大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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32話 if 〜ひとり思う〜

 

「乗せてくださって感謝します……」

 

「そんな畏まるんじゃないよ、アタシはアンタの心意気を気に入ったんだ。下手に出られるとどうしていいかわかんなくなる」

 

 

荒波を物ともせぬ帆船。

それでも波の影響を無にするわけではない。

煌びやかで堅牢な城に住まう彼女には苦となるだろう大海原の世界だというのに、泣き言一つ漏らさなかった。

 

 

「それどころか、ずっ〜と外に出て見張ってんだからやる女だよなぁ」

 

 

船の手すりに両手をかけて、大陸が見えるのを待っている。よほど待ちきれないのか、なにか焦っているのか。

 

本人曰く、理由ははっきりしないのに謝らなければならない気がした、と。どうしてももう一度会いたい、と。

 

それだけを言って、突然この船に現れた彼女は、このまま乗せて欲しいと言った。

 

 

たまにいるのだ、創造神の招待の外からやってくる人間が。

基本的にスマッシュブラザーズ以外の人間は、スマッシュブラザーズの応援といったかたちでやってくる。もしくは偶発的に大乱闘のことを知ってしまったか。

 

推測するところだが、あの女性はどちらでもないらしい。ならば、最近加入したソラと同じ事情なのかと邪推するが、彼女はわかった上でここに来ている。

 

 

「わっかんないな、それに何故だか力も溢れてる。大乱闘の世界はどうなってんだ?」

 

 

普段の世界と違えぬ切れ味を見せた剣をしまう。海賊船の親分テトラは制限されている筈の力に戸惑いを覚えながらも、先の航路を急がせた。船首近くの自分のそれに似た金髪を視界に入れながら。

 

 

女性がつぶやいた言葉は、風に乗って、時に従ってかき消えていった。

 

 

「リンク……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャプテン・ファルコンの怒りのままに粉々にされた水晶壁は見るも無惨な姿となり、辺りに散らばった。その代償に破片が辺りに飛び散り、リュウ達3人に浅い傷をつけた。

 

 

「何が悲しくてこんなどうでもいいところで怪我をしなくてはならない?」

 

「スイマセンデシタ……」

 

 

汚物を見るような目でこちらを見下ろすジャンヌ。下手人は自らの痛む右手を押さえながら正座を続けている。

 

 

「本気で何をしているんだ……」

 

「自分も怪我するまで気づかなかったの?」

 

「だっせー」

 

「聞こえてるぞー!? あとリドリーはもっと隠す努力はしようぜ!?」

 

 

ガヤと化した3人の茶々に一言。

確かに馬鹿なことしたとは思う。

 

 

しかし元はと言えば、あの時、自分達を檻の中の獣呼ばわりしてきたリドリーが悪い。スマッシュブラザーズに参戦できてなお、その残忍な性格は変わらないのだ。

 

 

「だが、ふざけている状況ではないのでここまでにするか。」

 

「マジで!? 助かるぜ、ジャンヌ!」

 

「コロッと態度変わったよ」

 

 

呆れ顔で話を切ったジャンヌ。下手人は簡単に砕けた態度になるが、確かに悠長にしていられないところ。

 

 

「今後のことについてだが、下を目指していく過程でナナや他の者達、そして大乱闘の世界に繋がる手がかりを見つける、それでいいか?」

 

「一番最後しか興味ねえな。というか、テメェらはそれについてなんも知らね〜んだな?」

 

「多分、みんなが同じ状況だと思うぜ? 大乱闘の世界に行ったと思ったら、いつの間にかここにいた。違う?」

 

 

同じ状況。つまりは特に後につながるような情報はないということだ。

 

 

「じゃあ尋ね損かよ、無駄な時間くったぜ」

 

「え、ちょっとどこ行くの?」

 

「放っておけ、この手の者と無理に共に行こうとすると逆に不調和を生むぞ」

 

 

1人勝手に行こうとするリドリーを止めない。もとより助力を乞う者を見殺しにするような性格なのだ。このかたちが一番精神的にダメージがない。

 

 

「さて、俺たちも行くか」

 

 

リドリーを見送ると、他も立ち上がる。

リドリーとは別の道でも進むべきだろうが、生憎来た道と知らない道しかなく、後を追うように進むしかない。

歩き出したところ、後尾でポポがジャンヌを呼び止めた。

 

 

