大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「えーと、何か起きるかもってわかってたからパトロール……警戒してたのはいいとして、何があったらこんなボロボロに……」
「セフィロスにカズヤと一戦を交えていた……これは手本にならないな」
「いや、その状況でここまで戦えるなら普通に凄いって」
どせいさんがあれこれと用意してくれたおかげで、治療についてはバッチリだ。しかし、魔法のように条理を超えて癒すほどの力はない。
ベレトもライブによってマリオとピーチの2人を癒す。
「その魔法、自分には使えないのー?」
「そうであれば苦労はしないのだが」
ライブという治療魔法の致命的な弱点は、他者相手にしか使えない点である。
ベレトはマリオやピーチを癒せても、一番怪我の酷い自分だけは癒せない。別の方法を使わねばならない。
「…………」
「……? どうかしたのか」
「ううん、ちょっと……その武器怖い……気がするだけ」
「ピチュー」
マリアがベレトの使っていた四つの武器を見ながら言いにくそうに言う。元から持っていた天帝の剣もそうだが、少しゴツゴツしていて金属が持つような静謐さが感じられない。
先程はそんなこと感じる暇もなかったが、改めて見ると得体の知らない恐ろしさを感じる。自分がついてると伝えるように、乗っている肩から、ギザみみピチューが頬に触れた。
「先程言っていた依頼の報酬が、その武器なのね」
「ああ、勝手に喋って、いつの間にか消えて……得体の知れない奴だった」
「ボディがあちこちにいることもあるし……何が起きていると言うの……?」
難しい顔をしながら、全員が黙り込む。
精神なきボディは、何も語るまい。
謎の依頼人の痕跡を辿るのは容易ではあるまい。
重苦しい雰囲気を漂わせる中、そんな雰囲気ぶち破るとばかりに、小さな体でとびはねた。
「ピッチュ!!」
「うわ!」
「〜♪」
ウクレレピチューは注目を集めるやいなや、背中のウクレレを前方へ持っていき、軽快なメロディを鳴らした。
ピチューの流す微細な電気に反応して、音が奏でられる。
「それは楽器だったのか……」
「ピー!!」
「うぐっ」
楽器であることにも気づかなかったベレトが顔面に跳び蹴りをくらう。文化や育ちの違いなど知ったことではない。
「よし、キミの名前はウクレレで!」
「そのまますぎません?」
「ピチューだけだとややこしいでしょ? それでキミがギザみみ! どうお? いいセンスでしょ!」
仁王立ちで胸を張るマリオ。
確かに呼称は決まっていなかった。
「ピチュ!」
「ピッチュ!」
「いいって!」
ウクレレのメロディが心を落ち着かせたのだった。確かに情報などないが、ならば知っていそうな人を探せばよい。
「呼び方は兎も角、今後どう動くか……」
「そうだわ! マスターハンド! 彼ならこの世界に何が起こっているのか知っているはず!」
「む……この状況だ、マスターハンドとて無事ではないかもしれないが……それはそれで保護しなくてはならないか」
かの創造主の預かり知らぬところで事が起きていても、何かが起きた結果事が起きていたとしても、必ず何かを知っているはず。
「よし! じゃ、マスターハンド捜索部隊、結成だよ!! もちろんリーダーはこのボク!」
「えー! マリアもリーダーやってみたい! 出動ー! とかやってみたい!」
「ボクがやるー!」
「…………」
他は呆れるばかり。
マリオのソレが興味や征服欲ではなく、ナルシズムから来ているものだとそこそこ深い付き合いならばわかる。しかし、10代前半程度の少女と張り合うな。頭を抱えながら、ベレトが間に入った。
「隊長や部隊のことはともかくとして、マスターハンドを探すというが、当てはあるのか?」
「それが問題なのよね……ここまで事が起きても沈黙を貫いているということは……」
「マスターハンドも何かしら理由があって動けないってことだよね、難しいなー」
誰かに接触することなく、どこかで身を潜めているか、囚われて身動きが取れないか……
「タブーの時もキーラの時もそうだけど、いつの間にか捕まってるんだから! ヒロインムーブって奴かな? ピットが言ってた!」
「随分と親しげなんだな」
「そりゃあ、ボクだし? ファイターじゃ1番の古株だし? 1番最初に頼られるのがボクだし!」
それが真実ならば、マリオにも接触できないほど状況は切羽詰まっているのだろうか。
「はいはい! ファイターのみんなを集めたらどう? リヒターお兄ちゃんとか御先祖様とか……もしかしたらだれか何か知ってるかもしれないし、探しやすいと思うの!」
マリアが背伸びをしながら精一杯手を上げる。
