか出来なかったロイの怪我も回復し、ようやく万全で動けるようになった。衛生兵が2人もいると大胆に動ける。

 

 

「ベホイミ!! 突っ走れ!」

 

「ウウウゥゥッ!!」

 

『しつこい…! 全軍戻れ! 奴らを数で押し込む!』

 

 

治癒に任せたしんそくにも、ナカツナはなんとか食らいついている。ただ余裕がない故か各地の戦士達に命令を出した。時間をかける度に敵の量は増加するだろう。

 

 

「敵が戻ってくる前にこの男を倒す!!」

 

「ええ! サンダー!」

 

「ピッチュ!」

 

「効いた! 弱っているのか?」

 

 

炸裂丸の糸を切り取り、踏みつけて簡易的なブースターとする。リリーナとピチュー相手に迫ってくるナカツナはサンダー、そしてでんきショックと来て明らかにスピードが弱まる。先程までは効かなかったのに。

 

 

「通さない!」

 

『カムイか!』

 

「許さない…! また透魔兵を呼びだすなんて… 亡くなった人を兵士にするために蘇らせるなんて…! おまえは絶対に倒す!!」

 

『透魔兵… ああ、やれるものならやってみたらどうだ!!』

 

 

2人の間にカムイが割って入る。

押され気味だったが、彼の怒りが更なる力を発揮した。それを確認し、ナカツナの体が電気を帯びる。

 

 

「…! 引いてカムイ! これは罠だ、でまかせだ!」

 

「えっ、あうぐぅぅ…!!!」

 

 

体全体で発された電撃は武器を通じてカムイを痺れさせる。少し怯んだ隙はロイがナカツナに向けて剣を振るうことでカバーされた。

 

 

「透魔兵じゃない! 出まかせだよ、カムイの思い込みが奴らの姿を透魔兵に見せているんだ!!」

 

「なんだって…!」

 

 

衝撃の真実。

だってどこからどう見ても透魔兵じゃないか。透明で、紫の炎がオーラのように纏われて…

 

 

「…!?」

 

 

ナカツナの姿が一瞬ブレた。ような気がする。

どこかで見たような気がする姿。だが、瞬時に消えて透明になって。結局わからない。

ヴォーパルの先がシークの服を掠めて穴を開ける。アルスが近づき、鋭い突き攻撃を繰り出そうとするものの、ナカツナを守るように落ちた雷でシークもろともダメージを受けて後ろに引く。空いた前衛にライコウとピチューが入る。

 

 

「見え方が違うんだ! サイレスの杖があれば… 奴の魔法を封じることができれば…」

 

「魔法を封じる…?」

 

 

ロイのところまで引いた、アルスの耳が独り言のような願望を受け取った。

 

 

「あいつ… ナカツナの魔法を封じればいいんだな」

 

「…! できるのかい!?」

 

「隙をつくってほしい。」

 

「わかった!」

 

 

そうして、今まで一歩引いたところにいたロイが前線におどりでる。カムイも少し遅れて前に出た。

 

 

『くっ…!』

 

 

前衛に3号、ロイ、カムイ、ピチュー、ライコウ。中衛にシーク、スネーク。後衛にリリーナとアルス。

 

数では圧倒的に負けているというのに、呼び戻した兵は来ない。拠点を滅ぼせという命令をだしたのだから、相当深くまで攻め込んでいて遠いのだろう。撤退、が頭にチラつき始めた。

だが、負けられない。

 

 

─蹄の音。背に感じる確かな重量。

 

─刀と刀の交わる金属音。

 

 

『敵前で策を話すやつがいるか!! 秋雨乃燕(あきさめのつばめ)!!』

 

「あぐぅ…!」

 

「ピチュウ!?」

 

 

足払い的に振り払った刀に、電撃がついてくる。確実に足を奪う技。避けられたのはライコウだけだ。他の人は避けきれず、転んでしまう。特にピチューは図体の問題で全身にまとめてくらった。

 

 

『まずは1匹!!』

 

「ピチュー! ぐう…!」

 

 

近くにいて一番ダメージの大きい敵、ピチューに狙いを定める。カバーへ回ろうとするが、転んだ状態の上にナカツナが発光して目が眩む。電撃の応用なのは理解したが、それは遅い。まっすぐに進んだ刃先がピチューに迫る。

 

 

小夜怪光(さよかいこう)。これで… チッ…』

 

「言っちゃったからね、必ず守るって」

 

「ピチュ!!」

 

 

貫いたかと思ったのは、ヒーローブラスターだった。それだけでなく、3号の右腕を沿うように浅くない切り傷が入ったが… ピチューに攻撃は当たらなかった。

3号は転んだ状態からイカ状態になり、移動してピチューを庇ったのだ。

 

 

『また、人のためってやつか? つまらないんだよ!!』

 

「可哀想に」

 

 

ピクッと、ナカツナの眉毛が動いた、気がした。そんな空気の変化があった。

 

 

「守りたい人、守りたいと思う人。自分しかいなかったんだね」

 

「─可哀想に」

 

 

 

狗馬之心(くばのこころ)ぉ!!

