大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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30話 10番道路

 

「あの生き物は、『とある星』の…… オリマーがいた世界の……」

 

 

窮地で情報がまとまっていないところに、更なる情報が殴りかかってくる。呼吸を整えるための荒い息がどこか別の場所で行われているような錯覚に陥り、自分の自我が離れていく。それでも、歴戦の長たるリュウの体は動いていた。

 

 

「わっ!」

 

 

ポポを抱えて、原生生物チャッピーとコチャッピーの群れをくぐり抜ける。気づいたコチャッピー達は追ってくるが、速い足を持っていなかったので敵ではない。本当の敵は目の前に立ち塞がっていた。

 

 

「あの壁!」

 

「ポポ、口を閉じているんだ……! 竜巻旋風脚!!」

 

 

逃げるための走力を助走に変えて、大規模な回し蹴りを砂壁に叩き込んだ。表面が剥がれ、より濃い色の土が姿をあらわす。もう一撃だ。右の拳を引いて正拳突きの構えを取る。

 

 

「大丈夫だ! オレに任せてくれ!」

 

「!?」

 

 

拳が叩き込まれようとした時だった。リュウよりも先に、炎の鳥を纏ったパンチが叩き込まれたのだ。その威力に粉々になった砂のかけらが小さな火を留めている。

 

 

「ファルコンパンチ、決まったな!」

 

「キャプテン・ファルコン!」

 

 

壁を壊そうとするリュウに加勢したのは、常時ヘルメットを被ったレーサー、キャプテン・ファルコンだった。

バイザーで目元は全く見えない。顔はおそらく誰も知らない、だがスマッシュブラザーズは誰でも知っているヒーロー。

 

 

「ポポもリュウも元気そうでよかったぜ! ところでナナは?」

 

「外で休ませているそうだ」

 

「……またそれ? ボクどう思われてるのさ」

 

「いわゆるニコイチだろ?」

 

 

まるで当たり前のように返されたポポは、怒りも萎んでそっぽを向く。一気に不機嫌になったポポを見て、リュウとキャプテン・ファルコンは視線を合わせた。

 

 

「(おいおい、本気で何があったんだ?)」

 

「(俺も休ませてる程度しか聞いていないが……)」

 

「(絶対嘘つかれてるって! 喧嘩でもしちゃったか?)」

 

「(む…… それなら尚更ナナは危険だ。ポポは不本意だろうが見つけなければ)」

 

 

互いに小声で会話し、今の真実を理解する。何かしらいざこざがあって離れざるを得なかった。それも本人同士の問題だろう。問い詰めなければならない。そのためには、

 

 

「だが、それより先にあの生命体を振り切らなければな」

 

「ワオ!? なんだコイツ!?」

 

「(完全に忘れてた……!)」

 

 

チャッピー達を溶かしてでも後を追ってくる謎の存在にいい加減嫌悪感すら湧いてくる。開けた道を走りだすと、脇には先程の砂壁のような、水晶壁というべき存在があるのに気づいた。

 

 

「登るぞ!」

 

「OK!」

 

 

水晶壁に向かって足をかける。リュウから離れたポポは脇の崖をすいすいと登っていき、壁の向こう側へ回った。筋肉質な二人よりも先に登りきったポポは比較的冷静になって生命体を観察できていた。

 

 

「あの生命体が……」

 

「オレ達のことガン無視だったな」

 

 

少々遅れてたどり着いたリュウとキャプテン・ファルコンも生命体を見る。水晶壁を挟んで檻の中の獣を見るように観察していると、こちらのことなどお構いなしで通り過ぎていった。

 

 

「やり過ごせたの?」

 

「いや、むしろ俺たちに興味がなかったんだろう。目的地がたまたま同じだったから追われていたように感じただけだ」

 

「勘違いだったのか? 確かに後からここに入ったオレはなんともなかったしな」

 

 

脅威の免れた場所で、安堵の息を吐く。

ようやく訪れた安寧に心が安らぐ。しかし、運命がそれを許さない。英雄達は永遠に戦うべきだと何かが囁く。

 

 

「なんとかなったぁ…… ってうわあ!?」

 

「次から次へと!」

 

 

もういい加減にしてくれという、懇願の言葉は届かない。彼らが彼らであり続ける限り。

緑色の虫がその顎でポポの体をがっちり掴む。獲物を逃さないと空中へ逃げる1匹と地を這う同種が2匹。

 

だが、戦闘には入らなかった。2人が戦闘態勢となる前に緑色の虫は銃弾を受けて造られた命を終える。やはり小金の液体にすぎない存在だったが。落っこちたポポは着地失敗で顔を地に沈める。

 

 

「騒がしいんだな、スマッシュブラザーズというやつは」

 

「どちらさん?」

 

 

銃弾の主、この場に降りてきたのは銀の髪の女性だった。ぴったりの服は真っ赤に染まっており、手には現実のものと似ていない色の両手銃。

 

 

「私はジャンヌ。セレッサとは故郷を同じとする」

 

「セレ…… 誰?」

 

「……ああ、ベヨネッタのことだ。思い出したのだから本名で通してもいいものを」

 

 

ベヨネッタの仲間か。確かに少しだけ見た戦い方が同じだ。スマッシュブラザーズ以外の人間もこの事件に巻き込まれていただなんて。

 

 

「名前のことに関してはマスターハンドが決めているからな。俺は苗字を名乗りたくないからこれでよかったが」

 

「ポポとナナもアイスクライマーだしな」

 

「蓮が蓮と呼んでくれないと愚痴っていた。名前についてはみな事情があるんだな…… ってそんなこと言いたいんじゃない。ポポ、無事か?」

 

