大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「……なるほどね。そうくるか…………」
誰も、何も語らない。語れない。
でも、シュルクだけは動いていた。
「はあああ!!」
「シュルク!?」
ルネが踏み出した右足が地面につく、瞬間に戦場となっていた葉が両断されるはずだった。
「未来を変えられるのは君だけの特権じゃないんだよ? 足場を奪うだなんて、なんて姑息な」
「なっ…… なんで……!」
ルネは
確かにソニックの足目掛けて刃を突き出す未来を視た。そのために飛び込んでくる姿も視た。
だから、ぴょんぴょん跳ねていた時の着地隙を見計らって敵の足場を奪ったはずなのに。
葉を両断するはずだったモナドは、切り込みすら入れていない。それより前にバスターソードの贋作に留められていたのだ。それをしたのは当然、ルネしかいなかった。
「……! シュルク、未来を視たのか!?」
「えっ!? そんなんできんの!?」
「すごーい!!」
「視た……!! はず、なんだけど……!!!」
「ふんっ」
「うわあ!」
ルネがシュルクを吹き飛ばした。
スマッシュブラザーズの中では、本業が研究員ということもあって、純粋な髄力では下の方であるシュルクが、クラウド(のボディではあるが、身体能力は全く変わらない)の力に勝てるわけがない。他の味方の元へ吹き飛ばされる。
「確かに僕は未来を見た! それを回避するために動いたはずなのに……! ルネは
「考察もいいけど、質問タイムなの忘れてない? えーと、僕達の目的だっけ?」
「その通りだ。話してもらおうか……!!」
「おまえ達ってところが粗があるとこだよね。チゲンとかじゃなくてボディのこと言ってるんだろうけど」
「オイ! オレ達にはわかんねー言葉で言うつもりかよ?」
まさか、自分にしかわからない言葉で語ることでくぐり抜けるつもりなのかと、ソニックが憤るが、ルネはそれを全く気にせず、真剣な表情をして言った。
「僕達の目的は自分だけの肉体を手に入れること。一ヶ月前の戦い…… 灯火の星の戦いは覚えてる?」
「灯火の星……ってなんスか?」
「一ヶ月っていうと…… キーラとダーズとの戦いか? そんな呼び方をしてるのか」
「そうそう。別に難しいことじゃない。囚われたスピリットは解放されても、複製されたボディは残っていた。精神だけだった僕達は好きなボディを選んで自分の体にしたに過ぎない。」
「精神だけだった? 僕達だって? ホー、つまりお前とボディだけじゃねえってことだな?」
「理由はまちまちだ。そもそも聞いてないし。ただ、そのままではダメージが積み重なるとフィギュア化のシステムが発動。ボディは崩れて宿っていた僕達は解放されてしまう」
人差し指を一本伸ばしたルネはまるで教師のように、出来の悪い生徒に根気よく説明するように語り出す。
「それなら、フィギュア化のシステム、もとい大乱闘の世界のシステムそのものを乗っ取ってしまおうと考えたのさ」
「そんなことを……!!」
「それで、創造主サマを襲ってシステムを乗っ取った後に消し去ろうと考えてたんだけど…… マスターハンドに逃げられてさ。ただどこかというよりは、ファイターの誰かに宿る形で逃げたらしい。」
「それで、僕たちを襲ったのか!? どうしてプププランドまで!」
「まあ、束になった君たちと闘うのは少々合理的じゃない。だから既存の世界を使って散り散りにさせてもらった。あとは確認するだけ。裏技で大半は調べさせてもらったけど、マスターハンドは見つからない。創造主が宿ってるのならば、大乱闘のシステムから外れていてもファイターの力を扱えるはずだ。君たちにとどめを刺した時、フィギュアになればそこにマスターハンドがいる。まあ、危険を察して自分から飛び出してくれればそれが一番いいんだけど……」
「フィギュア化しなかったらどうするつもりだったんだ」
「運がなかったね、って一声かけて立ち去ったかな」
「……ッ!!」
この少年はおかしい。
フィギュア化は大乱闘の世界において死を避けるための手段。これがあるからこそ、大乱闘は成り立っているとさえ言える。
フィギュア化するべきタイミングでしなかったら。つまりそのまま死んでしまうという意味だ。その意味をわかっているのか? いや、ここまで語っておいて理解していないはずがない。わかっててこの言葉を言っている。
「まあ、それは彼らの目的であって僕の目的ではない。烏合の衆で利害の一致の協力なんだから連携とかないも等しいし」
「じゃあ、そのお前自身の目的は?」
「おいおい、質問を許したのは攻撃を当てた数だ。3回当てたんだから3回答えた。それ以上聞きたかったらやることがあるだろ」
「2回しか答えてねえだろ!」
「答えたじゃん、ソニックの強くないだろって奴とソニックを誘導したのかって奴。そして目的のことも聞かれて答えた。」
「あああああ!! こいつ屁理屈ばっかでムカつく!!」
上手く手玉に取られている。アイクはそういう性根だからか、戦術かわからないが、そう分析した。人を煽り、精神的に上に立つように動いている。その結果乗せられやすいティーダが一番平静になれてない。真っ先に引っかかったのが彼ということもあるのだが。しかし、冷静でなくとも戦う意欲を見せるティーダよりも、思考するのに精一杯で動けないシュルクの方が心配だった。
「(どうして)」
確かに同じく行動を読むのは得意な相手だが、それにしたって動くのが早すぎるし、行動の意図まで読み切っていた。テレシアとは違うと感じるのは気のせいなのだろうか?
