大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
就活が忙しいと容疑者は供述しており……
というわけで大遅刻です。
書き溜め分も底が見えて来たのでそろそろ更新停止するかもしれない…… ただでさえゲームの時間全然取れてないのに……
27話 運命の分岐点
人には手が2本ある。2本しかない。
まるで掬うように手を使っても、零れ落ちたものは掬えない。救えない。
同じように手を繋げる人数は2人しかいない。それ以上は届かない。他とつなぎたければ元いた誰かを切り落とすしかない。結局は絆なんてそんなものだよ。
でもきっと彼らは違う。僕達とは違う。
危険が降りかかるとしても助けに行く。繋ぎきれない絆なら、誰かが代わりに繋いでくれる。
彼らは無遠慮で無配慮で無責任な尊敬と憧れをぶつけるのに相応しい存在だ。なんせそれに押しつぶされて孤独に生きるなんてこともない。
僕達の目には死ぬほどかっこいい英雄だ。各々の世界で完結する彼らに終わりはなく、最後もないそんなヒーロー。
僕は信じているよ?
彼らは必ず手を伸ばす。
てくてくと歩く。歩き続ける。どこまでいくの。わからない。なぜなら今いる場所すらどこなのか、彼らにはわからないから。
「ナナ〜…… ここどこー……」
「ポポ〜…… 知らないよー……」
荒野、というほど寂れた場所ではなかった。植物は生い茂るとまではいかなくとも不自然でない程度には自生している。かなり開けた場所。しかし、周囲の木々は突然変異を疑うほどに巨大なものだった。まるで自身が小さくなったように。
そう、不自然なのは二人だった。それぞれ青とピンクの防寒服を着たアイスクライマー達は明らかに自然から浮いていた。環境に合わない服装だがそこまで暑くはないのか、服を脱ぐ様子はない。
「誰も見つからないねー……」
「絶対誰かはいるはずなのにねー……」
彼らは自分の世界に戻って登山を楽しんだ。
協力して登ったり、競いながら登ったり。二人組での登り方は様々だ。 そうやって漸くの休日を過ごした後、大乱闘の世界へ戻ったはずの行く末がここだったのだ。
「でも…… もう一踏ん張りー!」
「えー…… 休もうよー……」
完全に座り込んでしまったナナに対して、両頬を叩くポポはまだ進めるらしい。
「行くよ、ナナ。きっともう少しだよ!」
「もう少しっていつ〜……? 無理だよ…… 少し休もうってー」
ナナを急かすが、それでもやはり動けない。疲労はそう簡単に霧散しない。なかったことにはならない。なるとすれば、精神的な錯覚なのだ。
「もう歩けないって…… ちょっとだけ、ちょっとだけだから……」
「うーん…… じゃあ、ボクだけで行ってみる!」
「……えっ?」
突如、アイスクライマーの思考は止まった。ナナの無意識にでた戸惑いによって。
ボク、だけ。つまり、置いていく?
ずっと一緒にいたのに? 離れたことなんてなかったのに?
