大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
片翼の天使、灰色の悪魔との戦いに、乱入するはデビル因子。同じスマッシュブラザーズであるはずなのに、まるで敵が増えたかのような登場に、ほとんど動かさない表情がわかりやすく歪んだ。
「この状況を愉快と呼ぶとは、随分といい趣味をしている」
「貴様が甘ったれなだけだ、顔色変えず斬り刻む貴様には合わん価値観だな!」
「外見だけで人は判断できない……浅い思い込みに過ぎない!」
小手調べとしてまっすぐに飛んできた拳を天帝の剣で防ぐ。剣を通じて響いた威力が両手を痺れさせた。咄嗟に出した足は空を切る。
後を続くかの如く、顔へ飛んできた剣先に、ベレトも同じように応えた。互いに首を傾け避ける。
「おまえといい、カズヤといい……自分本位の人間ばかりが寄ってくる……」
「つまらなくはないだろう?」
デビルブラスターを閃光で防いだ隙をつき、剣を引いて距離を取る。フェイルノートで二矢を撃つも、軽く落とされた。
「(勝利するのは難しい……か……)」
片方だけならば何ともなったかもしれないが、三つ巴の態勢とはいえ2人を同時に相手取ることの無謀さを感じた。
傭兵の依頼とは違う、命をかける義理はない。
隠れているマリア達と離脱するのが一番のベストだ。しかしそれを許してくれるだろうか。
「……っ!」
2人の足元の大地を天帝の剣で抉り、視界を潰す。セフィロスが2人に撃ったフレアの魔法を横跳びで避け、リザイアをカズヤのいた方角へ撃った。同時の攻撃に対応できずダメージを受ける。
大乱闘では使わない信仰魔法は初見殺しの役割を発揮したのだ。微量の傷が癒えていく。
やはり2人同時に相手取るのはやっていられない。自分は戦闘を求めて戦っている訳ではないのだから、できる限り1人だけを集中した方がいい。
「はあああっ!!」
接近して振り上げられたアイムールと踵落としがぶつかり合う。デビル化して相対するカズヤ。英雄の遺産と同格の個人など完全に人間の範疇を超えている。
「はっはは!! 面白いぞ? だがその程度だ!!」
しっかりと腰を据えていたはずの自分が弾かれ、双眼にカズヤの指先が迫っていた。
──パキン、
硝子の割れる音がして、時が巻き戻る。
走りながらただひたすらに矢を射る。一本ではなく山ほどの矢だ。そのほとんどを落としたカズヤは、背後からの八刀一閃が叩き込まれようとする、が、正宗の横っ面を叩きつけられたことで剣先が地面に埋まる。
今度はベレトの方に向けた背中にアラドヴァルが突き刺さる。とはいえ、それほど深くは刺さらず、筋肉で受け止められた。引き抜くことを諦め、裏拳を回避する。
「ふっ」
距離ができた三者の関係、カズヤは自ら背に刺さったアラドヴァルを引き抜く。そして、少しの間眺めたのち、放り捨てた。
武器と使い手に興味は持てても、武器個々に興味はないらしい。折ることもせず、投げた瞬間視界にも入れなくなった。
「(ここまでやると嫌になってくる……!)」
勝てるビジョンが見当たらない。
自分が負ける姿も想像できないが、勝っている姿も見当がつかない。
なんせ、天帝の剣をしならせて振るっても大半を防がれる。少しは当たっているのだが、到底決定打になるものではない。
肩で息をしながらも、腰だけは上げない。長く生き残るための戦法。
セフィロスの長い刀がカズヤの両手に防がれる。純粋な力がぶつかり合い、逃がされた威力が足を通して地面が悲鳴を上げている。もうとっくに逃げ飛ぶ鳥もいなかった。
「(今なら行けるか……?)」
お互いしか眼中にない今ならば、逃げ切れるのではないだろうか。
そもそも手を出せる気がしない。ばっと服を翻し、マリアの潜んでいる場所へ向かおうとする。
「どこに行くというのだ」
「しまっ……!」
「あっ……」
隠れていた少女を、狙い撃たれる。
──パキン、
「……ッ!」
アラドヴァルを拾い、2人まとめて薙ぎ払う。
無惨にも自然すら容易く破壊するフォドラ十傑の使用した武器。
先を掠め、微量な切り傷。大きな一撃が入らない。
「ふっ」
セフィロスの背に片方だけの翼が生える。
片翼の天使、その二つ名の由来であるその姿。
カズヤもまた、背に悪魔の翼を生やし空中戦に付き合う構えだ。
「ぐうぅ……」
ビームに、剣撃、片翼を掴み、叩き落とし、躊躇なく森も焼き払う。遠距離攻撃の余波をベレトは一番に受けていた。
天馬には乗れず、そもそも飛竜もまたここにはいない。攻撃手段はあるが、巧みな空中戦は難しいのだ。
そして──天刻の拍動を既に使い切ってしまったことが何より痛かった。しばらくは使えまい。もう無茶をすれば確実に死ぬ。