それでも強調が足りないのか、ピョンピョン跳ね出した。
「単純だが、それが最善手か……」
「それにファイターじゃなくてもマリアたちみたいに協力してくれる人いると思うの!」
「えっ、ついてくるつもりでしたの?」
「マリア達だって戦えるもん! ねー!」
「「ピチュッチュ!」」
「今更疑っていませんが……仕方ないですね……」
どっちにしろ、今現在この世界で安全な場所があるかも知れない。戦えなくても近くで行動を共にするべきだろう。
「あと、どせいさん達にもマスターハンド探してもらおうかな! おーい!」
マリオが離れて依頼をする中、ベレトは先程の戦った2人のことを思い出していた。
しばらく気にする余裕もなかったが、戦闘の音がいつの間にか止んでいる。てっきり1対1で続けているものだと思ったのだが。
「(気をつけておくべきか……)」
傭兵の勘は命の危険。
注意し続けるという神経を使う所業も、彼にとっては慣れたものだった。
空中に佇む、浮遊したコロシアム。
いつかマリオとカービィが戦い、そして亜空軍との戦いが始まったコロシアムは、今現在は無人。盛況も歓声も嘘のように静まり返り、場違いな静寂だけが辺りを支配する。
「見たのか、その正体を」
「ああ、いかにも脆く、弱く、そして覚える価値のない者だった」
カズヤとセフィロスはベレトが戦線離脱した後、少し剣と拳を交わし合い、それから一時休戦となった。
現在はコロシアムの外壁から戦場であっただろう森林を見下ろしていた。一部の木が戦いの中で燃えたり倒れたりしただろうが、そんな様子は見えない。この世界は広大なのだ。
「ふっ……命をかけた戦い……こんなぬるま湯の世界でそれができるとは思わなかった。たっぷり礼をしてやらねばな……」
「本物でもない人形を私に襲い掛からせるとはな……奴が何をしたいか知らないが、周りの雑兵は不愉快だ」
マリオ達とはズレた趣旨で、天使と悪魔はボディの首魁を狙う。
含みを込めた笑い声が曇り空に響き、そして2人の人影は消えていった。
「意外だったわね、あなたにも家族みたいな子達がいたのね」
『確かに世間一般の人間が築く家族とは違うとは思いマスガ……かけがえのない仲間がいた、ということは間違いありマセン』
故郷の世界に戻るでもなく、大乱闘の世界をぶらりと散歩をしていた。
別にあちらでショッピングしに歩いてもよかったのだが、マイペースなベヨネッタは休みだとかに振り回されたりしない。大乱闘だって気が乗らない時はドタキャンするのだ。
忙しかろうが、帰りたい時に帰る。
今頃、幼い子供達に振り回されているだろうこどもリンクをおちょくっても面白いかもしれないと、マイペースに探し回ってたところ、崖の先に花を添えていたロボットを見かけたのだ。
『キーラやダーズとの戦いの時に少し聞きマシタヨネ、ワタシは仲間を人質に取られ亜空軍に組シタ。従っていたところで仲間が減っていくのには変わらなかったというノニ』
「そう」
いつも通りの平静な返事。だが、口数を極端に減らした状況には、大きな想いがあった。それを口にはしないだけ。
『ある意味、ワタシだけ残ったのも当然なのデショウ』
「そう」
責めもしない、慰めもしない。
割り切りはしても、忘れることはできない。
それを感じ取ったベヨネッタは同じように返事をし、背後へ銃を撃った。
『……!? 何ヲ……?』
銃声に驚き、頭部を動かす。
高性能のカメラには、キーラやダーズの時に戦った虚な人形達を捉えた。
「本当に無粋な子たちね、少しだけ遊んであげるわ!」
『……!! ここに立ち入るナ!』
1人と1機。
ひとりぼっちではなかった魔女と、ひとりぼっちにされた機械。
しかし、その感情は同じだった。
○タイトル
みんな大好き塊魂の挿入歌、俗に言う素敵ソングの一曲。
しっとりした出だしから、入りの歌詞が酒の魔力とか出てくる。
でも、歌詞自体は新しい自分になるためにチャレンジするみたいな歌。
歌:キリンジ 作詞:NAMCO 作曲:堺亜寿香
(敬称略)
○ライブ
ファイアーエムブレムシリーズの基本的な治療系魔法。
作中でもあるのだが、隣のマスのユニットを回復という都合上、自身を回復することはできない。
いわゆる、
たたかいはできませんが
ちりょうのつえがつかえます
という奴。えっちょっと違う?
○ウクレレ
光の軌跡での主人公のパートナーポケモンだけあり、アシストでキャプチャをサポートしてくれる。
音符を飛ばしたり、音に合わせて電撃を放つ。
音符は当てづらいのだが、電撃系のパートはかなり強力。
○ロボット
スマブラX 亜空の使者でのエインシャント卿の同行を参照。ロボットくん、今だにタブーとトワプリガノンを許してません。