大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
それは、長らく続いた大乱闘に空きができる、もうすぐ長めの休日が始まる数日前だった。
1人で寝泊まりするにはやや狭い家から外に出る。
寮の自室で過ごすことに慣れてしまった生活習慣はこの世界でも続く。呼吸のように染み付いていたはずの野宿が少し下手になっていた。
「ねえ、灰色の悪魔、ちょっといいかな?」
「?」
この大乱闘の世界でも、ガルグ=マク大修道院でもずっと呼ばれなかった、久しい自分の通り名。
傭兵時代はもっと呼ばれていただろうが、その時は自分がどう呼ばれているかなど興味もなかった。
そんな呼び名を、この世界で呼ぶ者がいるなんて。
「少し、いいかな? 今君が教師なのは知ってるけど、君ぐらいなんだ、頼めるの」
「傭兵の依頼か?」
「まあ、そんなところかな」
改めて、依頼主の姿を観察する。
自分よりも背の高い人物、恐らく男。ただ布を頭から被っているように、その顔は確認できない。どこかで聞いたような声な気がするのだが、どうしても繋がらなかった。
「ま、せっかくだし座って話そうか」
「…………」
そういうと勝手に上がり込み、椅子に豪快に座る。どうした、座れよと言わんばかりに対面の椅子へ手招きした。
『こやつ〜っ! 客人はどっちじゃ! 偉そうに!』
「客人だから偉そうなの」
「……!」
『……なっ!? なぜお主わしの声を!?』
「理由はいいよ理由は。茶番を長引かせると、1話1話の中身がペラペラになるし」
「ぺらぺら……? まあいい」
自分にしか聞こえないはずの、ソティスの声を聞き取った。ベレトは警戒心を上げていく。
言う通りに椅子に座るが、浅く、いつでも立ち上がって反撃できるように。
布で判別しにくい一挙一動を決して見逃さないように。
「大乱闘の……まあいわゆる夏休み? それが終わってみんなが帰ってくる時、異変が起こるのはそのタイミングだ」
「なにが起こる? 自分になにを求めている?」
「その時になればわかる。何が起きるかも、君が何をすべきかも」
『はあああ? そんな依頼があるか!!』
「もちろん、ただとは言わない。これを持っていくといいよ、前払いだ」
親指で壁に立てかけた何かを指差す。布に覆われたそれはそれだけではわからない。立ち上がり、背後の男を警戒をしながら、包まれた布を剥ぎ取っていく。
そして、自分でもわかるくらい驚愕した。包まれたものは、明らかに自分の持つそれと同じものだったから。
「お前は一体……!?」
ベレトが振り向いた時には既に、謎の男は消えていた。
蛇腹状になった天帝の剣が、ボディ達を薙ぎ払う。決定打が通りにくいボディ相手には、ふき飛ばすか、搦み手で動けなくさせる方が一番効果的だった。
しかし、斬りつけることが主な目的の天帝の剣では敵を吹き飛ばすような力はでない。
ただそれは簡単に解決できる問題だった。
「アイ、ムール!!」
絶大な威力を持った魔斧の力は、振り払うだけで敵をまとめて薙ぎ払った。姿の見えない場所まで吹き飛び、一部が木に叩きつけられ消滅する。
「……ふぅ」
『この威力、天帝の剣に匹敵する……あやつはこんなものをどうやって……』
ベレトのうちに存在する、はじまりのものソティス。謎の男が持ってきた報酬は、どう見ても天帝の剣と同種の武器。英雄の遺産なのだろうか。
「ねえ、ちょっとー!」
「?」
「ピチュ!」
「ピチュ」
幼い少女の声が聞こえて、振り返る。
そこにはピンクの服を着た金髪の少女がいた。そしてその両肩には2匹のピチューがいた。
ファイターのピチューとも違う、片方の耳の先がギザギザになっている個体と、青い木製の何かを肩から背中に背負った個体だ。
「ファイターの人だよね! リヒターお兄ちゃんと同じ!」
「ああ、そうだ……リヒターの知り合いか?」
「マリア・ラーネッド! リヒターお兄ちゃんの応援に来たはずなのにお兄ちゃん見つからないし……見てない?」
「見ていないな」
10を超えて数年程度の少女とリヒターがどう知り合ったかは気になるが、今聞くことでもないだろう。残念ながら見ていないので素直に答えた。
「すまない、共に探せればいいんだが……それどころではないかもしれない」
「だいじょうぶ! マリアだけでも探せる……それどころじゃない?」
「この世界に何かが起きている。1人になるのは危険だ。少し時間を……」
背筋が凍りつく。
傭兵時代にだって、こんな気迫は感じたことがない。その気配も覚えがあるというのに、それでもどうしてここまでの気迫を感じるのか、何が違うのか。
「……セフィロス……」
「おまえか」
「よく、人を探す人に出会う日だ。クラウドも、自分は見ていない」
「そうか」
「待て」
踵を返すセフィロスをベレトは呼び止める。
「大乱闘でもないのに、その敵意はなんだ。手暇なら少し手を貸して欲しい」
「暇など一瞬でもない。今この時、この世界で私を退屈させないのはクラウドだけ……」
「……本当にわからない奴だな。ファイターの制限が外れた今である必要はないだろう」
ぐっと、天帝の剣を握り締める。
「マリア、そのピチュー達を守って下がれ」
「えっ、うん」
いつもならば、自分も戦えると前に出るところだったが、ベレトの明らかな強者の顔がそれを無言で咎めていた。
「今、明らかなファイターの敵が蔓延している。この状況だ、それでも我関せずを突き通すというのか」
「フッ、この世界も戦場の1つに過ぎない。ただそれだけだ」
カキーン!