「雑魚めが、動きが鈍いぞ」
「ぐうっ……!」
瞬間移動かと見間違える動きと、鳩尾に深く叩き込まれた拳。胃の中を吐き出す衝撃で、背を地につけた。
「この程度か」
空中から振り下ろされし獄門を体を転がして必死に避け切る。何とか立ち上がったベレトの目の横に出血が飛ぶ。ピチュー達の鳴き声がやたら遠くに感じた。
三つ巴の効率的な勝ち方は、まず1つを共闘して倒すこと。その1つにされたのだ。
それでも、勝ち筋は残っている。倒せなくても、マリア達と離脱できれば勝ちなのだ。
「はあああああッ!!」
「ぐうう!?」
「ぬう……!!」
今までで一番冴え渡った、天帝の剣の操作。
ぐるりと動かした剣はセフィロスとカズヤを背中合わせに縛りつけていた。
「はあ……はあ……」
膝から下がガタガタになりながらも捕えることができた。このままどこかに縛りつけるか何かをすれば、
「うっ……!!」
「なかなかの腕前だった。前座にはなったぞ」
容易く拘束を外すと、超スピードで接近。ベレトの右太腿を刺し貫いていた。足を潰されてしまった。
引き抜かれても痛みは増すばかり。今度は心臓に突き刺されようとしていた時だった。
「やめて!!」
鳩が飛び出し、セフィロスを襲う。
目立ったダメージにはならなかったが、不愉快にはさせたらしい。
「……逃げろ……!」
「いやっ! マリアだって平気だもん! 立派なヴァンパイアハンターなんだから!!」
最初から、こう言うべきだった。
ボディが蔓延っているとはいえ、この2人よりはなんとでもなっただろうに。
「半端な気持ちで入ってくるな、虫ケラが」
「……!」
ぎゅっと強く目を瞑る。ピチュー達の電撃が足止めにもならない。カズヤの足がマリアの顔に叩き込まれようとしていた。
ピュンピュピュン!!
「なんだ……!?」
雨のように襲いかかる小さな弾丸の嵐。思わず全員が茂みや木々に隠れる。黒い石のような小さな物体だった。
「奴は……」
「だから……言ったはずだ! 自分達の偶像がいる危険な状況だと!」
そんな状況で仲間内で戦っている場合ではなかったのだ。ボディのことは知らなくとも、アレが敵だと言うことはベレトでもわかったのだ。
「邪魔だァ!!」
「きゃっ……!」
迫り来るボディ達に左ストレートを撃ち込む。しかし、最悪なことにスネークのボディが使っていた爆弾とマリア達が巻き込まれる位置だった。
「危ない!!」
足に鞭打ち、マリア達を抱え込む。背中に全ての爆発を受け止める形で遠く離れた場所へぶっ飛ばされた。
「ピチュー!!」
「ピッチュー!」
「あっ……大丈夫!? ベレトお兄ちゃん!」
「うっ……ぐっ……」
『おい! しっかりせよ! せっかく振り切れたのじゃ!』
窮地は脱しても、傷が癒える訳ではない。
火事場の馬鹿力も底をついていた。
「って、ああー!! ベレトが怪我まみれ!!」
「まあ! こんなところで……!」
発見したのはマリオとピーチだった。
爆発で吹き飛ばされた結果、どせいさんのむらにいる、2人の戦場まで飛ばされていたらしい。
「また、いけない人達の……許さないだからっ!!」
「わー!?」
終わらない戦いに堪忍袋の尾が切れたマリアは化身を生み出して、ガーディアンナックルを繰り出した。その威力や、歴戦の猛者も驚く。ミンチのようにボディは金色の液体状に溶けていった。
「この子……1人でいいんじゃないかな?」
「いえ、まさかそんなことは……」
4体のボディを一撃で沈めた。
きっと、自分達が負わせたダメージが大きかったんだ、そうに違いない。
マリオはちょっと自尊心が折れそうだった。
「むー……なんか味方割れしてたからチャンスだと思ったから、ボディ集めて数勝ちしようと思ったらボコボコにされてたよー」
むすーとした顔はわかりやすく拗ねていた。
「これなら勝てるって思ったのになー……」
あまり足りてないことを自覚している頭を使ってまた考える。
特に自分を狙うようなことを仄めかしたあの2人をどうにかする方法を。
○タイトル
悪魔城ドラキュラシリーズ、ゲームボーイ作品一作目。初の単独女性主人公。
キャッチコピーは「ドラキュラの歴史、今ここに始まる。」
なのだが、シリーズファンからクソゲーの烙印を押されたことが原因か、悪魔城シリーズの歴史から外されている始末。
○天刻の拍動 使用制限
初期から3回。ゲームでは増やすことができるが、今作ではこの制限。
ぶっちゃけここで使い切っておきたかった。
○作者の気まぐれコメント
ヒッセンヒューキタゼー!!
スロッシャー愛好家としてバケデコは哀しみを背負った存在だった分、ヒッセンヒューには期待してるぜ!
でもなんか忘れてるような……ホラガイガチャ忘れたああああ!!