大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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61話 ポケモン、ほかくだぜ!

 

「……ニッ……! ガァッ!!」

 

「ソー……」

 

 

ゼニガメが起き上がり、すぐ近くで倒れているフシギソウの体を揺らす。それで気がついたのか、パチクリと大きな目を開き、辺りを見渡す。

 

そこはどこか薄暗い場所だった。上を見上げれば、小さな丸の形で、遠くに空が見える。

主人であるレッドが攻撃を受け、2匹のモンスターボールを落とし、そこから巨大な穴の中へ落下。その衝撃でボールのボタンが押されて2匹が外に出れたのだろう。

 

 

「フー……フシッフシッ」

 

 

それを理解するや否や、フシギソウは自身の蔓を伸ばしてみる。かなりギリギリではあるが、届きそうではある。

 

 

「ゼニガッ、ゼニ」

 

 

もしここに他の人間がいれば何を言っているかわからないとぼやくだろうが、ここには2匹しかいない。2匹のみに通じる言葉だろうが、ようするに早くモンスターボールを見つけて上に上がろうということだ。

 

 

「フシッ、……フッシフッシ?」

 

「ゼニッ?」

 

 

さほど障害物のない空間だから、ボールは特に時間もかからず見つかった。しかし、それの下敷きに不思議な模様のスカーフが落ちていたのだ。特に変哲のないスカーフだが、これがクッションがわりになったようで、自分自身はもちろん、ボールにも傷はない。

 

 

「ゼニー……ガッ!?」

 

 

しかし、それを見つめていた時、大きな振動が起きる。地震ではない。すぐ近くが発生源であった。

 

 

「フシ、ソウ!!」

 

 

反射的に駆け出す。迷うための道もない空洞で、発生源はすぐに特定できた。

 

 

「ソウッ!」

「ゼニッ!」

 

「はあ!? フシギソウにゼニガメ!? お前らなんでここに……いや、もう後でいいわ!」

 

 

顔だけをこちらに向けて喋るのは、赤いタイツスーツを着た男。格闘技を使って戦うMiiの戦士。すべてのやみのおうを倒した者の1人であり、スマッシュブラザーズの1人であるブロウだった。

 

 

「ニッ……ガッ……」

 

「あのカビゴンみたいなゲキデカポケモン、アイツどうにかせんとこっから逃げれねえぞ」

 

 

圧倒されるゼニガメに補足するブロウ。

彼もまた何かの理由でここに迷い込んで、このポケモンと遭遇したらしい。

元々巨体なカビゴンの体が立てないぐらいに肥大化しており、寝そべった腹部には草花や木まで生えている。キョダイマックスというものだった。

 

 

「レッドは?」

 

「フシー……」

 

「いねえんだな、つれえだろうがここの3人でどうにか……」

 

「ゼニャーッ!!!」

 

「うおっ!? 逆に燃えてやがる!」

 

 

デカい相手を敵にすると、仲の悪いリザードンを思い出し、闘争心が湧いてくるゼニガメにはブロウの懸念は全くの無意味であった。

 

 

「ガァッ!!」

 

「らぁ!」

 

 

真っ先に飛び出したゼニガメの尻尾を打ち、ブロウが正拳突きをくらわせる。追撃、といいたいが、柔らかすぎる反応に先程いた場所まで下がる。

 

 

「今の感触……! 効いてる気がしねえ!」

 

「ソッ……!? フシフシ!」

 

「あ? なんだ? ……やり続けろって?」

 

 

その感触に効果がないと考えるブロウの背中を蔓で押し続ける。トレーナーでなくてもその意図はわかった。

 

 

「……ま、ポケモンに関しちゃお前らの方が詳しいか…… オーケー、その通りにすっか(とはいえ、腹のど真ん中の方が効きやすそうだな)」

 

 

判断を一任しながらも、自分で考えるのをやめなかった。脂肪がクッションになりそうな箇所よりは草木の生えた箇所の方が叩きやすいと判断する。

 

 

「うらぁ!」

 

 

空中から炎の跳び蹴りを叩き込む。

トランポリンのごとく飛び跳ねかえる。

 

 

「フシャ!」

 

 

はっぱカッターで体に傷を入れるフシギソウが続く。ここで相手が鈍重な動きを見せた。

 

 

「……!」

 

 

ブロウの真下の地面が割れ、噴き出すように衝撃波が生まれた。空中でかわせるはずもなく、目を閉じ腕を構えて衝撃に備えた。

 

 

「ビュウウゥ!」

 

「プハッ! 助かった、」

 

 

だが、ゼニガメの水鉄砲で着地点をずらしたことにより直撃を避けることができた。

そうして着地した場所はカビゴンの腹の上だった。道の形に刈られた草花、そこに聳え立つ一本の木。

 

 

「ここの位置…… アイツ手足猛烈激激に短いし、多分寝返りもうてねえし…… うし、こっちこいお前ら!」

 

