大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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6話 蘇る炎の紋章

 

「ここは… 野営地?」

 

「ヤエイチ?」

 

「外で泊まる時につくる拠点… ってところかな」

 

 

一抹の不安を拭いきれずにたどり着いた場所。テントのように建てられた簡易的な天幕だ。

 

 

「ところで、なんで隠れてるの?」

 

「しっ」

 

 

木の影で、カムイは少し困ってしまう。ここにいるのは戦争中の兵士たちだ。ピリピリしているだろう人間にインクリングやピチューを見られたらどうなるかわからない。そもそも、自分のような部外者がいるだけでも怪しいのだ。ここが大乱闘の世界ではないのならば、自分たちのことを知らない可能性の方が高いのだから…

 

 

「誰!?」

 

「!?」

 

 

しまった。考えていたら、接近している足音に気づかなかった。青い長髪に対象的な赤色の服の少女。メイジなのか魔道書を持っている。

 

 

「あたしはインクリング! この子はピチューね!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 

しまった。カムイは先程の戦禍の跡を見ているからこそ、違う世界だと予想できているが、インクリング達はそれを知らない。故に事情を知っている相手だと思っているのだ。どうしよう。どうすればいい。

 

 

「きゃ!? ってあなたは…!」

 

「ほえ?」

 

 

少女は見慣れぬ生物の姿に驚いたが、見覚えがあるようでインクリングをまじまじと観察する。相手方は覚えのないようだが…

 

 

「そうだ! あなた、私を助けてくれた子でしょう? 私はリリーナ。覚えてる? 私やみんなが魂だけになったときに塔の前で…」

 

「…ああ! もしかしてリンク助ける時にいた子!」

 

 

インクリングは思い出す。はじまりの塔の前。キーラとの戦いで、リンクとシークの戦いを円滑にするためにスピリットの露払いを自ら志願していた。おそらくそこにいたのだろう。

 

 

「知り合いか… どう言い訳しようと思った…」

 

「待ってて、ロイを連れてくるわ!」

 

「ロイの知り合いだったんだー」

 

 

緊張のあまりに溜まっていた息を吐く。偶然にも大乱闘の世界の事情を知る人間で助かった。

それから少しして、ロイがやってきた。

 

 

「…! 信じてなかったわけじゃないけど… 本当に君たちなんだ…!」

 

「ピッチュ!」

 

「ロイー! ひっさびっさ! でもないのかな?」

 

「…こっちに。ここじゃ誰が見てるかわからない」

 

 

3人は一つの天幕に案内される。そこはロイのためのスペースだという場所で、人払いも済んでるという。

 

 

「カムイ、ピチュー、インクリング。会えて嬉しいよ」

 

「あたし達も! ところでなんでヤエイ? してるの?」

 

「…少し事情があってね」

 

「多分… ここは僕たちの知る大乱闘の世界じゃないんだろう」

 

「ピチュ!?」

 

「えっ!? そうなの!」

 

「流石カムイ。よく知ってるね」

 

 

カムイの言葉にインクリングとピチューは驚く。だって、自分達は確かに自分の世界から大乱闘の世界に戻った筈だ。

 

 

「え、え、だとしたらここはどこなの!?」

 

「ここは、僕たちの故郷の世界… エレブ大陸だ」

 

「えええ!?」

 

 

天幕を飛び越えて外に漏れるんじゃないかと思うほどの声量。予想していたカムイは驚かなかった。

 

 

「僕がこの世界でフェレ領の統治をしていた時、謎の戦士が攻めてきた。姿の見えない、戦士だった。」

 

「姿が見えない…?」

 

「どうかした?」

 

「…いや、取り敢えず最後まで聞くよ」

 

 

何か怪訝に思ったカムイがロイの言葉を復唱したが、続きを促す。先程からあまり顔色が良くない。

 

 

「だから僕はあちらの世界に戻ることもできずに軍を率いて戦っている。ただ相手側の目的がわからなくて押され気味だ」

 

「あたし達、自分達の世界から大乱闘の世界に戻ってきたはずなんだけどどうしてロイの世界にいるんだろう?」

 

「薄々思っていたことだけど君たちのおかげで確信した。大乱闘の世界関係で何かが起きている。それもマスターハンドの手が及ばない何かが…」

 

 

マスターハンドの監視下ならば、3人をロイの世界に送ったりしないだろう。少なくともこの現象をマスターハンドは気づいていない。一体何が起きているのか…

 

 

「そんな… それならはやくあっちに行かないと…!」

 

「そうしたいけど、その場合ここを放っておくことになる。それに… 僕は兎も角君たちがあちらに行けるか怪しい」

 