「ジャンヌ、ジャンヌ」

 

「どうした?」

 

「えっと…… あのさ…… ベヨネッタのこと、心配してるからきたんだよね?」

 

「まあ、突き詰めればそうなるな」

 

「ベヨネッタ、すっごく強そうなのに……」

 

「強そうは関係ないんだ。もちろん実際に実力があるかないかも関係ない。誰かを心配するという気持ちにはさして影響はないと私は思う。」

 

「そういうものかなぁ……」

 

 

あまり納得できていない様子。それはポポとナナの実力が均衡しているからだろうか。事情を知らないジャンヌにはわからない。ため息を吐きつつも言葉を発した。

 

 

「目の前で知人が危険な目に合っていたら、それが誰であろうと危ないと告げるだろう?」

 

「あー…… あ!」

 

 

ようやく気づいた。

ナナの言いたかったことが。

ようやく気づいた。

自分の言いたかったことが。

 

 

「おーい! 2人とも、なんで止まってるんだー!?」

 

「いまいくー!」

 

 

2人の後を駆け出した。

分厚い手ぶくろに覆われた右手に力がこもる。

はやく会いたい。その気持ちで足を踏み出す。気分は今までて一番軽やかな歩行だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく暗闇の世界から抜け出し、光の元へ舞い戻ってきた。まるで気力を取られていたかのようにスマッシュブラザーズ達は崩れ落ちた。

 

 

「やっと外に出たぜ……」

 

「ああ…… 久しぶりの太陽が体に突き刺さるよ……」

 

「オーバーだなあ」

 

 

カンテラの火を消しながら、リンクは苦笑する。かつてはこうして異界の仲間たちとも合流していた。懐かしい感覚に陥り、他の仲間に無性に会いたくなった。あの食いしん坊の相棒は、今どうしているのだろうか。

 

 

「それはいいが、結局ここは……!?」

 

 

それに最初に気づいたのはシモンだった。

次にルカリオとガノンドロフ、最後に他の3人。

 

段差になっており、見下ろした先にある開けた場所。地形と水晶の塊に囲まれた内側に存在しているひび割れのような場所にある先の景色は大乱闘の世界。

 

しかし、そんなものは気づいていても気にする余裕はなかった。

 

何故ならその周りでは、数えきれないほどのボディ達が、液体の塊のような謎の生命体と戦っていたのだ。

 

 

異様でおかしな光景に頭の中が真っ白になって呆然とする。時が止まったような感覚があったのに、そこでは戦闘が進んでいた。

 

 

「ってか、アレリドリーか!?」

 

 

その中に本物の色を持つ宇宙海賊を目撃した。

あの生命体に近づかないように、ボディに囲まれて戦っている。

 

 

「……!」

 

 

そして、それを追って道から走ってきたあの片割れを見た時、ナナの心から一切の怯えが消えていた。

 

頭の中で終末の鐘が、鳴り響いたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バラバラだったのか……」

 

 

この体の本来の色が抜けた、無色の瞳は2人をずっと捉えていた。

 

 

「やっぱりそうだ、私達と同一。離れ離れでいるだけで上手な生き方ができない……」

 

 

今、違う世界にいるもう1人を思う。

ここにはいない、もう1人を。

 

 

「負け戦になりそうか……」

 

 

こっそりと見ていた少年は確信していた。

自分の敗北を。

 





○タイトル
ファイアーエムブレムifのテーマ曲。
歌詞の一部が章タイトルになってたり劇中でアクアが歌ってたりするので覚える気がなくとも意外と歌えるようになってる。
アーティストは蓮花氏であり、ゲームでもアクアとして歌っているが、歌の声を入れてるだけで、通常時の声優はLynn氏。
ストーリーを彷彿とさせる対比された歌詞が特徴。


○テトラ
ゼルダの伝説 風のタクトで登場するヒロイン。そしてゼルダ姫である。(突然の激しいネタバレ)
海賊船の船長でアネゴと慕われており、風タクの話はトゥーンリンクの妹が、彼女と間違えられて拐われたことから始まる。


○金髪の女性
一体何ルダ姫なんだ……


○謎の少年
まあ今章の敵枠なのですが、裏設定として彼のボディをアイスクライマーにする案がありました。語ってることといい、まあそういう敵だろうなと察していただければ嬉しい。ついでに最初の五話あたりを見直してから次回を読むとなお嬉しい。
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