信じられない。どうして、口の中で湿気がなくなったかのようにカラカラと乾いてる。続きの言葉を話せたのは、執念によるものだった。
「なんで…… そんなこと言うの?」
他の誰でもない自分から出た言葉。
他の誰でもない片割れから出た言葉。
世界で一番いけないことを言ってしまって、バツが悪くなって、目線が地に降りる。
「……ナナが意固地だからじゃん。どのみち誰か見つけないと。」
「意固地なのはそっちじゃん!! 休憩の仕方もわからないの!?」
「一人で休憩もできないの!? ボクがいなきゃそんなこともできないの!?」
売り言葉に買い言葉。
防寒具の中にも届く、あのひんやりとした空気が2番目に好きなのに。それを二人で感じるのが1番好きなのに。
どうして今感じるのは熱さなのだ。大乱闘の時とも違うムカムカとした熱さなのだ。
「だったら、好きにしてよ! どのみちわたしは動けないし!!」
「わかったわかった! もういいよ! じゃあナナも好きにしたらいいじゃん!!」
二人の道は別れ、ポポはひとり上を目指す。切り株のような形の広場へ。そして巨大な塔の上へ。背中も木槌も見えなくなって。
「…………」
一人を実感して急に寂しくなって。ナナは座り込んだままギュッと体を抱きしめた。それでも追おうとは考えていない。意地だったから。
「…………」
風が葉を切る自然音しか聞こえない。
黙っていた。周囲に誰もいないのだから、言葉にする意味がない。そう思っていたのに。
ガサッ
「……! 誰かいるの?」
草むらをかき分ける音が聞こえて、ナナは顔を上げる。呼びかけると応えるかのようにまた音がする。近づいているのだ。
「(ほら、休んでた方がよかったじゃん)」
心の中でポポに対する優越感を感じながら、立ち上がって更に声を上げる。自分はここなのだと。そう呼びかけるつもりだった。
しかし、その考えは払拭された。だって草の根掻き分けて飛び出してきたのは。
「…………は?」
見覚えのある姿をして、見覚えのない目をしていた。この感情のない瞳。一切の光のない瞳。
だって、倒したじゃないか。少し前に主人達もろとも滅したではないか。どうして、どうして。
「なんでボディがここにいるの!?」
目の前にいるのは精神のない自分達自身。
アイスクライマーのボディを先頭に他6体のボディがナナを囲んでいた。
即座に背後へ駆け出す。疲れただの言っている暇はなく、体に鞭打って動かした手足で背後の崖を登った。
「あぶないっ!?」
必死だったということもあり、すいすいと崖を登り、洞窟の入り口にたどり着く。同じ技術を持つ自身達のボディをハンマーで殴って落とし、ナナは洞窟の内部へと逃げていく。
「………………アイス、クライマーか」
木々や自然に隠れて、彼女のことを見ていた視線を誰も知らない。
ポポは仲間を見つけるために塔の頂上へ。
ナナは逃げきる為に出口から内部へ。
その蟻の巣にも近い塔は誰かがこう名付けていた。── 哀しき獣の塔と。
木の枝で形作られた天然の坂道を登る。それは塔の頂上まで繋がっていた。そこを目指していると、自然音とは明らかに違う、闘争の音を聞き取った。
「誰か戦ってる!? おーい!!」
「! この声は…… ポポ……か?」
「ちょっとー!? なんでハテナマークつけるのさ!」
坂道を登りきったポポは塔の頂上、窪んでいて広間となっている場所へ飛び降りた。
「リュウー! やっと誰か見つけたー!!」
「1人足りなくないか?」
「ナナのことは今は……って、何で!? ボディが周りにいるんだけどなんで!?」
「話は後だ! 適度に相手を続けて内部へ逃げきる!」
話しながら一撃一撃を加えるリュウの背後で、ポポは慌てて木槌を構える。まずは手頃なプリンのボディを杭に見立てて打ちつけた。
「暗い……! でも追ってきてるし……」
『ナナか?』
「うわああああああああああああああああああああ!?」
『…!? す、すまない、そ、そこまで驚くとは……』
「ふえ? ルカリオ?」
『ここがどこか知っているか? ……そもそもポポは?』
「って驚いてる場合じゃなかった! 早く逃げないと!」
ナナの背後、波導を感じるルカリオにはわかった。生命も精神も持たない存在が迫ってきている。その正体をルカリオは知っていた。
『ボディ……!? キーラとダーズの私兵が何故!?』
奴らから逃げるとするならば、この灯りのない洞窟内部を進まなければならない。自身だけならば問題ないが、ナナの誘導を敵がいる中で行わなければならない。
相手をするか、逃げるか。
2人は選択しなければならない。
登山家の2人はちょっとした口喧嘩で道を違えてしまう。しかし、運命はすでに定められている。繋がれた絆は変幻自在なものではなく、離れさせるのを許さない。
片割れは頂上から地上の出口へ。
片割れは地上の出口から頂上へ。
違えた道末ははじめから繋がっていることを、今の本人たちは知らなかった。
○章タイトル
今章の舞台はピクミン3の哀しき獣の塔となります。呼吸やサイズに関してはノーコメント。クエストということで片割れ同士を探す冒険となります。
○タイトル
ファイアーエムブレムifの共通ルートの最後の通称。
一度ここまでプレイしたら、次の周回で共通ルートをすっ飛ばせます。
ただし主人公の性別を変えるとついてくる臣下も変わるので二人のレベルが1に戻るのは注意。