 

そう。3人にとってここは異郷なのだ。第三の世界への移動は本来禁じられていること。だからこそマスターハンドが与えたのは、自分の故郷の世界と大乱闘の世界を行き来する権利だ。エレブ大陸から3人が移動できるかは不明だ。

 

 

「そして僕は戦乱が収まるまでここを離れる気はない。おそらく相手側の指揮官が何か知ってると思うからそこを叩くつもりだ。」

 

 

当然だ。ロイはフェレ領を統治する貴族なのだ。民を守る義務がある。この大陸の、人の可能性を信じたのだから、それを守らなければ。

 

 

「ロイ、さっき言いかけたことなんだけど」

 

「どうかした?」

 

「姿が見えない兵というのに心当たりがある。透魔兵。亡くなった人の魂を使った兵士… 見てないから確証はとれないけど…」

 

「あちらの世界のことを知っているならば、カムイの世界の術を会得していてもおかしくない、か。」

 

 

透魔竜ハイドラは敗れて、あのおぞましき術は消えたはずだった。それがのさばっているなら、放ってはおけない。

 

 

「ロイ、僕も戦う。透魔兵なら僕の知識が役に立つかもしれない。」

 

「ありがとう。戦力は少しでも多い方がいいからね」

 

「えっ、えっ、じゃああたし達も!!」

 

「ピチュチューチュ!」

 

「ダメだ。君たちはここにいて」

 

 

少しずつお話についていけなくなったインクリングは咄嗟に自分とピチューも参戦する旨を伝える。だが、ロイの答えは喜ばしくないものだった。そこへ、忙しない足音が響いた。それはリリーナのものだった。

 

 

「ロイ! 敵が攻め込んでくるって! 準備をお願い!」

 

「わかった!」

 

「戦力は多い方がいいんでしょ!? あたし達も戦えるよ!」

 

「ダメだ。ここは君たちの知る世界じゃない。油断すれば自分の命に繋がる!」

 

「でも!」

 

 

頑ななロイになおインクリングは食い下がろうとするが、カムイが視線を合わせてこう言った。

 

 

「インクリング、ピチュー。僕たちは負けないよ。必ず勝ってこの事件の手がかりを掴む。だからここで待ってて… いこう、ロイ!」

 

「ああ…っ!」

 

 

置いてかれた2人はやけに静かに感じる天幕に座り込む。

 

 

「なんだよ、2人とも子供扱いして… 大乱闘が関わってるならあたし達だって無関係じゃないのに…」

 

「ピチュ!」

 

 

寂しい。人が出払っただろう駐屯地は不気味な静けさに包まれていた。ピチューは子供扱いされたように感じて、ご立腹だ。

 

 

「…ずっと大乱闘で戦ってるのにさ、あたしが勝ったことだってあるのに…」

 

「チュ…」

 

 

寂しさは段々怒りに変わっていく。どうして置いていったの、あたしだって強い、あたしだって戦える…

 

 

「こっそり、ならいいよね?」

 

「ピ!」

 





○タイトル
ファイアーエムブレム封印の剣のキャッチコピー。
今作では何人かのファイターがどっかの世界で未知の敵と戦います。章のタイトルはその舞台を指していた、ということですね。


○リリーナ
ロイの幼馴染でオスティア公女。
父親同士に交友関係があり、そこからの縁です。非戦闘要員のギネヴィアがヒロインしてるから、ヒロインの座が危ない危ない。嫉妬が心配されるほどの魔道の使い手です。エンディング後なので杖も使える賢者設定。前作で妄想が爆発したインクリングの手によってスピリットの彼女が助けられています。
メインがファイターだけというのも寂しいので、ゲストの助っ人キャラも投入しました。一応言っておきますが、ゲストは彼女だけの予定ではないのでFE優遇ではないです。(好きなのは否定しない)


○透魔兵
透魔竜ハイドラの兵士。死者の魂が利用されており、FEif内では身内が敵に回ったりしている。子世代の外伝マップでも時折登場。水の竜だからか水から登場したり。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「マリオ! キャンプにあの噂の男の娘が!?」
「遂にぶつ森もこの境地に上がってきたな…!」
「パッチもニコバンも居たのに!! ぼんやり被ってたのに!」
「村長! 住民の皆さんに平等に接してくださいよ!」
「僕だけに言わないでよ!」


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話2
『ふふふ… これで私もレアモノか…!』
「ピカ、ピカピカチュ! ピカッチュ!(ちかつうろが楽しすぎて全然進んでないって」
『何ぃ!?』
「人の迷言を取るな」

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