大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「あっ、ダークサムスさん……!」
しずえの、風船つきブランコから地上に着地する。宙に浮き続けるダークサムスは着地したところで、土埃もあげない。
「…………」
「サムス、君は……」
「言わなくていい…… わかっている。想像よりも揺らいでいない。大丈夫だ」
その様を複雑そうな顔で見つめるサムスにマルスが気づいた。心配されていることはわかっている。だから正直に話した。キーラとダーズの戦いを通じて、気持ちもだいぶ落ち着いたのだろう。ピカチュウという頼もしい相棒がいないというのに。
そう、ここがあの宇宙の世界でない限り。
そして、奴らが敵にならない限り。
味方とは言わないが、手は組んでやろう。
それが譲歩だ。
『……ふん』
「…………」
空中から降りてきたダークサムスと、空を飛ぶロイ、レミーに向けて暗黒呪文ドルモーアを放つ。2匹が脱兎のごとく逃げるなか、ダークサムスは2体に分裂しながら回避した。
「うわ、増えた!? ただでさえ主役の偽物ポジなのに増殖してややこしいことに!? ただでさえこの人数把握しきれてないのに!!」
「……君、随分と調子戻ったんだね」
ピットにツッコミを入れるリンクも、少し本調子が戻ってきたようだ。
分裂した2体それぞれがビームウェポンを撃ち出し、ガーディスの体力を削ろうと取り組むが、他の者たちと同じくほとんど効いているようには見えない。ダークサムスの加入は大したプラスにはなっていない。そう感じた。
「僕もなんとかしたいけど、正直少ない矢で撃ってもたかが知れてるし、剣も塵程度の威力しかなさそうだし。魔法が使えたらなんとかなったんだけど……」
「なんとか隠れてやり過ごせないかな?」
「僕たちをやり過ごして、次に攻撃対象になるのは戦えない人たちだよ…… ダメだ、有効な作戦がない。塵を積もらせて山にするしか道が見えない!」
神弓の矢で顔を狙い続けるピットは視界を潰すことを狙っている。地上から顔付近を狙うのは悪くないが、空飛ぶスティーブ等に誤射しないかだけが問題だ。
「それならば…… 封じ込めます!」
ゼルダがアイスロッドを取り出し、ガーディスに振りかざす。凍てつく氷の魔力はガーディスの足元を凍らせる。
「手を貸す!」
「…………」
『むっ……?』
そのままでは体に氷がついたとしか言えない有様でも、サムスと、彼女の能力を持つダークサムスがアイスビームを撃つことで足のくるぶし程度までは凍りつかせることができた。ガーディスがはじめて反応らしい反応を見せる。
「よし! これなら! 頼むよピット!」
「おけまる!!」
背後にまわり、リンクのフックショットがガーディスの肩までの道をつくりだす。
さらにゼルダに渡していたソマリアの杖で、フックショットの鎖部分をブロックで固め、さらに人が登れる橋とする。
「ハデスっぽい何か! 覚悟!」
駆け上がったピットが神弓の刃を煌かせ、まっすぐに顔面の目玉に突き刺そうとした。
しかし、背中から翼のごとく生えた爪は思った以上に速かったのだ。
『目障りだ!』
「ぶべっ!?」
「キィー!!?」
飛べないピットは叩き落とされたままに地面に落下する。近くにいたディディーコングが真っ先に向かう。振り下ろされた棍を必死にピーナッツポップガンで止めようとするが、もはや塵にもならない。2人まとめて伏せられる。
「もも! 回復いくも!」
「プリッ!」
「しずえさん! 僕を乗せてくれないか!」
「は、はい!」
2人の回復へ向かうキノプリンに加えて、マルスが状況の確認のため、しずえのブランコに乗って空へ飛ぶ。ペガサスでもないもので空を飛ぶのも、大乱闘の世界で慣れていた。
「(……どこかに突破口があるはずだ……! 倒す……いや倒さずともどうにかして戦闘不能に出来れば……!)」
空中から戦場を観察している。ガーディスの足を封じる氷は一応まだ機能はしている。だが、あの巨体のパワーを考えればいつ破壊されてもおかしくはない。
砲弾を撃ち、たまに魔法も飛ばすクッパ七人衆は士気が下がりつつある。クッパもいない中で好転しない状況を楽観視はできない。
ディディーコングが抜けて空中で接近戦を仕掛けるスティーブは回避で手一杯。
ピットとディディーコングは手負いでキノプリンの医療班が治療。
