大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
顔についていたバイザーはない。発する気迫も本人のものとは違う。ただ顔はファルコそのものだった。
「スピリットと同じ…!? ファルコのボディに奴の精神が乗り移っているということ!? だって、キーラもダーズも既に倒して…!」
「そうか…! キーラとダーズを倒した時、ボディがどうなったのか見てない!!」
その理論はおかしいところがある。
もうキーラとダーズはいない。シークの驚きも理解できる。
だが、スネークは可能性の話をとった。二体を倒した時、渦のように元の世界に戻っていくスピリットは、当時の全員で見た。化身の複製もだ。ただボディがどうなったのかは見ていなかった。複製と同じように消えたものだと思っていたが、ここにいる以上消えてはいなかったということだ。
「よく… 気づいたね」
「僕が単独でナカツナと戦った時、跳躍しすぎて僕の防御が間に合った時があった。それは肉体をコントロールできなかったからじゃないかなと思ってね。最近同じような敵と戦ったのも大きかった」
「…ッ、貴様…!」
憤りを高めていくナカツナに、ロイは涼しげに続けた。
「姿が見えなかったのも君の魔法だ。でも別のものに見せる魔法じゃない。存在を曖昧にさせる魔法だ。そうでなければ、僕やシーク、スネークが別々のものを見たりしない。」
「…! そうか! 僕が透魔兵だと思ったから透魔兵に見えていたのか…!」
「隠れていた2人を言い当てたのも、その力の応用だよね」
そこにはロイの世界の常識から外れた戦士達がいたのだ。ロイの世界では素手で戦うような存在はいなかったから。そんな正体不明な存在が、一般人には見えない兵の姿に見せていたのだろう。
それが伝わって、ロイには当初、透明な戦士としてしか見えていなかった。
それを聞いたカムイは透魔兵に見えた。
それを聞かなかったシークとスネークは自分が戦っていた敵達の姿に見えていた。
ロイがインクリングを助けにきた時、彼女の被害状況から、完封されたと感じたロイは、ナカツナに報いた一矢の存在が見えなかった。
わからないからこそ、人は恐怖する。
恐怖するから、怖気づく。
それは戦意の喪失に繋がる。
ロイが確証を持った後からは、本当の姿にしか見えていなかった。
「本当に透魔兵だったら… 兵種はカムイの世界のものか、僕の世界のものに依存するさ。どちらでもなかったのは、兵士の本当の姿が僕たちスマッシュブラザーズを模したボディでしかなかったから。」
「…ッ!!」
ギリィと歯軋りを深くする。些細な音のはずなのにファイター達にも聞こえるほどのものだった。眉間に皺を寄せたまま、速攻で駆け出しヴォーパルを拾う。よく見れば腰の左側に鞘がぶら下がっているではないか。
「待て!」
インクリングが、一足遅くそれを止めようと動いたが、ナカツナは後ろへ跳ぶ。その先には、客席の上には、不思議なものがあった。何もないところがひび割れ、穴が空き、森のようなものが見えていた。
「あれはもしかして… 大乱闘の世界へのゲート!?」
「あれも隠されていたのか…」
「…ッ、逃がさん!」
その正体を察知する。奴らはここからこの世界に来たのだ。だから、この世界に迷い込んだ人々はこの周辺に降り立ったのだ。あれもナカツナの魔法で視認することができなくなっていた。ロイの言葉にスネークが急いでランチャーを撃つ。
「…ッ! しつこいぞ!!」
ランチャーを斬り落とし、爆発も二分に分ける。だが、足は止まった。というかランチャーが強力なので足を止めてしっかりと振らなければ切れなかったのだ。それは多数を相手にするには十分すぎる隙だった。
「させない…!」
「グウオオォォォ!」
ゲートとナカツナの間にアルスとライコウが割って入り、足を止めさせる。
「くぅ…! あいつを捕まえるんだ! それで色々教えてもらわないと… うっ…」
「リリーナ、カムイの治療を。僕たちが捕らえる!」
至近距離で電撃を浴び続けたカムイがここでダウン。治療はしているとはいえ、あの戦いからあまり休めていない。白魔法も信仰も、精神的な疲れにはそれほど効果がないのだ。それならば、シークも限界が近いだろう。時間はあまりないのかもしれない。
「先には進ませないよ…!」
「ピチュ!」
「ここで決着をつけさせてもらう!」
「そっちには行かせないさ」
「色々聞かせてもらおうか」
