大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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33話 めぐりあう二人

 

「──ッ! ──────ッ!!」

 

 

自分を引き止める声が、やたらと遠く感じる。

戦場に向かっていくポポを見た時、全ての感情が消えて足が勝手に動いていた。

 

自分1人だと火力が足りないとか、孤立していると狙われるとかは考えず。

もしくはポポの背後に凶刃が迫っていたとかでもない。

 

 

危なくなる前に助けたかった。

手遅れになる前に助けたかった。

助けが必要になる前に助けたかった。

一才の危険もないようにそばにいたかった。

一方的じゃなくて、一緒に。

 

リュウやキャプテン・ファルコン、知らない赤い服の女性にも、すでに戦闘しているリドリーにも目を向けず、ただ自分の半分に手を伸ばした。

 

 

「ポポーーー!!!」

 

 

 

 

ポポは、少しだけ遅れて気がついた。

決して強くはない腕力でボディ達を引かせ、まっすぐこちらへ駆けている姿を確認した。

 

 

「ナナっ!?」

 

 

こちらは驚きの方が勝っていた。

どうしてナナがこんなところに?

なんでルカリオやシモン達がいるのだろう?

なんで懐かしいリンクやガノンドロフがいるのだろう?

 

驚きばかりで頭の中はぐちゃぐちゃのままだ。だからこそ喧嘩して仲直りもしていない身で、ナナに応え、走って手を伸ばすことができたのだ。

 

 

手袋ごしにいつも感じる力強さ。左手どうしが触れて身を寄せ合おうとした時、白き流星群が2人の身を打ち、間を穿った。まるで感動の再会などさせないと語るように。

 

 

「わっ!?」

「きゃっ!?」

 

「っ! 今のは……!?」

 

 

アイスクライマーもまた、大乱闘の世界で長く戦ってきた者。自分へのダメージを認識した瞬間、無意識に後ろへ跳んでいた。その分、二人の距離は遠くなってしまったが。

ナナの後を追ってきたリンク達と、ポポ達が攻撃が飛んできた方向へ視線を向ける。

あの生命体と戦っているボディの他に、こちらを標的にして戦闘態勢を取っているボディ達が大勢いる。それらが右に左に動き、道を開く。まるで主人を知らしめるかのように。

 

 

「黒いピット……? ボディか?」

 

 

見覚えのある黒い天衣を纏う天使。

ブラックピットを彷彿とさせるが、それとも違うと気づいたのは黒の服に混じる紫色だった。

しかし、違和感が拭えず、断定ができなかった。なぜなら通信装置となるはずの頭の月桂樹がなかったから。そして、

 

 

「否、ボディと同質なのは私の肉体に過ぎない。かつてキーラがボディとスピリットにしたものと原理的には同じもの。」

 

「何者だ」

 

「私はチハク。愚兄と共に幸福を探し求める者」

 

 

開いた目には、澄んだ空のような青も魔の潜む黄昏のような赤もなかったから。

何もない無色。あえていうならば何にも染まらぬ高潔な白がそこにはあった。

 

 

「スピリットと同じ…… つまりボディを肉体として使っているということか!」

 

『そして、大乱闘の世界の外にいる以上、フィギュア化されないためボディから追い出す方法がない、か』

 

「肯定、私達はこれだけで問題ないのだが…… 他はそうでもないようだ。だからこそ私はここに立っている」

 

 

これだけ? だからこそ?