サムス、ダークサムス、ゼルダは根気強く攻撃し続け、リンクもブーメランでそれらを下回る働き。
目立った活躍のないミェンミェン、クリス、ネネはそもそも攻めあぐねている様子。
「3人とも! 足のことはいいから攻め続けてくれ! おそらく……どちらにせよ長く持たない」
「ももも〜……わかりましたも」
「……はい」
ミェンミェンは兎も角、遠距離の攻撃が出来ず空も飛べない2人は氷を砕いてしまうことを恐れていた。
「あ〜……もうなんかイヤネ! 相手がどうとかでこっちが合わせなきゃいけないとか!」
「ミェンミェンさん!?」
「決めた! ウチ、いつも通り行くヨ!」
そう決めたミェンミェンはアームをホットリングに切り替え、面での攻撃を挑む。凍った箇所もお構いなしにはじめた攻撃は氷のようにヒビを加えるイメージでゆく。
経験したこともない上位と悪意の存在に、かなり威圧されていたミェンミェンだったが、それを気にするのも面倒くさいと振り切れてしまった。
「いつも通り……そうですも! ネネが皆さんをお守りするですも!」
「マルス様……妙案を思いつきましたらいつでも従います!」
一撃が重いからこそ、攻撃を受けるネネとは相性が悪かった。それでどう戦うか図りかねていた。
最初に大怪我したクリスは柄にもなく慎重であった。周りまで巻き込む訳にはいかない。
人の策がどうだとか、周りの人がどうだとか、そんなことを考えながらも、結局はプリンと同じだ。
自分がどうしたいか。何をしたいかだ!
「僕は高所から指示を飛ばすつもりだったんだけどね……」
「じゃあ、私はマルスさんのお手伝いをします!」
「ありがとう……すぅ……みんな! 僕は今からこうして指示を出すけど! 君たちはそれに従ってもいいし従わなくていい! それも含めて君たちの判断で動いてくれ!」
ええ!? という声すら聞こえる。
本当にやりたいことがあったなら、もう誰が相手でも止められない。例え冥府の帝王でも。
「彼、あんなに無茶苦茶言うタイプだったんだ……」
「私もあまり見たことないな……」
はじめましてのリンクは兎も角、そこそこ交友の長いサムスも見たことのない姿。
勝手に戦えなどという指揮官が他にいるか?
「ディディー! 回復したら右腕を狙ってくれ! クリスは右足に集中攻撃!」
「ウキっ!」
『ぐっ……!?』
ディディーコングはマルスの言葉をまるきり無視し、バレルジェットを切り離し顔面にぶち込む。ちょうど攻撃を受けようとしていたミェンミェンは視覚を潰れていたおかげで簡単に回避した。そのままクリスと共に右足をドラゴンのアームで撃つ。
後々の戦法を狭めることを承知で大きく一撃をくらわせたのだ。
「ふっふっふっ、今のゼーンブ、ネネの仕業ですも!」
どやっと、胸あたりを張ったネネ。それを鵜呑みにしたのかわかっていてやったのか、兎も角
「もも!? あ、ありがとうございますですも!」
彼女を掻っ攫うように飛んでいったのは、スティーブだった。エリトラでの加速で攻撃を掻い潜って飛んでいく。ガーディスの目線はそのまま空のネネとスティーブに集まっていく。
「(……さて、私はどうするか……)」
自分の戦いを押し付けているネネやクリス。回復したピットも現在は神弓一本。
いつもは支援もなく1人で戦うサムスは、敵に対応するのが自分の戦いだ。そういった点では、現在押し付けられる自分だけの強みのようなものが欠けているのだ。それならば、せめて自分は人の支援に。だから気づけた。
「(……! そうか、これなら……!!)」
自分の道だけを歩くように、今までずっと攻撃を続けている
サムスの自分の戦い。それは勝つために冷静な判断を下すこと。この現状では最適だった。
「君たち7人は少しずつでいい、攻撃を続けよう! リンク、左足!」
クッパ七人衆はクラウンを降り、魔法での攻撃に切り替える。ヘイトを集めているネネが空中にいる以上、地上の方が安全だった。
リンクは何かを思いついたようで、距離を取ってゼルダと作戦会議。
高い場所からあちこちを見ながら、あまり効果のない指示を出すマルスの顔をしずえは見ていた。
「好きなようにはいいんですけど、これじゃ連携取れないですよ〜!」
「大丈夫だよ。僕の指示では僕の考える勝ち方しかできない……みんなが各自で動き方を考えれば僕には思いつかない勝利方法が生まれる!」
