大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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1話 必然の出会い

 

「種類… ですか?」

 

「うん、軍とか町とかでも言い換えれるかな」

 

 

シュルクが個人的に使用している研究室。

この世界に来る以前から彼の知り合いであったホムラとヒカリはその研究室を訪れ、疑問だったことを解決しにきた。

 

その疑問とは、違う世界の出身であるはずの彼らが何故マスターハンドの力なしで会えたのか。どうしてマスターハンドは3人を同じ世界の出身だと語るのか。それにシュルクは、頭に「あくまで僕の考えだけど、」と加えた上で答えを伝えたのだった。

 

 

マスターハンドが同じ世界だと見極めているのは、種類を見てのことだと。

例えば、一口に果物と言っても沢山ある。リンゴを見て果物と言っても、オレンジを見て果物と言ってもどちらも正解なのだ。

 

リンゴがシュルクの世界。

オレンジがホムラとヒカリの世界。

でもマスターハンドはそれら二つを見分けられながらも、二つまとめて同じ世界(果物)としているのだ。

 

 

その他の例えでも、軍が同じ世界で小隊がそれぞれの世界。町が同じ世界で、家がそれぞれの世界。

そのように、3人が暮らす二つの世界を、マスターハンドは同じように扱っているのではないか、というのがシュルクの考えだった。

 

 

「君たちがここに来る前でも、おかしいとは思ってたんだ。マルスやクロムルキナルフレは兎も角、アイクもロイもカムイも、そしてベレトも同じ世界なんておかしい。もし、彼らの世界が地続きになってたら、もう少しぐらい文明が発達してもいいはずなんだ」

 

 

3人の世界では2000年前にマルスが生きていたという。そして、仲間に蒼炎の勇者… つまりアイクの子孫がいると。そして、カムイの関わった白夜王国や暗夜王国は神話の話と言われるほど昔の時代だと。

しかし、アドラステア帝国ができたのは1000年以上前の話で、その他にも千年単位の過去話がいくつもある。全て正しく、一繋ぎだとすれば、万の年は余裕で経っているだろう。

何より白夜の文化が後の時代にほとんど残っていないことになる。

 

 

「それで違う世界ね…」

 

「根拠はないよ。そもそも違う世界だと時間の流れも違うらしい。マスターハンドは時だって越えられるらしいから気にする必要もないけどね」

 

 

キーラとダーズが討伐され、一度元の世界に帰された間にかの支配人はこの世界を立て直したらしい。時間がかかるとは思っていたが、まさか1年も待たされるとは思わなかった。この世界だから昔の服を着ているし、故郷の世界で使っていた武器と共に無くなったはずのモナドと未来視(ビジョン)の力も使える。

 

だが、自分は誤差が少ない方で、クラウドは2年の時が経っていたし、アイクに至っては3年の月日が経過し、見覚えのあるゴツい肉体に戻っていた。

いや、そもそも時が経っている自分たちの方がレアなのかもしれない。

 

 

「それでよく時間の流れが違うって気づけたわね」

 

「ソラが教えて… くれたのかな? あれは…?」

 

「えっーと、普通に聞いたんですよね…?」

 

 

聞いたまでは聞いた。

だが、返ってきた答えは「うん、ドナルド… 仲間からもそう聞いてるし、俺たちが1年経ってるのにアグラバーやオリンポスコロシアムの友達は別に…って駄目駄目! 秩序だったから今のなし!!」という、何故かこっちが誘導尋問しているような気分になった。後ソラ。この世界ほどその秩序が意味を成さない場所もないと思う。

 

 

「シュルクー! カービィはここかー!?」

 

「あっ、大王様、いらっしゃい。」

 

「奇遇ですね。どうかしたんですか?」

 

 

デデデがドスドスと大きな足音を立ててやってきた。とある事情により、元の世界の仲間を除けばシュルクの研究室を訪れる人ランキング2位となっている。

 

 

「むう? ホムラとヒカリか。ってそれよりカービィはいるか!?」

 

「そこの機械の上」

 

「見つけた! なに寝てるんだカービィ! 帰ったらグルメレースで勝負だと言っただろうが!!」

 

 

いい感じに温まった機械の上で昼寝をしていたカービィを乱暴に起こす。優しさのかけらもなく、ぶよんぶよんと揺らすがカービィは起きない。流石にハンマーで文字通り叩き起こそうとした時は止めた。機械がスクラップになってしまう。

 

先に話したとある事情というのは、カービィが研究室に入り浸るようになったことだ。灯火の星の一件でシュルクとカービィは仲良くなった。その結果、研究室に篭もりがちのシュルクのところへカービィが遊びに来るようになったのだ。

