大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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58話 死へのいざない

 

「もう! ひと段落ついたと思ったらすぐに厄介ごとが増えるネ!!」

 

『何者だ…… 我を永き眠りから解き放つ者は……』

 

 

本能が怯えを察知した。

この存在は自分達よりも遥かな上位に君臨する者だと。ゆえに身がすくむ。

誰が知るはずもないが、この帝王は数々の魔王すらも怯えすくませるほどの存在なのだ。

 

 

「……あいつは強い……明らかに……」

 

「君は……」

 

 

ここにいる中で一番元気溌剌に飛びかかっていそうなピットが、一番真剣な顔をしていることにリンクは気遅れする。

彼が知っているその存在と目の前の存在は決して同一ではない。それはわかるのだ。でも共通点を探してしまう。同じ亡者を統べる者だからなのだろうか。

 

 

「あっ! ところであの方は……!」

 

「! キクがいない……!」

 

 

ゼルダがここに来たであろう敵側の少女が見当たらないことに気づく。それで初めてマルスも、浮かんでいた空中からキクが消えていることに気がついた。

冥府の帝王ガーディス。奴に視線が集まっていたせいで逃げられてしまったようなのだ。

 

 

「ガーディスをなんとかしなければ探すこともできないか……!」

 

 

ここのどこへキクが逃げたとしても、ガーディスを放っておいたまま何かをするのは無茶だ。

剣を抜いたクリスにガーディスが威圧的な目を向ける。

 

 

『ほう……?』

 

「……ッ!?」

 

 

それだけで体が硬直し、一瞬自分のコントロールから外れてしまう。動けると気づいた時には片足が迫っていた。

 

 

「クリスッ!!」

 

「……ッ!!」

 

 

久方ぶりに聞いた、主の鬼気迫る声にクリスはようやく動いた。即座に横へ飛んで足下から離れる。残っていた神殿の外壁も無惨に壊れ、全員に襲う。

 

 

「くっ……意外とはや……ッ!」

 

 

地面を一回転して即座に体勢を整える。巨体に違わぬ速度に少なからず動揺した時、腹部に猛烈な熱さを感じた。

あの蜘蛛の足のような爪がクリスの腹部を深く切り裂いていたのだ。

 

 

「──ッ!!」

 

 

込み上げてくる激情を、マルスに止めることは出来なかった。感情の赴くがままに駆け出し、未だ形を保っていた外壁を足蹴に膝部分へ肉薄する。

 

 

「のッ──!!」

 

 

全力で突き出した切っ先は僅かに膝に入るのみで何も変わらない。汚れを払うような仕草でマルスをファルシオンごと吹き飛ばした。

 

 

「くっ……!! ほとんど効いていない……!」

 

「一撃の威力が違いすぎるんだ……!」

 

 

人間で言うならば、爪楊枝で刺したようなもの。痛いといえば痛いが、長引くようなものではないということだ。

エリトラで低空飛行してきたスティーブの腕の中にいるクリスを見る相当痛そうではあるが、目は開いて荒い呼吸を繰り返している。命を奪われていないことにはとりあえず安堵する。

 

 

「キノ、クリスさんの治療に行くも!」

 

「わ、わかってるも」

 

「こちらもお願いしまーす!」

 

 

この場で唯一治療の術を持っているキノ。深手を負ったクリスの元へ向かう。それに気づいたしずえもダークサムスを賢明に背負って向かう。

 

 

『逃げることもせず、あくまで我に勝とうというのか……愚鈍なる者どもよ……』

 

「訳もわからず呼び出されて、いいように使われるがまま戦ってるあんたに言われたくはないね!!」

 

 

接近するリンクに対して振るわれた拳は、その身体能力によってかわされる。クッパ七人衆による砲弾が飛び交う中、強気に攻めていく。

 

 

『あの者は後でゆっくり痛ぶってやろうぞ……今は貴様達だ……!』

 

 

リンクがブーメランを投げるが、まるで効いた気がせず、弾かれて落下する。

 

 

「剣で駄目ならこれでもか……! 何なら効くんだよ……!」

 

「それならこれでどうです!」

 

 

実態のない攻撃ならば効くのではないか。そう考えたゼルダは、キクには効かなかったファイアロッドの魔法を放つ。脛付近を炎が襲うが、まるで効果がなかった。

 

 

「そんなっ……!」

 

「危ない! ぐう……!?」

 

 

効いた様子のない結果に呆然としたゼルダに棍棒が振るわれる。リンクが慌てて、庇う位置に動きながら盾を構えるも、そんな体勢で受け切れる訳もない。紫のオーラに包まれた棍に2人まとめて吹き飛ばされる。

 

 

「……! 大丈夫ですか!?」

 

「なんか……! しびれ……!!」

 

 

受けきれず、攻撃をくらったリンク。彼が盾になったゼルダと違って、直接くらった結果、体が麻痺したようだ。亡者の怨念は生者を縛り付ける。

 

 

『……目障りだな』

 

 

足元をうろちょろと動くファイター達や、大砲を撃ち続けるクッパ七人衆を不快に思ったのか、本格的にガーディスが動き出す。

壊れた外壁の残る場所から動き、高さの同じ平地へ。地下に足をつけていた先程と違い、さらに高さの差が生まれる。

さらに、口から黒色のモヤのようなものを辺りに撒き散らす。それの正体をピットは本能で察知した。

 

 

「あれは死んだ魂の嘆き……!? ダメだ、かわして!!」

 

「ごめん、たのむ……!!」

 

「待ってっ……!」

 

 

忠告が遅かった者、かわす方法を持たなかった者、託した者。広範囲の攻撃は生命を怨む。

 

