大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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26話 あしたはあしたのかぜがふく

 

「(人のいないとこ人のいないとこ人のいないとこ…… ダメだ! どこだそこは!)」

 

 

ソニックは駆けていた。

嫌いな水の上を落ちずに駆け巡るのは一種の優越感を感じる。故に気持ちが逸ってどんどん加速していく。

 

リヴァイアサンはその巨体のおかげで、ソニックを見失うことはなく、追いかけ続けている。

だが、メタナイトとウルフは既に遥か後ろだ。リヴァイアサンが目印にならなければ、とっくに見失っていただろう。

これならば、メタナイトにどこか人気のない場所はないか聞いておくのだった。それでクヨクヨする気はないが、この状況だと、少しだけ後悔している。

かといって減速すれば、落とし穴に落ちたようにそのままドボンだ。ソニックには走り続けるしかなかった。

 

 

「ギュオオオオオオオ!」

 

「おっと!」

 

 

空まで届く水柱が上がるほどのブレス。口から発された激流を跳んでかわす。そして着地で急加速。速度が落ちて水没なんて洒落にならない。

 

 

「(とは言ってもこのまま逃げ続けたところでこっちの体力が切れるだけだ。どこかでメタナイト達を追いつかせねえと)」

 

 

そう決意したソニックが顔を上げて見たのは先程まで上を目指して登っていたワールドツリーだった。

 

 

「ここだッ!」

 

 

ツリーの周辺をぐるぐると回り続ければ、敵は狙いづらいしいずれ二人も追いつける。追いつけた後に身を隠す場所にも困らない。

 

 

「後は避け続ければ……!?」

 

 

ただ、一つの誤算はかの召喚獣を見くびっていたことだろうか。

 

野に住む獣達とて、何度も繰り返せば学習する。

どんな剛速の球でも、緩急をつけなければいずれ打たれる。

 

ソニックの動きを先読みして放たれた氷塊は、彼の片足を的確に射抜いた。痛みに力み、自分の意思とは関係なく体が浮き上がり、胴体から荒れた波の群れに叩きつけられていく。

 

 

「(ミスッ…… たあ……!)」

 

 

やけにスローモーションに感じる世界の巡り。仲間はここにはいないし、自分は泳げないし。

やってくる激痛にギュッと目を閉じる。

視界の端に、流れ星が見えた。

 

激痛は、こない。

恐る恐る目を開いてみる。

 

目の前には桃色。

ああ、そうだ。この世界は彼を待っていたのだ。悲しみという名の洪水が。雨だと誰かが言った涙が。この世界の全てが彼の存在に歓喜していた。

 

 

「遅すぎだぜ、カービィ!」

 

「ぽよ!」

 

 

ワープスターではない。それでも空を飛び、助けられたのだ。ああ、熱くなって負ける気がしない。

 

重工戦車を彷彿とさせる緑色のそれに乗ったカービィは呑気に返事をした。

 

 

「追いついたか。 っ! カービィか!? それにそのマシンは……!」

 

 

カービィが乗っていたそのエアライドマシン。大乱闘の世界で乗り回した伝説、ドラグーンと双璧を成すもう一つの伝説、ハイドラ。

圧倒的なパワーと最高速を誇るマシン。カービィはこれを探していたのか。

 

 

「そうか……! そのマシンならば!」

 

「もたもたしてんじゃねえぞ!」

 

 

大きな希望だ。

とてつもなく前向きに、メタナイトはショットを続けるウルフェンに参戦した。それで狙いの変わったリヴァイアサンは怒りの顔を二人に向けた。

 

一方、カービィは手頃な木にソニックを避難させる。避け切れる保証はないからだ。その上、モナドアーツのバフがない今では、加速しきる前に落ちる。戦線を離脱するのはやむを得ないことなのだ。

 

 

「おっしゃ! やってこい、カービィ!!」

 

「ぅん!」

 

 

赤ん坊のような不明瞭な声。それにここまで信頼を感じることがあるだろうか。

洪水の上を飛ぶカービィの背中を叩きながら、ソニックは彼を見送った。

 

 

