大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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53話 地下牢獄

 

「…………」

 

「はあ…… 合流されちゃったのね。……仕方ない、切り替えなきゃ」

 

「キーキーィッ!!」

 

「あなた、恨むならそっちを恨んでね。決定的なところを見られた彼を野放しにはできないの」

 

「…………」

 

「だから、あなたごと倒すことになるけどそれは……」

 

「…………あーあ……」

 

 

謎の少女がディディーコングとリンクに向けて話している間も、リンクは押し黙っていた。

意味は把握しているのに、まるで話しかけられた言葉が通り過ぎていくように。

ようやく話した言葉は、溜め込まれたものが吐き出されるような、押さえつけられたものが飛び出してくるような、そんなことの発端だった。

 

 

「あーあ! なんだよ、僕の勘違いか!!! 脅かしやがって!!! 違うなら違うって言えよこのパチモン!!」

 

「はあ!?」

「ウッキー!?」

 

「僕はてっきり姫さんがトライフォース使ったか使わされたかして、ここ創らされたとか思ったんだよ!! 全部お前の仕業かい! このエセプリンセス!!」

 

 

そう、リンクが気にしていたのはそれだ。

意識を失う前に見た謎の少女。ゼルダはそれが誰でどういった特徴があったのか大まかにしかわからなかったのだ。

しかし、付き合いの長いリンクはその姿が自分のよく知るゼルダだと気づいていた。一瞬の出来事だったため、別人だと否定することはできなかったが。

 

それに加えて、この偽りの闇の世界。

ゼルダがトライフォースの力を使用、または使用させられてこの世界ができたのでは。

それが心配でリンクは黙っていたのだが。

 

 

「誰がパチモンよ!! 私はキク!! 姫さんなんて人じゃないわこの頭でっかち!」

 

「誤解させたのはそっちじゃん!! そもそもあんたが姫さんじゃないだけで、敵だってことは確かでしょ!!」

 

 

空中に浮いたまま、キー!と怒り続ける謎の少女改めキク。負けじとリンクも怒声を浴びせ返す。

 

 

「私はねえ! 姫だとか、そういう目立つことが嫌いなのッ!!」

 

「じゃあ、その体から、今すぐ離れろぉ!!」

 

 

怒声だけの喧嘩はすぐに戦いへと変化していく。その先陣を切ったのはキクの方だった。この体だからこそ使えるディンの炎を3発飛ばす。

喋りながらも、的確に動くリンクはひとつふたつと剣で防ぎ、遅れてきた最後の1発を弓矢で射落とした。そのまま空中にいるキクに向けて矢を放つ。

 

 

「甘いわよ! この程度なんてこともないわ」

 

 

しかし、彼女は空中を滑るように移動する。右も左も高低差も感じさせないほどスムーズな動きは捉えることが難しい。矢はあらぬ場所へ消えていく。

 

 

「くっ、宙じゃなかなか当てられない! 君、急で悪いけど別方向で奴を狙える?」

 

「ウキー!!」

 

「簡単にやれると思わないで…… この数よ」

 

 

 

限界を感じたので、リンクはそこにいたディディーコング との交差射撃を提案する。しかしし、いち早くキクが理解した。

2人が見たのはキクがいる場所よりももっと奥。

敵であるボディ達の大群だった。まるでこの闇の世界もどきの各地からありったけの戦力を集めてきたかのような軍勢にギョッとする。

 

 

「図らずもここまで誘導されていたってことか……!」

 

「キッ……!?」

 

「そういうことになるわね。()()()()()()()連中は、私としては別に放っておいてもいいのだけど…… 芽は摘めればそれに越したことはないし、いざという時の切り札は持っておいて損はないもの」

 

 

空中に浮かぶまま、何かを取り出したキク。それはなにやら宝珠のようにも見えたが……内部には黒い何かが溜まっていた。それが良くないものなのは、本能でわかっていた。

ここにいる誰もそれを知らないが……それは闇のオーブと呼ばれるものであった。

 

 

「ルネに……仲間の1人にコレを渡されてね、最終手段に……ってことらしい」

 

「……っ、ロクなことしないね、ルネさんって人!!」

 

