大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
60話 アドバンス・アドベンチャー
君達の持つ記憶、知識、経験…
その全て、自分が産み落としたものだと証明できる?
寝てる間に分子レベルで同じ存在に成り代わっているかもね。まあ、しょっちゅう死んで生まれる細胞で構成されている君達にはそんなに重い質問でもないのかな。
そんな全く同じ存在が、突然君達の目の前に現れた!
それは流石に気持ち悪いか。
目の前の君達も同じこと考えてるけどさ。
全く同じって言ったじゃん。君達の考えてることは君達も考えてるって。
だからどっちかを間引きしてもいいよね。同じ存在は同じ存在でしかないし、二つ存在していることが異常なら一つに減らすしかないよ。
くじ引きで決めていいことだけどね。間引きされる方は運がなかったってことだ。
…運がある、と運がなかったっていう違いができたね。それでも彼らは全く同じって言える?
運がある方となかった方… 違いができたなら単純にくじ引きで決めればいいって話にもならないや。でもそれだと違いがなくなる訳だし…
認識する前にどっちかが消えていれば、こんな問答生まれなかっただろうに。二つあるから悩むんだよ。
現在正体不明の生物がワイルドエリアを徘徊しています。原因や危険性は不明のため、しばらくワイルドエリア全域を封鎖します。
ワイルドエリアに残っている方は、お近くのスタッフに声をかけるまたは、早急にワイルドエリアから外に出てください。
また、正体不明の生物を見かけたら決して近づかず、お近くのスタッフに連絡もしくは通報をお願いします。
繰り返します───
「リザードン、かえんほうしゃ!!」
「グオウッ!!」
見慣れた仲間と同じ姿をしたボディ達を焼き尽くす。周囲の草むらにも火がつき、ボディ達の足も奪っていく。
「よしっ! にげるぞ!」
「グウゥ」
リザードンの背中に跨り、羽ばたく。
あの、なぜかいるボディ達から離れるように。
不肖、レッド。今、追われております。
この見たことも聞いたこともない場所に辿り着いたのはまったくの偶然だった。
大乱闘の世界に戻ったはずのレッドは、空中にいたのだ。地面に激突する前にリザードンをだせたのは、転落死するのが自分だけで済まないとわかっていたからだろう。
そこからここはどこなのかと空中から探ることに。
見たことのない場所だと驚くよりも、あちこちに見かける見たこともないポケモンに興味津々だった。ここは楽園かとよそ見していたせいで、混じっていたボディに気づかず、リザードンごと射落とされたのだ。
そして、落下の衝撃でフシギソウとゼニガメのボールをどこかに落としてしまい、1匹で応戦しながら今に当たる。
「さっき攻撃を受けたところどのあたりかわかるか?」
「ウウ……」
「だよなあ……」
2匹の仲間がどこに行ったのか。一応リザードンにも聞いてみたものの、やはり自分と同じく見たこともないポケモンに気を取られていた模様。ボールから飛び出して向こうも探していればいいのだが、望みは薄い。
「えっと……」
周りに何か特徴がないかを見渡す。
どうやら一定の領域で区切られており、塀が聳え立っている。その内側なのは間違いない。
今いる場所はその塀を壁沿いに歩けるところから、区切られた一角の隅の方だということがわかる。小さな岩山の周りに草むらもあり、こちらを恐れて身を隠しているポケモンの姿も確認できる。
レッド自身は知ることもないだろうが、そこはワイルドエリアの一部、巨人の腰かけと呼ばれる場所であった。
「見たことないポケモンばっかりだし、カントーではないよな。ポケモン自体多いから大乱闘の世界でもないだろうし……別の地方か?」
そこまで良くはないと自負している頭で必死に考える。ここのあたり一帯のポケモンはカントー地方では見ないポケモン。ならばルカリオやゲッコウガの出身である別の場所ではないかと思いついた。
今後どうすればいいのだろうという戸惑いの裏に、ワクワクが抑えられない自分がいた。今、自分は見たこともない場所で見たこともないポケモンに囲まれている。
ポケモンの数は全てで151匹……でももっといる。
200、300、400、500……それ以上かもしれない。冒険心は止まらない、恐れることなどない。
「よっし! フシギソウとゼニガメ探しにいっくぞ!」
「ガウッ!!」
自分の拳をもう片方の手のひらに叩きつける。
仲間と逸れた焦燥はあっても、それを上回る好奇心が抑えられない……!
