大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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29話 それがあたしの生まれた意味

「もー!! なんで!? なんで追ってくるの〜!!」

 

『走るぞ! この暗がり、まともに構っていられない!!』

 

 

波導を感じるルカリオに、洞窟の暗さは問題にならない。付近の地形、慌てて逃げ惑うナナ。ただそこに存在することだけはわかるボディ達。眼に映るが如く、ルカリオには感じ取れた。

 

しかし、ルカリオだけだ。

出口から差し込む光だけが頼りのナナにはわからない。先程、大きな花にぶつかった時もぶつかるまでわからなかった。ほとんど見えない状態のナナと共に迎え撃つのは容易ではない。

ボディについてはなんとも言えないが、少なくともルカリオ自身のボディはこの暗がりを物ともしないだろう。他のボディについては不明だが、楽観視できる余裕はない。

 

 

『止まれ!』

 

「うわッ!?」

 

 

ルカリオの指示通り、急停止。

波導は見落とさない。向かい側へ進む橋がない。足元の感覚からして橋となるべき足場がこちら側に引き上げられているのだ。

 

 

「ほ、他の道!」

 

 

見えずとも理解していたようで、代替案を提案。だが、助言より先に、ルカリオの思考は動いていた。

このまま落ちれば、池にドボンだった。深さまではこの位置では測れない。中央に向かって飛び降りれば陸地があるのはわかるが、ボディが追ってくるのは変わりないだろう。残ったのは……

 

 

『! 周り道だ!』

 

「うん! ってわあ!?」

 

 

返事が終わらないうちに、ルカリオはナナを抱えていた。そして進んでいた方向とは違う右の道を行く。出口が遠のいて、ナナの目はほとんど何も見えなくなった。

 

 

『(障害はあるが……!)』

 

「わあああ!?」

 

 

この道も困難がないわけではない。

立ち塞がるのは砂でできた壁だ。時間をかければ壊れるだろうが、かける時間ももったいない。ナナを抱えたまま、足だけで飛び越えた。見えずとも変わる環境にナナは悲鳴を上げるしかなかった。

 

 

『(これでどうだ……!)』

 

 

背後に対して集中力を高め、追ってきてるであろうボディ達の様子を確認する。

どうやらただ相手をすることしか定められていないのか、6体のボディがそれぞれ壁をよじ登ったり、壊そうとしている。連携はもちろん取れてないし、譲り合って先に行かせるということもない。少しは時間が取れそうだ。その隙に、ルカリオはどうしても聞かなければならないことがある。

 

 

『ナナ、ポポはどうした』

 

「っ!!」

 

 

あからさまな動揺、もしかしてポポに何か起きたのだろうか。ボディ達に襲われて、置いて逃げるしかなかったのかもしれない。場合によっては助けに行かなければ。そのために距離を取るより先にこの質問を投げかけたのだ。

 

 

『……まさか本当に』

 

「……違うし。そんなんじゃない。だってポポが悪いもん。1人で行くなんて言うから」

 

 

その動揺をめざとく感じ取ったルカリオは最悪の状態を想像する。

しかし、それは否定された。ヘソを曲げてそっぽを向くナナからは悲哀の感情はなかった。怒りだった。先程の動揺は痛い所を突かれた故か、それとも結果的に危険地帯でひとりにさせてしまった負い目か。

 

 

ボディ達が砂壁に対してあれこれしている喧騒が、流れる水の音が遠のき消えて感じなくなる。上手く返せない。喧嘩するような相手はほとんどいなかったから。

普段は冷静な判断を下すルカリオの頭脳も今はこおりついたかのように止まっていた。

 

─それでも言いたいことはある。

 

 

『上手く、説明できないが』

 

「……」

 

 

その前置きは誰のための保険だったのだろうか。よくわからなかった。

 

 

『大切だから、振り払う。嘘をつける。切り離せる──そんなことも、あるんだ』

 

 

だって、裏切ってなかったのだ。

裏切られてなかったのだ。

 

あの眠りは絆をも断ち切りかねない決定的な隔たりだったが。

 

嫌われてもなお、生きて欲しいと思ったから。

 

自分の知らないところで、全ての悲劇を塗りつぶせるほど幸せになってほしいと思ったから。

 

 

「…………」

 

 

ドガンッ!