 

出し惜しみの暇はないと、再びボンバーの魔法を発動した。ピラミッドの階段を駆け上がってくるボディ達。スティーブが作っていた防壁のおかげで、頂上につながっている階段を一直線に焼き尽くすだけでほとんどの敵を消滅させた。だが、

 

 

「第二陣……!!」

 

「ここの世界の管轄は今や私、ここの世界で起きたことは全て把握できるわ」

 

「お見通しってことか……!!」

 

「その通りよ……外に今いるお邪魔虫もまた……ってところ」

 

 

膝をつきながら、再びやってくる敵勢に絶望する。同じ手は2度も効かないと。先程一掃した敵だって少ない数じゃない。ここまで多くのボディをどこから調達してきたのだろう。

把握できるというのも嘘ではないだろう。そうでなければこの場から消えて瞬間移動はしない。

 

 

「君、スマッシュブラザーズだろう!? ここの中に他の仲間がいる! 急いで呼んできて!」

 

「!? ウキー!!」

 

 

魔法の反動で多少なりと疲弊しているリンクを放っておくことなどできない。

例えその救援先が目と鼻の先であってもだ。

 

 

「大丈夫、すぐ近くだしちょっと呼んでくるぐらい……」

 

「その必要はない!」

 

 

襲いかかってくる電気鼠、恐竜のボディを一閃の元に斬り伏せる。崩れた穴から真っ先に飛び出してきたのはマルスだ。ミェンミェン、サムス、ピットも飛び出してくる。

あれほど大規模な魔法を使ったのだ。呼ばずとも異変は伝わる。

 

 

「キィ……ウキー!!」

 

「マルスに、みんなも!」

 

「ごめん、ちょっと遅れちゃったかな。ディディーも。君も無事でよかった」

 

 

柔らかな笑み。

しかし、リンクは先程の面子の中に1人足りないのに気づいた。

 

 

「ゼルダさんは?」

 

「彼女にはしずえさんや他の仲間と一緒に、一般市民の避難を任せてる。さほど離れてないとはいえ、出入り口はもう一つあるんだ」

 

「いや、あるけど……」

 

 

そもそもあの穴にまっすぐ落ちれば、最終決戦の場だった。紐を垂らして降りれば他だって行ける。つまり今の使い方が邪道というか……とりあえずその話は置いておこう。

 

 

「あの出入り口はピラミッドの中層につながってるだろう、石像とか邪魔で直接いけないけどさ、ここから離れようとすると必ず敵と鉢合わせるんじゃない?」

 

「うん、でも、大丈夫。ちゃんと考えてるから」

 

 

このピラミッドのような遺跡のような建物は、池に出島方式で建っており、陸に繋がる唯一の道はボディのひしめく戦地だ。

避難はできないのではないか、と苦言を漏らすがそれもまた考慮のうちだと言う。

それを言い終えた時にちょうど、ピラミッドの麓あたりから何かが飛び立ち、こちらに向かって飛んでくる。道中にTNT火薬を落としながら。

 

 

「あ、スティーブ……だっけ」

 

「サムス」

 

「わかっている」

 

 

落としたTNT火薬に向けてサムスがミサイルを撃つ。衝突し、爆発したミサイルはTNT火薬を巻き込み、更に連鎖爆発を起こす。

 

 

「ワオ!? 爆発したネ!?」

 

「ありがとう、スティーブ」

 

 

マルスのいる場所に直接着地したスティーブは、喋らないながらもコクコクと頷き応える。

地形も破壊する爆発を起こしたことで、敵を巻き込んだのはもちろんだが、階段や足場も多少なりと破壊され、上に上がりにくくなったのだ。

 

 

「避難場所はここから西にお願い、建物が多く建ってある場所があるからそこまで頼むよ」

 

 

またコクコクと頷き、エリトラとロケット花火を駆使して飛び立つ。ここでスティーブが何をしようとしていたのか、ミェンミェンがわかった。

 

 

「あ! スティーブが橋つくるネ!」

 

「うん、その通り」

 

 