訳がわからない。わかったことと言えば、チハクがボディに宿っていること。兄がいること。そしておそらく彼が原因で自分達はここに迷い込むことになったこと。

 

 

「我は大乱闘の世界に行かなければならん。貴様を倒してでもな」

 

「倒す必要はない。あのゲートをくぐれば…… 私の率いるボディ達とあの謎の存在をやり過ごせればの話だが」

 

 

挑発や脅しにも臆さず、冷淡な態度であり続けるチハクのそれは傲慢か開き直りか。

チハクの会話が終わるのを待っていたかのようにボディ達が襲いかかる。物量で攻めてくる敵達を相手しながら二つの団体が合流するのは困難だ。更にチハクが間に入り、完全に分断されてしまう。

 

 

「くそっ、近づけない!!」

 

「ナナっ……!」

 

 

四方から攻めてくるボディを相手にキャプテン・ファルコンは足で蹴散らす。撃破よりは敵を除けることを考えているのだが、それでも物量差は大きく、チハクの元へ届かない。しかし、そのはじめの一矢は既に放たれていたのだ。

 

 

「何チンタラしてんだァ!?」

 

「「リドリー!?」」

 

「……! ……っ!!」

 

 

離れでひとり戦っていたはずのリドリーが、ボディの中で異彩を放つチハクをターゲットに背後からの奇襲をかけたのだ。その凶爪はなんとか神弓で防ぐが、長い尾が片足にからみ動きを封じる。それでもと()()()()()を掴んで止め、片足を引っ張ってすっ転ばせる。

 

 

「ああ? 思ったより全然弱えぞ?」

 

「当然だ、あの愚兄の弟……だからな!」

 

 

抑え込む形になったリドリーに、紫のブラスターと鰐の巨体が襲う。チハクの聞こえない指示を受けたのか、リドリーのみを狙う。転がるように立ち上がったチハクは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()動かした。

 

 

追い落とし(おいおとし)

 

 

リドリーを囲うように白い弾丸が、壁のように設置された。2人のボディが襲ってくる状況で、チハクの攻撃の対処をする余裕はなかった。

 

 

「チッ……!」

 

 

その頃、ナナ達もまた物量で迫るボディの対処で武器を振り回していた。

 

 

「あのピットそっくりなのは誰なんだ!」

 

「まわりの敵と同じものに、精神だけで乗っ取っているのだろう!」

 

「ぐぅ…… 虫唾が走る!!」

 

 

リンクが聖剣を振るい、シモンが聖水を投げている傍らで、力任せに時の勇者の刃を砕き、数人まとめて蹴っ飛ばしているのはガノンドロフだ。

 

かつての戦いで、あちらの世界にいたという理由だけで意思を奪われ、闇の尖兵として戦うことを強いられた屈辱。タブーにいいように扱われていた時よりもよほど屈辱である。

 

だからこそ、かつての自身と同じながらも、自分の意思でボディ宿った精神を、存在ごと許せない。なんの成り行きか、リンク(宿敵)ナナ(足手まとい)と行動を共にした末がコレなら尚更である。

 

 

「ぐっ……」

 

 

こっそりと、しかし確実に奥歯を噛み締めた。

そのまま他と足並み揃えていても、解決にならなそうだ。

手頃なところにいたオリマーのボディをチハクに向かって放り投げる。こちらに投げられたボディにチハクは気づいて避けるが、そこには既に距離を詰めてくるガノンドロフがいた。

 

 

「……!(ボディに体を隠して……!)」

 

 

その意図に気づいたチハクは、再び右手の二本指で円を描く。

 

 

打つかり(ぶつかり)

 

「ぐっ」

 

 

進路上に弾幕の壁が現れ、ガノンドロフの道を塞ぐ。スピードを殺さずを得ず、それでも完全には間に合わない。掠ったように体が痛む。

ガノンドロフだけではなく、リドリーとも距離を取ったチハクは更にまた円を書く。

 

 

(かかり)!」

 

「「ぐうう……!」」

 

 

無作為に落ちる白き弾丸に対して、彼らは堪えるしかない。足は遅めで図体は大きい彼らにランダムの攻撃を防ぐ方法はないのだ。

 

 

「だか…… コレでわかったぜェ? テメエ、丸描かなきゃ、あの白い飛び道具は使えねえだろ?」

 

「……!」

 

 

そうだ。

チハクはボディの使役はともかく、他の技を使う時は()()()()()()()()()()()()。まるでお祓いをするために十字を切る。そのような予備動作があの動きなのだろう。リドリーが右腕を抑えた先程の行動は図らずとも最善だったのだ。

