大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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21話 SAVE

 

 

「クラウド……じゃない。誰なんだ!」

 

「ルネ」

 

 

シュルクの敵意に満ちた問いは至極簡潔に答えられた。

 

足をぶらぶらさせながら、答える彼は幼く感じ、見た目とのチグハグさに気持ち悪さを感じる。彼が本人ではない、とすぐにわかったのは、彼の体が見慣れた2年前の姿をしていたからだ。この雨なのに、赤い服は湿っているように見えなかった。

 

 

「ああ、ルネっていうのは名前ね。ホウエン地方の某シティではないよ」

 

「そんなことを聞きたいんじゃない!」

 

「えー、誰だって聞かれたから答えただけなのに。やっぱり世界って理不尽だよね」

 

 

少し会話をかわしただけで、本能が理解した。この相手は理解できない存在なのだと。無意識に拒絶しているのだ。でも聞かざるを得ない。この相手は、紛れもない敵だから。

 

 

「まずはどうしてクラウドの姿になっているのか。そして、おまえ達の目的とこの世界に何をしたのか聞かせてもらう」

 

「少しはご自分のお頭でお考えになりましたら? なんでも聞けば答えてくれるほど単純な世の中じゃないんだよ?」

 

「だったら力尽くで吐かせてやる!」

 

「この統一性のかけらもない連中と? まったく、僕になんのメリットがあるのさ。」

 

「そんなの関係ないな! 勝ったら全部教えてもらうぜ!!」

 

「勝ったら? 勝ったらでいいの? それはダメだよ。僕が君たち相手に勝つ可能性の方がまだあるよ?」

 

 

強者の余裕というやつか。

人を舐めている態度に少しずつ怒りが湧いてくる。

 

 

「……うん、ごめん。大人気なかったね。君たちが勝つ必要はないよ。盟友だってそんなの見たくはないだろうし。僕に一撃くらわせるたびに一つの質問に答えてあげる。」

 

「盟友…… まだ敵がいるのか」

 

 

ルネがクラウドと同じように大剣を取り出し、同じように構える。その仕草の一つ一つが、本人にダブって仕方ない。

 

 

「じゃ、遠慮なくいかせてもらうぜ!!」

 

「ま、最初は君だよね」

 

 

一直線に、最速でスピンアタックがバスターソードにぶつかる。ゴリゴリと回転数がルネの防ぐ力を強める。

 

 

「おうりゃあ!」

 

「……!」

 

「(防がせておいて、プリッツボールのシュートとシュルクを背後に回させる……)」

 

 

とんできたのは白と青のボール。ティーダの攻撃だった。そしてシュルクが回り込んでいるのも見逃さない。他の二人もカバーしやすい位置にいる。

 

 

「でも流石にこれ以上を即席に求めるのは酷か!」

 

「うおお!? シュルク!」

 

「うわっ!?」

 

「ぐうっ……!」

 

 

スピンアタックの方向を変え、背後に動いていたシュルクにぶつける。自由になったルネはボールをアイクに向けてボレーシュート。

バンダナワドルディが槍を投げてくるが、牽制にもならない。むしろそれでターゲットを変えたようで破晄撃がとんでくる。

 

 

「うわん!」

 

「こいつッ!」

 

「凶斬り」

 

 

飛び込んできたティーダに連続斬り。勢いを殺して、叩き伏せた。目の前で片膝をつくティーダに対して、追撃を加えない。

 

 

「くそっ……」

 

「ほらほら、頑張れ頑張れ、まだ掠りもしてないよー」

 

「おちょくりやがって!」

 

「青いね。流石は君だよ、そうでなくちゃ君じゃない。」

 

「おまえにオレの何がわかるってんだ!」

 

 

力任せに振った剣を、敢えてギリギリのところで避け続ける。反撃をせず避けることを繰り返しながら、会話が続く。しかし、何かが琴線に触れたのか、唐突にフラタニティを掴んで直に止めてきた。

 

 

「わかるよ。君のことは君以上に理解してる。君にとって僕は初対面でも、僕にとっては何百と会ってるんだ。君じゃない君も当然知ってる」

 

「訳わかんねえよ!」

 

「離せー!」

 

 

空中から連続で突きを繰り出す、バンダナワドルディ。それも当たらないが、少なくともティーダの剣から手は離れた。

 

 

「ぬぅん!!」

 

 

ティーダとバンダナワドルディの攻撃へ対応しているところを、アイクが神速の動きで斬り込もうとする。

しかし、シュルクは考えていた。この動きもバレているのではないか? 今までの全てが防がれているが故にそう思ってしまう。

 

 

「(即席の連携…… なら、連携じゃなかったら?)」

 

