大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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64話 まもりたい 〜White Wishes〜

 

「……うっ……ぐっ……」

 

 

その低いうめき声が、自分の口から漏れたものだと気づくのに、少しの時間を用いた。

地面に叩きつけられた全身が痛い。

 

 

「(湖に落ちたところで、ソードやホムラ、ヒカリに助けられて…… 敵がデイジーに化けていて……そのあとは?)」

 

 

頭も肉体同様、機敏には動けない。

ひとつひとつ、細い糸を辿るようにして要因を探っていく。

 

 

「……みんな、無事か……?」

 

 

直前でボールに戻していたゼニガメや、ここで新たに仲間になったカビゴンも含めて、四つのボール全てがそこにあった。安否を確認するために全員をくりだす。

 

 

「ガアゥ!」

「ゼニャ!」

「フッシ!」

「カア」

 

「怪我とか……ないか?」

 

 

そう呼びかけると、それぞれ元気いっぱいという身振りをした。安心したレッドはフシギソウのツルに助けられながら腰を下ろす。

 

 

「おーい、おおい!」

 

 

他には誰かいないのか、出来る限りの声を上げる。あの時、ヒカリがコントロールを誤ったのか、かなり手前で力が暴発したように見えた。

その衝撃で、バラバラに吹き飛ばされたらしい。再び湖に落ちたりしなかったのは不幸中の幸いだった。

 

 

「ピカチュ!!」

 

「クゥー」

 

「さっきのラプラスに……えっ、ピカチュウ!?」

 

 

レッドの呼びかけに、草むらからとびだしてきたのは、ラプラスにピカチュウだった。

一緒に吹き飛ばされただろうラプラスは兎も角、あの敵と戦っていたピカチュウがどうしてこんなところにいるのだろうか。

 

 

「そっちでもなんかあったのか? リヒター達とはぐれた?」

 

「ピカ……」

 

 

落ち込んだ表情を見せる様子から、概ね間違いではないことを理解した。

ようは一度であった仲間達は全員が離れ離れになってしまったわけだ。あの、デイジーに化けていた誰かのせいで。

 

 

「あれ……? じゃあデイジー本人がマズイことになってるかも……? ルフレもあんなんだったし……」

 

 

ルフレがどうして手酷く痛みつけられていたのかはわからない。ただ、数人ボディに囲まれただけでああはならない。何かがある。ルフレをあそこまで追い詰める何かが……

 

 

「……孤立してたら余計危険だな。はやくみんな見つけないと。お前らも誰かいたらすぐに知らせてくれ」

 

 

危険がどこに潜んでいるかわからないレッドはてもちの4匹を常時出すことで視界を広げることにした。敵も味方も見つけやすい。

 

 

「ピカッ!」

 

「……っ! ゼニガメ、こうそくスピン! リザードン、にほんばれ! フシギソウ、ソーラービーム!」

 

 

ピカチュウの声で、死角からの銃撃を避けることができたレッドは、咄嗟に3匹に指示を出す。

傭兵相手に、ひるませ、支援し、大技で決める。ぶっつけ本番でよくできたなと我ながら感心した。

よその地方には3対3で戦うバトル方式があるらしいが、今のレッドにはできそうにない。

 

 

「ゼ……ゼニガッ!!」

「グアウッ、ガア!」

 

「フシ! フッシ!」

 

「おい待て、喧嘩は後にしてくれって!!」

 

「ピー……」

 

 

しかし、3体出せばやはり喧嘩する。

はじめてのポケモンのゼニガメと、新参であるのにエース面するリザードンの相性は悪い。

こっちが一番強いのだと、手柄の横取り合戦だ。単に性格もあるだろうが、2匹を止めるフシギソウという絵も、また普段通りである。

普段ポケモン達のまとめ役をしているピカチュウも、またやっていると呆れていた。

 

 

「……ああ、でももう一番新参でもないのか。まあ、こんな状況だけどこれからよろしく……」

「カァー」

 

「ん?」

 

 

急に、しかしゆっくりと後ろへ倒れ込むカビゴン。何かあったのかと思って様子を見てみると3体ほどのボディをまとめて下敷きにしていた。

 

 

「……もしかして俺が指示しない方が強い……?」

 

「ピーガー……」

 

 

つい先ほどまで野生であったこともあり、下手な指示は逆にいらないのではないか……?