秒も狂わぬ腹時計で昼ご飯を届けにきたり(机の端に置いてあった時計を見た瞬間にちょうど12時を知らせたのは流石に恐怖した)、就寝に来た結果、音を鳴らす機械弄りはできないと同じように就寝したり(この程度の騒音でカービィは起きないことをシュルクは知らない)と、シュルクは最近、幼馴染も驚くほどの健康的な生活を手に入れたのだ。研究室に入り込んだ毛虫に対して、お互いどうすることもできなかったのはいい思い出だ。(その後、研究室を訪れたラインに助けられた)

 

 

「2人は一度帰るんだね。ホムラとヒカリは?」

 

「私たちも帰ろうと思ってます。シュルクはどうしますか?」

 

「僕はいいかな。乱闘の間の休日に帰ったばかりだし、この世界にある物体での研究はここでしかできないからね」

 

「それが本音じゃないの?」

 

「あはは…」

 

 

そう、リニューアルして新たな仲間を加えて一ヶ月、世界を盛り上げるためにぎっしりと大乱闘の予定が盛り込まれていた。ようやくペースが落ち着いた今、始まるのは帰宅ラッシュだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン、と黒線の交差する場所に黒石が置かれる。その一手は初心者らしい辿々しい指使いではあったが、戦略としては恐ろしいほどに手慣れた一手だった。

 

 

「次、タクミの番だよ」

 

 

白夜王子タクミは戦慄する。目の前にいるのは本当に自分の兄なのかと。

 

白と黒の石を使い、より多くの陣地を取った方が勝利。囲碁の相手になってくれないかとカムイに言われたタクミは快く了承した。将棋ほどやり込んでいる訳ではないが、なかなかの実力は持っていると自負していた。

なによりこの兄は、こういった盤上遊戯はことごとく下手なのだ。実際の行軍は兎も角、何故か戦術書の学習や盤上の戦いとなると酷く粗がでてくる。だからこそ、終始押され気味の戦局が信じられなかった。でも諦めては勝てない。線と木の盤上目掛けて、逆転の一手を差す──

 

 

「タクミ王子、お邪魔するよ… って、カムイ兄さん、来てたんだ」

 

「うん、囲碁ってゲームで遊びにきたんだ。暗夜にはないゲームだし、アクアやスズカゼもルールは知らなかったからさ、タクミならできるかなって来たんだ。」

 

「どういうゲームなの?」

 

「僕も初心者だからそこまで詳しくないんだけど… 白と黒の小石でより広い陣地を取った方の勝ちなんだって」

 

「ああ… それでタクミ王子は撃沈してるのか… 珍しいね、兄さんがこういうゲーム強いの」

 

「レオンもそれ言う!?」

 

 

私室に来たレオンでもわかるほど、勝敗はお察しであった。元は敵国の王子だったのだが、靴を脱いで上がるのに慣れた程度には交流を行っているようだ。

 

 

「ごめんって… でもチェスで僕に勝ったことないでしょ? 多分今じゃ将棋でも敵わないと思うよ。だから兄さんからこのゲームをはじめたの珍しいなって思って」

 

「ああ、それは… えっと大乱闘のことなんだけど…」

 

「兄さん、ストップ」

 

 

レオンは手でカムイを制し、襖の外をこっそり覗く。誰もいないことを確認して再び部屋に戻った。

 

 

「それのこと、知らない人に口外しちゃダメなんでしょ? ちゃんと確認してから話してよね」

 

「あっ… ごめんレオン。それであっちに居た時のことなんだけどさ…」

 

 

この世界でカムイは突然の大雨に降られたことがあったという。なんとか小屋を見つけて雨宿りしていると、謎のローブを被った少年も入ってきた。その顔は隠れて見えない。

 

 

「ごめんー! ここ君の家? 少しだけいさせてー!!」

 

「大丈夫だよ、そもそも僕の小屋じゃないから。どうぞ」

 

「お邪魔しまーす!!」

 

 

そう言って入った少年。その文明観は白夜のものに近かった。タオルを手拭いと呼ぶ彼とカムイはすぐ仲良くなった。なかなか雨は止まず、乾いた体はもう拭く必要もない。それで2人の会話に移行するのはごく自然なことだった。

 

 

「そうだ! 囲碁って知ってる?」

 

「囲碁? うーん、弟が遊んでいたような… 僕は知らないかな」

 

「君にも弟いるんだね! 僕いっつも弟と囲碁で遊んでてさ、でもいっつも負けちゃうだよ〜…」

 

「僕もあんまり得意じゃないからな… 10戦しても全敗しそう…」

 

「だから付き合ってよ! やり方は教えてあげるからさ!」

 

 

背負っていたリュックから明らかに重量のある台と容器を取り出したのに唖然として返事を挟む暇もなかった。

ルールを学びながらの数試合。最初は一回一回質問をしながらの試合だが、徐々にスムーズになっていく。そして。

 

 

「あっ、また勝った!」

 

「なんで2戦目でもう勝てなくなるのぉ…」

 

 