信じている。この21人の思考から勝ち方が生まれると。
『くっ…… 貴様!』
「ももっ……!! スティーブさん……!」
空を飛びながら逃げ回るネネとスティーブを確実に討つため、ドルモーア、面での広範囲攻撃を取り出す。
ロケット花火での加速は間に合いそうにない。せめてダメージを減らそうと、武器を前に構える。
「ねーちゃんになにするもー!!!」
『ぬぐぅ……!』
眉間に綺麗に一発撃たれる。俗に言うヘッドすないぷだった。キノとプリンもまた、地上に降りていたのだ。そして、姉の怪我を癒すのではなく、怪我をさせないように。
それが図らずとも。最後のひと押しになったのだ。
『な……にが……!!』
「え、あれ? お腹痛い? トイレ?」
ガーディスが膝をついた。何が起きたというのだ。本人すらも気づかなかった。ファイター側の人間だって、ほとんどが訳がわかっていない。しばし緊張感があって、ようやくガーディスが気づいた。
『貴様が……! 元凶か……ッ!!』
「…………」
そういって、ネネから目を離し、そして視線を動かした先には、分裂したままに攻撃を続けるダークサムスの姿があった。
怒りのままに棍を振り下ろそうとするが、サムスの跳び蹴りによって攻撃はあらぬ方向へ。
「サムスが……ダークサムスを守った……?」
「というかサムスいつの間にあんなの蹴飛ばせるぐらいムキムキになったネ!?」
信じていたマルスも、先に吹っ切れたミェンミェンも驚く。
だってまさか、あの巨体の一撃を蹴飛ばすだなんて。
「……いつから思いついていた?
「…………」
ダークサムスは答えない。そもそも答えられるかも怪しい。
キクにはダークサムスのあらゆる攻撃が通じなかった。なぜなら彼女はエネルギーを媒介とする攻撃を無効にするから。フェイゾンの塊であるダークサムスでは太刀打ち出来なかった。
それは、裏を返せば全ての攻撃がフェイゾンに由来するということ。キクが相手でもなければフェイゾンによる猛毒が回って有利であり続けるのだ。
なんてことはない。サムスがパワー勝ちできるほど相手の力が下がっただけだ。
「ここが好機だ……! 畳み掛けろ!」
崩れ落ちたガーディスに向かって一斉に飛びかかる。しかし、ガーディスの目線は誰でもないたった1人から目を離せなかった。
『おのれ……!!』
短く切り揃えられた金髪の少女からほとばしる魔法が解き放たれる。これこそ彼の勝ち方だった。自分が魔法を使えないほど消耗してるなら、別の者が使えばいいじゃない。
「シェイク!!」
『ぐ、グオオオオオオ……!!』
地を揺るがす大地震が起きる。
リンクでは強い敵には使えなくとも、女神の力を宿していたゼルダが使えばこの通りだった。
冥府の帝王が魔法に当たり、どんどんと縮んでいく。
「も!」
「もも!」
果てにはネネやキノでも覗き込めるほどに小さくぷよぷよした魔物になった。ちょっと可愛いかも。と感じている最中、ぶちっと誰かの足が潰した。
「アッハハッハー! ボクチャン大魔王を倒したぞー!!」
「とどめ刺しただけでしょ、もう」
調子に乗ったイギーをウェンディが嗜める。全てが終わったことを知覚したミェンミェンは尻餅をついた。
「ところでなんとなく参加したけれども、結局元の場所には戻れないのかい?」
「元凶はあの女だろ? アイツはただの足止めだ」
成り行きで参戦したクッパ七人衆が身内同士であれやこれやと言う中、しずえと共にマルスが降りてくる。
「みなさん、お怪我大丈夫ですかー?」
「無理せずキノに言ってほしい。さて、これからどうするか……」
まずは一般の人を探してと、今後の予定を考える中、リンクがふと思い出す。
「そういえば……君、あの子に決定的場面を見られたみたいなこと言ってたよね?」
「キキッ……! ウキー!」
「ディディー、教えてくれないかい?」
「何言ってるかわかるネ?」
「根気強くいけば……」
そこからディディーコングが必死に手振り身振りで伝えていく。その意味がわかっていくにつれて、ファイター達の顔は青くなっていく。
「そんなまさか……」
「だがそれならば奴に触れても問題ないことも納得が……!」
マルスは右手を痛いほどに強く握った。
そして、青い顔のまま言うしかなかった。
「これは……この問題はどうすることもできない……! 僕たちではどうにもならない……!!」