「しかし、ハイドラか……」

 

 

確かに火力はあるし、加速すればスピードも負けない。だが、その分ドラグーンほど空中戦に長けていない。別に性能が低い訳ではないが、亜空軍との戦いと同じようにとはいかないだろう。一体どのように、と回り始めた思考を止める。

別にカービィ一人で全てをこなす必要はなかった。足りない分は自分やウルフでカバーすればいい。そのための力が自分達にはあるのだから。

 

自身を弾き飛ばす尻尾をぐるりと回って回避。すれ違い様に斬り裂いた。

 

 

「グウゥゥ……」

 

 

あまり聞いていない。氷の塊を撃ち続ける余裕はある。相手の巨体に比べて、傷口が広くないのだ。人で言えば針が刺さった程度の傷口と言うべきか。

 

 

「(なら、狙うのは……)」

 

「「(翼だ!!)」」

 

 

カービィがスピードをできる限り落とさないように操縦している中、空のメタナイトとウルフは同じ答えにたどり着いた。飛行能力を削ぎ、カービィのハイドラをぶつけられるようにする。それが一番の策だ。ここまで来てようやく勝機らしい勝機が見えてきた。

 

メタナイトは衝撃波を飛ばし、ウルフは片方の翼へと銃口を向ける。そうだ、ここからが…………星の世界の英雄譚だ!

 

 

「グガアアァ!」

 

 

咆哮で弱者を吹き飛ばそうとしているのか、風圧を伴った雄叫び。しかし、それで怯えるものなどいない。

頭から突撃してきたリヴァイアサンは衝撃波を弾き飛ばす勢いで一人と一機に向かっていった。しかし、硬直などしていない彼らは軽々と避ける。

 

 

「…チッ! 津波か…!」

 

 

しかし、気づいた。突撃とともに大きく波が迫り上がっている。避けられても仕留めるための布石だった。

ウルフェンごと覆う水の壁に、スマートボムを撃ち込んだ。至近距離過ぎて機体にも余波が来たが、そんなことを気にしていられない。メタナイトもその穴を通って水飛沫とともに離脱した。ヒヤヒヤする。あの圧迫感はない。離脱したウルフェンの上を影が通り過ぎていった。

 

 

「くりゃえ!!」

 

「ガアアアア!!」

 

 

ハイドラだ。波をジャンプ台代わりにして、チャージ、突撃したカービィはリヴァイアサンの一部、触角のようなところを刈り取っていった。張りを失った生命のかけらは、呆気なく沈んでいった。

 

 

「よっしゃあ! やってやったぜ!」

 

 

観戦モードとなった青いハリネズミ。応援ぐらいしかできないが、志は一つだ。声援を風に、ハイドラは高く飛び上がる。

 

 

「オラっ! いい加減沈めェ!」

 

 

通常のショットを当て続けてもキリがないと感じたのか、躊躇せずスマートボムを投げ込む。片翼を、胴を、腕を爆心地にされ、大きく断末魔を上げる。それでも、未だに存在は保たれていた。

 

 

「(まだ余力はありそうか…… カービィの攻撃ならばどうにか…… それも直撃だ。まともに当てられれば……)」

 

 

この中では、メタナイトが一番火力がないのだ。得物であるギャラクシアは名剣であるし、それを操るメタナイトも稀代の剣士だ。

しかしそれでも、兵器を超えて戦車あたりに分類されるであろうウルフェンと伝説のエアライドマシンハイドラと比べられるものではない。魚と獣とを水中で比較するようなものだ。果たしてリヴァイアサンがメタナイトをどれほど敵視しているのかも怪しいところだった。

 

 

「(火力が足りなくとも、注意を惹く方法……)」

 

 

メタナイトの翼がばさりと大きく動く。

それは宙に留めるための規則的な動きではなかった。

 

スピードを溜めて、パワーを補うためのもの。

一直線に伸びた金色の刃は──

 

 

「グガアアアアアアアアアァァァァァ!?」

 

「おおっ!」

 

 

右目に当たる場所に突き刺さっていた。

 