スティーブがブロックを使い、簡易的な道をつくることで池を飛び越え、直線距離で村に辿り着こうということだ。

ならばそのためには、ある程度敵を減らさなければ。

 

 

「ならば、私たちのやることは敵の掃討だな」

 

「とはいえ、僕たちも一度降りたら簡単には上がれない。遠距離で射抜いていかないと、もう一踏ん張りいこう」

 

「キーィ」

 

「……ん? マルスは何するネ?」

 

「……あ」

 

「何も考えてなかったのかヨ!?」

 

「……ごめん

 

 

だが、剣一本で戦うマルスには遠距離の手段がない。リンクが危険で、咄嗟に飛び出して。後のことを何も考えていなかった。

万が一抜けられた時のために、出入り口の紐は斬ってある。戻ることもできない。

 

 

「……まあ、過ぎたことはいい。マルスは近づいた敵を頼む。ミェンミェンも近距離だ」

 

「矢の数にも限りがあるし、僕は中層からの敵を相手にするよ」

 

「ディディーもそこをお願い」

 

「ということで私とピットで遠くの敵を相手にする。いいな?」

 

「……あ、うん、下の敵だよね、了解」

 

 

少し反応が遅れてピットが応えた。

ここまできて、結局休息もまともに取れないままであった。神器の持つ弾の誘導性に支えられるが、いつまで持つか。

 

 

「(でも、サムスも同じ条件だし! きっとパルテナ様もどこかで戦ってるはず!! ここで僕が踏ん張らなくてどうするんだ!!)」

 

 

さまざまな不安点を残しながらも、開戦するは力の神殿離脱戦。

 

 

マルス、ミェンミェン、ディディーコング、ほぼ快調。

 

リンク、若干疲弊。

 

ピット、サムス、疲弊。

 

ゼルダ、しずえ、スティーブ、他多数、離脱準備。

 

 

初撃を放ったのは、自身を奮い立たせる神弓の一矢であった。

 





○タイトル
ファイアーエムブレム トラキア776の第4章の章題。
そしてシリーズ初の離脱マップでもある。
離脱マップとは、勝利条件が将、つまり主人公の離脱である。特定のマスに行き、離脱を選択することでマップから抜けることができる。
しかし、トラキアでは主人公リーフを離脱させた時点でマップはクリア。離脱できていないユニットは残らず捕虜になるので要注意。
最近の作品はそんなことないので安心してください。


○結局のところ神トラリンクは何を恐れていたの?
偽りの闇の世界を作り出した犯人が神トラゼルダ本人、または黒幕に脅されていたと考えていました。

・消えた闇の世界を知る者が少数であること
・闇の世界がクリソツだったこと
・やろうと思えばやれる力(トライフォース)があったこと
・意識を失う前に見た謎の金髪が、神トラゼルダだと気づいたはいいが、ボディであって中身が違うと判断できる時間がなかったこと

これらの偶然が重なって神トラリンクは手酷い勘違いをしていたのです!!


○闇のオーブ
ドラクエで度々登場するアイテム。
しかし、この作品のこれはゲーム作品の同名アイテムとは別のもの。
この闇のオーブがどこからの出身か、いずれくる解説までにわかった人は……控えめに言ってすげえ。


○TNT火薬
マインクラフトの俗に言う爆弾。直接火をつける他、他の爆発に巻き込んだり、レッドストーン回路で着火すると一定時間で爆発。マイクラ動画には結構登場するも、普通にプレイしてるとあんまり使わんくない?


○エリトラ
マイクラに登場する、昆虫の羽のような見た目の装備品。
エンドシティでようやく取れるアイテムで、つけると滑空できるようになる。ロケット花火で上昇したり、加速したり。ちょっと操作性に難あり。


○キク プロフィール
ボディはゼルダの5Pカラー。
ただし、目立つ装飾品は取っ払われ、目は茶色。
目立つ……というよりは目を引くのが嫌らしい。
戦闘能力は不明だが、ゼルダのファイターの技が確認できる他、宙に浮いたり世界を創ったうんぬんとの発言が確認できることから、相当な力を持っているようだ。また、ボディ達に任せて別の対処に向かっていることから、判断も的確の様子。
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