大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
場違いなほどに澄み渡る金属音。
それはキクが防御のために発動したネールの愛と、クリスが下から上へ斬り上げた剣がぶつかった音だった。
「クリスさん!」
「……!」
しずえが撃ったパチンコの弾をするりとかわす。確かにしずえは誰かと戦うなど、大乱闘でなければやったことはない。
だが、ほかのみんなが頑張っているというのに、それを理由に隠れていることは出来なかった。
「生粋の剣士……! 面倒な……!」
「すみません、丸いお方! この人のことお願いします!!」
「プ……!」
そしてそんなしずえが微力であっても頑張っている姿が目に入るからこそ、プリンは更なるジレンマに追いやられるのだ。
目を背けたい。見なかったことにしたい。ここには何もない。無力な人はここにいない。そう思えたら、それができたらどんなに楽だろうか。でもそうしてしまえば、自分に言い訳をして戦わない選択をしている自分からも目を背けてしまう。
ゼルダからダークサムスとの離脱を勧められるも、内面を表すかのように腕ひとつ動かせなかった。
「はあ!」
「甘い!」
「うわっ」
「また、マスターハンドさんの……!」
ふたつのチャクラムを創造し、腕の動きと共にクリスへ襲い掛かる。クリスは大きく跳びかわしたものの、背後の木々が犠牲になり、隠れていたイギーがとびだした。
そして、またもやマスターハンドの技を使用したことをファイターである者は見過ごさなかった。
「……何見てるのよ」
「マスターハンドさんに、なにかしたんですか?」
じっと宙に浮くキクを見つめるスティーブ。その視線を不愉快に思ったのか、戦いそっちのけで問いただしてきた。その真意は代わりにしずえが話す。
「なにか……まあ、色々したわね。一応聞いてあげるけど、私達はそいつを探してる。居場所、知らない?」
「……知りません」
「でしょうね。あんた達が知るはずもない」
関わりがあったことを語るキクは、マスターハンドを探していると。本気で知らないのでそのまま伝えたが、キク自身その答えは想像していたようだ。一連の心境には怪しさを感じるが、一種の不快感の領域をでなかった。
スティーブはそれが気になるのか、さらにじっと見続けているが。
「……いつまで見てんのよッ!!」
それに過剰なほどに怒りをあらわしたキクは、チャクラムを操って手元へ戻す。背後から不意打ち気味に攻撃を受けたスティーブはそのまま前に倒れた。
「あーあーあー!! 本当なによ! どうせ私は見るに堪えない化け物以下よ!! じっと見つめないで!!
「……今なんて……」
癇癪を引き起こしたキクの言葉はやたらと反響しているように錯覚する。
本人も無意識から出た言葉だったようで、失言だったと顔を強張らせた。
「……もういいわ。手加減なんかしない。とびっきりの地獄を見せてあげる……!」
そう言うと、まずはすぐ近くにいたスティーブとクリス、未だに倒れたままのダークサムス目掛けて火球を創造し、ぶつける。
「ぐうっ……!」
「動けない方まで……! なんてこと!」
近くから無差別に。意識を失っているように見えるダークサムスまで攻撃対象に入れる悪辣さにゼルダはファイアロッドの魔法をぶつける。
まっすぐキクの方角へ向かっていった炎は、火力を増し……そして
「…………」
「効いて、ない……?」
「それならこうよ!!」
「つづけぇ!」
ウェンディがリング状の魔法攻撃を、ラリーが少し遅れて反射する魔法弾を撃つも、同じように効かなかった。
気のせいだと思い、キクの意識が2匹に向いている瞬間を見計らって、次はアイスロッドで背中を狙う。相手の意識外からの攻撃。でも結果は変わらず背中から魔法が吸収される。
「……で? その程度かしら?」
「……っ」
振り返ってまっすぐにゼルダの方へ見つめる。肉体は同じ血筋だから所々共通点があるのだろうか。短く切り揃えたショートヘアが首筋をくすぐる。やたらと背中が寒く感じる。
「……くっ!」
「地獄を見せると言ったはずよ!」
「うわああ!?」
ダメージに耐え、一歩を踏み出したクリスとスティーブの2人に炎と氷が襲い掛かる。
「え、あれはマスターハンドさんの技では……!」
スティーブが燃え、クリスの右腕が凍りつく。成り行きを見守っていたしずえだったが、それが今まで使っていたマスターハンドの力ではないことはすぐにわかった。
当然だが、ボディであるゼルダの力でもない。
「コソコソ隠れられるのも面倒ね……!」
うまく動けなくなったスティーブとクリスを、実質戦闘不能だと判断し、キクは狙いを別の標的へ移す。そこらに隠れているだろうクッパ7人衆へ向けて、魔法を放った。そう、《《リング状》の魔法攻撃を。
