大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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55話 死神の視線

 

レーザーの攻撃によって、木や岩陰に隠れた者たちを炙り出すように。交差した指からミサイルを発射し続ける。無から何かを創り出す力はまさしく、大乱闘の創造主。

創造の化身であり、神でもあるマスターハンドと同じ力をたやすく扱う故に、彼らは慎重に戦わざるを得なくなったのだ。

 

 

「(くっ……俺からは近づけない……!)」

 

 

先程のクッパ七人衆と策を用いたのがクリスであるためか、彼が隠れた辺りが集中攻撃されている。ここは他の人物から仕掛けてもらいたいところなのだが。

 

 

「(あのサムスさんそっくりな方との距離が離れない……!)」

 

 

まだキクは倒れたダークサムスの近くにいる。どうにかして引き離し、巻き込まれないように移動させねば。

意識を失っているのか(意識を失うという概念がダークサムスにあるかは不明だがこの表現が一番近い)動く気配はなく、自力での移動は現状期待できない。

 

 

「(どうしましょう……)」

 

 

現状戦い慣れているクリスが一番狙われており、ファイターの加護を期待できない状況で非戦闘員に近いゼルダやしずえではどうにかできるビジョンが見えない。

 

 

「……もう、仕方ないわね……」

 

 

どうしようと無意味に時間が過ぎていくうちに、先にキクが痺れを切らした。先程は相手に向けていた指鉄砲を足下のダークサムスに向ける。何を伝えたいのかわかってしまい、背筋が凍りつく。

 

 

「出てこないと、先に逝くのはこいつになるわよ。それでもよければ物陰から全員出てきなさい。どっちにせよ、詰んでいることには変わりないのだから……!!

 

 

もう待ってはくれないだろう。

覚悟を決めて飛び出したのは、クリスが一番早かった。

 

 

『うん、別に外見が似てる訳ではないし性格も似てないんだけど… なんでかな、クリスに似てるなって思ったんだ。』

 

『正直に言ってしまえば、言葉にするのは難しい。だからどうかな、今度会いに行ってみないかい?』

 

 

そう言って、ついてきたあの世界。

この誘いが、ファイターですらないクリスを巻き込んでしまったとマルスは悟った。

心優しいあの方は、気にするなと言われても気にしてしまうだろう。

 

だから、せめて何事もなく終わらせたい。後になって、こんなこともあったな程度で済む出来事で終わらせる。

 

ダークサムスに向けられた指が、こちらへ向いた時、影の英雄を支えし剣が振り抜かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

額から眉を通り過ぎて瞳に入りそうになる汗を乱暴に拭った。小型の銃で緻密に狙い続けるゼロスーツサムスはようやく気づいた。

 

 

「ハァッ……!(この体力の低下はなんだ……!? 普段ならばもっと保つはずなのに……!? まるで精神面の消耗まで加わっているようだ……!!)」

 

 

言葉にするのも億劫で、思考のみでその問いを完成させた。

ちらりと一瞬ピットの方を見ると、そちらもそちらでかなり辛そうだった。撃つ瞬間はしっかりしているが、それ以外の時は僅かながら指が震えていた。

 

 

「……ピット、無理はするな、まだ行けるか?」

 

「…もちのろん!」

 

 

少し返事が遅れる。

やはり多少なりとも疲れているのだ。

 

この世界は、普通とは訳が違う。この世界はこの事態を引き起こした者によって創り出された世界。これほどまでに疲労が大きく溜まっているのはそのせいなのだろうか。

しかし、そんなことはキーラとダーズは出来なかった。もちろんタブーも同じくだ。

それらができなかったことがあの少女にできるのだろうか。自分の肉体をボディに頼るような者が。

 

 

「あっ! ぼーっとしないヨ!」

 

「……!! すまない、助かった……」

 

 

そんな考え事と狙撃のせいで、接近していた敵にまで意識が回らなかったらしい。大剣を頭上から振り下ろそうとしていたボディはミェンミェンの鉄球のごとき重い一撃によって、最下層まで叩き落とされる。

 

 

「こういうことあんまり聞きたくなかったんだけどさ! もしかして敵そんなに減ってない!?」

 

「聞きたくないなら聞くなー!! 余計疲れるっ!」

 

「キィイイー!!」

 

 

戦法的に安定はしているものの、火力がないこの戦法。

ピラミッドのようになっている力の神殿の頂点から、ピットとサムスが最下層の地上を狙ってショットや神器を撃ち、大まかな数を減らしていた。

登りはじめの中層はリンクの矢やディディーコングのピーナッツガンでさらに手堅くダメージを稼ぎ、頂点まで進んだ敵にはマルスかミェンミェンがとどめを刺す。

一直線に設置はされていない階段や、スティーブが設置していた防壁のおかげで頂上までたどり着ける敵はそう多くない。しかし、確実に数を減らす戦法は殲滅力に欠けていた。

 

そして、もう一つ問題がある。

この戦法。ただでさえ疲労の激しい2人に余計な負担がかかるのだ。

 

 

「リンク! ディディー! サムスとピットと交代できる?」

 

「矢の残量が不安!」

 

「それなら僕が前にでる!」

 

 

中層と下層を担当する者を変えようと考えるも、多くの敵を相手取るほどの矢は残っていないという。それなら、多少陣形を崩してでも前に出る。

 

 

「前衛をつくろう! 僕もいくよ!」

 

「ウキーッ!!」

 

「それなら……中層まで前線を上げる!」

 

 

