大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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45話 一対の巨影

 

リオレイア、猛る。

自らの子達がその殻を突き破って、立派に成長する時まで気を抜くわけにはいかない。

それが母としての使命であり、生命の根源に刻み込まれた義務なのだ。

ただでさえ、知らない匂いが巣やタマゴについていたのだから。

 

 

「おい! あやつについても知っているんだろう、教えろ!」

 

「雌火竜、陸の女王とも呼ばれるモンスターです! 強靭な脚力で主に地上で戦います!」

 

 

ガノンドロフが情報を求める。パルテナのその情報はユクモ村でハンター達や集会所で調べたものであった。さほど時間をかけていないように感じたが、かなりしっかり仕事をしていたらしい。

 

 

「火も吐ける他、尻尾の棘には猛毒があるので気をつけてください」

 

「先にいってよ〜……」

 

 

ファイター達がそれぞれ武器を構えて斬りつけたり殴ったりする中、カズーイに掴まれてバンジョーが復帰する。ぐったりしている彼には珍しく小言を言った。

 

 

「それは失礼しました、はい奇跡」

 

「……ねえ、あんたなら手っ取り早くそいつ倒せるんじゃないの?」

 

 

状態回復の奇跡でバンジョーから一瞬で毒を消す。割となんでもありの神ならば、簡単にあのモンスターを倒せるのではないか。

 

 

「否定はしません。ですが、あの情報が巻き込まれる可能性が否定できません。それに威力を求めるとその分周りへの影響も大きくなります。異世界への干渉は最小限にしませんと」

 

 

そのあたりはシャドウもわかっているようですね、と会話を終わらせる。

人の記憶を少々弄ることはできるが、抉れた地殻や壊れた自然を戻すことはパルテナには難しい。異常として認識されるほどの損害を視野に入れるのは最終手段なのだ。

 

 

 

 

「はあ!」

 

 

スピンアタックでリオレイアの頭蓋へぶつかるが、ダメージはしょっぱそうだ。それほどの威力を持つには助走が足りない。

 

 

「ゴオオオォォ!!」

 

「……!」

 

「はやい……!」

 

 

そしてそのシャドウに向けて三発の火炎弾を放つ。かなりの速度の炎だ。

シャドウ、そして避けた場所にいたシャドーカービィはギリギリ当たらなかったのだが、わかっていても避けるのが難しいと感じるほどの速度だ。

 

 

「あの速さ…… 尋常じゃない!」

 

「ウホッ、気をつけなきゃ!」

 

 

それを見ていたクロムとドンキーコングは、背後を突くべきだと判断し、一気に距離を詰める。しかし、それを見通していたのかリオレイアは低空を飛び始めた。

 

 

「ぐうう……! うおっ!」

 

 

風圧に負けないようにと踏ん張る二人に、サマーソルトの両爪がぶつかる。クロムは両手が痺れるほどの威力をファルシオンで防ぐ。

だが、それでもリオレイアは上をいった。サマーソルトの後に2人を踏みつけて身動きを封じた。

 

 

「「うう……!」」

 

「おい、しっかりしろ! おい女神! こいつの弱点属性!」

 

「龍属性です!」

 

「なんだよ龍属性って!?」

 

「他はあまり効きません!」

 

 

大抵の属性は女神の奇跡で事足りると思っていたが、龍属性などどうしていいかわからない。

唯一どうにかできるのが、今爪で締めつけられているクロムのファルシオンなのだ。

 

 

「あ、頭部を狙うといいですよ。後弾を打ち込むよりは、斬ったり叩いたりする方がいいようです」

 

「そーいうことははやく言えよ!」

 

 

神弓での遠距離攻撃に徹していたブラックピットは肩透かしをくらう。即座に巨塔百鬼の棍をとりだす。速度は落ちるが、今持っている中では1番有効な神器だ。

 

 

「仕方ありませんね、金鎧エアリーズ!」

 

