大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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2話 すれちがい迷宮

 

池に薄く垂らした糸が波紋をうつのが、ブロウは好きだった。雲の流れを見ながら、竿にかけた指先に集中し、引っ張られるのを待つ。普段の言動から忘れられがちだが、ブロウは繊細な動きが必要な釣りが趣味だ。

 

ああ、雲が早く流れていく。空気も湿ってきたようだった。ひと雨降るのかもしれない。でもあと一匹は釣りたかった。

 

 

「あっ、ブロウみっけ」

 

 

魚なんて比じゃない波。ザバーンと海の波のようにブロウを濡らした元凶は、

 

 

「ガンナあぁ!! 人が釣りしてる池に入り込むんじゃねえ魚が逃げてがらんどうになってんだよ!」

 

「意気地なしだな」

 

「お・ま・え・が、脅かしたんだろうが!!」

 

 

人の休息のひとときを豪快に邪魔された挙句、開き直りやがった。ピキピキと血管が浮き出る。なんだこいつは。この際、日頃溜めに溜めた愚痴を猛烈ガトリングで放ってやろうと口を開いた時だった。

 

 

「おまえはさ、今度の休暇どうすんの? 帰んの?」

 

「ああ?」

 

 

一転、常識的な質問に勢いが削がれた。影に隠れがちだが、ブロウも割と勢いで生きているタイプだ。興が削がれ、愚痴はまた今度でいいかと怒りが萎んでいく。

 

 

「んー、別に帰る予定もないし留まろうと思ってるけど」

 

「じゃあ、3人の中で残んのお前だけか。ソードは任せてた花の手入れ行くし、私は機械いじりしたいし」

 

 

2人の予定を聞いてブロウは仲間外れにされたような気分になる。といっても戻ったところで釣りぐらいしかできない。この世界では違う世界の魚も釣れるから予想外が起きて楽しいのだ。

 

 

「って、そんなこと聞きにきたんじゃなかった。お前を探してるやつに会ったぞ」

 

「探してる? 俺を? 誰だそいつは」

 

「ピンク髪の探偵服」

 

「よし! やっぱ俺も帰ろうかなあ!?」

 

 

予定変更。どうやってここまで辿り着いたんだ。ソードか? 騙されでもしたのか。

会える訳がない。2度と話すこともできない。償う方法すら知らない。俺の存在ごと忘れてもらった方がいい。

 

─だって… シーラ、お前の父親を終わらせてしまったのは俺なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木々の生えた森。そこからは綺麗なオカリナの音が鳴り響く。森の中の巨大な切り株。テーブルにも使えそうなほどに広いそれに座って、こどもリンクは思い出を吹いていた。

 

 

「……………」

 

 

惰性でナビィを探していた彼は、待っている者のいない元の世界に戻る理由はない。故郷に戻る時は、今回が終わりを迎える時だ。

でも、繋いでいくと決めたから。戻るまではいかなくても前を向いて進むべきだ。たまには剣の稽古でもやってみようかな、と考えていたその時だった。集まっていた小動物達が一斉に散っていく。足音が聞こえる。誰か来たのだろうか。

 

 

「あら、シャイさんばかりなのね」

 

「驚いてんだよ、わかってるくせに。で、何かようなの、ベヨネッタ」

 

 

足にぶつかったリスを手で包んで近くの枝に乗せる。悠々自適という言葉がぴったり合いそうなベヨネッタは断りもなしに隣に座ってきた。

 

 

「気にしなくていいのよ、続きをどうぞ」

 

「興が乗らないよ、誰かが入ってきたせいだ」

 

「あら、悪い子もいるのね」

 

 

嫌味も軽く受け流すベヨネッタに、ため息をつきながら肩を落とす。折角の誰もいない空間が崩れて、今後の予定を思い出してしまう。面倒な予定だ。

 

 

「トゥーンの坊やに何か誘われたかしら」

 

「…なんで知ってんの?」

 

「見た目よりは長く生きてるもの。あの子以外で同じこと頼まれたらしっかり断るでしょう」

 

「自分でそういうこと言っちゃうんだ」

 

「あなたは言いふらすほど私に興味ないでしょう? 見た目に合わずにね」

 

「そりゃどーも、見た目よりは長く生きてるからね」

 

 

ベヨネッタの言ったことは正解だ。

トゥーンリンクが誘ってきたのだ。写し絵を取れる人がもう1人欲しいとのことで。渋々ながら了承したところ、いつもの子供組以上の人数が集まっていて驚いた。

というか、彼らは帰らなくていいのだろうか。もしかしたら知らないだけで頻繁に帰っているのかもしれない。また、巻き込まれた。その遊びのことを考えるとやっぱり胃が痛くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またこの夢だ。

夢の中で目が覚める…という表現もおかしいだろうが、夢にいると気づく時には同じ気配がする。

 

それはまるで、長い間住んでいた家は目をつぶっていようとそうだと見抜けるような雰囲気。

お粗末な寝台から体を起こし、流れるように檻に手をかける。円状に作られた檻の世界。しかし。

 

