大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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Fire Emblem Sealed Sword “After”
5話 戦火を交えて


 

 

見えないものが見えるって聞くと特別な何かを感じない?

 

 

でも見えるものが見えないと異常って呼ばれるんだよね。この理不尽さはなんなんだろう。

 

 

見えない人にとっては当たり前かもしれない。

見える人にとっては当たり前かもしれない。

 

 

 

それをとってつけたかのように、やれ特別だ、やれ異常だと第三者がそんな烙印を押しちゃってさ。

 

 

違うんだよ。特別異常はどっちでもいいのさ。

自分が正常だと言い張りたいのさ。

 

だって未知というのは怖いから。

特別と異常と未知をまとめて『訳がわからない』で通している。自分を納得させている。

 

 

 

 

……ねえ、君達には僕がどう見える?

特別? 異常? 未知?

 

…ああ、わかっている。

ここにいるってことは少なくとも僕は見えているんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いた場所は森だった。インクリングは思った。運が悪いな、と。

 

 

「もー… ここどこの辺なんだよー…」

 

 

気分的には久々のナワバリバトルを楽しんだ後、インクリングは大乱闘の世界に戻った。スッキリしたし、ウデマエも上がった。だから意気揚々とこの世界に戻ってきたのだ。

しかし、たどり着いた場所は森の中。もっとわかりやすい場所ならば、頭の中の地図を頼りに求める場所へ行くことができる。しかし、この世界に森は結構あるので、木々だけではどこの森にいるのかわからないのだ。

 

 

「ピチュ!」

 

「おおっと、ピチュー! こっちにいたんだ!」

 

 

草むらから野生のピチューが飛び出してきた。知らぬ顔ではない。ファイターのピチューだとはすぐにわかった。

 

 

「ピチュー、ここどこの辺りかわかる?」

 

「チュ〜…」

 

「わかんないかー…」

 

 

思わぬ助っ人の登場に希望を持つも、ピチューもここがどこだかわからない模様。彼も戻ってきたばかりなのか、それとも迷子にでもなっていたのか。ポケモンの言葉がわからないインクリングには仕草や話の仕方で予測するしかない。

 

 

「うし、とりあえず一緒に森を抜けよっか。誰かと会えるかもしれないし」

 

「ピチュッ!」

 

 

ぴょんと肩にピチューを乗せて、森を進む。見回してみるが、この木や花に見覚えがない。

ピチューにも聞いてみたが、反応は薄かった。自分はこういうのあんまり気にしないし、ピチューも興味なさそうだ。単純に覚えてなかったんだろうと深く考えなかった。本当に見たことがないとは思いもしなかったのだ。

 

 

「おーい! 誰かいるー!?」

 

「ピチュー!」

 

 

二人して呼びかける。その声は木の葉の隙間を通り、花を風のように揺らした。返事は返ってこない。静かに待ってみたが、耳に入ってくるのは葉がこすれる音ばかりだ。

 

 

「応答なし。誰もいないのかな? まだみんな帰ってない?」

 

 

インクリングの帰りが特別遅かったわけではないが、世界の時の流れはそれぞれなのでその可能性は否定できない。ため息をついてまたとぼとぼと歩き出そうとする。

 

 

「ピチュッ!」

 

「えっ! なに、誰かいた?」

 

 

ピチューは見た。少し遠く。茂みや木々に隠れてどんな人かまではわからなかったが、明らかな人影を。指差し声を上げてインクリングに伝える。彼女も言いたいことは大体わかったようだ。

 

 

「待ってー! 誰かわかんないけど待ってー!」

 

 

全力で駆け出す。木がなくて少し開けた場所。そこまで走りながら声を上げる。しかし、いたはずの誰かもいなければ、返事もなかった。走りながら声を上げることで息切れしたインクリングはぜえぜえと荒く呼吸をする。足は止まってしまった。

 

 

「はあ…はあ… ここにいたの? 本当に?」

 

「ピチュッチュ!!」

 

 

信憑性を疑うインクリングにピチューは怒る。

だって、一生懸命走って声をかけてるのに返事もしないなんて人そうそういるわけ… いた。セフィロスとかカズヤとか如何にも無視しそうな人いた。

 

 

「インクリングにピチュー?」

 

「ひゃうわ!?」

 

 

どよんとした心境に一石が投じられる。

はっ、と振り返るとカムイがいた。身長の関係で覗き込まれる。

 

 

「なんだ… カムイだったんだ… 無視されたのかと思った…」

 

「?」

 