金属音が鳴り響き、2つの剣がぶつかり合う。
「(……っ、剣の質では負けていない……使い手の問題か!)」
そして、すぐにベレトは不利を悟った。
自分ではセフィロスの域に届いていない。だが、それでも引くわけにはいかない。
誰かの目がなければ、どう動くかも予想できないセフィロスを放っておけないからだ。
力での鍔迫り合いを諦め、引いて力を逃し、左の拳を肩へ振る。正宗の柄で防がれた。
バックステップで後ろへ下がりながら、フェイルノートを撃ち放つ。接近され、弾かれ、先が心の臓へ突き刺さる。
「……!」
天刻の拍動発動──!
ソティスに譲り受けた時を巻き戻す力を使い、フェイルノートではなく、アラドヴァルを取り出す。正宗の剣先を逸らし、前進し上半身を左へ逸らして避けられる。
そのまま、全身を使ったタックルで、互いに地面に転がる。2人とも、回転のままに受け身をしながらすぐに立ち上がった。傭兵仕込みのなんでもありな戦い。
「ほう……?」
そこで初めて興味を持ったのか、正宗以外を使用する。シャドウフレアの小さな弾を天帝の剣をしならせて打ち払う。
さらに、フレアの巨大な火球を3つともなって接近してきたセフィロスに対し、留まっての迎撃は危険と判断したベレトは、剣を構えながら突き刺すように腕を伸ばした。
すれ違い様に、互いの体に斬り傷を受ける。
すぐにストッパーをかけたベレトは、アイムールの振りでフレアの火球を1つ打ち払う。
「ぐうぅ……!」
残り2つは甘んじて受けるしかなかった。
大振りのアイムールでは3発も対応できないとは感じていたが、他の武器で相殺しきる自信がなかったのだ。
天刻の拍動も、回数には制限がある。軽々しく使えないのだ。
天帝の剣を構え直し、セフィロスの出方を伺う。互いに様子見を続く。ベレトはセフィロスの右側に回りながら、一挙一動を観察する。セフィロスもそれに合わせて左へ回りながら、しばらく静寂が続いた。
「……!」
突如、セフィロスの背に何かの衝撃が加わる。
フレアの爆発の裏で、リザイアの光を生み出していたのだ。その刹那、接近して利き手ではない右側へ接近する。
横向きに薙いだ正宗を跳んでかわす。
圧倒的な剣のリーチにより、横には強いが上を取られるのは弱点だろう。
振り下ろした剣は、六角形を組み合わせた光の障壁に阻まれる。カウンターが来る。
だが、ベレトは引くことなくアラドヴァルを突き刺した。障壁が光を発しながら粉々に砕け散る。
「くう……!」
「ぐっ……!!」
「ベレトお兄ちゃん!!」
「「ピチュッチュ!!」」
互いに痛み分けをくらいながら、ベレトだけが膝をつく。火球の魔法のダメージが特に重い。
「なかなかだな、乱闘で相見えた時よりよほど強敵だ。その見慣れぬ武器のおかげか」
「……っ」
見慣れぬ武器、もとい3つの英雄の遺産、大乱闘では使えない信仰の魔法という変化球、そして気づいていないだろうが、時を巻き戻す天刻の拍動。
これがセフィロスと渡り合えている理由である。無相応だろうが、持てるもの全てを使うのが傭兵流だ。命が危険でも引くつもりはない。これは教師流。
ただ、その意識は、誰にも予想しない横槍で邪魔が入ることになる。
「! おまえは……!!」
森の木々が幹から粉砕され、その犯人が登場する。ベレトは自覚できるほど繊細に、顔から冷や汗が落ちるのを感じた。
「愉快なことをしているな、混ぜろ」
「カズヤ……」
武器を持つ両方の手が少しだけ、震えた。
○タイトル
ファイアーエムブレム風花雪月の楽曲。
二部にて、士官学校時代の生徒との戦闘時に流れる曲。
同じ士官学校で学びながらも、横に並んで戦うことのなかった生徒たちとの分たれた運命を表す。そしてほとんどの場合、この曲から生徒たちの最期の言葉を聞くことに……
○ソティス
原作では、ベレト以外には声が聞こえない。
聞こえないまま、物語が進んでいくので物語の最後までを見てもその存在を知る人はごく僅か。なんなら無双でも、ベレトと似た存在と言えるシェズにも、ベレトの口を介さなば聞こえなかった。
○天刻の拍動
一度の章に数回のみ使える、時を巻き戻す力。
システム的に言えば、やり直すことで当たらない攻撃をやめたり、倒されたことをなかったことにできる。
近年のFEではこういったやり直しをさせてくれる。いい時代になったものだな!
