大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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41話 謎の侵略者

 

未だに慣れない政務にようやく一区切りがついた。こういってはなんだが、自分はきっと平時の王には向いていない人間なのだろう。

決して戦争が好きという訳ではない。単純に資料の中の数字や文章と向き合っているよりも、実際に人と接し心と触れ合う方が向いているのだ。

 

とはいえ、正式に聖王となった自分にしかできない仕事がある。

大乱闘の世界にいる時は、フレデリクや他の家臣がやっておいてくれていたり、資料を持ち込んだりしてくれている。

そこでルフレ等も手を貸してくれることもあるのだが、故郷の世界に戻っている時まで丸投げは許してくれないし、ルフレもルキナも外出中だ。頼れるのは自分である。

 

 

「ようやく終わったか……いや、まだ西部のことは決まってないが……」

 

 

それでも、厳格なフレデリクからようやく休憩をもぎ取った。座りっぱなしで凝り固まった体をほぐしながら、中庭へ向かうために廊下を歩く。

神剣ファルシオンと鉄の槍を持って鍛錬……体を動かそう。訓練場では他の兵士たちに大騒ぎされるし、中庭でこっそりと行なっていた。その結果、外壁に穴を開けていたのだが。

 

 

「今度は壊さないようにしないと……って」

 

 

そうして、珍しく人気のない廊下で謎の男が立ちはだかっていた。全身をローブで覆われ顔は見えないが、自分より背の高い女性などそうそういないだろう。

 

 

「誰だ、お前は」

 

「…………」

 

 

なにも答えない。

明らかにこの城の人間ではないのはわかった。

そして、かつてここに侵入してきたマルスを名乗っていたルキナのような親しみやすさも微塵もない。

無言で返した相手に敵意を上げ、ファルシオンを握り、いつでも抜けるように警戒を強める。

しかしその瞬間、その相手は消えていた。

 

 

「何……!? 後ろか!?」

 

 

即座に振り向くと、赤い光が溢れていた。

違う、敵の構えた大剣にはめられた赤い珠が光り輝いていたのだ。

その距離。クロムはしっかりと見ていた。その大剣がバスターソードであることを。ローブの中で金色の前髪に隠れたその目が、赤く染まっていたこと。

 

 

「クラ……!!」

 

 

その名を呼ぶことはできなかった。激しい激流で押し流され身を刺すような痛みが生じ、勢いのまま吹き飛ばされる。その顔に、その姿に動揺して、何もないところから水がうまれていたことに気づいたのは後だった。

 

 

「じゃ、ない…… 誰だ、お前は……!」

 

 

何か、いや誰か。

転がった四肢が動かせない。痛みのせいで麻痺しているように感じられる。

赤い瞳はキーラのせいか? ならば、どうしてクラウドの過去の姿をしている?

刹那に生じた疑問は、首筋に振り下ろされた手刀とともに断絶された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳だ」

 

 

説明を終わらせると、そっと肩の力を抜く。

慣れないことをすると無意識に力が入ってしまうらしい。

 

 

「赤色の瞳をした、過去の姿のクラウド……キーラの残党か?」

 

「いえ、キーラはダーズと共に倒したはずです。その時にスピリットも解放されたはずですし……仮に残党が残っていても世界を渡るような力はないと思いますよ」

 

 

思い出すのは、光の化身キーラの配下。

自分達ファイターのフィギュアを母体として生成したボディに、傀儡にした精神スピリットを宿らせた僕たち。

だが、キーラは倒された。世界を越える能力もなかった。じゃああれは何者なのだ? 本人ではないことは確かだろうが、逆に言えばそれ以上わからない。

 

 

「ねえ、城って人がいっぱいいるはずよね? それにあの軍師や仮面王女も。アンタ以外誰もいなかったわけ?」

 

「……いなかったな。ルフレもルキナも外に出ていたが、それ以外の従者や騎士も来なかった」

 

「怪しいですね。王様を誰も見ていなかっただなんて職務怠慢です。ですが、これは相手が上手だったということが原因でも通るんですよね……バンジョーは何か気になることありますか?」

 

「なに言ってるのかよくわかんな〜い」

 

「この能天気に意見を求めるだけ無駄よ」

 

「ええ、知っています」

 

 

守らなければ、仕えなければならない主君のことを誰も見なかったなどという状況がありうるのだろうか。パルテナはそういう状況を作られたのではと怪しんでいる。

たとえそうであったとしても、もう少し戦闘を長引かせることができていたら。

誰かが気づいてクロムの元へ駆けつけられたかもしれない。今となっては襲撃者の手際に感服するしかないが。

 

