大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
71話 Reach Out To The Truth
ない存在を探す人はいない。
ちょっと語弊があるかなー。
正確には、探す人が存在していると思っているものを探している、だ。
ないと諦めているものをわざわざ探すなんて面倒じゃん?
例えずっと前に死んでいた存在だとしても、だからなんだって話で。
探す人にとっては、死んでいたとわかった瞬間にその存在が死ぬんだ。
ただ思い込みだけで、狂ってしまえるほどに探すことができるんだから記憶ってすごいよね。
…失礼だな、本心だよ。
探される方はどう感じるのだろう。
案外軽く考えてたり?
どっちでもいいか。どう思おうが会えなきゃ伝わらないし、会えたらすぐに消える感情だ。
最早、存在する意味もないね。
ぷー、ぷー、ぷー。
気の抜けた声……鳴き声?があちこちから聞こえる。刺々しさが微塵もない喧騒に揉まれていると無意識にも脱力していく。
円柱と円錐でできた家々は、崖という自然と共存している。頂点の毛のようなものとリボンがトレードマークだ。
「あーうー、もーなーんもやる気でなーい」
「そーですわねー」
ビーチチェアのような椅子に横たわるのは、Mr.ニンテンドーと呼ばれるはずの大スター、マリオとその恋人ピーチ。
どせいさんの村の中で気の抜けまくった2人は、もはやその威厳も感じられない。
大乱闘のオフに2人、口約束の招待をされていたどせいさんの村へ休暇も兼ねた旅行に来ていた。といっても観光地のようなものがあるわけでもなく。こうして高い技術力を無駄に使ってできたビーチチェアで寝転がって雲の数でも数えている程度しかやることがないのだが。
「たまにはこーゆーのもいーんじゃない? 冤罪はもーかんべーん」
「そーですわねー」
漢字もほぼ使えないこの有様。
別に軍人でもなんでもないんだから、四六時中気を張っている訳じゃない。数少ないオフの日を最大限に楽しむ心構えである。
だからこそ、どせいさんのものではないだろう重めの足音にも軽く流すはずだった。
「何をしているお前達」
「ん〜? なんだセフィロスか。……セフィロスぅ!?」
はずだったのに。
武器からして物騒なこの男が軽く流せなかった。
さようなら、ぽけぽけっとした平穏。
こんにちは、殺伐としたなにか。
「ぽえ〜ん。いらっしゃいいらっしゃい」
「ながかみのひと、くるます。」
「貴方たち、ほんとマイペースなのね……」
そして、何も変わらない様子のどせいさん。
もしかしたらファイターは全員似たようなものだと思っているのではないだろうか。
「なんでこんなところに……クラウドはここにいないよ?」
「知っている。既に回ったところだ」
「う、うん、そうなんだね」
やはりいつもの通り、クラウドに固執しているようだ。それを隠すこともなければ恥ずかしがることもない様子に、マリオはクラウドに同情した。こんな物騒な人に執着されたくはない。
ほんわかムードをぶち壊すセフィロスがこの村を回っているところを想像すると、少し笑えてくる。
「邪魔をしたな」
「さようなら」
「また大乱闘でねー」
こちらには興味もなかったようで、さっさと帰っていく。こうして元通り平穏な休暇に戻るはずである。
「クラウド大変そうだなー」
「そうですね、穏やかじゃなさそうですもの」
「セフィロスがファイターになった理由って……」
「十中八九、クラウドがいるからですわね……」
「…………ドンマイ、クラウド」
同情するならタダである。
彼も彼なりに休暇を満喫しているとは思うが、せめて休暇中に見つからないことを祈ろう。
「あー、ダメだ〜、変なこと考えると休みが短くなる〜」
「そうですわね、何も考えずに……」
ドガーンッ!
「何も……」
ズガドガーンッ!!
「…………」
ドドドガガーンッ!!!
