大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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75話 あの人の噂を聞いたことがある

 

ここを踏み荒らすな、近づくな。

ここはお前達のような意思も心もない奴らが立ち入っていい場所じゃない。

 

まるで、ガノンドロフに操られてしまった仲間たちを見るようで辛すぎる。

だからといって、狂えるほどロボットは感情的ではなかった。狂えた方が楽だった? いや、それは逃げだ。

 

 

『うおおおおおオ!』

 

 

アーム部分の高速スピンが小型のボディ達を蹴散らしていく。内部のキャタピラでの移動は同時進行で行われる。

自身のリソースが許す限り、並列思考を軽々こなせるのはロボットならではである。

 

 

「あら、この程度かしら?」

 

 

一方、ベヨネッタは涼しいで両手銃を撃っていた。2丁しか使わず、未だに召喚も使っていない。明らかに余裕があった。

つまらないと感じたベヨネッタは少しずつ群がるボディ達との距離を詰めていく。隙を突かれるならば、それはそれで面白そうだ。

 

 

『……まったク、ずっと銃を撃っていれば近づかせなかったというノニ』

 

「それだと追い込まれた時に海へ飛び込むしかなくなるわ。錆びちゃうわよ?」

 

『その程度で錆びマセン!! というか飛べばいいデショウ!!』

 

「それもそうね〜」

 

 

最大出力のビームで足元を焼く。

炎を込めて殴りかかってくる敵を、勢いを利用して背後へ回り込み肘打ち。手助けに詰めてくる敵に対して、元いた敵の腕を支えに移動部のジェット噴射を叩き込む。

 

するりするりと敵の間に回り込み、銃の射線を利用して同士撃ちを誘発する。意図せず、どんどん敵陣の真ん中に近づいていく。

 

 

「もう、世話の焼ける子ね……邪魔だァ!!」

 

 

ロボットの攻撃により、倒れていたボディに近づき、両足で跳んで踏みつける。

それと同時に大魔獣の両脚を召喚し、まとめて敵を押し潰す。

 

 

「オラァ! まだまだよ!」

 

『……っ!』

 

 

召喚したアイアンメイデンに敵を叩き入れ、棘つき車輪で引き潰す。その容赦のなさに戦況の中にいることも忘れ、引いた。

 

 

『……ヒィ……ベヨネッタさん、どこでこんな恐ろしい戦いヲ……』

 

「いつもとそこまで変わらないわよ? 意外とお子様なのね」

 

『子供だからというカ、なんと言うカ……恐ろしさの種類が違うと思うんデスガ……』

 

 

大乱闘でよく見る、いつもの容赦なく敵を殴り続けるベヨネッタも怖いが、拷問器具で敵をすり潰すように倒す現在も恐ろしい。こんな道具はどこで手に入れた。

ベヨネッタの故郷の世界がどんな世界なのか、気になるけど踏み入ってはいけない。お化け屋敷の目の前で立ち尽くしているような気分だった。そっちの方が数十倍良さそうだが。

 

 

『……まあ、今なら巻き込まれなければいいデスケドネ!』

 

 

あの時よりも恐ろしいものは、きっと過去にも未来にも会えないから。怖がる理由がない。

 

頭部を回転させ、あたりにビームを撒き散らす。人体ではまずできないアーム部分の回転でひたすら敵を殴り飛ばしていく。

 

 

「ほらほらほら、それで全力……あら?」

 

 

空中で蹴り飛ばしていくところ、遠くに見覚えのある色を見つけた。周りの紛いものではなく、鮮やかな色を感じる。

 

 

「デュエットも新鮮だったのだけどね」

 

「あの脚やっぱりベヨネッタだった! ボク達も参戦するよ!」

 

『エ!? なんデスカ!?』

 

 

高い位置にいないロボットには、マリオ達が来ていることに気づいていない。わざわざ飛んで見るほどの余裕はないので、何も知らないまま戦闘が進んでいっている。

 

 

「よし! ベレトが魔法使ったりできるってことは当然ボク達もこんな戦い方ができるってことで!」

 

 

マリオがどこからか取り出したのは、青い色の甲羅だった。中に入って頭足腕を外に出す。

 

 

「カメ?」

 

「コウラマリオ! いくよ!」

 

 

体を中に引っ込めると、地面を滑り始める。ボディを突き飛ばしたり、足を掬って転ばせたり。文字でも書くようになめらかに滑り敵にダメージを与えていく。

 

 

「あれは……普段はあんなふうに戦っているのか? あんな物、いつの間に……」

 

「どせいさん達が持っていたのよ、ふふっ、頼りになる子達ね」

 

「あの者達の生態が気になるのだが……」

 

 

一体なにを理由で、他所の道具を集めているのだろうか。

少し疑問に思いながらも、戦いに私情は持ち込まない。ベレトは引き気味にリザイアを連発する。できるだけ多くの敵に当たるように。消耗した体力が緩やかに癒えていく。

 

 

「これなら、カッサーを連れてくるんだったわ。今更言い訳、だけどもね」

 

 

マリオのような、面白い戦法の追加はできない。だが、それは彼女にとって身を引く理由にはならないのだ。

テニスラケットを振り回し、果敢に攻撃を加えていく。

 

 

「ピチュー!!」

 

「ピッチュ!!」

 

「よーし! マリアも頑張るぞー!」

 

 

2匹のピチューの電撃で正面の敵を痺れさせる。

続いてマリアも鳩を飛ばすが、電撃がまだ止んでいなかった。

 

 

「ありゃ?」

 

「はあ!!」

 

 