 

「おい、手段もそうだが理由も謎だぞ。どうしてこいつだけが襲われる形でこの世界に来たのか、そもそもなんでこいつなのか」

 

「……考えてみればそうだな。大乱闘の世界に戻らせたくないなら、どこかに閉じ込めるなりさせるはずだ」

 

「女神様とかならわかるけど、この頭筋肉だけを妨害して、わざわざこっちの世界に来させてあたい達と合流させて。まるで利点がないわね」

 

「あっ、ぼく達をここに来させたのとクロムをここに送ってきたのは別陣営だとか?」

 

「2種類の敵がいる、ですか。可能性としてはありえますね。私たちを離れ離れにさせたのは思惑通りでも合流したのは想定外なのかもしれません」

 

 

「まともな意見出せるなら最初からだしなさいよ」とカズーイがぼやく中で女神パルテナは考える。

自分はピットを先に大乱闘の世界へ向かわせた。先にとは言っても少し用事が立て込んで遅れた程度で、時間差としては数時間もなかったはずだ。たったそれだけでピットと離れてしまった。そういった点では、バンジョーとカズーイが羨ましい。

 

そしてクロムがここにきた理由。

自分がこの世界にいることを知っていれば、彼をここに来させない。やろうと思えば自分の力でいつでも帰れるのだ。

バンジョーの言う通り、連携を取っていない理由からの幸運だったのか。しかし、自分達を大乱闘の世界に来させない、または離れ離れにするという目的は同じなのだ。少なくとも、ここに来させる理由があるはず。こうしてスマッシュブラザーズの一部が集まっているのだから。

 

 

「集まっている……?」

 

 

そうだ、スマッシュブラザーズに隠れて何か行動を起こしたいならば、みんながみんな大乱闘の世界に戻ってくるようなこんな時期に事を起こしたりしない。もっとはやく始めていたはず。

 

スマッシュブラザーズを離れ離れにすることが目的。いや、離れ離れにしてどうする?

スマッシュブラザーズの誰かに用がある。ならば個人にあたればいいだけ。

目的の誰かがわからない。これか?

 

 

「大乱闘の世界に行かせたくないも違うな。女神がいるし、そもそも自分の世界に戻ってない奴もいるだろ」

 

「では俺たちをバラバラにするのが目的だったのか? 何のために」

 

「スマッシュブラザーズの中に目標がいるのではないでしょうか。しかし、敵側にはその目標がわかっていない。私たちをバラバラにしたのは目標を探しやすくするため……というのが私の考えです」

 

 

あくまで一つの案として伝えてみる。もちろん確証がある訳でもないが、予想として。

 

 

「もう一つの敵陣営はその目標がわかってて、それがこの穴あけ王ですって?」

 

「コイツが?」

 

「ねーだろ」「ないでしょ」

 

「すごく馬鹿にされているんだが……」

 

「クロムとは断言していませんよ。スマッシュブラザーズがバラバラにされたと言っても同時に移動すれば同じ場所に行ける程度の粗はあります」

 

 

パルテナとピットは少しの差で離れ離れになった。だが、バンジョーとカズーイは当たり前のようにこの場にいる。

 

 

「……! ルキナやルフレも含めて俺たちが敵の狙いだと?」

 

「なんとも言えません。単純にあなた達が一緒に行動するのを嫌っているだけかもしれませんし、個人を標的にしているかもしれません」

 

 

知らないだけで、本当は自分達のように気づいたらここにいた者の方が少ないのかもしれない。そういう可能性を頭の中で追いながらも、口は違う可能性を紡いでいた。

 

 

「ただ、あの二人のうちどちらかがあなたのように襲撃されて所在がわからなくなったとしたら、あなたはそれを大乱闘関連の事件だと思いますか?」

 

「あっ……」

 

「自分達の生きている故郷で、行方不明になりでもしたら、その世界の何かに巻き込まれた可能性を考えるでしょう。そうなれば、あなたは大乱闘の世界に行きません」

 

 

そうなれば、大乱闘の世界に戻らない。

故郷の世界で本人を探し続ける。

しかし、それではおかしい。

 

 

「待て待て! それなら狙いでもなんでもない奴を呼び寄せるためだけに襲ったことになるだろ!? それなら3人まとめて狙っていたという線の方が納得いくだろう!」

 

