大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「……! あれは……!!」
「ナナ……!」
戦いながら見ていた。
あの生命体が、黄金の色を手に入れる様を。
目にも止まらぬ速度で、鋭利な器官で目下の大地を刺し続ける姿を。
はやく行かねばと気持ちを焦らせ、意識せず視界が狭まる。周りには敵ばかりだというのに。
「あわっ!?」
「くっ」
「よそ見している余裕はない!」
加勢に加わろうとするジャンヌの前に剣士が立ち塞がり、咄嗟に殴るも足止めの役割はしっかりとこなされた。
分厚い防寒着を貫通するほどに鋭い、竜の力に足を貫かれ、ナナも今はこんな目に合っているのかと思うと足の動きは止まらない。リュウの少し遠回りな叱咤も耳に入らなかった。
「退いてよ!」
「退かない」
焦りのあまり、心なきボディ達に言い放った言葉。期待していなかった返事が返ってきたことに驚いた。けれどもそれはここにいた者の言葉ではなく。
「貴様!」
「
ジャンヌが放った弾丸はチハクの描いた円に跳ね返される。まさかの反射技でジャンヌ、ポポ両名に弾が当たった。
「ぐうう…… 無事か、ポポ!」
「いっ……!」
立ち上がろうとするも、なかなか立てないポポの目の前で円を描いた。
「
「むう!!」
ポポを仕留めようと、大量の弾幕を降らせようとする中、キャプテン・ファルコンがポポを庇って退避させた。弾幕は大地以外を穿つことはなかったようだ。
「不思議な術を使う……」
「魔法みたいなものか? それにしては彩りのない」
「好き勝手に言っていい相手は愚兄だけ……
「ええ!? お兄ちゃんだったら酷く言ってもいいの!?」
「今はそこ、いいからな!!」
円を描いたチハクは、再び弾幕を配置する。これでは
「まっすぐ飛んでくるのがわかっていれば当たらないぜ!」
「ならまっすぐじゃなかったら?」
「のお!?」
しかし、狙いを定めて飛ばされた弾丸は横へ逸れたキャプテン・ファルコンを追って急カーブしてきたのだ。思わずポポを抱えたまま逃げるが、ロイのボディの一閃で足を止めてしまい、背後からぶつけられた。
「気をつけろ! ボディはまだ健在だ!」
チハクを構う暇などないと、リュウは猿と雉のボディに昇竜拳を食らわせ、倒している。ボディだって永遠に湧き続けるわけではない。キーラもダーズももういないから、必ずどこかに終わりがくる。倒し続ければ絶対いつか。
「よそ見はお前もだ、
再びあの誘導性のある弾を放つ技だ。
空中に設置された弾は、軽く40は超えておりこの場にいる4人を捉え切っている。降り注ぐと同時に回避に動いたスマッシュブラザーズを襲う。迫ってくる弾丸をかわし、そこにいたメタナイトのボディに2発拳を叩き込み、それでも追ってくる弾をギリギリのタイミングでかわすリュウ。再び曲がることができなかった弾幕は地面に墜ちていった。
「しつこいと嫌われちゃうぜ!!」
顔面にパンチを叩き込み、怯んだボディを回し蹴り。弾にぶつけて相殺させる。
「う〜! わっ、へぶっ」
「しっかりしろ!」
「うー! んもう!! 邪魔するなー!!」
近くにいたボディに大振りを当てるが、弾の方にぶつかり、痛みに耐えてる間に押し倒されてしまう。片足で踏んづけてきたボディはジャンヌが銃撃でどかしてくれた。すぐに立ち上がってチハクに木槌を振り上げた。その一撃は肉体のおまけの神器で止められてしまう。
「邪魔? 警戒? 当然する。おまえが一番未知数でどう転ぶかわからない。」
「なん、でっ……!?」
言ってしまえば、自分達がスマッシュブラザーズの中で強くない方だとは理解している。元々戦っていた訳でもない。コンビネーションで全てカバーしてるだけ。
なのに目の前の敵はそんな自分達を一番警戒している。
久遠の求道家 リュウより、
正義のレーサー キャプテン・ファルコンより、
波導を感じるポケモン ルカリオより、
吸血鬼殺しの血脈 シモンより、
クレムリン軍団の頭 キングクルールより、
宇宙海賊のボス リドリーより、
もっと言えばベヨネッタの友人や元スマッシュブラザーズよりも。
自分とナナが警戒される理由が思いつかなかったのだ。
この敵に、ここまでさせる自分はなんなんだ。
「おりゃああ!」
「っ!