 

シュルクは独断でモナドアーツを選ぶ。

 

 

「(モナド…… スピード!!)」

 

「ッ!?」

 

「おっ……?」

 

 

突然自分の速度が速まったアイクは攻撃のタイミングがずれてしまう。しかし、同時にルネの防御のタイミングもずれてしまい、回避に移行するも、避けきれずに胸あたりで服が斬れて浅い傷ができた。

 

 

「おー、流石だね。じゃあ、質問に答えてあげる。どうしてクラウドの姿をしているのか、だね。といっても難しい問題ではないよ。精神だけの存在だった僕が、残されていたクラウド・ストライフのボディを選んで憑依したってだけ。仕組みはスピリットと同じだよ。」

 

「スピリットと…… 同じ……」

 

「……あっ!? まさかオレに手を貸して欲しいって言ってきたのって!!」

 

「当然、僕。騙されやすくてよかった、よかった!」

 

「こんのォ!」

 

「落ち着け、挑発だ」

 

 

どうやらティーダがここに来たのは、クラウドの頼み…… もといルネの罠だったようだ。

 

 

「さて、ここからは有料サービスだ。他のことも聞きたいなら…… わかってるよね?」

 

「やるしかない、か」

 

 

再び構えなおす。先程のやりとりでアーツもきれた。同じ手はそうそうできないだろう。

まさか、アーツを切らすためにティーダの問いに答えたのか? 彼からは底知れない何かを感じるからか、だいぶ疑り深くなっている。

 

 

「クッソー!!」

 

「ははははは(棒)、雑に斬り続けたところで当たらないよ? もっと頭を使わないと……」

 

「うっ」

 

 

軽く足払いをかけられる。転んだところにそのまま腹部を蹴られ、前線から退けられた。

 

 

「ねえねえ、ふと思っただけなんだけど、転んだは事実を端的に言ってて、意味合い的には同じなのに、コケたはダサくて、スタンしたはちょっとかっこいいのどういう違いがあるんだろうね」

 

「知るかっ!!」

 

「こっちには語ることを強要しておいてコレとは…… 親の顔を…… いや、流石に煽りすぎたか。平常心平常心」

 

 

気分を落ち着かせるように、両足を揃えて小さく跳ねる。ただ、それを歴戦の猛者達は見逃さなかった。

 

 

「(今だ!)」

 

「……ッ!」

 

 

ソニックが横から回り込んで、ティーダは真っ直ぐ正面から。跳んだ瞬間、防御の体勢を取りにくくなったところにいち早くソニックが回し蹴りを叩き込んだ。

 

 

「……ッ!? 流石に君の速度は捉えきれないか……!!」

 

「まだだ!」

 

 

遅れたティーダが、バスターソードを足場にして飛び上がった。剣に溜めたエネルギーが爆発しようとしているのが見えた。

 

 

「エナジーレイン、なら…… いや、受けるか。煽りすぎたお詫びだ」

 

 

ルネがいた辺りが爆発する。ソニックはいち早くヒットアンドアウェイで離脱済みだ。

 

 

「そして爆発に紛れて…… 噴火は通さないよ」

 

「……チッ」

 

「流石に君の攻撃は手痛いからね」

 

 

爆煙に紛れてアイクとバンダナワドルディが攻撃をけしかけていた。ルネはラグネルのみを止める。バンダナワドルディの一閃は甘んじて受けていた。

 

 

「とはいえ、やられっぱなしでもない…… 画竜点睛っ! 過度なスキンシップは厳禁だッ!」

 

 

竜巻のような風を発生させ、雨の雫とともに二人を吹き飛ばした。通常の足場より滑りやすい葉の上で、シュルクとティーダが二人の手を掴んでスリップを止めた。茎をつたって落ちてしまいそうなギリギリの位置だ。

 

 

「やっぱりな。おまえ、そんな強くないだろ」

 

「ソニック?」

 

 

ニヤリと笑った。今まで戦って気づいたのだ。

問われた本人はあどけない顔で首をひねる。

 

 

「おまえは予測とか先読みとかが優れてるだけだ。おまえ自身に大した戦闘力はねえ。だから戦闘力の高い、クラウドのボディを選んだんじゃないか?」

 

「……!」

 

 

戦闘に長けていたら、今の連撃だって防いでいたかもしれない。もしも、本物のクラウドだったら。想像しかできないが、防げるイメージは浮かんでくる。

 

 

「君がそれを指摘することになろうとは。そうだね、否定はできない。あんな化け物じみた運動能力が誰にでも備わってると思うなよ。ソニックが一番厄介だったんだ。でも、ここじゃ満足なスピードなんて出せないし、君にはちょうどいいハンデじゃないか?」