「……っ! この技……!」
「……ぬうう!?」
「モートン!」
さらに別の魔法弾を放つ。この技、そこらの木にあたって跳ね返ってくるのだ。避けきれなかったモートンが背中をぶつける。
そして、ようやくルドウィックが気づいたのだった。この技は先程やったウェンディとラリーの技そのままなのだ。
「どうして2人の技を……」
「ふん、こっちも自前の力じゃないのよ」
理由がわからないと悩む彼にイラつきが落ち着いたのかキクが得意げに答えた。掲げた片手から巨大な炎が生み出される。
「……!? みなさん、はやく私の周りに」
「くらいなさい」
大火球が彼らを森ごと焼き尽くす。巻き込まれぬようにと距離をとっていたキクは確信していた。奴らは巻き込まれて灰も残らなかったと。
「……はぁ……しぶとい連中ね……」
「ギリギリ助かった……」
しかし、ゼルダとその後ろにいた者たち、それよりも背後の木々は形を保っていた。
リンクが彼女に渡したアイテム、バイラの杖のおかげで光の壁が間に合ったのだ。
「……プリンさん! 一緒にダークサムスさんを運んでマルスさん達の元に戻りましょう!」
「プ……」
ゼルダは真っ先に倒れたままのダークサムスへ向かい、防御は間に合った。しかし、次がどうなるかはわからない。その前に離脱しておこう、ということだ。
「プ、プリ……」
「戦う意志もないなら、何もせずに立ち去りなさい」
「させるかッ!!」
どうすればいいかと迷う一瞬に、キクは背後へテレポートする。反射するビームを撃つ彼女とプリンの間にクリスが割り込んでくる。
刃の煌めきは鏡のような作用を働き、ビームは上空へまっすぐ飛んでいった。
「ッ!」
「はあ!」
「うっ……!!」
反射的にビームの軌道を目で追ってしまい、上からの振り下ろしがモロに入ってしまった。
ついに地面に足がつき、動揺と共に痛みを堪える。
「……やはり。みなさん! 先程の砲撃をお願いします」
「わかった! 砲撃開始だ!」
「なんでお前が命令してんだかっ、これでどうだっ!」
何かを察したゼルダが、クッパ七人衆にさっき行った弾幕の嵐を要求する。ルドウィックの命令に従って……というには些か違うような気もするが、彼を皮切りに攻撃を開始する。
単純に避けるルートが減ったキクは、キレのいい回避ができず2、3発をくらってしまう。
「あなたの力は! エネルギーや魔力といったものを吸収し、自分のものにする力! ですが、剣などの物理的な攻撃には防ぐ手段を持ちません!」
「ここ、まで……!?」
スティーブによるダイヤモンドの剣のスマッシュ攻撃がとどめとなって、キクを空中へ吹っ飛ばす。その空中でなんとか留まるが、肩で息をしているのは見え見えだった。
「見破られる、なんて……」
「投降しろ。おまえの力の正体は彼女が見破った。おそらく、お前もまた戦闘は得手ではないのだろう?」
「ふふふ……これだけで
反対の肩に置いている右手を強く握り締めた。何かを成そうとしなければと、そんな強い決意を感じた。
「あの丸と犬は神殿かしら……丸が一番効率が良かった……」
「何を……」
しようとしている。そう続けようとした言葉は、キクの消失により途絶えた。あの、瞬間移動だった。
「(やっぱり切り札を切るしかない。絶望がこのオーブに満たされれば、切り札完成するはず……!)」
どこかで、キクという少女は自分が手に持つ闇のオーブを見る。
それはもうほとんど満たされていた。
○タイトル
テイルズオブエターニアのキャッチコピー。
テイルズオブシリーズといえば、やたらと長いジャンル名なせいでキャッチコピーは影が薄い。そんなエターニアは絆と永遠のRPG。
○キクの能力とは?
ゼルダが看破した通り、受けたエネルギー系の攻撃を吸収、増加させて自分のものにする能力です。だからマスターハンドの技を使用することができ、相手によっては詰ませることができます。
ダークサムスはフェイゾンという放射性物質の化身みたいなものなのですが、それもまたキクの能力の対象。ミサイル等の武装はサムスとは違ってフェイゾンを形にしているようなものだと解釈してるので、完封できました。生の身体ではない以上、ダークサムスの物理攻撃も効かないと判断しています。おそらく魔力の塊で殴っているようなものです。
あと地味にエネルギー系攻撃の影響も無効にしています。
弱点としましては、本編であったとおり剣等の武器、格闘技の物理。あと爆発や自然現象も通じます。
戦闘に関しては、その能力とボディの力に頼りきっている模様。
○切り札
もうすぐお披露目。
ネタバレすると今章のボスにもなります。当てたらすごい。