ピカチュウも微妙な反応だ。

 

 

「クゥ、ラァ!」

 

「げっ、まだいる! 本気で喧嘩してる場合じゃねえ! ゼニガメ、みずでっぽう!」

 

「ゼーニガー!」

 

 

カビゴンの倒したボディ以外にも、7、8体程度のボディ達。先頭のガオガエンのボディに対して水を飛ばす。

 

 

えっと……ラプラス、れいとうビーム!」

 

「クゥア!」

 

「あっ、つい指示飛ばしちまった」

 

 

ここで敵を凍らせられればいいな、と考えていたら、つい指示を出してしまった。

みずてっぽうの水を下地にボディを凍り付かせる。咄嗟とはいえ、うまくはいったようだ。

 

 

「まあいいや! リュカそっくりの奴にタネマシンガン! 緑の子供にちきゅうなげ! おまえは……あのペラペラに10まんばりき!」

 

 

少なからずダメージを受けたボディ達に、リザードンによって上空から叩きつけられる。ダメージの受けた3体と他のボディも合わせて、ピカチュウの10まんボルトでまとめて削る。

 

 

「一気に畳みかけろっ! ヘビーボンバー!」

 

「クゥ!」

 

 

さらにかたまっているところから、カビゴンの攻撃で、一気に散らす。孤立した1体に対してラプラスがしおみずで確実にトドメをさす。咄嗟の個人判断が早いのは野生だからこその利点か。カビゴンもまた、野生であった時の癖が抜けていないのか、勝手に拳を振るっていた。

 

 

「わっ……!? 何も指示してねえのに……(待て……コイツにとってここは故郷か……ボディ達に荒らされて怒ってたのかよ?)」

 

 

カビゴンがなんの抵抗もなくこちらの言うことを聞く理由が、わかったような気がする。

ならば、指示をしないうちから行動しているのは、その愛郷心ゆえか。

 

 

「(今はなんでもいいや、とりあえずみんなで固まらないと……!)」

 

 

離れたところを各個撃破なんて洒落にならない。ソード達と彼らに助けられたブロウ、さらにあの敵と戦ったリヒター達も、おそらく今は単独だ。早急な合流が必要で。

 

 

「また増えた……!」

 

 

さらに2体の増援。

戦闘の音で近くの敵を呼び寄せたようだ。

 

 

「くそっ、ゼニガメ、ラプラス、ハイドロポンプ!!」

 

「ガアゥ!」

「クウゥ!」

 

 

みずタイプの中でも威力の高い技を指示する。倒せなくとも吹き飛ばすことができないかと思ったが、結局踏ん張られてしまった。

 

 

「ピ……ッ!」

 

 

離脱することも視野に入れはじめた時、ボディ達に電撃が走った。

 

 

「うおっ!?」

「ピカッ!?」

 

「……ハァ……ハァ……無事、かな……? ぐっ、」

 

「あっ、おい!」

 

 

肩で荒く息をつきながらも、サンダーソードを向けていたルフレが崩れ落ちる。慌ててレッドが支え、近くの木に寄りかからせた。

 

 

「……ありがとう、レッド……」

 

「とりあえず、応急処置しとくぞ。……まあ、パッと一瞬で治る訳じゃないけど」

 

「それでも、助かるよ」

 

 

少し弱々しい様子ながらも笑う。

戦闘音で呼び寄せたのは敵だけではなかったのだ。

 

 

「何があったのか聞いてもいいか?」

 

「それは……リヒターがあの敵と戦った時に起きたこと? それとも僕が怪我ばかりな理由?」

 

「じゃあどっちも」

 

「なら、後者から話そうか……」

 

 

ルフレは自分達の世界で起きたことを話した。

誰かに襲われたこと。

その誰かに手も足も出なかったこと。

その戦闘の結果、意識を失い、気がついたらこの世界にたどり着いていたこと。

 

 

「……ルフレを襲った奴もデイジーに化けてたのか?」

 

「違う、とは言い切れないけど……あの敵、変身できるからなあ」

 

 

一拍おいて、続けた。

 