 

 

『ッ! 抜けてきたか!』

 

 

急速に現実世界へと戻されていく。

何も見えないナナも、その音でなんとなく危険であることは理解できた。

 

 

「どうすればいい?」

 

『できるだけ音をたてて走る。誘導もする。信じて着いてきて欲しい』

 

「うん」

 

 

短くそれだけを返事した。まずは先程通った、橋がかかっていただろう対岸へ。そしてそこから道なりに進む。

集中すればどこへ明るい場所がどこかわかるだろうが、現状無理だ。ルカリオ以外に戦える人材が必要で、それには明かりが必要だ。

 

 

『手をつなごう。走るぞ』

 

「うん」

 

 

ナナの手を握り、走り出した。

ひとまずボディを撒かなくては。伏兵もいるかもしれない。案外近くに別の道があるかもしれない。現在できる限りで索敵の範囲を広げる。

そうして警戒を高めていたルカリオの知覚に入ってきたのは意外な存在だった。

 

強さと神聖さ、そして厳格さ。

強さと粗暴さ、そして狡猾さ。

 

 

『シモンにキングクルール!』

 

「! この声は」

 

「ああ!? なんだって!?」

 

「え?」

 

 

それに気づいたのは遅かった。

シモンもクルールもずっと逃げていて、ルカリオはその背後にいるボディも知覚できた。

とはいえ、双方遅かったのだが。

 

 

「うおっ」

「わっ」

『むうっ』

「ギャッ」

 

 

曲がり角にて正面衝突。

しかし、気づきが遅かったシモンとクルールは減速できず。

人と比べればスタイリッシュで軽めのルカリオと女であり子供のナナは減速していた。

その結果から導き出される結末は。

 

 

『落ち、る……!!』

 

「……! あれは」

 

 

崖の道からの落下である。

シモンが何か明かりがあるのに気づいたのはその一瞬であった。

 

 

「うわああああああ!?」

「ぐおおおおおおお!?」

 

 

ナナとクルールの叫び声。何も見えない中での落下は相当な恐怖だ。衝突の際に完全に手を離してしまったため、周りの人が全員消えているかのような感覚になる。ひとりに、なって。

 

 

─ なんで…… そんなこと言うの?

─ 意固地なのはそっちじゃん!! 休憩の仕方もわからないの!?

─ だったら、好きにしてよ! どのみちわたしは動けないし!!

 

「(あれ……?)」

 

 

暖かさが消えた手の感覚だけがはっきりとしている。気づきたくなかった。先に暖かさを手放したのは。離れたのではなく離したのは。

 

 

水飛沫。辺りに飛び散り、辺りから飛んで。

水の中に落ちたのはわかった。

 

 

「プハッ! 深くなくて命拾いしたか」

 

『君たちもここにいたのか…… シモンにクルール。』

 

「あん? オマエルカリオか。真っ暗で全然わかんなかったぜ」

 

 

やっぱりそうであった。

ルカリオやアイスクライマーだけではなく、他にもこの世界に来ていた者がいたのだ。

 

 

「あのボディ達に追われていてな、少し相手をしていたが、キリがなくクルールもいるから逃げてきたのだ。」

 

『気づかなかっただけで随分近くにいたのだな』

 

 

ルカリオほどではないが、シモンも暗がりでの戦闘は慣れていた。出口から放たれる僅かな光を頼りに戦っていたそうだ。

 

 

『……! 追ってくるか!』

 

「何」

 

 

のんびり雑談をしている時間は与えてくれない。降りてきたボディ達による水飛沫が血になるような錯覚。囲まれているような圧迫感。

戦力になるのはルカリオとシモンの2人だけ。しかし、シモンは十全とは言い難い。

 