ガサッ
「……!」
周りと違う草むらの音。
確かに草むらからポケモンは飛び出すが、これは何か潜んでいるような音だ。抑えるように注意を払っているのがわかる。
リザードンにアイコンタクトをとる。
未知との遭遇第一号はその音の正体を探ることに決めた。図体の大きいリザードンをボールの中に戻す。
音は岩山を挟んで向こうの草むらからだ。あと逃げてきた方向でもある。まずは岩山を背にゆっくりと回り込むように動く。潜む音の場所が詳しくわかるとそこからこっそりと草むらを覗き込み……
「ピッ……! ピッカ!」
「って、ピカチュウか……」
そしてカントー地方でも見られる姿にテンションを下げる。見たいのは知らないものなのだ。なにやら人に慣れすぎている理由をレッドは察せなかった。
「ん? あっ、この緑は……」
そしてピカチュウの隣に、草むらとは違う緑があったことに気づく。
「おや? レッドさんだ、元気にしてた?」
「ヨッシー!? ってことはこのピカチュウ って」
「ピーーー……!」
その緑はヨッシーだった。ポケモンとは関係のない者がいたことで、隣のピカチュウが何者かを察する。驚くレッドにピカチュウが慌てて口を塞ぐ。
「……ピ……カ……チュ……」
ギギギギと軋む音が聞こえてくるかのようにゆっくりと振り向いた。そこにはレッドを襲ったボディ達。カービィの姿のそれとフォックスの姿のそれとリンクの姿のそれ。
「……あ」
隠れてたはずの仲間に声かけて注目を集めた。やらかしたと判断すると同時に右手と口は動いていた。
「いわくだきっ!!」
ここ一番の豪速球でリザードンが登場する。
ひびわれたいわをこわすずつきは、一番手前にいた剣士のボディをひるませた。
「ピカッチュ!!」
「れろんっ」
突然のことだったが、さすがは古株のファイター。一瞬遅れた後に飛び出して、素早い相手にでんげきは、多芸な相手に舌を伸ばして一時タマゴにする。
「そらを飛んで叩き落とせ!」
「グオウッ!!」
「ピ〜……カッ!!」
「わっふぅ!」
掴んで空へ飛び、そのままイヅナ落とし、ロケットずつきで近くの池に突き落とし、タマゴのままの敵を尻尾でかっ飛ばす。
地面に倒れたままの敵から武器を取り上げ、リザードンはのしかかり。何度か踏み続けたところで、ボディは溶けるように消えていった。
「ゴッメン! 隠れてたなんて知らなくて……!」
「だいじょうぶ! なんとかなったから!」
そして開口一番、謝罪の言葉を出した。3人でなんとかなる敵だったからよかったものの、もし敵が多かったら取り返しがつかなかった。
「ピカチュ」
「レッドさん、ここってどこか知らない? いつの間にかこんなところに来ちゃってたんだ」
「わかんね」
「そっかー……」
ただ、何かが起こっていることはボディが敵としていることから確かだ。それも大乱闘関係で。それ以上は今はわからない。なので今解決できることから解決しようと考えた。
「なあ2人とも、ゼニガメとフシギソウ知らないか? さっきあいつらに襲われてモンスターボールごと落としちゃって」
「ええ!? 大変だ! ピカチュウは見た?」
「ピカ……」
どちらも反応はよろしくない。
心当たりもなさそうだ。
「探さないと! どこの辺りで落としたの?」
「えーと、たしかあっちの方だ!」
他にもボディがいるだろうと感じながらも、急いで進む。かけがえのない仲間を助けるために。
「……ソウ?」
「ゼニッ……」
その仲間も、どこか暗い場所で動き出していた。
○章タイトル
ポケットモンスター ソードシールドの海外タイトル。Beforeは以前の意味。簡単に言えば今作の時系列が剣盾本編以前だということ。具体的にいつかまで決めてませんが、ダンデさんがチャンピオンになる前です。ここの世界で起きた異変でここの世界の人間は頼れないということを意識してもらえれば……
つまりは某ドラゴンストームさんの出番もないです。
ちなみにポケモン新作が発売した翌日開始の章の舞台が剣盾なのはマジで偶然。
○タイトル
アニメ ポケットモンスター アドバンスジェネレーションの1話から69話までのオープニングテーマ。作詞者はGARDEN氏、作曲・編曲はたなかひろかず氏。
勇気凛々で元気溌剌しちゃう感じの歌。改めて聞くと歌詞にミナモシティとか最初の歌だけど終盤の街の名前が登場してる。2番歌詞はポケモン風味が薄れている。
アブソルがめっちゃかっこいい。
○ワイルドエリア
ポケモン剣盾、ガラル地方の目玉である。
半オープンワールド的な場所で天候、時間帯で出現ポケモンも大きく変わる。さらにダイマックスポケモンに挑むことも可能なので、もしかしたら剣盾は過去一パーティが安定してないかもしれない。
○作者の気まぐれコメント
ランターンたそ……