自分ごとハンマーを回転させ、流星群のような弾幕を降らせる。
技と技がぶつかる。競り勝ったのはポポだ。弾をハンマーの回転で弾き返していたポポは、そのまま距離を詰めて脳天を揺らす。常にボディ達の後ろにいたチハクにはじめて直接ダメージを与えた。
「くっ」
咄嗟に足を蹴り出すが、揺れた視界の中では狙いも定まらず見当違いな場所に出してしまう。
その傍では、断末魔もなく溶けていったボディだったものが転がっている。
「よし、こちらはあらかた片付いた! 助っ人行くぞー!!」
「キャプテン・ファルコン!!」
「面倒な……」
ここでキャプテン・ファルコン、ポポに加勢。冷静さを保っているのか表情筋が動かないのか、チハクには動揺すら感じられない。同じ顔のピットとの対比を嫌でもしてしまう。
「一緒に、お願い!」
「おう!!」
構えた木槌を下げず、少しだけ遅れてチハクとの距離を詰めていく。
キャプテン・ファルコンの回し蹴りを受け流そうとしたチハクだが、力の差もあって、捌ききれずに頬にかすり傷を負った。続けてポポの振り下ろされるハンマーに対して両腕を組んで耐えきった。威力を殺しきれず、地面には靴の跡が残ったが。
「まだだ!」
「……ッ!!」
更にジャンヌからの弾丸の雨、リュウの灼熱波動拳。後ろに引いてやり過ごそうとするも、回避に回っているうちにポポとキャプテン・ファルコンに近接戦闘を仕掛けられる。
「そうだ、こうやって4人全員でじゅんばんに叩いていけば!」
ポポが、いや4人全員が気づいた。
こうやって相手に回避させ続ければいずれ体力の方が尽きる。それだけでなく、空中に円を描く予備動作をさせる暇を与えない。ピットのボディを使っているからか、神器はその左手に持っているが、こだわりなのか単純にその選択肢を取らないのか防御程度にしか使用してこない。これならば、
「……こちらだって弱いなりに勝つ手段を常に模索している。たとえ1割にすら満たない確率でも」
「ふえ?」
「逃げたぞ!」
そう考えたポポの心境を見抜いたように、言い切ったチハクは動揺の中から逃げ出した。追おうとした4人を
それでも逃すかと後を追うが、その先はどうなっているかを知った時には遅かった。
「あの生物が……ッ!!」
あの金色の生命体が、いる。
どこかに、あんな存在と戦いたくない、認識したくもないという心があって、無理やりそれを押し込んだ。
偶然出会えた友人の顔を見て、あの生物に目を通して。攻撃の姿勢に入っていることに気づいた。注意を促そうとするが、攻撃の先は仲間たちではなかった。
「……チッ!」
「チハク……!?」
そう、1番早く寄ってきたチハクを敵と認定し、突き刺しの攻撃をしていたのだ。
何発か当たるのを承知の上で致命的な場所への刺突は避けている。
「仲間じゃなかったのか?」
「まさか。原住民だ。何故か、あるボディに執着する。そしてボディを取り込み、大切に保管するために本体のような箇所に入れようとするが… 周りの液体だったものに負けるのか保管する前にボディが分解される」
「それでボディを追っていたのか」
「1人で寂しかったからって……? なんかやるせないな」
「ああ。寂しさは…… 心を狂わせる。」
悲しみの先に幸福がある。寂しさの裏に楽しさがある。
だがそんなの、悲しみを感じている者にとっては節穴に風を通すようなものなのだ。あの生命体も寂しかった。その寂しさは僅かな心を狂わせ見境を無くした。
「……うん、寂しいのは嫌だよね」
ポポが歩く。周りの時が止まっているかのように、動くなと上位の存在に命じられているかのように、誰もこの空気を変えられなかった。
ポポの向かう先はナナだった。
ナナの向かう先もポポだった。
○タイトル
テイルズオブエクシリア2のラスボス戦で流れる一曲。
主題歌、Song 4 uのアレンジであり、題名も歌詞から取っている。
君のためなら。少女のために世界を壊す覚悟はあるか。
この後、主人公とプレイヤーは最後にして最大の選択を迫られることになる。
○前回の補足し忘れ
前回の補足し忘れ。というか本編でチハクが言った。
簡単に言えば、アメニュウドウがボディを取り込むと、本体に格納される前にボディの方が耐えられずに形が崩れます。
ですが前回チハクは直接オリマーボディを投げ込むことで形が崩れる前に本体に格納させました。これによりアメニュウドウがオリマー(のボディ)を守るために戦闘態勢に移りました。次回、ファイター達VSアメニュウドウVSチハク。やっべ、チハクくん勝てる気しない。