「……無理ですわね……」
「少しはこのスーパースターを休ませてよっ!」
かくして休暇はぶち壊された。
表情変えずに、ぷーぷー言いながら逃げていくどせいさんを見て、異変の存在を認定せざるを得なかったのである。諸行無常。
「もしかしたら、さっきのセフィロスにクラウドが見つかったのかしら?」
「もしそれだけなら助走をつけてブッ飛ばそう。連帯責任で」
クラウドに非はないけど、ブッ飛ばす。
プライスレスの同情もここらで品切れである。
そうして村の外から掟破りの侵入を果たしたのは。
『…………』
「あ……クラウド。ま、まさか本当にセフィロスに……」
返答の代わりに返ってきたのは破晄撃。
「うわっ!? ク、クラウド!? 連帯責任とか言ったの怒ってる!?」
「いえ、待って!」
クラウドだけではない。カービィにガオガエンに、キャプテンファルコンに。
4人のファイター、否、ボディがどせいさんの村へ強襲を仕掛けてきたのだ。
「ボボボボボボボボディ!? なんで!? なんで!?」
「後にしましょう!! 来ますわ!」
先手を打ったのは身軽なキャプテンファルコンのボディだった。
続いてガオガエンのそれもまた続く。
「もう! 人気者は、これだからっ!」
しかし、流石はこの大乱闘の世界で一番長く戦ってきたファイターの1人だ。
殴りかかった前の敵をスーパーマントで反転させ、別の敵にぶつけさせる。思わぬ位置で味方にぶつかり体勢が崩れた敵の両足を掴み、ジャイアントスイング。前に出ていない敵へ投げつける。
少し不意を突かれた程度でこの実力者を負かせない。
「まったく。せっかくのどかな場所なのに」
投げ飛ばされた味方も気にせず、一回かわして距離を詰め始める。数で押し切ってしまおうということか。
ひとつビンタを飛ばし、バックステップをしながらどこからかカブを放り投げる。シールドで防がれるが、その行動こそ待っていた。
「えーい!」
「ぷー」
「また!?」
シールドに特効を持つどせいさんを投げつける。スタンをとったピーチに、マリオはキーラとの戦いの中でギガクッパ相手に似たようなことをしたのを思い出した。
今度は地中に埋まっていたわけではなく、ただ逃げ遅れただけのようだが。
「……嫌じゃないのかなあ」
ボソッと率直すぎる感想を述べながらも、回し蹴りで近くの敵をブッ飛ばす。追い討ちとしてファイアーボールで負荷をかけようとするが、何故か出てこない。
「えっ、アレ、なんで?」
幾ら繰り返しても、火の玉が飛ぶことはない。
ただ右手が突き出されるだけだった。
「……ショボボーン」
左頬がぶん殴られ、受け身をしながらも転がっていく。
「もしかして……」
ピーチも同じく新たなカブを引っこ抜こうとしたのだが、地面からは何も出てこなかった。
「ファイターの力が消えている……?」
「さっきカブ投げてなかった?」
「しずえさんに買っていただいたものでした。今の今まで忘れていましたわ」
「腐ってる……」
どうやらカブはカブでも放っておかれたカブだったようだ。しかし、一体どれほど放置していたのだろう。雪のような白色は踏み荒らされて泥が混じった色になっている。
「ファイターの力が使えないということはマスターハンドにまた何かあったということですわね?」
「じゃあ探しに行かないとね!」
飛びかかってきた敵をジャンプでかわし、踏み付ける。ジャンプ台代わりに使った後、ピーチと背中合わせになる。
「その前にここ、なんとかしなきゃだけど!」
ファイターの力がない状態でボディ4体と真っ向から戦わなければならない。その状況は心の中の緊張の糸をちぎれかけるほど張り詰める。
糸は、2人の外にも張っていた。
「この状況だ、それでも我関せずを突き通すというのか」
「フッ、この世界も戦場の1つに過ぎない。ただそれだけだ」
正宗と、天帝の剣が、ぶつかり合う。
不穏は霧の如く広がっていった。
○章タイトル
今章はスマブラの世界が舞台となります。Investigationは調査の意味。
マップは亜空の使者で登場したものをイメージしていただけたら。
しかし、スマブラの世界でもファイターの力は使えない様子。
マスターハンドが行方不明、キクが勝手に停止させた結果なのですが。
○タイトル
ペルソナ4系統の戦闘曲。ゴールデンでは先制を取った際に流れる。
ペルソナを知らない人でも知っている人がいるほどの知名度は随一。
ペルソナ5の曲がオシャレならば、この曲は豪華かつ明るいといったところ。でも歌詞の和訳はペルソナ5でもやっていけそう。
曲名の意味は「真実を掴み取れ」。
○冤罪
スーパーマリオサンシャインにて、マリオは旅行先のドルピックタウンで冤罪にかけられることに。ピーチの意義すら聞いてもらえない有様。
結果から言えば、クッパJr.の仕業なのだが、島中の落書きを消すことを強制されることに。
○クラウド専用ストーカーセフィロス
ああ……やっぱりスマブラでも結局来ちゃったよ……
キンハー、エアガイツ、スマブラ……他所様の作品でも土足でやってくる。いい加減思い出の中でじっとしていてください。
○セフィロス
時系列としては、AC後。厳密にはディシディア系列も粗方終わっています。ファイターの力が使えないのでラスボスとしての能力も平気で振り回してきます。どうしよ、コイツ……