大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「灯りさえありゃ敵じゃねえ!!」
リンクが腰に下げていたカンテラ。その灯りのおかげでようやく全員がまともに戦えるようになった。あまりにも遠い敵は見えないのだが、それでも先程と比べてしまえば難易度は下がる。魚を掴むのが、濁流か清流かの違いだ。
「せい!」
「誰かは知らないが、助太刀に感謝する!」
キングクルールも、ナナも、シモンも。
整った戦場で追ってきた奴らの相手をする。
拳が、木槌が、鞭が。
ボディ達を強かに打ち、ダメージを蓄積させていく。戦士としての意志がようやく照らされ視認できるようになったのだ。
「この状況は…… とりあえず敵を倒してからだな、助力しろ、ガノンドロフ!!」
「貴様が指図をするな……
トライフォースの力で拘束されたフォックスのボディに、ガノンドロフが振るった賢者の剣が突き刺さる。倒れ伏したボディから最後に撃たれたブラスターはリンクのマスターソードによって弾かれた。
「これで終わり……?」
『ああ、もう近くに敵はいない』
「あっそ、で誰なんだコイツら」
キングクルールの興味は、光と影の戦いを経験した勇者と魔王に移っている。自分の知る人物に似ているとなると尚更だ。
『ああ、2人のことだな。少し説明が難しいのだが、君たちがいなかった前回リンクとガノンドロフとしてスマッシュブラザーズにいた者達だ。』
「??? どういう意味なのだ?」
『代替わりした、という表現が一番近いか。名前も同じなのでややこしいのだが、スマッシュブラザーズに昔いたといったところだ。』
「……なるほど、大筋は理解した。私たちの知る2人とは別人なのだな」
「めんどくせえんだな、それで名前は」
「俺はリンク。そしてコイツがガノンドロフ」
「名前同じなのかよめんどくせえ」
前に戦っていた仲間。大乱闘で戦うことはできずとも、それでも大切な仲間なのだ。
「ややこしいのは否定しない…… ところでナナ、ポポは一緒じゃないのか」
「えっ…… えっと……」
また、同じことを聞かれ返答にどもるナナ。
それに気を悪くした様子もなく、落ち着いてごらんとやさしく諭す。屈んで視線を同じ高さにする。だが、この状況でもナナの口は沈黙を保ち続けていた。
「どうでもいい、優先するべきはこの場から大乱闘の世界へ行く道だ。」
「あー! 同感同感。いない奴のこと気にしてる余裕ねえよ。」
「探さない訳にもいかないだろう。これだから……」
その後に続く自分の言葉を、シモンは無理やり押し留めた。悪に染めた闇の使徒でも、現在は共に戦う存在なのだから。
『喧嘩するほど安心できる状況じゃないんだ。とりあえず、この暗闇から出る方法を探そう』
「(喧嘩するほど……)」
ルカリオにその意図はあったのか定かではない。それでもその言葉はナナに突き刺さった。
みんなそうだ。1人でいただけでみんなもう1人のことを聞いてくる。
もしかして、自分じゃなくてポポの方を気にしているのだろうか。走るのも足踏みも2人で一緒にしたいと考えていたのは自分だけだったのだろうか。周りのみんなもポポも違うように感じていたのだろうか。
ビチャという水音にようやく気づく。
水圧で足が自由に動かせない。アイスクライマーというペアにとって自分はその程度のものなのだろうか。
暖かく輝いているカンテラの光がやたらと遠いものに感じた。
池のように溜まっていた水から上がると、ルカリオは波導で辺りの探索をはじめた。
目を閉じ精神を集中させることで少々遠い地形も感じとることができる。戦いながらではできなかったそれを今試している。灯りと戦力が整ったからこそできたことだ。
「しかし、先程言っていた罰とはなんなのだ?」
「……」
「ナナ?」
「えっ、あっ、と、何?」
「ガノンドロフの罰とはなんだ、と」
それに答えたのはナナではなく、リンクだった。中心に置いたカンテラに照らされながら、マスターソードの調子を見ている。視線は外さぬままに語った。
「前に亜空軍というのと戦っててな、コイツはそれを率いて世界の掌握を狙っていたんだ。」
「……ふん」
ガノンドロフはそっぽを向いた。それは羞恥からくるものではない。
失敗した時の計画を語られることに嫌悪感を示しただけだ。自分もまたタブーにいいように利用されていたとなれば尚更である。
「その贖いのために動いていると?」
