大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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19話 チョキチョキマニア

 

 

「よっ、と…」

 

「体力は平気か、シュルク」

 

「大丈、夫。これでも少しは鍛えてるから」

 

 

小舟から上がった四人は手頃な葉まで登る。真上をみるが、頂点は遥か先。そこまでの道のどこかに世界と世界をつなぐ空間の歪みはあるのだろうか。

 

 

 

まず、ワールドツリーから少し離れた場所で四人を下ろしたハルバードはデデデ城へ飛んでいった。

 

 

『住民達は全く戦えない… とまではいかないが、私達と比べると見劣りするのは確かだ。ゲートの近い場所でハルバードを寄せると、最悪の場合反撃されるかもしれない。私は住民達をデデデ城に下ろしてこよう。』

 

 

ということで、ワールドツリーには小舟で近づいた。そこから多量に絡まった大きな蔓を登り、付近の葉でひとまず休息を取る。

 

アイクはまだわかるのだ。シュルクがわからないのは他の二人だった。

ソニックは体が軽いからか、意外とすいすい登っていくし、バンダナワドルディも何故か楽々登っていく。シュルクだけが、この蔓に苦戦していたのだ。

雨に濡れた蔓は滑って握力で支えることは大変であるし、シュルクは、力が強くなければ、体が軽いわけではなかった。それでビリ、という状況だ。

 

 

「なあ、雨、ひどくなってないか?」

 

「むっ… 出直すのも一手かもしれない。冷たい雨は体力を奪うからな。」

 

 

シュルクが息を整えている間、ふとそんな言葉がソニックから漏れた。確かにこの冷たい雨は人の体力を奪うだろう。風も出てきた。

 

 

「でも、この雨はずっと降っているんだよね? いずれにせよ行かなきゃ」

 

「そうだよ、全然洗濯物が乾かないの」

 

「動かなければ変わらない、か。だが、全員無理はしない。強行はしない。それでいこう」

 

「わかった。じゃあまた登らなきゃだな!」

 

 

手の水分をズボンで拭い、絡み合った植物を掴んで登る。滑ったりしたら完全に終了だ。蔓と蔓の隙間に第一関節まで入れ、右足を上げる。手探り…… 否、足探りで蔓を見つけて足をかける。また伸ばす左腕が早くも震えてくる。

 

 

「なー、バンダナ。このtreeってなんなんだ?」

 

 

そうやってシュルクが必死になって登っている間、比較的余裕のある他3人はワールドツリーについてバンダナワドルディから聞いていた。

 

 

「ワールドツリーはね、天空の民っていう人達がプププランドの勇者に助けて貰いたくてきせきの実を地上に植えたんだ。」

 

「それが芽をだしてこんなでっかい木になったんだな!」

 

「うん、一時はお城も土地ごとくり抜いて宙に浮かばせちゃって凄かったよ。今はそんなこともないんだけどね」

 

「大地ごと浮かばせる…… 想像がつかないな」

 

「その時のは足で歩いて登れるぐらいには楽だったな」

 

「(いいな……)」

 

「それでね、天空の民に酷いことしてきた女王様がワールドツリーを乗っ取っちゃって」

 

「Really!? すごいな!」

 

「ポップスターが蔓で覆われちゃってびっくりしたなぁ」

 

「びっくり程度で済む話じゃないが…… これが標準なら、ウルフが帰りたがるのも納得できる。根本的に反りが合わないんだな」

 

「いいとこなのに」

 

「そういう問題じゃないが……」

 

 

シュルクにはこの会話に参加する余裕がない。落ちても大丈夫なようにと一番先に登り始めたというのに、いつの間にか抜かされていた。

 

 

「…………!!」

 

「あ、そうだ。君たちの話も聞かせてよ」

 

「……ッ!」

 

「オレ達の? そうだなー、話せることが多すぎてどれから話すかなー」

 

「………ッ」

 

「なら俺のことか…… それとも亜空軍との戦いかキーラとダーズとの戦いか?」

 

「…………」

 

「後半二つはいいや。大王さまから聞いたことあるし」

 

「…………」

 

 

無心無心、無心無心。

何も考えずに登ればあっという間だ。アイクの世界での戦いの話は全く耳に入らなかった。

上を見るのも下を見るのも億劫で、植物の表面だけを見ているのが一番楽だった。どれほど登ったのだろうか。無心にもなれず、苦しく弱音を吐いた。

 

 

「うっ…ぐっ…… いつまで、登れば…!」

 

「おーい!! ここまでついたら休憩するぞ! Fight!」

 

 

先に大きな葉を見つけ、そこに立っているソニックから激励の言葉を受ける。思わず上を見てしまうが、彼らの居場所はかなり近かった。もう一踏ん張りだ。

 

 

「あと…… 少し……!」

 

「わざわざご苦労だったね。お疲れ様」

 

「…!!」

 

 

誰もいないはずの真後ろから声が聞こえて気がして、反射的に振り返る。誰もいない。気のせいなのか? また登り始めた時だった。

 

 

「あっ! あれ!」

 

 

バンダナワドルディが見つけた。見つけてしまった。空を飛ぶなにか。いや、これはなにかではない。完全に見覚えがある存在だった。

 

 

「リザードンにピット!? お前たちも来てたのか!」

 

「待て! 何か違う!!」

 

 

空を飛んできたのは、ソニックが並べた名前。仲間の名前。でも違う。リザードン、ピット、ブラックピット。二人以上いるなんてあり得ない。まとまって飛んできたのはつい最近戦ったはずの存在だった。

 

 

『……』

 