「落ちた…… 痛い……」

 

「そのぐらい我慢するぞ」

 

 

顔から地面に猛烈な接吻をしたポポは半泣きである。しかし、休息兼情報整理をしなければならない。

ポポを座らせる。花弁の肉厚な花がちょうどあったので背もたれにした。

 

 

「で、あの変なやつなんだったんだ? 触りたくない感じだったな」

 

「わからない…… 何か目的があるようだが」

 

「変なやつだと?」

 

「水餅のような…… 透明な液体の中に金色の立方体があった。見ていないのか?」

 

「悪いが見ていないな」

 

 

ジャンヌは知っているかとダメ元で聞いてみたが、結果は芳しくなかった。そもそも目撃してもいなかったそうだ。

 

 

「えっと、あれも怖いけどもう一つあって」

 

「もう一つ?」

 

「ボディも俺たちへ襲いかかってきたんだ。ポポとは、俺がボディ達と戦っている時に合流したんだ。」

 

「ボディ…… そうか、前に色々あった時のことだな。スピリットになっていたが、私も何が起きていたかぐらい知っている」

 

 

ボディ達の再起。

それはキャプテン・ファルコンに最悪な勘を生み出した。

 

 

「おいおい、キーラかダーズかが復活したとかか!? 同時に倒せば復活しないんじゃなかったのか!?」

 

「復活したにしては手緩くないか? 前回は敗北寸前まで追い詰められたと聞いているが」

 

「ああ、一度全滅寸前まで追い込まれているのだから同じでなくとも似た手を取ればいい。おそらくボディを使っているが別人の仕業だと思う。」

 

 

不明点はないか、3人の顔を見渡して話を続ける。

 

 

「だから当面は黒幕を見つけて捕らえるのが目的だ。その過程で問題なのがあの生き物だが……」

 

「そいつはボディ達の味方ではないのか?」

 

「おそらく違う。ボディを巻き込んでまで何かを追っているところを見ているからな。敵とも認識していないかもしれない。」

 

「相手しないならしないに限るよな」

 

 

やることは決まった。あの生命体をやり過ごしたからじっくり探索できる。だが、迷い込んだ誰かが狙われていることは否定できない。

 

 

「よっしゃ!! まずはナナを見つける! んで、どっかにいるボスを捕まえる! ほかにここにきたヤツがいれば仲間に加える!! こんなもんだな……」

 

 

キャプテン・ファルコンが意気込むその言葉尻が萎んでいく。行こうと意気込んでいたからその視線は、外へ出る方向である水晶壁だ。そちらを見た途端これだ。何事かと思って全員が反射的にそちらへ向いた。

 

 

「すっげ〜面白いことになってんなあ? まるで飼い慣らされた小動物でも観察するような気分だぜ〜?」

 

「リ、リドリーゴラアアアァァ!!」

 

 

水晶壁を破壊しない限り出口がないここは、籠城にはもってこいだ。しかし、その必要がなくなった今、檻にすら見える。

 

これは恥。

しかも一番言いふらしそうな奴に知られて、状況も環境も何もかも忘れて憤るレーサーであった。

 





○タイトル
作者的にはポケモンBWの楽曲。
名の通り10番道路で流れる曲。これからチャンピオンロードに入るというド終盤で流れるドラマチックな曲調。そのおかげか、道路系の曲の中で群を抜いて人気。スマブラWiiUにアレンジ曲が収録。


○チャッピー
和名ベニデメマダラ、イヌムシ科。
ピクミンで一番有名な原生生物。マリオのクリボー、カービィのワドルディ。でも最弱ではないし、ゲームはじめて初の敵ってわけでもない。
とある星のフィールドでたまに右に登場して殺してくる奴がコイツ。
夜行性なのでオリマー達が近づかない限り起きてこない。ちなみに命名元はオリマーの飼い犬。


○コチャッピー
和名は初代でデメマダラモドキ、2でベニデメマダラモドキ。パンモドキ科。チャッピーの子供のように見えるが、擬態種なので別種。
ピクミンでの最弱の敵はコイツ。はじめて会うのもコイツ。しかし、真上へピクミンを投げると一撃で潰される。


○緑色の虫
ピクミンに登場する原生生物トビンコ。
ピクミンを捕まえて噛み切ってくる。普通に戦えば、大量に犠牲になったりはしないだろうが、体力が減ると飛んで逃げるのが厄介。何故か3のストーリーモードでは哀しき獣の塔の偽物っぽい個体しか登場しない。


○ジャンヌ
ベヨネッタシリーズに登場。初代では色々あった結果、幼馴染のベヨネッタと敵対することになる。2では彼女の復活を動機として物語が始まる。男勝りな口調でベヨネッタと同じバレットアーツの使い手。


○名前問題
名前のことに関しては一章で色々言われてました。頭の片隅に置いておくといいかも。


○リドリー
シリアスな締め方じゃないけどたまにはいいかなと。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「 _人人人人人人人人_
> 突然の発売日 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ Y ̄ 」
「え、あの……ゼノブレ3発売9月じゃなかったっけ…… スプラトゥーン3と間違えてる?」
「いや、あたしんとこの発売日がはやまってた訳じゃないでしょ……」
「唐突に発表してきた…… キングダムハーツぐらいのイベントで発表してもよかったのに……」
「しかもめっちゃはやい…… ブレワイぐらいもったいぶってもよかったのに……」
「そういえば、インクリングも僕もこの話では章の主役的な立ち位置だったよね」
「つまり年内にアイスクライマーの新作が……!?」
「この小説にそんな力ないよ!!」
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