大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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57話 冥府界

 

闇の神殿の頂上、ピラミッド型の建物の頂で後衛とその護衛として、地上や下層の敵と戦い続けてきたゼロスーツサムス、ピット、ミェンミェンの3人。背後から聞こえてきた声に焦りながらも体を動かす。まさか、後ろから回って力技で登ってこられたのではないかと。

戸惑いなくゼロスーツサムスは銃口を向ける。ここまで気づかなかった自分を叱咤しながら、矛先は見たこともない生物2匹に向けた。

 

 

「ももっ! ネ、ネネ達は怪しいモノではありませんも!」

 

「な、なんだこの生きものは?」

 

 

そこにはあまりにもファンシーな生き物がいて、思わず声が裏返った。

卵型の体系で、細い手足がついていて、背中からは羽根にも手にも見える何かが生えていた。

それが、桃色と黄緑色の2個体。

 

 

「え、えっと……キノはクリスから話を聞いて……」

 

「ウソはダメも、今度は盗み聞きしてたも」

 

「ももっ!? なんで知ってるも!?」

 

 

桃色の個体の背中から、少々吃りながら説明しようとするが、嘘が混ざっているようで。

意を決した様子で黄緑の、キノと呼ばれていた個体が前に出る。

 

 

「戦えるヒトがヒツヨーだって、クリス、言ってたも。それでねえちゃんと残ってここまで登ってきたも」

 

 

要するに、クリスがクッパ七人衆に助太刀を要求していることをキノが聞き、姉と一緒にここに残ったということなのだ。

 

 

「後ろから登ってきたネ!? よくやるヨ……」

 

「キノ、イッショウケンメーですも! だからネネもイッショウケンメーになれるですも!」

 

 

力になりたいという理由だけで、整備されていないだろう裏側から外壁を登ってきたというのだ。なんという力技。

 

 

「えと、だから……キノのライフルが火を吹くも!」

 

 

まずは、キノがエーテルを撃つ。それは周囲の仲間を癒す治療のアーツだった。

 

 

「治療か! ありがたい……!」

 

「よおし!! これでガンガンいこうぜ!!」

 

 

本調子ではなかった2人もようやく活力が戻ってきた。ちょっと体の調子を確かめると、ピットはそのまま神殿を駆け降りていく。

 

 

「あ! 待つも! キノも前に出るも!」

 

 

後を追ってキノも飛び出していった。どうやら精神年齢が近いようで、残された乙女集団は少々呆れた顔をしていた。

 

 

「子供かヨ……」

 

「男の子は強く見られたいんですも。タンジュンだけど頑張り屋さんなんですも」

 

「単純か。少し辛辣だが的は得ているな。フフッ」

 

「カッコいいけど笑顔も似合いますも! あ、えーと……」

 

「サムスだ。ネネ、だったか」

 

「うちはミェンミェンネ」

 

「サムスさん、ミェンミェンさん、ネネ達も戦いますも!」

 

「そうだな。せっかく癒してもらったというのに、これではぐうたらだな」

 

 

久しぶりに、余裕ができた気がする。柔らかく口角を上げられたのも久々だ。

階段を降りるのももどかしく、斜面の外壁を滑り落ちていく。パワードスーツがもう重荷にならない。装着しながら、マルスと鍔迫り合いをしている、彼と同じ見た目の敵にフルのチャージショットをくらわせた。

 

 

「サムス! 無理しなくても……」

 

「大丈夫だ! 心強い助っ人が来てくれたんだ!」

 

「スリープネロっと!」

 

「少し見かけは珍妙だが」

 

 

弾丸を竜にぶつけ、睡魔を呼び起こした。人型に戻った敵はディディーコングの飛び蹴りで地上まで落とされる。

その助っ人の姿を見ると、なるほど確かに珍妙だ。この子も、ファイターの誰かのオトモダチだったりするのだろうか。

 

 

「君、ありがとう。協力してくれるんだね」

 

「も、ももも……」

 

 

マルスが素直にお礼を言うが、キノは言葉に詰まってしまう。単なる人見知りなのだが、マルスは照れてるのだろうかと解釈した。

 

 

「恥ずかしがらなくてもいいよ。助けてくれてありがとう。クリスから頼まれたのかな」

 

「もも…… えっと、そう、そうも」

 

「ボクもいるぞー!?」

 

 

パルテナの神弓を振り回すピットがふくれっ面で自分の存在をアピールする。

 

 

「キノが回復? 治療? してくれたネ。だから前に出てきたネ」

 

「君がキノか! ありがとう!」

 

 

