大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
確信ではなかった。
信頼とも違った。
切羽詰まっていたから縋るしかなかっただけだ。
手段を選ぶ余裕がなかっただけだ。
あの時、謎の一味が自身を襲ってきた時。
一択しかなかった手段を思い出しただけだ。
『もし、君がその身を、力を、隠すことになったら──』
気づいた。
それより前に自身に、マスターハンドに忠告してきた者。聞き覚えがある声とかいう以前の問題だった。あの存在は、襲ってきた一味の一人だったではないか。
『君が呼んだファイター、────に逃げるといいよ』
騙された、のだろうか。
今となってはもう祈るしかないけど。
全て、彼らに託すしかないけど。
「(難しいことはしてねえ。賭けかもしれねえ。それでも、オレは水があるからって足手纏いにはならないぜ!)」
作戦というには少しお粗末な、だが決して無策とは言えないそんな連携だった。
『今度は助けられないよ!?』
『必要ねえ。さあ、やってくれ!』
『ああ! もう!』
苦い顔をしながらも、シュルクはモナドを展開する。形作られた円の中に疾の文字が浮かび上がる。途端にソニックの足に水色の光が纏われる。
『やってくれ、ティーダ!』
『大丈夫だって! ミスってもオレがなんとかしてやるから!!』
丸いスピン状態のソニックはとても蹴りやすくて。ティーダの目論見通りまっすぐ飛んでいく。まるでそれは流星のようにリヴァイアサンの頭蓋に叩き込まれていた。
「Hey、Come on! こっち来てみろ!」
そのまま、リヴァイアサンの図体を走って水上に降りる。モナドアーツによる敏捷の上昇とソニックの速さがあれば、沈まずに水上を走り出せる。出だしさえどうにかすれば、ソニック単体の速さでも走ることができた。
「グウウゥゥ……!」
予想通りだ。ソニックを無視はできない。したり顔で走り続ける青い閃光を追いかけて、高圧の水圧は巨大な水柱を上げた。
「ソニック…!」
「……面白い……! 乗ってやろうじゃないか!」
メタナイトは驚き、ウルフは笑う。空も飛べず、まともな武力もないというのに、こんな形で戦いに関わってくるとは。
「(先のことは頼んだぜ! みんな!)」
心の中でサムズアップを送った。
正面に生えている、謎のアレともいうべきものを避け、周りを見渡しながら走り続ける。土地勘はないが、とにかく建物がないところを目指さなければ。ソニックの背後には、浮き上がった水雫が即座に水面へ帰っていく。
叩き伏せる。ねじ伏せる。うち飛ばす。
何度、何度繰り返したのか。わからないし、数えたくもない。その数を認知してしまえば、きっと永遠の迷宮に閉じ込められてしまうだろう。
「ウガアアァアアッ!!」
ガオガエン、ほえる。
こうかはばつぐんな環境である外で戦えるはずもない。大勢の避難民とともにデデデ城に避難したが、そこにボディ達が襲来。
機転を利かせて近くにいた少女がデデデを呼びに行ったが、増援はまだこない。急ぐ気持ちを感じる暇もなく、ガオガエンは最前線で戦い続けていた。
「ガオオォ!」
Miiの少女、ガンナのボディを容赦なく頭から地面に叩きつける。スネークのボディを手刀で貫き、ピーチのボディにとびげりを撃つ。オリマーのボディをフルスイングで外へ投げ飛ばす。
『……!!』
「グウゥ……!」
「しっかり……!」
しかし、殴っても蹴っても障害が減っているように見えない。敵の数が多すぎる。前線で戦うガオガエンは一番背後をとられやすくて。緑のインクでの援護がなければ、今頃無視できない傷を負っていただろう。
「うりゃあ!」
「アオリちゃん、ほどほどにね!」
「わかってるよ!」
今、撃たれた敵をローラーで弾き飛ばす。
それを行ったのはNew! カラストンビ隊の1号と2号、もといシオカラーズのアオリとホタルだった。ローラーとチャージャーを扱い、この戦場を奇襲で渡り合っていた。
「3号…… 大丈夫だよね?」
倒れたボディの姿を見て同じ形をした仲間のことを思い出す。偶然か否か、二人はバラバラにならずにここにたどり着いた。周りは水ばかりでどうにかならなかったのかとは思ったが。もし、3号もどこかにいるなら、今頃どうしているだろう。
「ウガアアァアア!!」
「はっ…… いかんいかん、集中っと」