 

 

「はあ…… 分断したままなら勝機はあると思ったのだが…… 半身では敵わないか」

 

「1人で突っ走るな、ガノンドロフ!」

 

 

そんなネタバレをしている中で、リンクを含めたナナ達が合流する。

怯えを隠しながら構えるナナ。

自然体の時点で隙のないルカリオ。

鞭をしならせるシモン。

ギラギラと血走った目で見つめるキングクルール。

 

 

「倒して、絶対にポポと合流するんだから……!」

 

「それは困る。薄い勝機が完全になくなるからな」

 

「え?」

 

 

虚を突かれる。

どうしてアイスクライマーをそこまで評価するのか、本人ですら心当たりがなかったからだ。

 

 

「わかるのだ。私はおまえと同じ…… 片方だけでは上手く生きられない。一緒でなくては…… ()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 

チハクの言っていることは難解だった。

でも共感できるからこそ、この言葉に引き込まれていたのだ。

 

 

「だからこそ、おまえ達は合流させない。とはいえ、あの数のボディをやり過ごしたにせよ倒したにせよ、向こうに加勢せねばいずれ…… そうだな、おまえ達の相手はあれにしてもらおう」

 

「あれ……?」

 

 

そういうと、チハクはガノンドロフの投げたオリマーのボディを後ろへ放った。

その先には。その、先には。

 

 

「え……?」

 

 

液体の塊のような謎の生命体。

投げ込まれたボディが、中の立方体に取り込まれ、液体が金色を手に入れる。それはあっという間に手足と体のような硬さを手に入れた。埋まることのない節穴がやたらと印象に残った。

 

 

「なぜ、オリマーのボディに執着するのかは不明。だが、()()()()()()()()()()()。」

 

 

静かに離れていくチハクを止めることはできなかった。それよりもあの生命体の方がよっぽど危険なのだ。

チハクは気づく。ボディ達がスマッシュブラザーズの背後を取ろうとしている。ナナ達はガノンドロフを追って、ボディを振り切ってきたのだなと軽く考えた。

 

 

「愚兄が、半身が受けたものと同じ、()()()()というものか」

 

 

一緒にいれば。ずっと一緒にいられれば。

離れたらだめだ。もう会えない。

そう願って叶えられない悲劇を、()()()()()()()()()()()()

 





○タイトル
キングダムハーツ2FMから登場するキーブレード。DaysやRecodedのHD版にも登場。
ファイナルミックスで追加されたロクサス戦に勝利で入手。これを装備したままフォームチェンジをすることで必ずアンチフォームになれる。とはいえ、その効果で折角のアビリティ枠が潰されているので縛りプレイ以外ではファイナルフォーム解禁のために一回使用されるぐらいでは? 私はそうでした。


○チハク
使用しているボディは6Pカラーの堕天使風黒色ピット。
ビジュアル的な変更としては、頭の月桂樹を被っていないこと。目が白色であること。後、完全に書き忘れてましたが一章のナカツナは薄い黄色の目です。
あまり多くは語らないようで、一人称は私。愚兄という発言から弟であることがわかっている。右手で円を描くことで技を繰り出す。技名の由来は囲碁用語。後、完全に書き忘れてましたが一章のナカツナの技名はかっこいい熟語から適当につけました。


○愚兄
弟がいる今作のオリキャラ、いませんでしたか?


○アメニュウドウ操ってる?
いいえ、オリマーに執着を見せる性質を利用してナナ達の相手をさせていただけです。三つ巴の形が一番正しい。


○穴
アメニュウドウの穴は心の傷だと言われています。
オリマーへの執着。奴の分身かと思われるフィールドの原生生物。ステージ名の哀しき獣の塔。なんとなく理由が察されますね。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「よろしく! 俺はソラ!」
「ああ。俺はジョーカーと呼ばれてるが… 本当の名前は雨宮蓮だ。」
「アマミヤ レン… 面白い名前だな!」
「いや、そうでもないだろ…?」
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