ここにいない誰かに頼るしかなくなった事実を噛み締める。この事件に巻き込まれて初めてマルスは俯いた。
─言ってしまえばゴミ捨て場みたいなものなのよ。
キクの言葉を受け入れるしかないほど、現実は残酷だった。怪しい色の空は変わらない色を続けていた。
○タイトル
キングダムハーツ2でのリクのセリフ。DiZの無謀とも自爆特攻とも言える行為を止めようとする王様を止めた時に言ったセリフ。その後のシリーズでも登場しており、リクを代表するセリフとなる。
○ドルモーア
ドラゴンクエストシリーズに登場する闇属性の呪文。ドルマ系の一種で下級からドルマ、ドルクマ、ドルモーア、ドルマドン。
パーティ的には賢者系の仲間が習得する。ただ賢者系の仲間は基本的に中途半端な上に、耐性を持つ敵も多いので、味方が使う呪文としてはいまいちな扱い。
ちなみにガーディスの技としては、暗黒属性だけでなく、灼熱属性も持っている。
○アイスビーム
メトロイドシリーズに登場する武装の一つ。
作品によってはミサイルだったりもする。
メトロイドは寒さに弱いので、これで凍らせて砕くといった対処が基本。
そういえば、なんでアイスビームはスマブラで採用されてないんだろうか。
○ダークサムスの分身
特に意味もなく分身するカービィと違って、ダークサムスの立派な戦法の一つ。
ずっと分身しながら攻撃していた。
○フェイゾン
メトロイドプライムシリーズに登場する放射性物質兼突然変異誘発物質。スマブラの天界漫才でもあったが、エネルギー源でもある。
ただ生物に対しては極端な毒性があり危険。
ある程度の意思を持つとされ、一定以上の濃度を得た一部のフェイゾンが動き出し、フェイゾン生命体を生み出すことも。
メトロイドプライムがサムスを道連れにしようとしたものの失敗し、スーツバリエーションの一つであるフェイゾンスーツや遺伝子情報を元に武装と形質を再現したのがダークサムスである。
○今章の裏話
今章はちょっとスランプ気味だったのとプロットからだいぶ変えたことにより、かなり問題の残る章となりました。キツイ。物語が進まない。こちらの陣営21人をかき切るのは無茶だった…… そんな中ピットが大体何言わせてもいいみたいな認識で、随分と助けられました。
特別に今章のプロットをそのまま載せます。
・ピットとサムスが救助者の捜索 目覚めるリンゼル
・襲われしリンゼル ピットサムスと合流
・ミェンミェンと子供の救助 帰還
・お疲れ様ですとしずえとスティーブ ここはどこと作戦会議
・ピラミッドの麓を探すことに ディディー合流
・オーブはまだ貯まらないキクと遭遇 軽めの戦闘とダムスボロボロ 相性良すぎ
・襲撃の本拠地 抵抗する七人衆
・襲われてる!? プリンの意地 クリスの奮闘 ネネキノも参戦
・合流 そしてキク強襲 ガーディス復活
・ガーディス討伐 全部終わるまで大人しくしておきなさい
・の数が1話の予定ではありましたが、予定よりだいぶ長くなっている始末。あと自分用のメモなので割と雑。
まず、ピンチに駆けつけるパターンが多すぎということなので、ミェンミェンから変化し、あまりモブ(子供)を出したくなく、ディディーの登場に困り……そんなこんなでかなり変化しています。
予定では、避難せず攻城戦を繰り広げる予定でしたし、プリンは覚悟して普通に戦う予定でもあったし。
所々悪くない変更はあっても、それによってプロットを見直すことをしなかったのでグダグダになっていったんですね。ちなみに最後の意味深なセリフはキクが言うはずだったものです。そのままフェードアウトしていったのでなかったことになりました。
兎も角、教訓として次章での改善を目指していきます。
あと本作を執筆した理由がDLCと灯火の星で最後の方に登場するファイターを活躍させるなのにダークサムスあんな扱いでごめんなさい……
なんだかんだ前作でキャラ解説をさせていたので愛着はあるのですが、キクの特異性を知らしめるための犠牲に……あっ、ちょ、フェイゾンの洗礼を受けた人に殺される
○作者の気まぐれコメント
ポケモンフェスやどおおおおお
来週ポケモンSVだよおおおおお
ところであのー、ブイズのリーフィアたんは心配してなかったけど、ランターンたそ、忘れてませんか……? リージョンフォームで出てきたら全てを許すけど。
皆さま、リークやフラゲでのネタバレにお気をつけください。
ホゲータはアホの子かわいい。