ドジを踏んだことに気づいたマリアを庇うようにベレトが前に踊り出て、天帝の剣を一振り。

蛇腹状に変化する武器は、剣であるのにも関わらず、範囲攻撃を可能とする。

かつてフォドラの十傑に託されし英雄の遺産。圧倒的な殲滅力は多を相手取る方が適していた。

 

 

「うわわわわわわっ! どうしよ、うっかり崖から落ちるぅう!」

 

『エ、その声ハ……マリオサン?』

 

「お、ありがと」

 

 

回り過ぎて自分の位置がわからなくなっていたマリオを止めたのはロボットだった。ようやく、自分ともう1人以外に他の仲間がいることに気づく。

 

 

「ちょっとマスターソード探さなきゃいけなくなってね!」

 

『マスターソード……? ああ、マスターハンドですカ。ボディの異常発生が……』

 

「そうとも言う」

 

 

言い間違えたが、意味は通じた。

ボディが大群で襲ってくる、この非常事態について何を知っているのか聞きにいくのだろう。

大乱闘の世界そのものが故郷のロボットは、自分の実力の変化がない。

 

 

「というかそれもそうだけど、今ボク達ファイターじゃなくなってるんだ」

 

『エ!? ならベヨネッタの恐ろしい武器ハ……』

 

「いつもそういうふうに戦ってるんでしょ?」

 

『ヒエー……』

 

 

ドン引きである。

甲羅を背負って機動力が落ちているはずだが、桁外れの戦闘経験がそれを補っている。敵の攻撃を誘導して同士討ちを狙ったり、背負い投げで敵を敵にぶつけたり。

 

 

「いらっしゃい、先に遊んでいるわよ」

 

「『うわあああ(アアア)!?」』

 

 

棘付き車輪を暴走させて、海に叩き落とす。紙一重で巻き込まれなかったマリオとロボット。

縦横無尽に暴れる拷問器具に、残りの敵は数体になっていた。

見るも無惨な敵の有様に、ベレトすらも手が止まる。距離を置くような気配が離れた場所からも感じることをベヨネッタは見逃さなかった。

 

 

「みぃつけた」

 

「うわっ!?」

 

 

ラブイズブルーの銃音が鳴り響く。

岩肌に隠れた敵が飛び出してきた。全員が再び戦闘体勢に入るが、他のボディと一線を画す。

意思を持ち、喋るボディを見たことがなかった。

 

 

「ど、どうしよ……1人だし! 物騒な人だし! 勝てる気しないし!!」

 

「あなた、誰なの?」

 

「え、あ、僕、チゲン。君は?」

 

 

テンパりながらも自分の名前を語る。

白い羽衣、赤の差し色、黒い翼。本来赤色を宿す瞳は漆黒を表す。

ブラックピットのボディを依り代とした彼はチゲンと名乗った。

 

 

「えっと……マリアはマリア」

 

「あ、マリアちゃん、よろしく……」

 

「してる場合か!」

 

 

フェイルノートという名のツッコミがチゲンの服に突き刺さる。驚いて転んだ場所に甲羅だけ蹴り飛ばされた。

 

 

「ふべっ!? みんな酷いと思わない!? 僕の担当地区だけあんな物騒な人が3人もいるんだよ!!」

 

「あら、誰のことかしら?」

 

「1人は君だー! 置き碁(おきご)ぉ!」

 

 

不満の意味を込めて、指を十字に切り、弾丸のように黒石を飛ばす。しかし、上体を逸らして簡単に避けられた。

 

 

「うー! まともに戦ってられないし……! 裂かれ形《さかれがたち》!」

 

 

多量に発射された黒石が一定距離を飛ぶと分裂する。ひたすら数が増えていくので、完全に避け切るのは至難の業。

 

 

「くっ」

 

「三十六計逃げるに如かーず!!」

 

「逃げられたわね」

 

 

チゲンの技がある意味とどめ代わりとなって、今ここに立つのはファイターの力を失ったスマッシュブラザーズとその協力者だけだった。





○タイトル
大乱闘スマッシュブラザーズX メインテーマの歌詞。
ラテン語の歌ではあるが、亜空の使者のエンディングで和訳と一緒に流れるので一般的に知名度は高め。
歌詞の内容はザ・スマッシュブラザーズ。DXと比べて大幅ボリュームアップした今作を彩るフルコーラス。


○ロボット
みなさまご存知亜空の使者のエインシャント卿だったロボットさん。
そもそも大乱闘の世界で生まれた存在であるため、フュギュア化以外の必殺技等の能力は自前であり、ある意味ファイター無効化の影響を1番受けていないファイターでもあります。


○ベヨネッタ
原作で処刑器具を戦闘で使うので、今作でもバンバン使います。
残酷な描写タグはついているのでおけおけ。本来は一章のためのタグでしたが。


○カッサー
スーパープリンセスピーチで登場する傘型の相棒ポジ。
当初は登場させるつもりでいましたが、目新しいアクションができそうにない上に喋るキャラが増えるので没に。ファンの方はごめんなさい。


○マリオ
どせいさんの貯蓄アイテムを分けてもらうという形で変身が可能。
ただ、全種類持っているわけではないです。いずれハンマーとかも使う機会があるかもしれません。


○ピーチ
よく調べればマリオRPGで回復技ありましたね。
言い訳のつもりはないんですが、シリーズが多いとつい見落としてしまう……とはいえ本作では回復系特技は連発されても面白くないので今は使えないと思っていただければ……


○チゲン
ボディはブラックピットの7Pカラーを使用。
見た目の差異は目が黒色なのと、月桂樹をつけていないこと。
基本的に友好的で人懐こい少年。ただしちょっと抜けている上に不運。
ちなみにプロローグの1話目で名前だけは出てました。
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