「───舐めるなっ!」
ここで、決壊した箇所からボディ達が雪崩れ込んでくる。呼び戻した兵士達が、魔法が解けて器でしかなかったことが明らかになった戦士が本能のままに指揮官以外を襲う。離れた場所にいたカムイとリリーナが真っ先に。
「まずい!」
「お前がな!」
不意を打って、ロイの左胸に突き出された刃先はスネークが銃を伸ばすことで防いだ。それでも、カムイ達の状況は変わっていない。
「ロイの足手まといにはなりたくない… 私だって戦えるんだから! フォルブレイズ!!」
業火の炎が再び敵を焼き尽くす。だが、先程と違って取りこぼしが多い。囮や牽制を使用してないのだから当然だった。2人だけではなく、奥のナカツナを囲んだ者たちにもボディが迫ってくる。
「それらを倒すことに専念するか、被害を見捨てて俺と戦うかだ! 選べ!!」
「そんなの両方に決まっているだろうが!」
ナカツナの右手を銃で弾く。剣は落とさなかったものの、剣が逸れる。マーシャルアーツのパンチで顎をぶたれ、意識がぐらぐらと揺れる。
「はあっ!!」
「…っ、
スネークを飛び越えて、額の真ん中にキックを入れようとするシークを斬り落とす。その直後、ナカツナの姿が、あの動きを捉えにくい状態となる技を叫ぶがマホトーンがまだ効力を発揮している。あの技はナカツナの魔法を駆使していたのだろう。
振り下ろされた剣とともに周囲に雷が落ちる。シーク、スネーク、アルス、ライコウと付近の敵をダメージを与える。電気に関しては魔法ではないようだ。
「グウウ…! グギャオオ!!」
「…ッ!」
ライコウがいまひとつの効果故に耐えて、ナカツナにとっしんをぶつける。流石、伝説のポケモンだった。
「ギラ…!」
「足止めか…!!」
ナカツナの足元が灼熱の炎に包まれる。雷をくらって動けずとも、遠隔からの攻撃はできる。ジャンプで逃げようにも、スネークとシークが構えていて、如何にも撃ち落としてやると、語っていた。
ボディはリリーナが戦っている。撃ち漏らしはあるだろうが、近づく前にフォルブレイズの火力で押し切っている。あとは自分が動くだけ。
もう先程のようなライコウの力を借りた電撃は使えない。ボディ達に電気を加えているが、だからこそ、自分なら隙をつけるのでは。
指示や指揮に回っていた。負傷した自分との戦いしか経験がないのだ。実力を測り切れていないはず。傷も癒えた今、全力以上を出せれば。
「カムイ! ピチュー! ロイ!」
「「「!!」」」
ローラーを持ったインクリング。その思考を瞬時に読み取った。筒部分が縦になった形。そこに宿らせる力。
意志に応える封印の剣の持つ、皇帝の如き炎。
未だに未熟な未完の力、公爵の如き雷。
選び掴み取る神祖の血脈、君主の如き水。
「これで終わらせてみせる!」
「…!? こんな土壇場で連携だと…!」
全て宿らせた、最初で最後の一振り。
人に指示を出し、人を導く力を開花させたインクリングが進むための一撃だった。
「アトリビュート・ロード・スプラッシュゥゥゥ!!!!!」
属性が、叩きつけと同時に弾け飛ぶ。凄まじい風圧と光で全員が目を覆う。
縦にされたローラーの射程距離は尋常なレベルではない。コロシアムの外壁まで届き、先に壊した箇所とともに、円を両断してしまった。
熱と、飛沫が弾け飛び、ピリピリと雷が肌を叩く。水蒸気が起きて、様子が見えない。
「やったのか…」
スネークの言葉。水蒸気爆発の晴れた現地。それを聞いた3号は。
静かに首を横に振った。
「…!!」
リドリーのボディが、アイスクライマーの二人のボディが、ブロウのボディが倒れ、溶けて消えてしまった。
盾にしたのだ。3号の一撃は四人を砕いたが、ナカツナには当てられなかった。水蒸気爆発とともに、電撃を応用した目眩しで姿を光らせれば、人の認識から外れる。一度外れてしまえば、奴を見つけるのはほぼ不可能。奴の魔法が効かないヴォーパルも見当たらないことから、既に逃亡しているようだ。
「逃しちゃった。ごめん。」
「ううん、いいよ。助けに来てくれてありがとう。」
もう使い物にならなくなったヒーローローラー。属性の力に耐えられず、持ち手以外は駄目になってしまったのだ。
「そのブキは…」
「ああ、これはいいよ。別のブキ使えばいいし。」
ヒーローのブラスターとローラーは使えなくなったが、他のブキを使えばいい。カムイの不安を収めるように言った。強がりでもなく、本心だ。
「グギャオオォォォ!!」
「……」