 

ピチューが見た人影はカムイだったのかと納得する。だが、冷静に考えるとわかったはずだった。カムイは背後からやってきたことに。

 

 

「カムイー、ここってどこの辺り?」

 

「うーん… 実は僕も戻ってきたばかりでわからないんだ。」

 

「そっかー…」

 

 

しかし、頼みの綱のカムイも何も知らなかったようでガックリと肩を落とす。

 

 

「とりあえず… 一緒に行こうか。目印になるものを探そう。」

 

「うん!」

 

 

ということで仲間になったカムイを先頭にして歩き出す。

 

 

「ねーカムイ、カムイは何して過ごした?」

 

「兄弟のところに行って、囲碁をしてたかな」

 

「イゴ?」

 

「えっと、盤上に白色と黒色の石を並べて陣地を取っていって…」

 

「??? よくわかんないけど古くさいやつ?」

 

「難しいか…」

 

 

ハイカラなインクリングには少し次元の違うお話であった。遊戯とかゲームだとか言わなかったのでインクリングには難しいものと判断されたのだ。多分半分は聞いてない。ちんぷんかんぷんなインクリングがよそ見して歩いていたら、前方の背中にぶつかった。

 

 

「いった… もう! 急に止まらないでよ!」

 

「ピチュー!」

 

「…………」

 

「カムイ?」

 

 

何も言わないカムイを不審がって、カムイの顔を覗き込もうとするインクリングを無意識に動いた手が止めた。

 

 

「…カムイ?」

 

「…ちょっと目を瞑っててくれるかい? ピチューも。」

 

「チュ…?」

 

「え? うん…」

 

 

再び呼びかけたインクリング。カムイの返答は少し不自然なものだった。よくわからないが二人とも言うことを聞くことにした。ピチューは両手足に力を込めて落ちないようにしがみつく。二人が来たのは真っ暗闇。インクリングの腕を誰かが引っ張る。カムイだろう。

 

 

「こっち」

 

 

導かれるままにカムイについていく。

サプライズにしては少し長くて。恐怖から開きそうな目。薄目で覗こうかと思ったが、「こっそりのぞいちゃダメだよ」と先回りで忠告された。なので従順に従っておくことにする。こういって驚かせるのはインクリングは好きだ。

 

 

「あっ、ちょっと待って!」

 

「えっ、何!?」

 

「ピチュ!?」

 

 

その思考は突然のカムイの言葉で妨げられた。流石に忠告を守りきれず、目を開いた。整備された道には出たが、驚くようなことはなにもない。

 

 

「あーあー…」

 

「どうしたの?」

 

「虹色の鳥がいたんだけど… 逃げられちゃって…」

 

「そんなー! ていうか別に目隠しする必要なかったんじゃない?」

 

「ピチュ…」

 

「えっ何その顔、もしかして大はしゃぎして驚かせるかもって!?」

 

「あはは… まあ、最初の目的は達成したし、道沿いに歩いてみようか」

 

「はあ… 見たかったな…」

 

 

しょぼくれたインクリングは先頭に出る。というかカムイがこっそりと後ろを確認したかったのだ。

 

 

「(どういうことなんだ…!? この光景が真実ならここは大乱闘の世界じゃない…!)」

 

 

虹色の鳥などいなかった。デタラメだ。

なぜわざわざ二人に目を瞑らせたかというとこの光景を見せたくなかったからだ。

 

 

夥しい数の人。まるでこの世の地獄のように倒れていた兵士。果たしてあの中の人間がどれだけ生きていたのか。もしくは全員死んでいたのか… 折れた矢や未だ鎮火していない火柱はこの場所が戦場であったことを表していた。

 

平和を取り戻したはずのカムイの鼻にツンと思い出させる血の匂い。

 

嫌な予感がした。

 





○章タイトル
ファイアーエムブレム 封印の剣の海外版タイトル… にしたかったのだが、発売されていないので直訳です。


○タイトル
ドラゴンクエストVの通常戦闘曲。最初の低い部分が堪らんと、音感ゼロ人間が語ってみる。5曲つくって4曲没にした苦心の一曲。


○ピチューの見た人影…?
カムイではないようです。


○虹色の鳥
ホウホウイメージ。カムイのでまかせではありますが。


○カムイの兄ムーブ
甘いと言われたカムイも成長しますって。


○なんだこの展開!?
あれ、言ってませんでした? 前作よりかはシリアスになるかなと…
流石にこの章が一番シリアスかなとは思いますが…
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