 

「(誰もいない…?)」

 

 

支配人、双子の看守、力を司る者…

誰もいない。自分しかいない。確実に誰かを感じるのに。

 

 

 

 

 

「ジョーカー!!」

 

 

自分で入れたコーヒーを飲みながら、高校の予習をしていた心の怪盗団のリーダー、ジョーカー否、雨宮蓮(あめみやれん)。少しうたた寝をしていたらしい。目を少しずつ開く。

 

 

「「ジョーカー!!」」

 

「起きてる…」

 

「ジョーカージョーカー、ちょっといい?」

 

「雨宮蓮、だからな?」

 

 

自分のもう一つの名を呼ぶ子供達に、ジョーカーは即座に訂正を入れる。

このスマッシュブラザーズに来てそれなりの時間が経ったが、苗字の後に名前という文化がないのか、ほとんどの人がジョーカーと呼んでくる。大乱闘の時は兎も角、平常時にそう呼ばれると少し恥ずかしい。

きちんと雨宮か蓮で呼んでくるのはリュウくらいだ。ケンやテリーはわかっていながらジョーカーと呼んでくる。

 

 

「ジョーカー、今度のお休み帰っちゃう?」

 

「そういう予定はないが…」

 

 

子供達のリーダー格、ネスの言葉に今後の予定を口に出す。

ジョーカーには普段の学業もあるので頻繁に帰る方だ。この世界とジョーカーの故郷とではかなりの時間の流れに差があるので、学業に穴を開けたことはない。二日三日こちらで過ごしても、向こうでは一日も経ってないと知った時には腰を抜かした。ゆえに時間を効率よく使うにはここの世界に残っていたほうがいい。

それにこっちが休日でも向こうでは休日とは限らないので、東京に遊びに行くこともできない。だからこの世界でゆっくりしようと思っていたのだが…

 

 

「じゃあさ、ネッシー探しに行こうよ!」

 

「ネッシー?」

 

 

ロボットのロックマンから世界一有名な未発見生物の話を聞く。

もちろんジョーカーとてネッシーのことぐらいは知っている。だが、最近では数ある情報はガセや偽物ではないかと考えられていることも。確かにこの世界にはいてもおかしくないが…

 

 

「ネッシーのね、姿を見たって噂があってね、みんなで探検隊結成したんだ!」

 

「トゥーンとこどもリンクが写し絵撮ってくれるって、多分そっちでも高く売れるよ、ふふふ…」

 

「(目が怖い…)」

 

 

ああ、なるほど。

むらびとの金稼ぎの一環に上手く載せられてしまったようだ。でも楽しそうだからいいか。

それでも疑問は残っている。

 

 

「どうして俺を誘うんだ?」

 

「えっとですね、フォックスさんに聞いた、んですが、ネッシーがいるっていう湖には、昔ドラゴンが住んでいたって、それで大人もつれていこうって、なりまして」

 

「他に誰がいるんだ?」

 

「えっと、今のところ僕とネスとトゥーンとむらびとと、ロックマンとジュニアとこどもリンク、ポポとナナは…」

 

「登山しに帰るからって断られたよ」

 

「ジュニアが頼むから多分クッパも来るよね!」

 

「後ジョーカー、です、」

 

 

もうすでにメンバーに入っていたことに愕然とする。押しが強い子供がこんなに扱いづらいとは。

 

 

「はあ、仕方ないか…」

 

「やったー! ありがとうジョーカー!」

 

「だから蓮」

 

 

そちらの押しも強かった。

ため息をつきながら了承する。あの場所で覚えた一抹の不安は掻き消えていった。

 




○すれちがい迷宮
すれちがいMii広場の有料追加コンテンツの一つ。
お化け屋敷的なところに迷い込んだプレイヤーがすれ違ったMiiからマップのかけらを貰い、内部を探索していく。うちの格闘Miiファイターはこのシリーズを経験済み。そこで何かあった結果、すれちがいフィッシングへ。


○ピンク髪の探偵服
一体何・ベルさんなんだ…? どこの天才助手なんだ…?


○ジョーカーの本名
シリーズでデフォルトにされている雨宮蓮となりました。なお、文化の違いでほとんど呼ばれない模様。他には漫画の来栖暁など。


○昔ドラゴンがいた湖
もしかして:レックウザ


○一ヶ月の内にあったかもしれない話
「ついに比翼英雄だと思ったら女の僕に先を取られた件」
「まあまあ…」
「神界英雄も比翼英雄も先越された。なんなら後輩にも。もう神装英雄か双界英雄に頼るしか…」
「ヒーローズの話は万人受けしないよ…」
「ルフレ、一緒に双界英雄になろう?」
「確約はできないよ…(先にクロムと比翼英雄になりそうで…)」
「(クリスも僕と先に比翼英雄になりそう…)」
「(もうソティスがいる)」

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