○英雄の遺産
アイムール、アラドヴァル、フェイルノート。
それぞれエーデルガルト、ディミトリ、クロードの三級長が第二部に入ってから使用する武器。
アイムール。再行動ができる戦技狂嵐がチートオブチート。紋章が一致してないのでベレトは使用不可。助かった……
厳密には英雄の遺産ではなく、無双でほとんど登場しないことから察するに、闇に蠢くものが英雄の遺産と同じ方法で作った武器だと考えられる。
アラドヴァル。使用者のイメージに引っ張られがちだが、他の槍神器2本と比べるとバランス型である。
専用戦技無残は全ての敵に特効がつく。でもエーデルガルトをはじめとしてほとんどのボスは特効無効、一応ストーリーでは一番目立っている。
フェイルノート。級長の専用装備の中では唯一他ルートでも使える。(蒼月だけダケド)
戦技落星は使用後、次の攻撃を必ず回避するもの。弱くはないが、飛行種のクロードとはちょっと噛み合っていないのが残念。無双では広範囲の起き技なので大型魔獣に強い。
○マリア・ラーネッド
マリア、兵器だもん!でお馴染み、悪魔城ドラキュラX血の輪廻で初登場のキャラクター。
リヒターが血の輪廻後なので彼女もまた同じ時系列。12歳の頃です。
傍系だが、ベルモンドの血を引いており救出後に操作可能。
そして、操作キャラクターになったとたん、兵器になる。リヒターより当たり判定小さいわ、機動力高いわ、攻撃は強いわまさに兵器。
ベルモンド家最強ヴァンパイアハンターのリヒターより強い傍系の女の子……
○ギザみみピチュー
左耳の先がギザギザしているピチュー。アルセウス超克の時空へで登場。好物かウブの実のやんちゃな性格。あとメス。
HGSSで特典の色違いピチューがいると手に入る特別なピチュー。
なにが特別かというと、他のソフトに連れて行くことができない。ORASのおきがえピカチュウも同じく、彼女らは永遠に閉じ込められることに……正規に手に入らないえいえんのはなフラエッテだって八世代まではデータあったのに……それゆえにスマブラでの登場は本当に久しぶりである。
○ウクレレピチュー
ポケモンレンジャー光の軌跡の主人公のパートナーポケモン。ウクレレを奏でて音符や電撃を飛ばしてキャプチャのアシストを行う。
仲間が捕まってしまい、単独で突っ走るところからかなり短気。
で、なんでスマブラのカラチェンでウクレレピチューなかったんですか?
○リザイア
実はシリーズによって、闇系だったり光系だったりする。
封印覚醒ifでは闇系統、紋章蒼炎暁風花では光系統。
○ベレト
天帝の剣と合わせて、報酬として手に入れたアイムール、アラドヴァル、フェイルノートを使用可能。つまり今までの大乱闘は剣と格闘術で戦ってたことに……
あとは才能開花の信仰魔法。(回復や光魔法)
と、ここまできて気づきました。理学以外の攻撃技能コンプしてんやん!!
ということなので、信仰魔法でもライブとリザイアしか使えないこととします。
○セフィロス
FF7のラスボスというよりは、ディシディアのように操作キャラクターの1人程度の強さを想像していただければと。ディシディアみたいな戦闘させてみたい。
コイツ、ディシディアで明確な目的がないのでマジで行動指針がクラウドにちょっかいみたいなイメージしかない……恐る恐る動かしていますが、どこかで解釈違いを起こすかもしれません。
○カズヤ
本名は三島一八ですが、ほとんどのファイターはカズヤとカタカナ呼び。
マジで俺様系で、リュウを雑魚扱いしているのでセフィロスよりよっぽど行動させやすいです。
○作者の気まぐれコメント
ピクミン4……スプラDLC……みんな大好き塊魂……ゼルダ……ファンタジーライフ……そしてゼノブレイド 3どうなってんのおおおおおおおお!?
アルヴィースが……! アルヴィースがぁ……!
なんかもう涙滲んできた。
スプラフェス集中できるかな……明治の板チョコ食べながら戦います。