リンクとディディーコングもマルスの後に続いて前にでる。

中層……四角錐型の神殿を登り始めようとしている箇所まで詰め、近距離戦を仕掛けようというのだ。確かに先程よりは敵を倒せるかもしれない上に敵が減ったことで必要となる狙撃の数が減る。だが、抜けられたら後衛まで崩されやすいという弱点がある。

 

─それでも、2人の負担だけは減らさなければ。

 

 

ロックバスターを弾き、カウンターで一突き。神殿の斜面をずり落ちていく。ちらりと下層の大軍を見る。最初は50前後はいただろうか。現在は30から40程度だろうか。一瞬見た上では確信は持てない。

 

 

「キィィッ!」

 

 

目の前で猫騙しをくらわせ、怯んだ隙にはゼロスーツサムスのパラライザーが敵を痺れさせる。そのまま跳び蹴りをくらわせると、限界が来たのか、クッパの姿をしていたボディは色を失って溶けていった。数瞬残っていた金色の液体も空気と一体化するように消えていく。

 

 

「今更だけどッ! 以前とはっ、消え方が違う!」

 

「そういえば、そう、だねっ!!」

 

「……! 知ってたの、かい!?」

 

 

戦いながら途切れ途切れに語り出すマルスに、リンクもまた途切れ途切れに答える。

頂で戦っている彼女と同じ姿をしたボディに、右肩から腹まで思いっきり斬り込み、パワードスーツを貫通する。

同じ姿をしていても、中身は違う。リンクのよく知るゼルダとキクという少女が違うように。

 

 

「スピリットになってた時、のことでしょ!! 姫さんの頼みで、シークの体を借りて戦ってたときがっ」

 

「そんなことが!」

 

 

キーラやダーズに支配されていたスピリット達も、肉体があれば戦うことができた。それを利用して、かつてスピリットにされていたリンクはシークの体を借りて、彼のゼルダと共に操られていたガノンドロフと一戦交えたのだ──

 

マルスの背後を取ったふうせんポケモンのボディへ、ピーナッツガンが射抜かれる。落ちた相手に剣を使って地面に縫い付けられる。

感情は複雑でも、その仕業に戸惑いはなかった。

 

 

「キウアアッ!」

 

「でも、それは変じゃないんじゃない? ここはあの世界じゃないんだからフュギュア化はしない。多分今は力づくで砕いてるイメージで……」

 

 

ディディーコングが力任せに振り抜いた拳は、ドラゴンのようにも見えるエイリアンをまっすぐ撃ち抜いた。ミェンミェンのドラゴンアームが追撃に動く。

風の勇者と魔王。決して縁遠くない敵2人を構えだけで牽制するリンクは言葉をすらすら繋げられた。

 

 

「それは、多分、あのキクも同じだ! フュギュア化しないなら、討伐は難しい! というか、精神の宿ったボディは果たして他と同じように砕くことができるのか……!?」

 

「……ッ、最悪なパターン引かなきゃいいけどね……!」

 

 

倒せない、とは思えないが。

倒すのが難しい、でも十分に脅威だ。

CQCの格闘技を剣で流しながら、柄で首元を叩く。減ってるように見えない敵たちは、時間感覚を消失させ、闘気のみを純化させる。

 

 

「もう! 焦ったいなあ……!!」

 

 

ピットは既に爆筒EZランチャーに持ち替えていた。爆発する弾丸を発射する、大砲を思わせる神器。ため射撃の反動を歪んだ表情で耐えていた時だった。

 

 

「……! 飛ばれ……!!」

 

 

仮面の騎士が、火龍が、天使が、未来の大王が、そのボディ達がマルス等がいる場を飛び越え、天辺に向かう。

ファイターとは違うとわかっていたのに。今までもできただろうにタイミングを測ったかのごとく不意を突かれた飛行。上を制圧して挟み撃ちにする気か。

 

 

「しまっ……!」

 

 

空に向けて構え直そうとするピットに、構えるゼロスーツサムスとミェンミェン。

 

──その真価が問われる前に、ボディ達は撃たれる。

 

 

「え?」

 

「もも〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、腕は上がる。でも、ひっそり慢心していたのかもしれない。

共に戦えたのだから、自分はそこそこやれるのだと。

 

甘かったのかもしれない。

 

 

「……で? その程度かしら?」

 

 

綺麗な金髪を。少しは共通点のありそうなそれを。ゼルダは睨みつけるしかできなかった。

 





○タイトル
新・光神話 パルテナの鏡の4章のタイトル。
空中戦時の赤い視線の多さに動揺しながらもワクワクしてました。
ちなみにピットとパルテナ以外誰も喋らない章でもあり、事実言及されている。


○作者の気まぐれコメント
スクイックリン使いになろうとしてたら、リッターの方がキルレ高くなりました。なんでや。
ネタを挟む暇がなかったので解説することがありません。アホか。
あと小話を試験的に台本形式にしてみました。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
ネス「(今日のおやつなんだっけ?)」
リュカ「(確かロゼッタさんの作ってくれた星くずクッキーだったと思う)」
ミュウツー『(……なぜ私の近くでやりとりをする?)』
ネス「(このこと話そうとした時にちょうどミュウツーがいただけ)」
リュカ「(えと……せっかくだしミュウツーさんも一緒にどうですか?)」
ミュウツー『(……お前たちの分がなくなるぞ)』
ネス「(別に大丈夫だって! その分ミュウツーが食べられる!)」
ミュウツー『(……フッ。帽子だけが似ているだけではないか……)』
ネス「(???)」

リヒター「おっ? エスパートリオが何か通じ合ってる?」
マリオ「なにかんがえてるんだろうね?」
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