「右から回れ、ガノンドロフ!」

 

「いいだろう、今は乗せられてやる!」

 

 

まっすぐに突き進むブラックピットからの言葉に従い、ガノンドロフはまわり込む。

奇跡によってダメージを軽減し、衝撃と毒を無効化したブラックピットには、尻尾の薙ぎ払いもあまり効果がない。怯まずダメージも薄れている。巨塔とガノンドロフの大剣の一撃が同時にぶつかる。

強烈な一撃が叩き込まれたリオレイアは、この戦いではじめて怯んだ。

 

 

「だいじょうぶ?」

 

「しっかりしろ」

 

「うん、ありがとう!」

 

「助かった!」

 

 

その間にバンジョーとシャドウが足元からドンキーコングとクロムを引っ張り出す。とはいえかなりの脚力で締め付けられた2人のダメージは大きい。

 

 

「くそっ! 動きが封じられてようやくまともなダメージか!」

 

 

踏みつけられた痛みに耐えながらクロムが吐き捨てる。

キーラの手下に、今戦っているようなドラゴンがいたという。あの時はフィギュア化という最後の手段で命の補償はあった。

しかし、今はそれがない。そのせいで実際以上に重い痛みに感じてしまう。長らく忘れていた死の危険。戦争が終わって、大乱闘で雌雄を争って。いつの間にか体はそれを忘れていたのだ。どうすればいい。どうすればあいつを──

 

 

「倒さなくていいんですよ」

 

「……!」

 

「ああ、情報だけを回収すれば──後は逃げればいい!」

 

 

倒さなくてもいい。情報を入手できれば。

シャドーカービィが情報が詰まったカプセルを回収さえできれば!

 

 

「ウホッ! 邪魔はさせない!」

 

 

振りかぶったドンキーコングの拳がヤツの頭部に叩きつけられる。何か怪しげな動きをしていたシャドーカービィへ火炎のブレスをぶつけようとしたところを妨害された。

カプセルをすいこもうとするが、重量があるのかなかなか動かない。先にタマゴの数個が浮き上がった頃、リオレイアの足が灰色の体を蹴り飛ばした。

 

 

「なっ……!? タマゴごとだと!?」

 

「大方、今後の襲撃を防ぐためだろう」

 

 

吸い込みかけた自らの子ごと粉砕する一撃にクロムが驚愕した。

リオレイアがタマゴを持っていくハンター達をタマゴの安全を無視してまで攻撃するのは、盗もうとすると痛い目に合わせるということを身をもって味合わせるためである。

それと同じことだ。生物としては理にかなった行為ではあるが、子供の命を度外視する攻撃を、娘を持つクロムは理解しきれなかったのだ。

 

 

「…………ッ!」

 

 

リオレイアはシャドーカービィを掴んだまま、低空飛行で地面に擦り続ける。ひどい摩擦で全身が焼けるように痛い。

 

 

「流星の奇跡!」

 

「あっ、あんた今まで支援しかしてないと思ったら!」

 

 

星を落とすパルテナの奇跡が、リオレイアの体を穿つ。そのまま飛び立ち、少し距離を取った位置からパルテナを睨む。シャドーカービィはそのまま地面に置いてかれた。

 

 

「仕方がありませんよ、後先考えず本気で戦ったら目立ちます。今のでも危ないです」

 

 

大掛かりな攻撃系の奇跡は、範囲も大きく派手であるため、現地人に見つかることも多い。

記憶を弄ることはできるが、弄る余地もないような衝撃を与えてはダメだ。先の一件はドンキーコングをババコンガなるモンスターだと思っていたからできたことなのだ。

 

 

「……ッ!!」

 

「無事か」

 

 

シャドーカービィの元にシャドウが駆けつける。僅かな時間だが、共に行動していたために余計に安否が気になるのだ。

 

 

「すっぴんじゃ大変なんじゃない?」

 

「ブラピ、神器余ってるでしょう?」

 