「あの世界に何かあったら、世界のために動けって言われてるんだと」
「それで一緒にいるんだ」
「あー…… 一緒なのは偶然。運良くここで会った。そもそも俺が倒す前の時間から来てるし」
少しバツが悪そうにリンクは言った。
なんとも思ってなさそうに見えるが、心の中では複雑な気分でいたらしい。
「まあ、気持ちはわかんなくもねーけどよ、利用してやるつもりでいっちまえよ」
「言われなくてもわかっている。貴様のような小物に言われなくともな」
「あ゛あ゛!?」
キングクルールとガノンドロフの溝が深まり、喧嘩が勃発。というか、キングクルールが一方的に仕掛けている。ナナはキョトンとしているが、2人は呆れた目で見ていた。
「もう…… 敵がよってこなきゃなにしてもいいさ……」
「付き合うだけ疲れるか……」
大きくため息を吐いた2人にルカリオが歩んできた。どうやら波導の探知が終わったようだ。だが、キングクルールとガノンドロフの現在を見て、2人と同じ顔をした。
『どういう状況だこれは……』
「あー、口に出すのもくだらないから聞かないでもらえるか……」
この返答で大体察せるというものだ。
「で、どうするの? 他の出口見つかった? それとも崖登ってさっきいたとこ戻る?」
さっきいたとこ。
ナナがこの暗闇に入った場所だ。ボディ達は倒したのだから、戻ることはできる。
しかしそこに関しては、確かに遠いわけではないが、崖を登らなければならない。
『それでもいいが、暗い中で崖を登るのは無謀だ。灯りがあるといっても一つだけだからな。』
「1人ずつ登るのも、どこに敵がいるかわからない以上避けたいな」
『ああ、だが近くに別の出口があった。そこを通ろう。ポポもこの塔のどこかにいるはず』
「探しながら、だな。俺も久しぶりに会いたい」
『どうせなら、他のスマッシュブラザーズも紹介しよう。そろそろ進むぞ、2人』
ルカリオの音を介さないテレパシーに反応し、まずはガノンドロフが口を止めた。
「道はどこにある」
『共に行くぞ、罰だかなんだか知らないが、起きている事をマスターハンドに知らせなければならない』
そう、マスターハンドに会えばどうなっているのかわかる筈だ。どうしてボディが現存しているのか、ここはどこなのか。
しかし、まだ彼らはこの知らない。ここは彼らの知る大乱闘の世界とは別物だということを。
「オマエッー!! 何を無視している! せっかくオレ様が悪役の流儀というものを」
「いい加減にしろ、話が進まない」
キングクルールの口を片手で掴んで閉じさせる。フガフガと何かを語りながらシモンへ怒りの矛先を変えた。
『遠くないのは幸運だった。私が先頭に回る、リンクは最後尾を頼めるか』
「まあ、そういう配置になるよな。わかった、後ろは任せてくれ」
索敵範囲の高いルカリオを先頭に、カンテラを持っているリンクが背後を守る。その前方に多少の暗闇耐性を持つシモンとキングクルール。消去法でルカリオのすぐ背後はナナとガノンドロフとなった。
「……なんだ」
「……いや、何にもないけど……」
どうしてガノンドロフが隣になるのだ。知らない仲とは言えないが、仲良いわけじゃないし。怖いし。なんでこう運が悪いのだ。前にこういった2人で並んだ時は確か……
「(あっ…… そっか、いつもポポがいたんだ……)」
こうやって2人で並ぶ時は、いつもポポが相手だ。選ぼうとも思わなかったのだ。
「(こんなことで困んなきゃいけないの……)」
腹が立つ? いや、不便?
なんか違う、なんなのだろう。
その答えは光の差し込む場所に来てもなお、出てこなかった。
○タイトル
ピクミン2の地下洞窟の一つ。そしてみんなのトラウマ。
青ピクミンにしかいけない池の中に入り口があるのに、他の属性要素もあるという表記から?を浮かべることから始まり、じっくり進めていくとローラーで轢き潰してくる上に倒せないアメボウズが降ってくる。
よくある攻略方としてはピクミンは少人数でいくこと。
ここのボスのアメボウズと本作の舞台哀しき獣の塔のボスアメニュウドウは名前以上に共通点が多い。
え、今話の水要素? 最初池で戦ってたでしょ?
○ガノンドロフの罰
亜空の使者におけるアレコレ。タブーに騙されていたようなものだから割と恩赦はあったそうな。ちなみにトワプリンクはED後でわざわざマスターソードを持ってきていますが、ガノンドロフは倒される前の時間軸です。