 

「一応、僕を襲った敵はクラウドの姿をしていた。当時はどうしてって思ったけど……おそらくボディ、なんだよね」

 

「なあ、変身してる奴がなんなのか知らないが、化けるならボディじゃなくてデイジーの時みたいに本人の方がいいんじゃないかって思うんだが……」

 

「……そうかな。あのピットのボディはピットの使えない力を使っていた」

 

「ピカッ!」

 

 

ピカチュウやフシギソウ、聡い者たちは気づいたようだ。

 

 

「つまり、ただピットのボディって訳じゃない、ってことだよ」

 

「あー、そういうことか。じゃあ何者なんだ!?」

 

「それはわからないけど」

 

 

わからなかったレッドにルフレはその可能性を話した。

 

 

「……それで、ついさっきのことだけど。君たちがぶっ飛ばされた後のこと。ピカチュウが知ってると思うけど、君たちとも同じように……ヒカリみたいな力でバラバラにされたんだ」

 

「ヒカリに化けてたってことか?」

 

「光ではっきりしなかったけど……違ったように感じる。長めのスカートなのは見えたよ」

 

「んんん〜……」

 

 

レッドがうーんと考えて。

そして何もわからなかった。

 

 

「ダメだぁ! なんもわからん!!」

 

「ふふっ、なら合流を目指そうか」

 

「ウッス」

 

 

歩くぐらいは問題なくなったルフレが立ち上がる。即座に返事を返したレッドは手持ちの4匹をボールに戻す。

 

 

「……一つわかっていることは。奴は、僕を狙ってることだ」

 

「えっ? はっ、なんで!?」

 

「奴はずっと君たちと一緒にいて、自分が紛れていることを誰にも悟らせなかった。正体を現したのは僕を見つけてからなんだから」

 

「……あっ」

 

 

誰も気づかなかった。

誰にも悟らせないように、紛れていた。

それは、おそらく。ルフレを狙うために。

 

 

「なら、俺が守る! 守りながら、みんなであの世界に帰ろう!」

 

「……!」

 

 

目を見開いて、驚いた顔をして。

そして、微笑む。

 

 

「ありがとう。じゃあ、僕も君を守るから」

 

「ピーカーチュッ!!」

 

 

ぴょんぴょんしながら、自分の存在をアピールするピカチュウ。自分も守るからと言わんばかりの仕草。

 

 

「ピカチュウも、ありがとう」

 

「という訳だ。ラプラス、お前は……」

 

「クウゥ」

 

「悪いな、もうちょっと一緒に来てくれ」

 

 

ラプラスもまた、透き通った声で笑った。

 

謎だらけで全容の見えない。

なぜか狙われるルフレ。背後から忍び寄るような、静かな恐怖に対抗するために結束を固めていった。

 





○タイトル
テイルズオブグレイセスの主題歌。
歌手であるBoA氏にダメ元で頼んだところ、コラボOKとなり、グレイセスに合わせた主題歌として作られた。
主題歌と本編のベストマッチのテイルズといえばアビスが有名だが、グレイセスもすごい。


○ポケモンの技
基本的にレベル、教え、技マシン等覚えられる技は割となんでも使えます。どれが使える技かとは管理するのは面倒ですし、かと言ってスマブラと同じ技しか使えないのも味気ないですので。
ちなみに赤緑時代でもFRLG時代にもない技を、普通に指示しますがスルーお願いします。


○カビゴン
自ら捕まったのもそのため。
コイツら追い出してやる程度の復讐心なので。
ラプラスが穏やか系なので、カビゴンがちょっとバトルジャンキーに寄っています。意外でしょうが、専用Zがそんな感じなので……


○ルフレの襲撃者
ぶっちゃけると襲撃者はルネ。
本人なのか、化けた誰かなのかはまだ伏せておきます。


○作者の気まぐれコメント
ビックランお疲れ様です。意外とボーダー低く、後10多ければといった成績でした。ちなみに噂の満潮ハコビヤは一度も来ませんでした。チクショウ。

あとビックラン関係ないけど、アニカーBlu-rayあっという間になくなった……
お金足りないって喚いている間の出来事でした。1月になったらまた予約受け付けてくださいHAL研様。

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