 

「……!? その言い方だとまるでおまえがソニックを誘導したみたいじゃないか!?」

 

「当たらずとも、遠からず。」

 

 

ゾッとしたアイクの問いに、ファイター達の血の気が引いた。

 

ソニックが誘導したのがルネの仕業なら、

 

ティーダを誘き寄せたのがルネの仕業なら、

 

プププランドを水没させたのがルネの仕業なら、

 

 

「(一体どこまでが…… 自分で動いた結果なんだ……!!)」

 

 

ソニックがゲートを見つけなかったら、シュルクはここにいなかったかもしれない。

ティーダがここに来なかったら、シュルクは溺れていたかもしれない。

水没していたのがプププランドじゃなかったら、シュルクはここまでこなかったかもしれない。

 

 

自分達がバンダナワドルディに救われていなかったら、メタナイトが避難民を受け入れていなかったら。

いや、メタナイトがワールドツリーについていっていたら? 少なくともここまで苦戦はしなかった。水没しなかったら、ソニックだってもっと十全に戦えてたはずだ。メタナイトも直接的に協力できていた。

 

どこまで? どこまでが彼の思惑なんだ?

 

 

シュルクはルネという存在を否定しか出来なかった。

 

巨神界の運命全てを握っていたザンザとも違う。一挙一足まで見抜かれているような、それを踏まえて誘導されているような。

 

 

「……」

 

 

怖い。怖い。

ルネという相手は、違う場所に存在しているような気がする。

 

自分達が舞台上の役者なら、彼は舞台の下で観察している監督のような。

 

 

「……ッ!?」

 

 

視えた。未来。未来視(ビジョン)

一度消えた筈の力。今やあの世界でしか発動しない力が発動したのは、紛い物とはいえ、モナドを握っているからだろうか。いや、目の前の敵を倒すためだ。これ以上、おまえの好きにはさせない。

 

直立不動のルネ。

黙っちゃってどうしたの。

答えられない自分達。

突然動いてソニックの足を──

 

 

 

 

「……!」

 

「おーい、黙っちゃってどうしたの? 自分の意思汲み取ってくれる人ばかりだと思わないでよ」

 

 

誰も、何も語らない。語れない。

でも、シュルクだけは動いていた。

 

 

「はあああ!!」

 

「シュルク!?」

 

 

ルネが踏み出した右足が地面につく、瞬間に戦場となっていた葉が両断された。目を丸めて、支えを失った葉のかけらごと落ちていく。

 

聞きたいことはまだあった。

だがそれ以上にこの男と喋りたくなかった。

 

 

「なるほど、未来視(ビジョン)か。」

 

「……!?」

 

 

落ちていく彼が、やたらとスローモーションに感じる。その言葉をシュルクはしっかりと聞き取っていた。

 

 

「僕も何度も()()よ」

 

「君が救った人、救えなかった人。」

 

「でも君じゃ変えられない。救えなかった人は救えない。救えた人を見捨てられない。」

 

「一体、どこまでが君の意思なんだろうね。」

 

「じゃ、過去でまた会おうか」

 

 

「どういう──」

 

 

そのあとの言葉をシュルクは知らない。

誰だって知らなかった。

 

 




○タイトル
UndertaleのPルートの最終局面のみ使える特殊コマンド。
語るまでもないが、ゲーム用語のセーブと救うのセーブをかけている。
作者の個人的な印象だが、非公式日本語訳から公式日本語訳になった時、このコマンドはふっかつになったのが一番不評であった気がする。


○ルネ プロフィール
はいはいはーい。僕はルネ。僕は組織…… いや、名前はないけど。
とりあえずスマッシュブラザーズと敵対してる烏合の衆の一員だよ。
あ、さっき言ってたけど本当に某シティとは関係ないからね。
今僕はクラウド・ストライフのボディを自分の体として使ってる。服は赤色。目も赤色。キーラの支配は関係なくて僕の元々の目の色だよ。多分。一応過去は人間だったしなんなら僕自身もっと幼かったような気がするよ。ま、昔の話だけどね。
ちなみに僕自身に戦闘能力はなし。ただちょっと特別な力があるよ。次回を待ってね。多分出てくるよ。いや、出させるよ。


○ホウエン地方の某シティ
ルネシティ。周りが島で囲まれていて上陸できず、ダイビングを使って街中に入らなければいけない。その上海に街半分が両断されているので、なみのりを使わないとまともに生活できない。投票とかないけど多分実際に住みたいポケモンのシティランキングドベだと思います。


○「僕も何度も()()よ」
シュルクの未来視(ビジョン)関係は『視えた』と表記します。
()()とルネが言った理由とは……

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