「ほらほら、頑張れー!」
「うむー!!」
「くそっ!」
バンダナワドルディがパラソルでガードしてるところを、ルネは出鱈目に斬り込む。隙だらけのはずのそこへソニックが殴りかかるものの、その瞬間だけ剣で弾いた。そしてすぐにパラソルへ戻る。
「はあああ!!」
「とおっ」
しかし、アイクの一撃は片手間にいなせるほどのものではなく、バンダナワドルディから標的を変えて、剣と剣が交わる。味方内で一番のパワーファイター、アイクのラグネルとルネの持つ大剣が互いを叩き合った。
「助太刀ッスよ!」
「ふん、」
「わわっ!?」
「うおっ!?」
剣を振りかぶりながら、襲ってきたティーダに、バンダナワドルディを蹴りつける。咄嗟に抱き止めるが、勢いを殺せず足場のない空中へ投げ出させる。なんとか左手で葉に手をかけるが、ギリギリだ。
「オレが相手する! helpを頼む!」
「わかった!」
アイクとルネの間にソニックが割って入り、格闘術で立ちはだかる。二人を引っ張り出すにはソニックではダメだ。力が足りない。
それを読んでいたのか、ルネはソニックを無視してアイクの首筋を──ではなく、守るように滑り込んできたシュルクの顎を拳で砕いた。
「がッ……!!」
「チョロいよ、甘いよ、チョロ甘だよー、また未来、視たんでしょ? 未来を変える権利は君が独占してるわけじゃないって何度言ったらわかるのさ」
「「シュルク!」」
「行って!!」
アイクとソニックが、シュルクを心配するのだが、シュルクはそれよりも二人が心配だった。雨に濡れた葉が命綱で長い間もつわけがない。幸い、吹き飛んだシュルク一人をターゲットにしているので、助けが間に合えば問題はないだろう。
「全く、学習能力がない。ルキナがいるのに、僕だけが未来を変えられるんだー、って。こんな傲慢さがあるなんて初めて知ったよ。」
「ぐう… そういうことを言いたいんじゃない! 未来を変える意思を持つなら、何かしらの形で未来を知ることが必要じゃないか! 君はどうやって……」
「だから一撃を当てろと…… おっと」
沢山の槍が投げられる。先に上がったバンダナワドルディが投げたものだった。
「しっかたないな。特別サービスね。僕ってやさしいなあ」
「え? ……!?」
そういうと、ルネは剣を振って槍を斬り落とした。……たった一本を残して。
「さて、僕が未来のことを知った方法だけど…… 厳密には違うけど、ソティ…… ベレトの天刻の拍動と側から見れば同じだね。違うのは……」
「どうして…… わざと攻撃を受けたのか?」
「はい?」
「僕はお前がわからない…… どうしてわざわざ攻撃を受けた? 僕達に情報を与えようとする? ティーダのこともそうだ。君がここに誘導してきたというのに、君の利になっていない……」
ここでルネの異常性が剥き出しになった。小難しいことが嫌いなソニックも、無口だが熱血漢のアイクも、のほほんとマイペースなバンダナワドルディも、素直故に未熟なティーダも。共有してしまった恐怖。それは持っていた敵意をそのまま拒絶感に変えてしまうほどの影響力を持っていた。
彼の行動が破綻している。だからなのか、本能が彼を理解するのを拒否している。彼個人の目的…… それを達成するためにピンチすら演出するというのか。
「聞くなら一つだけだって。でもまあ、僕の利というよりは盟友の利だ。それだけ言っておくよ。」
「盟友……」
ルネは唐突に大剣を背に納めた。
そこでようやく、ファイター達は自身が武器を持ってはいても、構えていないことに気づいた。それほどまでに、心は少年を敵に回したくないのだろうか。