つい先ほどソニックがやっていたことだった。頭の攻撃は無視できない。それが、脆い眼球ならば尚更だ。

 

 

「やってやったぜ!! トドメ刺しちまえ、ウルフ! カービィ!!」

 

 

痛みに荒れ狂うリヴァイアサンは、潰れた視界で敵を探すこともできない。

ただ、生存本能に任せて、長い尾でメタナイトがいるだろう片目近くをぶつける。怒りのままに辺りへ氷塊を飛ばしまくる。

そこにメタナイトはいない。ギャラクシアを置いて離脱した敵を追い払うため、頭部に尾をぶつけ続けた。自身がよっぽど傷ついているというのに。

 

 

「こんなッ…… 小物に……!!」

 

 

その様子に、ウルフは多少の屈辱を覚える。自らを簡単に傷つけるような存在に、痛みなどに狂うような存在に苦戦したのだと。

 

 

「(違う)」

 

「(敵が弱かった訳じゃない)」

 

 

戦う様子をずっと見てきたソニックは、それよりもずっとこのプププランドで見てきたメタナイトは気づいた。

 

全てが好転したのは、あの桃色の星が来てからだ。

 

 

 

─カービィがいれば、プププランドは救われる。そう、できているのだ。

 

 

 

─可笑しな話かもしれない。

 

ウルフェンから放たれたスマートボムがリヴァイアサンの頭部の下、人でいうなら胸部というべき箇所へ放られる。

 

─たった一人の生命に、この星の全ての命運がかかっているだなんて。

 

ハイドラが翻す。方向転換をして爆心地へ。

 

─だが、彼さえいるならプププランドは救われる。

 

緑の閃光が召喚獣の体を差し貫いて、爆煙から飛び出す。

 

─ああ、そんな彼だからこそ、金甌無欠の光にも残忍酷薄の闇にも屈しなかったのだ!

 

 

 

崩れていく。あの肉体が光子の如く。水面に沈む前に形を失って天へ還っていく。

否、水面も同様だった。プププランドを満たしていた水も、幻の様に消えていく。

 

 

あしたはあしたのかぜがふく。

 

 

ああ、終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

利用された召喚獣を悼んでいるのだろうか。それとも、悼むのは美に囚われた女王か。

光子の先へ向かうように空へ伸びたワールドツリーに、集まっていた。

 

 

「ぽよ…?」

 

「あ、蝶々。こんな高くまで飛んでくるなんて」

 

 

カービィのピンクの体に蝶が止まる。

訪れた平和に文字通り舞い上がってるのだろうか。

 

 

「もう、登ることにはならないよねー……?」

 

「3回登ったもんなー」

 

 

愚痴る愚痴る。一度落とされ、二度目に降りて。流石に登る技術はあっても体力は無限じゃない。ちなみにシュルクはカービィに乗せてもらっていた。キーラの時と進歩がない。

 

 

「しかし、大王には大衆のために残って欲しかったのだが」

 

「ふざけるな! オレさまのプププランドに手を出したんだ! 直接叩き潰さなきゃ気がすまねえ!」

 

 

これで、迷い込んだ者たちも帰れるようにはなったのだが、大乱闘の世界やマスターハンドの無事が確認できない以上、安易に連れ回す訳にはいかない。故にスマッシュブラザーズと少数の精鋭で向かうことになった。その少数とは、

 

 

「ぼくもいくよ。一回、口出しちゃったからね」

 

「大王さまの意見に一票! あのイミテーションもどきぶん殴ってやる!」

 

 

共に戦ったバンダナワドルディとティーダ。

 

 

「3号はそっちにいるんでしょ? ならいかなきゃね!」

 

「地味に4号とも連絡取れてないし、」

 

 

安否を確認するために、行動を共にするアオリとホタル。

 

 

「(ありがとう、心強いよ)」

 

 

新たな仲間の顔を見て、シュルクは心の中で感謝を述べた。二人で突発的にここへ乗り込んだというのに、随分と大所帯になったものだ。

見知った仲間へも視線を動かす。

 

 