 

「やる他ない!」

『わかってい……!?』

 

 

覚悟すら決めていたルカリオの正面、機械の偶像が崩れ落ちた。横から飛んできた飛び道具。その正体をルカリオは知っていた。

 

 

「君は……?」

 

「あっ……!」

 

 

友人にそっくりないでたちにシモンは少し動揺する。ナナの視線は自然とそちらへ動く。その者はカンテラで明かりを持っていたのだ。

ルカリオとナナは安心の顔へ変化する。

シモンとクルールの表情は変わらなかった。彼らを知らなかったからだ。

 

 

「ああ、安心してくれ。俺が見張っておくからコイツには何もさせない」

 

「誰がコイツだ。我は罰とやらの清算させられているだけだ」

 

 

緑衣の衣、ゲルドの王。

勇気、力。

 

 

「本当に、久しぶりだな」

 

「〜! うん!」

 

『ああ。そして助かった……!』

 

 

生まれは牧童。なのに気品や神聖さを感じさせる、過去の仲間。

 

光の勇者。黄昏のケモノの力を持つ者。

過去にスマッシュブラザーズとして、アイスクライマー、ルカリオと共に亜空軍を撃退した、()()()がカンテラの光に照らされて立っていた。

 




○タイトル
キングダムハーツ 358/2 daysの最終盤、シオンの放ったセリフ。
どういった意図でこんなことを言ったのか知らない方は、ミュウと波導の勇者ルカリオで登場するアーロン様に近い感じと語ってくれればよいかと。


○暗がり
真っ暗な中で逃げていられるのはルカリオがいたからこそ。
シモンの戦場は、月明かりがうっすら差し込む夜だからこそ、多少は暗くても戦えてます。


○マップ
ピクミン3の哀しき獣の塔そのまま。ただしアルフ達が解いたギミックは全て元に戻っている模様。まあ、ショートカット用の岩壁先に壊せばいいから2週目以降はほっといててもおかしくないけど。
ナナ側の行方を追うときは出口から逆走していることを忘れずに。


○『大切だから、振り払う。嘘をつける。切り離せる──そんなことも、あるんだ』
キングダムハーツのユニオンクロスでこのパターンやられてから、こういう展開やられると胸がギュッとします……
それは、ルカリオだから言えること。


○リンク(トワイライトプリンセスVer)
X、forとスマッシュブラザーズに参戦していた光の勇者。2つの作品に登場していたもののみが彼のことを知っています。
武装とすれば、マスターソードや原作の道具。しかしミドナと別れた後なのでウルフリンクにはなれません。
スマッシュブラザーズの中では、対亜空軍で同行を共にしたヨッシーと仲がいい。作者の前作では、ほんの少し言及される程度で登場。同じ世界出身のゼルダもといシーク曰く、牧童だというのに気品を持っている、だそうな。


○ガノンドロフ(トワイライトプリンセス)
上に同じく。リンクと違って時オカガノンと同一人物の設定だが、まあちっちゃいことは気にするな。
スマブラの技と、剣も使える。しかし処刑用の剣そのままなので時オカガノンのそれと比べて細身の剣。
一部にはこっちの方が馴染み深かったりするが、影の世界に追放されたり処刑されかけたりしたおかげで、時オカガノンより感情的。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「………………あ! 自分は主人公じゃない!?」
「あ、無双の話? ヨゾラみたいな声の人が主人公なんだよね? あー、残念……だったね?」
「いや、驚いてはいるが…… ちゃんと自分の性別選べるから全てを許す」
「いいんだ……」
「自分の話もいいが、ソラの方も新情報でたんだろう?」
「ああ! DRの配信日に新作アプリにIV! よりどりみどり!」
「発売に何年費やすのだろうか」
「やめて」
「また配信延期にならないだろうか」
「やめて」
「ユニクロみたいな課金ゲームに」
「やめて」
「キングダムハーツってこんなゲーム」
「やめて!」

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