 

ゼニガメと共に、つるのむちで渡っていく。ブロウの構えた腕に掴まり引き寄せる。

 

 

「ゼニガァ!」

 

 

勢いをつけたままにフシギソウはゼニガメを手放す。こうそくスピンと投擲のごとくスピードを増し、額に激突する。

 

 

「……カァ」

 

 

短い呻き声のような低い声が出る。

地底の空洞に響き、想像以上に反響した。

 

 

「だぁ!」

 

 

合わせた両拳を地面に、腹部に叩きつける。

相変わらずクッションを叩いたような感覚ではあるものの、内部に伝わっているようには感じた。

 

 

「……! 割と見た目だけなのか!?」

 

「フシャ!」

 

 

つるのむちでたたきながら、フシギソウは答えた。

 

カビゴンというポケモンはノーマルタイプ。かくとうタイプの攻撃は弱点であり、なおかつ体力はあっても物理的な攻撃にはほどほどに脆めなのだ。

 

 

「うし、ボディに比べればただのデカブツ……! うおっ!?」

 

「ニガー!?」

 

「シャー!?」

 

 

腹部に攻撃を受けたことにより、敵が腹部に乗っていることがわかったのか、ポヨヨンと弾ませてファイターを落とす。木にしがみつけたフシギソウ以外はフィールドから降ろされた。

 

 

「チッ、振り出しかよコレで……」

 

「フシッ……? フッシフシッ、ソウソウ!」

 

「あ?」

 

 

お腹の上に残ったフシギソウがカビゴン相手に何かを訴えている……いや、会話している?

低い振動のような唸り声を聞き取ったのはようやくだった。

 

 

「フシッ! フシフシ!」

 

「……戦うなってことだよな?」

 

 

そして何かが伝わったのか、つるの先で止めろと言うような仕草をする。

 

 

「……んー、確かにボディとは違って普通に原生っぽいし……あれ? じゃあ救急に殴りかかった俺、戦犯? マジごめんなさい」

 

 

それを理解した瞬間、即座に謝っていた。

ようはさっき襲われたのだからお前も同類だろと思い込んでいたのだ。

 

 

「……ニィガ」

 

「お前も殴ってただろうがい!?」

 

 

人を小馬鹿にした態度に、ツッコミ気質が炸裂する。トラブルメーカー2人に囲まれている苦労人は無意識に染み付いているのだ。何がとは言わないが。

 

 

「しかし、野生なら尚更こっちにちょっと反撃するぐらいで済ませてくれたな。もしかして大乱闘のこと知ってたのか?」

 

 

独り言を吐く。例え事実でも言葉が通じないなら答え合わせもできない。

 

 

「じゃあ戦闘はここまでとして……どうすっかな。なんとか上に上がりたいが……フシギソウにゼニガメと俺じゃ流石に重量オーバーか。1人ずついく?」

 

「……ゼニッ! ゼニャ!」

 

「ん?」

 

 

ゼニガメが両手で大事そうに持ってきたのはモンスターボールだった。放置されていたのか少し汚い。

 

 

「お前の……じゃねえな。……まさか俺にポケモントレーナーになれと?」

 

「フー!」

 

「……カァ」

 

「全会一致ですかド畜生!」

 

 

突拍子のない意見に反対する者が1匹としておらず、ヤケクソ気味に投げたモンスターボールはキョダイマックス相手にも関わらず、すんなりとボールに収まった。

 

 

「マスターハンドに何言われるか……俺はただ、静かに暮らせればよかったのに……」

 

 

そもそもなんでアイツはあんなに友好的なんだよと心の中でボヤく。

ため息はここでも止まりそうにない。

 

 

「フシフシ」

 

「ああ、うん……上がるか」

 

 

反応も薄くなってきたブロウの腕を引っ張り、先程見た出入り口へ誘導する。

 

 

「そういえばレッドとリザードンとは逸れたのか? モンスターボールは?」

 

「ゼニャ……ゼニッ!」

 

 

辺りを見渡すと、しっかりと2匹のモンスターボールが落ちていた。先程は落ち着いていると思っていてもテンパっていたらしい。

 

 

「フシャ……」

 

「あ? なんだこれ……スカーフか?」

 

 

そのボールのそばに何やら見慣れない2枚のスカーフが落ちていた。

深緑とそれよりも少し薄い緑とのストライプ柄なのだが、中央にいくにつれて薄い緑が明るくなるグラデーションだ。その不思議な色合いは幻想的な印象を受ける。

 

 

「お前らのか?」

 

「フシッ、」

 

「違うと」

 

「ゼニッ!!」

 

「つけろって?」

 

 

ばっと両手を広げるゼニガメの首に、苦しくない程度に縛る。2枚あるからとフシギソウにもつけた。

 

 