ガオガエンの再びの唸り声で現実に戻される。
水が苦手なものが避難しに来たというだけあって、炎を扱う者が多い。確かにガオガエンを中心として戦っているのだから、こうかがいまひとつの巻き添えをあまり気にしなくていいのは嬉しい誤算だ。しかし、普通に炎が効く身としては厄介だった。
「アオリちゃん、無茶は禁物やからね」
「しょーち! 一撃与えて離脱! 戦場の鉄則ゥ!」
その通りにピンクのインクであちこち動いてはいるが、奥に入り込んだりはしていない。あちこちで吹かれる炎の中でも目立つ色のおかげで連携はとりやすかった。
しかし、ホタルが闇雲に撃てばそのピンクのインクを塗り潰してしまうだろう。故に彼女は人一倍慎重に動いていた。だから、階段を降りてくる足音に気づいた。
「おお? あのドラゴンが離れたんで中に入ってみれば……オレさまの城でバーベキューしてんじゃねえ!!」
「……そっちじゃないっしょ」
思わず突っ込むホタルだったが、デデデの振りかぶったハンマーは普通に敵であるネスのボディを打ち砕いていた。風圧で火の粉が飛び、逆襲が始まる。
「やらいでかあー!! ガオガエン!!」
『……ッ!』
「ウガウッ!!」
デデデの弾き飛ばした損傷の激しいボディはまっすぐガオガエンの元へ向かい、さながらピッチャーの球を打ち返すバッターのように顔面にラリアットを叩きつけた。城壁に穴を開けながら、かっ飛んでいく。
「かー!? 誰が穴開けていいといった!? 後で覚えてろ! まずはこっちだ!」
「グアウ!」
怒りは味方に。拳は敵に。
炎と偶像、そして少しの仲間に囲まれ、背中を預けて力を見せる。即席だが、物量で負けているのは明白故に手を取って戦う。
「グウガアアァァ!!」
しかし、戦い方が粗雑になっていくガオガエン。長い戦闘から段々と心が昂っているのだ。まるで焼き尽くすもうかの如く。
プロレス技を決めるのもめんどくさいと、両足とびげりでスタンした紛い物の黒翼を敵陣営へ適当に投げ飛ばした。
「っていきなり飛んできた!?」
「はあ!」
「ガアッ?」
聞き覚えのある声が、敵の向こう側から聞こえた。自分が飛ばしたボディが金の輝きに両断されるのが小さく見えた。
そうだ、少し出払っていた同志だ。
戦いの果てで、すっかり忘れていた。
「大王さまー! 怪我ないですかー?」
「戦いのシロウトの見参ッス!」
「えっ、それって僕のこと…?」
「いや、違っ」
聞き覚えのない声もあるが、別に敵ではないだろう。上から槍を持ったワドルディ達もドタバタと降りてくる。転んで階段から落ち、そのまま後続に踏まれている者もいるが、ご愛嬌だ。
「ここに退避しようとした身で悪いが協力してくれないか?」
「当然だス! お掃除しないとゆっくりもできないだスし! メタナイツ、出陣ー!!」
メタナイツ達もそれぞれの武器を持って喧騒の中を飛び込んでいく。ファイター達、その協力者達も揃って武器を握りしめた。シュルク達が敵と同じように現れたということはもう敵の増援を心配しなくていい。存在する相手を薙ぎ払えば終わる。
自分達の優勢に変わったからこそ気づかなかった。恐怖の象徴であったリヴァイアサンに向かって、一つの流れ星が落ちていったことを。
○タイトル
スーパーマリオギャラクシー2に登場するギャラクシー名。
ステージの名前はたおせ! たおせ! たおせ! と超絶シンプルなもの。
星々を回って雑魚敵ラッシュを続けていく。いたずらコメットが来るとライフ1のオワタ状態に。
○謎のアレ
プププランドによく刺さっている「アレ」。アーチ状の物体。
ちなみに「アレ」という名前は公式名称。(元はエイプリルフールのネタだけど)
実際背景によく刺さってる。
○シオカラーズ
初代スプラトゥーンのアイドル枠。二人はいとこ同士。
またNew! カラストンビ隊の1号と2号であり、初代ヒーローモードではお忍びで3号の手助けをしている。そして何故か2以降では変装していない。
ローラー使いのアオリとチャージャー使いのホタル。水没したプププランドではまともに動くことができなかったものの、今後は本格的に参戦する……かもしれない。
○避難民
ファイター達のように、迷い込んだ人々もいるが、殆どがプププランドの住民。それもバーニンレオやボボみたいにファイアやバーニングのコピー元ばかりなので、戦場は必然的に暑苦しくなる。