共に来てくれたソニック。

見知らぬ者たちのために戦ってくれたガオガエン。

召喚獣に立ち向かったウルフ。

避難民を受け入れたメタナイトと守ってくれたデデデ。

そして、いつも助けてくれるカービィ。

 

 

最初は助けるつもりで来たのに、逆にプププランドごと助けられた。

 

 

「よーし! 進めー! ゴー!」

 

「よっしゃ! 誰が一番にルネって奴ぶっ飛ばせるか、No.1決めようぜ!」

 

「おっしゃー! 負けるかー!」

 

「アオリちゃん、煽らんといてー」

 

「そんなことしてないよー?」

 

「ガキの見本市か」

 

「まあまあ……」

 

 

束の間とわかっていても和気藹々とはしゃぐのは、次に切り替えるためだ。

 

プププランドに昨日と違う風が吹く。

大乱闘の世界に今日と違う風を吹かせる。

 

 

「やっぱり気になります……! 異世界ということは、私がここにいるようにブロウ先生もお近くにいるのでしょうか……?」

 

 

吹いた風が誰かの背中を押したのは、彼らの預かり知らぬ場所のお話。

 




○タイトル
カービィの座右の銘。
今日どんな大変なことがあっても、明日は明日の成り行きとなるのだからくよくよするな、という意味。


○ソニックの水遁(?)
モナドでのステータス上昇により、走り出しのスピードをカバーして、あとは素の足でなんとかしている。速度でなんとかしているだけなので止まると流石に落ちます。


○ハイドラ
カービィのエアライドで登場する、ドラグーンと双璧をなす伝説のエアライドマシン。こいつも3つのパーツを揃える必要がある。バトル面と最高速が凄まじいが、チャージに時間がかかるので止まるとめんどい。


○蝶
カービィシリーズの蝶はロクなものではないとアライズで判明。
平和の象徴であったはずなのに、バルフレイナイトの登場に一躍買い、極楽の夢見鳥なんて称された。ディスカバリーのOPでも時空の裂け目に吸い込まれてます。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「うい!」
「ディスカバリー発売おめでとう、カービィ。なんというか…… すごい変幻自在だよね」
「まだ出てねえ!!」
「右に同じく」
「忙しくて進められてないから! まだ少し待って!! あ、少し気になることがあるんだけど」
「なんだ?」
「ワドルディ、軽く10匹以上ワープスターに乗ってるよね? もしかしてあつめてカービィの時はサボって……って逃げられた!?」


○章全体を通じて
この章の構成について、プププランドを沈めるという発想元はゼルダの伝説スカイウォードソードです。フィローネの森が洪水状態になった場面からどこかを沈めることになりました。
このように大まかな道筋は決めていたのですが、実は細かな部分は最近決まっています。具体的にはカービィの登場タイミング。シュルクが水に浮かんでいるところに、ちょっと通りますよ状態で登場したり、原作のコピー能力を使っていたり、ハイドラではなくてティンクルスターアライズだったり。
結果、他のファイターを目立たせたかったので、主役は遅れてくるんだぜといった場面で美味しいところは貰う案になりました。
実はあやふやだったのはカービィぐらいで他の子の動き方は初期案とほとんど変わってないです。


○僕の話したいことだけ話すのコーナー
「やあ、ルネだよ。こっそり枠を取らせてもらったよ。僕が話したかったのは今後、僕の仲間(一応)として登場する人々が一体誰のボディを体としているのかということ。まあ、予想してみようというよりはこうだったら面白そうとか願望に近いけどね。ではどういう基準でボディが選ばれているのか基準を教えるよ。
まずはボディを新しく制作できないこと。つまり、灯火の星の一件でボディを作られたファイターのボディに限るんだ。パックンフラワーからソラのボディは存在していないからそもそも選べない。
次に精神側の好み。僕は好みとは少し違うけどね。こうありたいとかそういう願望が叶えられているかもしれない。
それと男は男のボディしか選ばないよ。女も同様。変な性癖を持つような子いないからね。
後、喋れるものに限る。話せないと君たち困るでしょ? そういうこと。
大体こんなところかな。ということで気軽に妄想してみてね。」

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