「……」
「あ、エンテイ達が…」
ライコウが一つ吠えると、エンテイとスイクンがどこからかやってくる。それに驚く間もなく、空間の歪みに飛び込んで消えていった。
「ありがとう! 本当に助かったよー!!」
「ピーチュー!!」
「ありがとうございましたー!」
「ありがとう、なの?」
「助けてくれたんだ。きっと、犠牲者も最小限になっていると思う。」
「そうか? ならもう少し手伝ってくれてもいいんじゃないか」
立ち去っていく三つの伝説。カムイ、ピチュー、リリーナの3人は御礼を述べる。だが、残党が残っているかもしれない。それを考えながらのスネークの愚痴はロイによって制された。
「あくまで、手を貸してくれるだけさ。本当は人がやらなくちゃいけないことだから。」
傷も癒え、少しの休息をとった彼らはオスティアの闘技場に集まっていた。
「みんな、準備はいいかな?」
ヒーロースーツを着たままの3号。周りを見渡す。
「ナカツナのことも追わないといけないけど、」
「大乱闘の世界にも何かが起きているんだよね…」
「ピチュー」
逃げたナカツナの行方、大乱闘の世界で起きている何らかの異変、ボディ達。
「やることは山積みだな」
「足、引っ張っちゃったから挽回しないとね」
真実を解き明かすため、ヒーローは進む。意味を知るため、終わらせないために。
「私達もついていくわ。半端に関われないもの」
「どうにかして帰る手段も見つけなければいけない。それに、人の平和を脅かす者を放ってはおけないからな」
偶然。全てが偶然。でも奇跡なのだ。
全ての出会いが。全てに意味がある。
「それじゃあ、いこう!」
3号は、インクリングは知った。
ヒーローの覚悟を。戦うことの意味を。
もう、手は震えない。
○タイトル
ドラゴンクエストIX のフィールド曲。
とあるボスを倒すと曲が変わっちゃうけど、DLC買ってればスマブラ でも聞けるので多少はね?
○ナカツナ プロフィール
ボディはファルコの2Pカラーを採用。
しかし、バイザーは外しており、ブラスター等の近未来的な装備も見た限り持っていない。
『存在』に詳しく、物や生き物に認識されなくなる魔法と認識をあやふやにする魔法を得意とする他、雷の力を主に使っている。ヴォーパルという存在を明確にできる剣を持ち、その三つを使って戦う。
ちなみにファルコのボディを選んだ理由は、今のところ彼のモデルに答えがある、とまで語っておきます。名前の由来も同様。
メタ的には、彼の性格が一番定まらなかったです。明るいけど敵には容赦しないとか考えてはいましたが、今後のことを考えて煽り耐性ゼロの生き汚い武人に仕上がりました。
○ゲート
大乱闘の世界と別の世界をつなぐゲート。見た目はガラスを銃弾で割ったように見える。とある力を加えることで、このゲートを通っていない者でも引っ張ってこれる。ただ、無理に開いたせいか、移動しようと通ると座標にズレが生まれる。生み出した本人の手助けがあれば別だが。
○アトリビュート・ロード・スプラッシュ
本作のオリジナルの技。
アトリビュートは属性。炎、水、雷の3属性。
ロードは君主。炎帝、雷公、水君が三犬のモデルかはわからないが、それをイメージ。
スプラッシュでインクリングのイメージ。
ロードがなければまだマシなのに付け加えて台無しにするのがインクリングクオリティ。三属性の力にローラーが耐えきれないので連発はできない。
○今章の展開
スプラトゥーン3のことを考えて、本作を見直した結果、本作のインクリングが司令になるのか…… と頭を抱えてしまいました。
ちょっと荒療治ではありましたが、インクリングに責任というものを教えるためにはこの展開にするしかありませんでした。
拙作の前作でマルスにわかるってばよアピールをしていましたが、直に見たわけでもないので、本当にわかったつもりだったのです。
これでこの3号も心置きなく司令になれるよ、やったね、たえちゃん!
○ベレトさんからの宣伝
「女の自分がフィギュアになる。天帝の剣にも二つのバリエーションがある。是非予約してくれ」
「ああ、また後輩に……」
「狙ってたの? カムイ……」
○次章 予告
研究室に篭ってたシュルクの元にソニックがやってくる。
彼はどこか別の世界に繋がるゲートを見つけたらしい。その先は大雨と洪水が起きていると。話を聞いた結果、その先がカービィのいるプププランドではないかと考えたシュルクはそのゲートへ向かうのであった。