「なんで知って……くそっ、後で相応の礼はしてもらうぞ!」

 

 

無能力ではきつい、とのことなので、何かコピーできるものを要求された。やけくそ気味に破掌バイオレットをぶん投げる。

起き上がったシャドーカービィはシールのようなそれを渦を巻くように吸い込んだ。そうして変化したのは青色に赤色のツバがついた帽子だ。

 

 

『なにやら既視感が……』

 

 

某エスパー少年を彷彿とさせる帽子に、ガノンドロフでさえもぽつりとそう呟いた。

揃ってしまった感想に何やらムッとした顔になる。カービィと同じくあまりにも能天気に見られるのは嫌らしい。拗ねてしまったのかふっと姿を消してしまった。

 

 

「わっ、消えて」

 

「グオオオオオ!」

 

「……!」

 

 

突然姿を消したことに驚く暇もなく、あたりに火炎弾を撒きながらリオレイアが着陸する。

近くにいたシャドウを顎の角らしき部分で貫こうとした時、シャドーカービィがエネルギーの衝撃破とともに現れた。

 

 

「戻ってきた!」

 

「エスパーですね、バニシュからのテレポしゅつげんですか」

 

 

超能力を使いこなすコピー能力。

スピードとパワーと共に奇襲性能も手に入れた。

 

 

「すいこみでカプセルを手に入れるやり方は失敗か……」

 

「やはり密かに手に入れるなど俺好みではないな、ねじ伏せてくれる!」

 

「ま、こっちの方がわかりやすくはあるな」

 

「ウホッ、負けないぞ! がんばろう、バンジョー!」

 

「うん、がんばるよ!」

 

「あんた達、本当に頭まで筋肉で……」

 

 

他にこっそり持っていく方法が思いつかない、というかもう面倒くさい。やっぱりファイターたるもの、こっそり採取ではなくド派手に大乱闘……いや、一狩りいこうぜ!

 

 

「……先程も似た流れを見た気がするのだが」

 

「いわゆる天丼ですね」

 

「…………」

 





○タイトル
モンスターハンターシリーズによくでてくるクエスト。
基本的にはリオレウスとリオレイアの討伐。作品によっては亜種が対象になることも。
リオレウスは倒したんだからリオレイアも倒さなきゃと作者は供述しており……


○実際ド派手に戦ったらバレるもん?
モンスターハンターの世界では古龍観測隊というものがあり、気球で生態系を観測しています。強い個体が活動してると情報が送られてきます。それらにバレるのをパルテナは危惧してるんですね。シャドウがカオスエメラルドの力を使用しないのもそれが理由。
ただし、流石に命が危なければ使います。


○龍属性
通常属性は火、水、雷、氷、龍。
龍が忌み嫌う謎の属性、だそうなのでコレ現地人もよくわかってないと思う。だがこれならFEコラボのファルシオンが龍属性武器なのも当然。


○巨塔百鬼の棍
打撃系統最高級の巨塔。ちなみに新パルでは足の速さが神器によって変化するので、コレを使っているブラピはかなり遅くなっている。


○金鎧エアリーズ
新光神話パルテナの鏡 18章にて見つけ出すと解禁できる奇跡。
十二宮の牡羊座。少しの間、属性攻撃無効、受けるダメージ減少、スーパーアーマー。


○破掌バイオレット
誘導性の高い弾を撃てる、破掌のスタンダートな神器。
説明が難しいのだが、片腕に纏って装備すると言うべきか。
シールみたいなもの、らしい。


○エスパー
星のカービィ ロボボプラネットで初登場。
ネスのそれの色が反転した帽子を被るコピー能力。念力の弾を飛ばしたり、瞬間移動できる。
鏡の大迷宮とファイターズぐらいしかまともに登場していないシャドーカービィが使ったことは当然ないが、どうやらファイターズ2で登場が予定されていたコピーとのことで、シャドーカービィで使える可能性があったのかもしれない。
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