子供のボディでも、ファイターと同等の実力があるのだから、油断はできない。

そんな中で治療ができる者の加入は大きな追い風となった。

ピットが斬りつけた村人がノックバックしたところを、マルスが一突き。ただひたすらダメージを減らされていたボディはその一撃により、ドロドロに溶けていく。

後衛の前線参戦、そしてキノとネネの加入により、ボディ達はようやく同数となった。

 

 

「ネネもお役に立つですも! こっち見るですも!」

 

「おっ……?」

 

 

ネネがその場で仁王立ちし、リンクが相手にしていた針鼠を含めた3体ほどの視線を自分に集める。守りにも扱える巨大な武器と金属製の防具でダメージを耐える。

 

 

「ソイヤッ!!」

 

「ミェンミェンさん、ありがとうございますも! マイルドダウン!」

 

 

ネネにヘイトを向けた敵にメガボルトを叩き込む。鉄球を振り回すような攻撃は3体の敵全てを崩した。それに追い討ちをかけるかのようにマモマモを叩き込む。完全にすっ転ばせた。

 

 

「全く。助っ人ばかりにいい格好はさせられないな! 即席でも出来るだけ追い討ちをかけるぞ!」

 

 

パワードスーツを着て、ようやく本調子になってきたサムスは同じ3体をまとめて回し蹴りをくらわせる。広いとは言えない足場で体勢を崩す。

 

 

「ウキー!!」

 

 

身軽な立場を利用し、その崩した敵のうち2体の頭部を押しつけてぶつけさせる。そして、残り1体をサーフボードのように下にし、斜面に引き摺り下ろしていった。

 

 

「うわ! なにあれボクもやる!!」

 

「やんなっつーの!!」

 

 

だんだん彼のノリがわかってきたリンクが、少々言葉を乱暴にしながら突っ込んだ。そして同時に1人を柄で殴り、マジカルハンマーで叩き潰した。

 

 

「あとは!?」

 

「こっちは任せろ!」

 

 

もう片手で数えられるほどになった敵を確認し、1体にミサイルを至近距離から撃ち込む。横向きに振られた大剣をモーフボールになることで股から後ろに回り、背中にアームキャノンの爆風を叩き込んだ。

 

 

「それなら2人はボク達がいく!」

 

「まったく! あの子を探さなきゃいけないのに!」

 

 

射爪ブラウンタイガーで敵を怯ませ、リンクが地上へ斬り落とす。寄せ集めの集団が、ようやく本格的な連携をするようになってきた。

 

 

「ぼーんあっぱー!」

 

「もももっ……!」

 

 

ネネの一撃に吹き飛ばされ、キノがエーテルを撃ち出す。そうして最後の敵は落ちるギリギリまで追い込む。

 

 

「これでとどめヨ!」

 

 

アーム、ドラゴンが、星の子ごと魔女のボディを打つ。炎とともに追撃し、空中で霧散していった。

 

 

「やっと終わった〜、数多いのに割と硬くて爽快感ないとかクソゲーだよ、KOTY行きだよ〜」

 

「あっ、回復するも」

 

 

ひと段落したと認識したのか、ピットが座り込む。それを見て、キノが範囲回復を行った。

 

 

「なんかいつのまにかおもしろ生物が増えてるけどなにこれ?」

 

「ネネとキノはノポンですも!」

 

 

リンクが2匹を訝しげに見つめるが、突如ハッとして我に返ったように慌てはじめる。

 

 

「って、それよりキクは? あの子は確実に何か知ってるでしょ?」

 

「……彼女の言うことが本当ならこの世界にいない可能性もあるが」

 

「ともかく避難していったクリスを追おう。後のことはみんなで考えようか」

 

 

リンクはまだ少し不服だったが、どこにいるか検討もつかないのならば仕方がない。ひとまずマルスの意見に従おうと揃って神殿を降った時、スティーブが作った即席の橋から、戻ってくる姿が見た。

 

 

「みなさーん!! ご無事でよかったです〜!!」

 

「しずえさんにプリンネ! あとアレは……」

 

「……ダークサムス……!?」

 

 

しずえが必死に誰かを抱え、プリンが空中で少しでも軽量化させようとしている姿が見えた。

その誰かはダークサムスだった。サムスは驚きと戸惑いを覚え、どうしていいかわからなくなる。その気絶しているように力なく寄りかかる姿に、自らの宿敵たる様子が全く見えなかったからだ。

 

 

「しずえさん、どうしてここに戻って……」

 

「キクさんがこっちに来ていて……」

 

「……ッ!?」

 

 