「ま、俺が初めてきた時だとリザードンリザードンばっかだったし、おしゃれぐらいいいよな。うし、こんなんだろ」

 

「ゼニゼニ!」

 

 

リザードン以外、というのが相当気に入ったのかゼニガメがはしゃぎまくる。

それをフシギソウとブロウは苦笑いで見つめていた。同じトレーナーのポケモンとして仲を深めるにはまだまだ壁がありそうだ。

 

 

「うーし、行くか!」

 

「フッシ!」

 

「ゼニッ!」

 

 

みんながよく知っている姿に戻ったカビゴンをトランポリンにして穴から這い上がる。

あとは上からモンスターボールで回収すればいい。

 

 

「(しかしどうしてこのカビゴンは俺たちと来るんだ? ボディがいることと何か関係あんのか?)」

 

 

思考は巡り続けて、結局答えはわからない。

何かの予感を無視しながら、明るい場所まで出てきた。

 





○タイトル
スマッシュブラザーズSPのルカリオの天界漫才で飛び出したナチュレの台詞。ルカリオがお気に召したようです。
別にゲットでもよかったんですけど、2回連続でアニメネタもどうかと思いまして。なお、これでもグレーゾーンの模様。


○キョダイマックスカビゴン
カビゴンのキョダイマックス個体。
ダイアタックがキョダイサイセイに変更される。ダメージに加えて、一定確率で使ったきのみが復活する。
はらだいこで体力半分と引き換えに超パワーアップし、特性くいしんぼうで回復量の高いきのみを確実に使用。そのあとキョダイサイセイで再びきのみを手に入れるというムーブが強い。


○カビゴンの個体値
H160 A110 B65 C65 D110 S30
特殊攻撃に強い、鈍足物理アタッカー。ノーマルタイプ故にかくとうに弱いのでブロウくんとは相性がよかった。勘違いしかけていたけど。


○ダイマックスレイドで普通のボール使ってんじゃねえ!
アニメの友情ゲットみたいなものですぅー!
合意の上なのでセーフですぅー!


○作者の気まぐれコメント
まず一点。ポケモンSVクリアしました。
難易度的にはかなり歯応えがありましたね。思わぬタイプの技を持っていたりもしたので相性有利に見えて返り討ちにあったり。
あちこちで言われてたバグエラーも、大きなものは一度しかあわなかったので問題はなかったです。ストーリーもペラかった剣盾と比べてかなり濃厚になっていました。以下、クリア時のパーティです。参考までに。

・アルフェン(ラウドボーン)
まさかのほのおゴーストでソウブレイズとダダ被り以外はとてもかっこよく成長してくれました。中でもフレアソングで特攻上げたり、おにびで攻撃力を減らしてからゴツゴツメットで削ったりと大活躍。格闘リーダーに勝てたのは彼が露払いをしてくれたおかげです。
元ネタはテイルズオブアライズ。意図せずに白くなった。

・せんせい(ブロスター)
ランターンリストラショックに立ち直れなかった作者を支えてくれた恩師。みずのはどうのダメージ舐めたらあかんぜ!
元ネタはポケモンスナップ。ランターンのいる別ルートを開いてくれる大先生。

・ヒルダ(デカヌチャン)
新ポケの中で一番好き。
デカハンマーと優秀な耐性で寄せくる敵を粉砕する。最初は技の威力が控えめだったりじゃれつくがなかったのでキツかったです。
元ネタはファイアーエムブレム風花雪月。二段階進化を得てマジでヒルダになって衝撃を受けた。

・ジューダス(ケンタロス)
まさかのリージョンフォーム。しばらくメインウェポンがにどげりだったが、それを補う火力。というか捕まえる前が一番ヤバかった。
元ネタはテイルズオブデスティニー2。別に紙耐久だったり敵の前でカッコつけたり闇の炎に抱かれてバカなっ!?したりはしていない。縁の下の力持ち。

・アクア(セグレイブ)
遅さを補うゆきなだれで格下を殲滅する600族。コイツジュラルドンじゃね?と思った。とってつけたかのような剣、嫌いじゃないよ。
元ネタはファイアーエムブレムif。圧巻の力成長率50%。ただ一発耐えて反撃の構成はストーリーには向いていなかったかも。

・むらくも(ドドゲザン)
まさかの新進化をもらって作者嬉しいよ……! 思い入れのある子が新進化もらったと聞いて調べて進化させちゃった。ただ適当に投げたら格闘技くらったことが多々あって正直申し訳なかった。
元ネタはカードファイト ヴァンガード。

とまあ、ポケモンの話はさておき、スプラトゥーンのスロッシャーの話。

バケデコが何をしたァァァ!!
キル速遅い! 短距離NG! インク効率悪!
微塵も噛み合わないスペシャルもらってどうしろというんじゃああ!!
とぼやきつつも、スロッシャー愛好家である以上使うんですけどね。ガチに持っていくかはわかんないけど。
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