「狙うべき相手がわからないもう一つの敵陣営目線で候補を狭めないという利点はありますよ」

 

「逆に言えばメリットはそれだけよ! そもそも二つの敵陣営が存在することも、あったとして敵対しているかどうかもわからないわ!」

 

 

議論は大荒れである。

パルテナの荒唐無稽な一つの可能性。

故郷の世界でクロムに何かあったのなら、残りの二人が呑気に大乱闘の世界に戻ってくるはずがない。必ずその世界でクロムの捜索のため留まり続ける。

それを防ぐために3人全員を同じように襲い、意識を取ったところで別々の世界に送り込んだ。標的はクロムかルフレかルキナか。それとも違う誰かか。そもそもこの考えは合っているのかどうか。

 

 

「それを明らかにしなくてはなりません。肯定する証拠はありませんが、逆に否定する証拠もない。クロム、申し訳ありませんがしばらく大乱闘の世界には行けません」

 

「どうする気だ?」

 

「探すだけです。真実への切符を。私たちがこの世界に来てしまった以上、それには理由があるはずですから」

 

 

真面目な時は真面目。そう評したブラックピットは間違っていなかった。

 

真剣に未来を見据えるパルテナは、大衆のイメージ通りの女神だったのだ。

 





○タイトル
新・光神話パルテナの鏡 15章の章題。
オーラム軍の初顔見せの章である。前章まで自然軍幹部と戦っていたのに突然こんな異質な敵勢と戦うことになるのでユーザーに驚愕をお届けすることになる。
そして、奴らの対処に三軍が暗黙の了解的に手を結ぶことになる。
しかしクロムを襲ったのは一体どこのオリキャラなのだろうか。

余談ですが、各話のタイトルにはゲーム関連の用語やセリフをつけています。ただしアニメや漫画原作を除く。ネタ切れ仕掛けているので誰かくださいネタ。


○軍の中で一番、訓練中に物を壊す
訓練中によく壁に穴を開けているため、原作でも当時マルスを名乗っていたルキナに侵入経路にされていた。せめて誰かに報告しろよ!
最近はあまりネタに上げられなくなったが、後輩王子のディミトリがさらに破壊しているので目立たなくなっただけ。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「ああああああああああ! 神装英雄だああああああ! うおっしゃああああああああ!」
「カムイ! キャラ保って!」
「うおおおおおおおおああああああ!」
「微塵も聞いてない!? 誰かこのマイユニ止めてえええ!」


○風花雪月無双 ネタバレなしの全体感想
級長や名前だけ出てた父兄達の掘り下げに尽力するあまり、全体的なシナリオの詰めが甘かった感が…… 全部のシナリオで戦いはまだ続くみたいな引きですし、特に主人公関連があまり掘り下げられなかったなって。半端にするんだったら主人公マジで一般人でよかったのでは。本人達もわからない、アガルタもわかってないじゃもちろんプレイヤーもわからんわい。
他にも分岐で追加される章を共通にしちゃったから、シナリオに幅がないんですよね。
さらに本編で使えた、ハンネマン、ツィリル、ギルベルト(ギュスタヴ)、アロイス、アンナさんあたりどのルートでも使えないし。
エルネストの紋章アイテムあるし、彼らや5年後モデル、さらに主人公関連の謎を掘り下げるDLCあたり来るかもしれませんが、DLCやんないと完成してないゲームとか批判の的だぞ。無料追加ならまだ許されそうだけど。
ネガティブなことばかり書きましたけど、アシュユリ支援とか支援会話を増やしてくれたのも、風花雪月を掘り下げてくれたのもおけ。私はパラレルにするなら変化に伴う影響を全て描ききってくれと考える人なので、批判の多いクロード関連もこうなるんやなって面白く遊べましたね。ただやっぱり主人公の謎ほったらかしは許さない。

総評としましては、ゲーム自体は面白いけどシナリオの荒さと主人公冷遇、DLC前提っぽい作り方がすごく気になる。期待が大きかっただけに少し辛口ですけどこんなもんなのかなと。

あと一つ言いたいこととしては、主人公の育ての母がパトリシアさんという説がありますが、ダスカーの悲劇が本編開始4年前ですから、4年未満の関係で育ての親は無理ないか……ということです。
だって主人公生徒達と同年代なんだから10代後半あたりだろうし、傭兵団を転々としてたならさらに期間短くなるし……実はTOAの主人公みたいに実年齢幼かったらわかんないけど。
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