 

「これは……うごけ、な……!」

 

「もー!! 捕まったですもー!!」

 

 

亡者のなげきが、モヤを浴びた者達を縛り付ける。怨み、嘆き、未練。死者を統べし帝王はその感情を呼び起こし、生者を支配する。

 

 

「ぼっちゃんと同じ武装がなければ巻き込まれていたか……!」

 

「ちょっと待って! アタシ達だけじゃどう頑張っても勝てないわよ!」

 

 

かわせた者は、クッパクラウンと同型の機械を持っていた七人衆。

 

 

「ウキーッ!」

 

「みなさんが!」

 

「降りて治療するも!」

 

 

バレルジェットで空へ飛んだディディーコングと、プリンの上に乗るキノ、ふうせんでしずえに助けられたクリスとダークサムス。そして、

 

 

『……』

 

 

たった今、ガーディスの顔をダイヤモンドの剣で斬りつけたスティーブだった。エリトラで空を飛んでいたのだ。

 

 

「……! ディディー! そしてジュニアと同じキカイを使う君たち! 空から攻撃してスティーブの支援をしてくれ!」

 

 

それを見ていたマルスからの指示が飛ぶ。上空と地上に注意が分かれれば、より動きやすくなる。未だに動きの鈍い体に鞭を打つ。

 

 

「そして、プリン!」

 

「プッ……!?」

 

「君はそのまま空からキノやみんなのサポートを頼む!」

 

「プ……」

 

 

ずっと逃げてばかりだった。昔も今も。

これでいいのだろうか。何も変わっていない。痛む体も痛む手もがまんしながらでも戦うべきではないのだろうか。マルスだって苦手なはずの戦いを選んでいるから。

下を向き始めたプリンを励ます声は、上から聞こえてきたのだった。

 

 

「……キノ、とーちゃんみたいな勇者になりたかったも。でもとーちゃんと同じ武器、持てなかったも。だけどこの武器があるから平気も!」

 

「プリ……?」

 

「とーちゃんみたいな勇者にはなりたいけど、とーちゃんにはなれないも。だから……えっと……」

 

 

言葉に詰まったのか、人見知りが露骨になってきたのか、どんどん失速する励ましの言葉。

助け舟が出たのはしずえが風船をつけているブランコ状の乗り物からだった。

 

 

「つまり彼は自分がやれることややりたいことをやればいい、そう言っているんだ」

 

「もも!? クリス、ケガ平気も!?」

 

「お陰様でな。治療が効いた。……マルス様は君の気持ちがよくわかるんだと思う。戦いたくないという気持ちが……立場があるからその道をお選びになることはないが、君の気持ちに寄り添うことはできる! だからこそ君に戦えとは言わない! 殴りたくないなら殴らなくていい! その代わり別のやれることをやるんだ!

 

「……!」

 

 

そういえば、こんな自分にも、望んで戦ったことがあった。

大乱闘の世界に馴染めぬ自分と仲良くしてくれた、ピカチュウをキーラの支配から解放する時。またはガンナに煽られた時。

後で手は震えたけど、間違いなく自分で戦いに赴いていた。それが自分のやりたいことだったから。

 

 

「プクー!!」

 

「ももっ!?」

 

 

急に動き出したプリンに振り落とされないように必死に耳に掴まる。飛んだ先はゼルダとリンクのいる場所。体の痺れたリンクはもちろん、リンクを気にして逃げ遅れたゼルダも先の攻撃に巻き込まれていたが。

 

 

「ヒールらうんどー!」

 

「ふう……ふう……」

 

 

少々ヤケクソ気味に癒しのエーテルを発射する。荒れていた息遣いもかなり整ってきた。

 

 

「プップリー!!」

 

「すぐ次にいくもー!?」

 

「はやっ!?」

 

 

回復が終わったらすぐに別の場所へ飛んでいく。プリンもまた張り切っているのか、あっという間の出来事である。

 

 

「こんなすぐ切り替わるネ……?」

 

「それだけ悩んでいたということだろう。だが……」

 

 

180度勢いの変わったプリンに、目をパチクリする。これで機動力のある回復部隊を手にしたが、状況は劇的には変わらない。

火力の面に関しては変化もないからだ。現在、スティーブを中心に、ディディーコングとクッパ七人衆が空中で攻撃を続け、地上組の立て直しを図っているも、これ以上の攻撃ができる方法がない以上ジリ貧だ。先に回復が途切れる。

 

 

「(これ以上の手があるのだとしたら……)」

 

 

サムスは、他に取れる手を思いつく。ガーディスの知らない手。自分の姿をしたその生命。ようやく、動き出そうとしていた。

 





○タイトル
ドラゴンクエストXのラスボス第1形態、冥王ネルゲル戦のBGM。
おどろおどろしいイントロから徐々に楽器が増えていく。オンライン勢としては10要素も取り入れていきたいが、オフラインとの兼ね合いもあるのが困りどころ。


○ガイストラッシュ
暗黒属性を棍に宿した攻撃。なぜか麻痺効果のおまけ付き。バトルロードの実況も描写の参考にしています。


○亡者のなげき
暗黒属性のブレス攻撃で、呪いのおまけ付き。こっちは違和感なし。


○キノの武器
テッポーの実を使って溜めたエーテルを撃ちだしているとのこと。リキ作でカムカムを持てないノポンに愛用されているそうな。
リキとかいう出演ほぼしてないのに株を上げていく父親。


○Q.ダークサムス触れたらダメじゃね? しずえさん思いっきり背負ってるけど?
A.調整中。(後から気づいた)
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