しずえがその事実を語るタイミングと、一部の者が、そこを振り返るタイミングは同じだった。たった今自分達が降りたその神殿の頂上に見覚えのある姿で少女はいたのだ。

 

 

「……まったく。こうなるんだったらあいつらの戦いに固執するんじゃなかったわ……」

 

「リンクー!」

 

「マルス様!」

 

「……そしてよりによって合流されるし」

 

 

その少女はため息を吐きながら、少々塩らしくなっていた。幾分か冷静になったと言ったところか。

ゼルダやクリスとも合流され、そのため息はさらに深くなる。

 

 

「彼女には魔法やエネルギーのような攻撃が効きません! 吸い取られて返されます!」

 

「吸い取る……!? だからダークサムスは……!」

 

 

サムスは宿敵が敗北した原因を把握する。彼女の知らぬところで、キク本人が言ったが、本当に相性の問題だったのだ。

 

 

「どうして僕達をこんな世界に……」

 

「……いいわ、答えてあげる。本当は後顧の憂いを断つつもりだったけど、ほとんどどうしようもないことだから」

 

 

まるで何もできないという言い草に思うところはあるが、ここは大人しく聞くことにする。

 

 

「私はあの創造の化身の力を手に入れた。でも、本人には逃げられた。そいつはファイターの誰かに宿って隠れているはず。みんなはフィギュア化させることで、そいつがいるかどうかを判断してるけど……」

 

「お前には必要ないと?」

 

「そう。見ればわかる。だから言ってあげるけど、ここにいる誰にもマスターハンドはいないわ。ここはこの調べたファイターと、()()()()奴らをまとめて放り込む場所…… 言ってしまえばゴミ捨て場みたいなものなのよ」

 

「ヴギギギ……!」

 

「そういえばあんたには決定的瞬間を見られたわね。だから潰しておきたかったんだけど…… ここまで揃って勝てると思うほど私は馬鹿じゃない」

 

 

比較的戦闘の苦手な相手がいた先と違い、戦闘民族と合流した今、勝てるとはキク自身思わない。自分の力についての情報が()()知られているなら尚更だ。

 

 

「だから…… あんた達にピッタリな切り札を切ることにしたわ」

 

 

そういうと、おもむろに闇のオーブを取り出し、神殿の頂上の風穴に置くように落とした。

それは見なくとも、割れてしまうと断言できる。だが、キクだけはそのオーブが完全なものになっていることを知っていた。

 

 

──突如、神殿から何かのオーラが発生する。正確には、オーブが落とされた穴から。

 

 

「何が起こっている……!?」

 

「…………」

 

 

剣を抜き、全員の本音をクリスが零す中、ピットだけはその力になんとなくの既視感を覚えていた。

 

似ているだけ。

その大きな共通点は、亡者の嘆き。

 

 

「ハデス……?」

 

「確か、ルネはこう言ってたかしら。絶望や恐怖で満たされた闇のオーブを破壊すると現れる大魔王、その名は──」

 

 

背中から蜘蛛の足のように生える爪。

鉤爪と、髑髏が無数についた棍棒。

 

 

「冥府の帝王 ガーディス」

 





○タイトル
光神話 パルテナの鏡で登場するBGM。多分パルテナの中じゃ一番有名。敵軍の陣地の名を冠するが、曲調は結構明るめ。


○ネネ
ゼノブレイドDE つながる未来で登場。ノポン族のメス。
リキの子供で、しっかりもののお姉ちゃん。木登りができない子だが、今話ではキノを背負って神殿の外壁を登ってきた。健気。かわいい。
能力はラインの同じタンク役。本編ではヘイトをもらっていい子がネネしかいないので超重要。


○キノ
ゼノブレイドDE つながる未来で以下略。ノポン族のオス。
父リキのような勇者を目指すが、実子ではなく拾い子。
人見知りだがお調子者でもある。
能力はカルナと同じ、ヒーラー兼ガンナー。武器はリキ制作。


○今度は盗み聞き
つながる未来編では盗み見していた模様。


○冥府の帝王ガーディス
アーケードから移植された、ドラゴンクエストモンスターバトルロードビクトリーのダウンロードコンテンツで登場するオリジナルボス。
原作後の時系列を主にしている本作において、『倒されておらず、倒しても原作に影響しない』という利点を買って、今章のボスに採用。
デザインはスライムもりもりの漫画の作者かねこ統氏。
登場シーンは原作ゲームの漫画を採用。あちらは事故だが。しかも、うろ覚えなのだが。


○作者の気まぐれコメント
カービィカフェ行きましたフウウウウ!
スーベニアランチボックスかわわ。
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