「で、質問の続きだけど、時間そのものを巻き戻す天刻の拍動と違い、僕のそれは過去に送るんだ。自分の記憶を。いつかの過去の自分に。」
「つまり…… 未来の自分から記憶を受け取る……?」
「ちなみに回数制限はありません。そもそも記憶を送ったのは未来の自分だしね」
それで、全てを見透かしたように動かすことができたのか。何もかも思い通りに。その気になれば、全ての攻撃を避けることだってできたのに。
「さて、質問タイムは終了。僕は忙しいからね。そろそろ帰らせてもらうよ」
「…! 帰さない!」
その言葉が頭の中で反復したのち、意味を理解する。動きは一番アイクがはやく、他の者も遅れて武器を構えた。一番最後はシュルクだ。
だが、肝心のルネは全く動揺しない。背を向けたまま、そうそう、と言い忘れたことを語るように自然に会話を続けた。
「結局質問できなかったプププランドを沈めた方法だけど。すぐにわかるよ」
「何を……!?」
そういうと、ルネはちょいちょいと背中の武器を指差した。指さした方、自然にバスターソードへ目が向いた。大乱闘では空いていた二つの穴の片方には
「……って、アレマテリアか? ミッドガルで使うアイテムの……」
彼らには、『ミッドガル』というステージで登場し、使うことで召喚獣を味方につけられる心強い存在という印象しかない。
「一番彼の体が都合が良かったんだ。大した力を持たない僕でも大きな力が使える。」
そう言って、指さしたのは空の先。
「「「「「!?」」」」」
人差し指の先を見上げると、それから目が離せなくなった。分厚く不機嫌な雲から、長い長い胴体があらわになる。
「君たちはこいつをどうにかしてから追ってきなよ。僕はいつまでも待ってるからさ」
いつのまにか最初に見た、一段上の葉へ移動していたルネ。ああ、よく見れば側に通ったゲートもあるではないか。
「リヴァイアサン。ああ、スピラにはなかったけどスマッシュブラザーズなら見たことあるよね? さあ、ファイト!」
ようやくわかった。
プププランドを水に沈めた正体。大蛇のような巨大でいて長い体躯、美しい両翼。
さっきまで仮にも穏やかで雨を受け入れるしかなかった水面は、リヴァイアサンに近づくにつれ、渦を巻き、風を呼び、雨が体を打ちつける。
まるで、天国が荒れ果てたかのような凄まじい光景だった。
○章タイトル
大神のエンディング曲。大神の曲といえば太陽は昇るばかり挙げられるが、これもまた神曲。CMでの使い方とアレンジが秀逸なのです。
○謎の文字
アストルティア文字。ドラゴンクエストシリーズにおいて8から使われ始めた架空の文字。解析されたのが10なので、10の舞台のアストルティア大陸からアストルティア文字と言われることに。ハーメルンにフォントがあったから使ってみたかった。
ちなみに割と衝撃的なこと言ってます。
○「チョロいよ、甘いよ、チョロ甘だよー」
テイルズシリーズにおいて、定番となっている戦闘後掛け合いの一つ。テイルズはこういうキャラクター同士の交流や関係が面白い。
○盟友
ヒントは少しあるけど、現段階でもわかる人にはわかる。多分。
○ルネの能力
「さて、本編でも書いてあるけど、僕の能力は過去の自分に自分の記憶を送る力…… もしくは未来の自分から記憶を受け取る力。まあ、どっちでもそんな変わんないよ。
この力は、セーブとリセット機能を側から解釈した能力だね。だから都合よく色々動かせたんだよ。」
○リヴァイアサン
FFシリーズに登場する召喚獣の1匹。スマブラのミッドガルにも登場してます。津波を起こしたり、氷塊をぶつけてきたり。ちなみにFF10では没になりました。カナシーネ。