 

 

デタラメに、落とす雷。しかし、冷静さを失い怒りに任せた攻撃はヒーローブラスターの攻撃で怯んだことで中断させられた。

ナカツナは損傷の激しいヒーローブラスターが崩れ壊れていくのを視界に入れてしまった。

こんな戦う力も持たないような奴に、たった今使い物にならなくなった塵に、追い込まれただと?

 

 

「ピチュー、行くよ!!」

 

『…ッ!?』

 

 

3号の頭を踏み台に、ピチューは高く跳び上がる。ナカツナは彼に、以前と比べ物にならないほどの電撃が集まっているのにようやく気づいた。伝説のポケモンたるライコウに乗ってやってきて、今も近くでライコウの電撃と共に戦っていたのだ。いつのまにかたくわえていたのか。

 

ピチューとてインクリングと同じく悩んでいた。戦う力はあるのに効かなかった。ロイを呼びに行かず共に戦っていれば撃退できたかもしれない。でも彼も学んだのだ。守る力を。

 

 

(スーパー)ライジングサンダーッ!!!!」

 

 

眩く、雲を突き抜け、時空すらも突き破るほどのらいげき。それは確かにナカツナを穿った。カランと、ヴォーパルを落とし、崩れ落ちかける体を無理やり支えた。

 

 

「逃がさない…!」

 

「止まれ…!」

 

『ぐぅ… 離せ…!』

 

 

その体を炸裂丸の糸で縛り、竜化した両手でガッチリと掴み上げる。

 

 

「できた! 隙!」

 

『…!!』

 

 

アルスが何かをしてくる。先程の作戦の締めにかかっているのだ。剣を失ったナカツナは電流でカムイの手を離そうとする。だが、迫真に迫ったカムイの表情は、糸を通じて電流を受けるだろうシークは、絶対に離さないと覚悟を決めていた。

 

 

『(なんなんだこいつらは…!? どうしてここまで自分の身を犠牲にできる…!? もはや狂気の沙汰だ…!!)』

 

「マホトーン!」

 

 

その思考は止められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各地にいた兵士の姿が揺れていく。

人々の眼にはありのままの姿が映る。

 

あるものは黄色いヘルメットを被った姿へ。

あるものは緑の帽子を被った男性剣士へ。

あるものは赤色の球体の生物へ。

あるものは帽子を被った黄色の小動物へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり。君たちのような存在と僕たちは戦ったことがあったんだ。」

 

 

限界だったカムイの手を力づくで振り払った。座り込むしかなくなったカムイ。顔を上げてその目を見開いた。

 

 

「魔法かどうかというのは… 正直賭けだった。君のふと漏らした言葉にかけてみたんだ。」

 

 

まるで、時が止まったかのような。

 

先程までは必死に戦っていたのに、この静寂はそうとしか考えられなかった。

 

 

「君はスピリットと同じ。そうだろう、ナカツナ?」

 

「…くそッ…!」

 

「なっ…!!」

 

 

遂に見えた顔、姿、形。

橙色の服を着た、ファルコ・ランバルディそのものだった。

 





○タイトル
テイルズオブイノセンスの登場キャラクター、スパーダ・ベルフォルマがよく言ってる、ベルフォルマ家士道訓五箇条の一つ。以下全文。
1.心に剣を持ち、誰かの楯になれ
2.右手に規律を、左手に誇りを
3.己を殺し、永久の礎にせよ
4.正しき道を正しく歩め
5.個よりも全に仕えよ


○超ライジングサンダー
元ネタは漫画ポケットモンスタースペシャルでゴールドのピチュが使った技……と思いきや、ポケモンカードのR団のライコウのライジングサンダーが更なる元ネタ。後に究極の技、ボルテッカーであることが判明。


○マホトーン
ドラゴンクエストシリーズで登場。数ターン、呪文を封じる呪文。効かない場合もあります。封印耐性をつけよ。


○ナカツナと敵勢の正体
結構ヒントはばら撒いていました。タグの半オリキャラはこれが由来。姿見た目は同じですからね。キーラダーズのボディが残っていたようです。


○唐突ですが
次回、一章最終話です。


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