「ボディ!? キーラとダーズの!? どうして……!」

 

「急げシュルク! 落とされるぞ!!」

 

 

シュルクの目にも止まった。理由を考える暇もない。空を飛ぶ彼らは真っ直ぐシュルクの方へ向かってきていたからだ。身の危険を感じても、消費した体力は戻らない。あっという間にシュルクの体にしがみつかれる。バンダナワドルディが槍を投げ、アイクが衝撃波でボディ達を攻撃し剥がしにかかるも、それよりシュルクの限界の方が早かった。

 

 

「うっ……!」

 

「シュルク!!」

 

 

重さに耐えられず、遂に手が離れる。体が落ちていく。だが、シュルクは落ちていく中で、仲間の背後からやってくる、他のボディ達の姿を見つけた。

 

 

「うしろォォオー!!」

 

 

これ以上はそうないと自覚できるほどの叫びに近い大声を上げる。だが、それ以上は何も出来なかった。さっきまで登っていた道を逆走し、はりついたボディとともに落下し、着水する。

 

 

「むうぅ……(まだ、しがみつかれて……!)」

 

 

落下しても、体の動きを封じてくる。特にリザードンのボディなど、水中では満足に動けやしないだろうに。シュルクの体を水中深くへ連れて行く。なんとか体を揺らして振り払おうとするも、水の中ではその動きも鈍い。

 

 

「んぐっ……!? (増援…!?)」

 

 

彼らだけではない。水中に待機されていたのはゲッコウガやゼニガメをはじめとするボディ達。水中にまで待ち伏せられていたのだ。また押さえ込まれ、どんどん息が苦しくなるのに水面から遠のいていく。

 

 

「(ダメ……だ…………)」

 

 

最後の灯火である咥内の空気を吐き出したシュルクは終わりを覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─何してんだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がひゅ……! がはっ…… けほっけほっ……」

 

 

無意識にできたのは口の中の水を吐き出す行為。重力に嫌われた体は存外正直なようで、意識もせずに酸素を取り込んだ。それにつれて暗かった視界も、徐々に元の色を取り戻していく。

 

 

「大丈夫ッスか?」

 

「ゴホッゴホッ…… ありが、あり」

 

「無理しなくていいって!」

 

 

まだ水が口の中に残っているのか、お礼の言葉もまともにできない。というか命の恩人の顔もろくに見えない。

 

 

『…………』

 

「うわっ、まだいやがる! ちょっとここにいてくれ!」

 

 

それだけを言うと、水の中に潜っていく。まだ、いやがるとは、ボディのことだろうか。少しして呼吸が落ち着くと、空気を溜めて潜る。

 

歪んでいて相手の姿ははっきりとはわからない。ただ、その手に持った澄んだ大海を纏めたような綺麗な片手剣ははっきりとわかった。

その人と対峙するかのようにいくつかのボディ。リザードンの巨体やピットの翼は見えないので、水に適していないボディは沈んで、適したボディだけが残ったのだろう。

 

 

「(戦えなくても…! サポートを!!)」

 

 

モナドの青い光を展開させる。スピードを高めるアーツをその人にかける。自分を助ける時に攻撃をくらっていたのか、速度で越されたボディは一撃で沈んでいった。それを確認して水面へ飛び出す。少し遅れてあの人も水の上に上がった。

 

 

「助かった! ありがとな!」

 

「いや、こっちこそ。助けてくれてありがとう。君は……」

 

 

自分よりも濃い、薄茶色にも近い金髪。

自分よりも癖のある、外に跳ねた毛先。

自分よりも濃い、日に焼けた健康的な肌の色。

 

一見すると似ていそうで全く似ていない、対極的な若者。

そう感じながら切った言葉を、名前を聞いてきていると感じた彼は、大雨の降る中、笑顔で語る。

 

 

「オレ、ティーダ! よろしくな!」

 





○タイトル
ペーパーマリオ オリガミキングのハサミとの戦闘BGM。
セルフハードにもできる戦いで息もつく暇もないハラハラな戦闘を演出する。多分そこをとって今話のタイトルに抜擢したのだが、ぶっちゃけどういう意図でそうしたのかわすれてしまいました。テヘヘ


○避難
すぐ落ちるハルバードに避難してて安心できるわけねーだろいい加減にしろー! 果たして今作でハルバードは落ちるのか、乞うご期待!


○登攀
アイクはパワー有り。バンダナワドルディは軽い。多分ソニックも足早いから軽いだろ……ということで学者肌のシュルクだけが遅れを取ることに。


○ティーダ
FFXの主人公。ブリッツボールという水球の中で行うサッカー+ハンドボール的なスポーツを行うエース級選手。戦闘では片手剣とブリッツボールを使って戦うディシディア式。
FF7を深掘りする案もあったが、セフィロスいるしドラクエは他勇者もいるので別作品から誰か登場させることに決定。
クラウドとそこそこご縁があり、物語の展開的に一番活躍できそうなティーダになりました。24710組やらお天気組やらコスモス転生組やら何かと縁も多く、FF7とFF10は同じ世界ではないかとも囁かれているほど。意図していなかったが、FFの二台巨頭を参戦させたみたいになった。
二つの余談だが、シュルクに似てそうで似ていないというのは作者の第一印象。ぶっちゃけ全然似てない。
もう一つは彼の使用武器。フラタニティというのだが、個人的に創作の武器中、トップクラスで美しい武器だと思っている。知らない方は是非ググってください。


○水中戦
ゼノブレイドは水の中で戦えない。FFXでは戦える。
シュルクは助太刀できなかったのだ。

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