白の碁石で囲われた領地が圧倒する。珍しく才能があったようで、最初の一度負けただけで後の3戦は快勝だった。

悔しさで沈む彼に別のことしようかと進言しようと辺りを見回すと、窓越しにすっかり晴れた青空が見えた。通り雨だったようだ。

 

 

「あ、晴れたみたいだ」

 

「本当だ… って、まずい! 弟が呼んでるんだった!!」

 

 

基盤と碁笥、碁石。名前を教えてもらった道具を適当にリュックに詰め始める。そして口を閉める暇もなく、扉へ駆け出した。

 

 

「ん、じゃあ、もう会うこともないだろうけど元気でね」

 

「えっ… どうしてそんなことを言うんだ? また会えばいいじゃないか」

 

「でも…」

 

「僕はカムイ。もう君とは友達だ」

 

 

その言葉に驚いたようにローブを振るわせて、少年はこう返した。

 

 

「…ありがとう、僕はチゲン。またねカムイ」

 

 

 

 

 

 

「なんでありがとうになるの?」

 

「えっ、友達と呼んでくれてーじゃないの?」

 

 

レオンのグサッとくる指摘に本人ではないのに動揺する。周りに友達になれそうな人間がいなかったのかもしれない。あの人懐っこさで友達が出来なかったとは思えない。環境に問題がありそうだ。

少しの間会話しただけの友のことをひとり想い… ふと思い出す。

 

 

「そういえば、あの声どこかで聞き覚えがあるような…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリティアの王城。

王であるマルスの対面に座るのは、経歴的には一般兵でしかないクリスだった。紅茶とお菓子を挟みながらの談笑するその光景は一兵士と主君の間柄とは思えない。だが、それと同時に彼らは親友であるのだ。

 

先の戦いだって、クリスがいなければ勝てなかったかもしれない。でも、本人は自分が得るはずだった全ての功績を、マルスを立てるために使ったのだ。故に一兵士でしかないが、あの戦いに参加していた仲間は事情を知っているために不相応だと非難する者はいない。

 

マルスが光の英雄で、クリスは影の英雄。ルキナ達は彼の存在すら知らないだろう。

 

 

「自分に似てる人、ですか…」

 

「うん、別に外見が似てる訳ではないし性格も似てないんだけど… なんでかな、クリスに似てるなって思ったんだ。」

 

 

マルスは目の前の友に異時間の仲間のことを話す。1人は自分の運命に抗った軍師。1人は流れる血とともに戦った王子。

 

 

「軍師と王子… ますます自分に似ていると思えないのですが…」

 

「正直に言ってしまえば、言葉にするのは難しい。だからどうかな、今度会いに行ってみないかい?」

 

 

クリスは複雑な顔を浮かべている。自分に似ているとのことでどういった人物なのか想像していそうだ。でもきっと、その予想は大外れになるだろう。

 

 

「わかりました。その方々はどちらに?」

 

「ここじゃない、特別な場所さ。少し不思議な場所に僕が呼ばれているのはクリスも聞いたことがあるだろう?」

 

「少しは。…えっまさか…」

 

「うん、そこにいるんだ。」

 

 

悪戯が成功したような達成感に満ち、少し幼い笑顔を浮かべる。クリスはあんぐりと口を開いた。

 




○必然の出会い
ファイアーエムブレム風花雪月の序章のタイトル。
エーデルガルト、ディミトリ、クロードと出会うのは偶然ではなかった(実際にそうらしい)。運じゃない、必然さ。


○シュルクの世界理論
ほとんど作者の考え。
FEシリーズは中途半端に繋がってます。紋章と覚醒が繋がっているのはFEやっていなくても知ってるって人が多いと思いますが、蒼炎やifも繋がってるというのは知らない人も多いのでは? そもそもシュルクやホムヒカは違う世界だと物語中で明言されてたりなかったり。


○時系列
前作では1Pカラーで揃えていましたが、セフィロス参戦PVなら兎も角、ソラのPVでもクラウドがACの姿だったので時間を進めることになりました。
クラウドはACやディシディア系の後、アイクは暁、for後。
シュルクも前作投稿時点では未発売だったディフィニティブエディションのつながる未来編を経験しています。何気にソラも3後。というかソラは1の後も忙しいしCOMの時系列も無茶だしで挟みにくい。
とはいえ、どれも最新に揃えているわけではなく、発売すらされていないリンクやベヨネッタにネタは入れようもなく、リヒターは闇落ち以前です。


○キンジョ?
ストッパー(ドナルド)がいないのでノンストップ。


○囲碁
簡単に言えば、黒と白の石を置いて陣地を取っていく陣取りゲーム。タクミが囲碁をしているという描写は原作ではない。


○既視感
カムイ→クリス→ルフレと輪廻転生している。ifのカムイ♀とシャラの支援会話参照。これはルフレがギムレーの器として選ばれたのも納得できるというもの。
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