大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
チゲンはむくれていた。
この世の理不尽さに。
そして自分の不運さに。
まるで
それがこんな場所で裏目に働くとは思わなかった。
「ぷくー、あのおっかない黒々の女の人が……そう、たしかベヨネッタ。あの中がトゲトゲの人形とか絶対に物騒な感じのアレだよー……」
さっき観察していた、セフィロスとカズヤ。
さらにベヨネッタも自分が相手どらなければならないなんて。
大乱闘の世界に留まっているファイターの調査と相手が自分の担当。だが、広大過ぎる担当地区は1人で管理できない。
まだ目を通していない場所があるということは、まだファイターがいるかもしれない、ということだ。
「これなら、兄弟でそーさくできるように言えばよかったなー……いや、でも
逃げ込んできた岩山に座りながら、はぁとため息をついた。眺めを一望するのはただの現実逃避である。
「次会った時には僕のこと、忘れててくれないかな……こんなこと思うなんて、自分でもびっくりだよ〜……」
『あ、えっ〜と……すまん、誰だったかな?』
『えっと……初対面ですよね?』
「…………」
自分の教えた囲碁に興じながら、会ったことがある他人が自分を忘れている。同じように、物騒な彼らも忘れてくれないか、なんて。
『えっ… どうしてそんなことを言うんだ? また会えばいいじゃないか』
『でも…』
『僕はカムイ。もう君とは友達だ』
「でも……あの言葉を忘れられるのは嫌だな。忘れられないために僕達は……僕は……ボディを手に入れて……」
目の上に腕を乗せて空を仰ぐ。
矛盾する思いは、わがままになって自分の中をグルグル回る。
「カムイ……」
『エ? ファイターじゃなイ?』
「うん、力がボク達から消えてる。ベヨネッタとか見たことない武器使ってたのに気づかなかった?」
『大乱闘ではないノデ、気にしてませんデシタ……』
「あら、私は気づいていたわよ?」
『なら教えてくださいヨ!!』
敵に囲まれる状況を危惧し、深追いはやめておいたファイター達。合流できたロボットとベヨネッタに事情を説明する。
「さて、マスターハンドではないが、さっきのチゲンとかいう男、何か知っていそうだな」
「明らかに他の子たちとはかけ離れていたものねえ」
逃げた時点で十分怪しいが、肉体がボディであるのに意思を持って喋り、ブラックピットのものではない全く別の力を使う。その異質さを見落とさない。
「その、マスターバンド?よりチゲンって子を探した方が良さそう!」
「ピピッチュ!」
「彼が知っているかもしれないですもの、マスターハンドルのこと」
『
どこにいるかも、行ける場所にいるかもわからない神を探すより、先程見つけて逃げられた敵を探す方が簡単だろう。共通認識であるので特に批判もなくそちらへ舵を切る。
会話の中で、うっかりハンドではなくなったりしているが、面識があまりないマリアはともかく、ピーチは完全にわざとである。音楽はないし切ったりもしない。
「名前のことはなんでもいいけど、チゲンって子にも話聞かないと!」
『今更ですガ……あの人敵だと思いマス?』
「……言ってることは敵みたいだけど、悪い人じゃなさそう」
ボディを操っているという旨のことは話していたが、根は善人というか子供よりっぽい。
弱いものいじめのように、集団で襲いかかるのは憚れた。
「とは言うが、抵抗する意思がある以上戦闘は避けられないだろう」
「難しいわね、つい頭をバーン! ってやらないように気をつけないと」
「ピチューー!!」
「あら」
善人っぽいという評価は否定しないが、それはそれとして敵として対峙することは避けられないという判断だった。
ウクレレピチューをおちょくるように、頭部を指の銃で撃つ。おちょくられたウクレレピチューはベヨネッタの顔の高さまでとびはねるが、背のウクレレをつままれて宙ぶらりんにされた。
「どこまで逃げたのでしょう?」
「奴の性格から察するに……自分達を恐れてどこかで防御を堅めているのではないか。セフィロスとカズヤが近辺にいることも知っていそうだった」
『……あの2人もいるのデスカ』
「少し揉めてそれっきりだ。見ていないな」
複雑な感情も、ロボットは表現できる。
確かに強いのは間違いないが、同時に核爆弾級の厄介さを誇る。せめてちょっかいをかけてこなければいいのだが。
「防御……とりあえず、ボディが多そうな場所探してみる?」
ベレトの分析に則って、マリオが最終的な結論を出した。数を使って己の身を守っているのではないか。
「「ピピッチュ!」」
それを言うと、突然2匹のピチューが己の主張を始めた。1匹はぶら下げられたままだったが。
「ギザみみちゃんにウクレレちゃん! どうしたの?」
「……そうか、すばしっこいから密偵には最適か。ならば、是非探してもらいたい場所がある」
そう、体が小さく、動きがすばやいピチューは探りに行くのにピッタリなのだ。それを本人も自覚していたようで、自ら立候補した。
「それとそろそろ下ろしてやれ」
「あら、意外と楽しいわよ?」
「ピーーーチューーーー!!」
「まったく手間かけさせやがって……」
周りの様子を見ながらに、カズヤは悪態をつく。彼の目は、刺すような殺気もなければ燃えるような闘志もない。既に冷めていた。
もう、ここにいる敵将1人に興味はない。
あるとすれば、その先にいるかもしれない強敵だ。何があっても戦いの中で生きていくしかない存在は、チゲンを既に見限っていた。
比喩も過小評価もなく、真の意味での雑魚。
それがカズヤの認識だった。もう既に次の敵しか見ていない。
「すぐに叩き潰してもいいが……それでは面白くない」
ねじ伏せるのは簡単だ。
しかし、彼らの中にはそれよりも深い絶望を与えてやりたいという思いがあった。
「先程の傭兵達……使わせてもらおうか」
「ピチュ、」
「ピチュ」
走る走る、ピチューは走る。
小さく、すばしっこいながらも、自然の中では目立つ体色。少し進みながら茂みに隠れる。息を潜めてボディが通り過ぎるのを待つ。ボディの密度が増え、動けない時間も増えてきた。
それは敵地に近づいていることの証明でもあり、同時に危険にも近づいていることになる。
『…………』
「ピ?」
隠れていると、一人でにボディが倒れていった。
まるで気絶するように倒れる。2匹とも何もしていない。攻撃も、奇襲も、ここまで鮮やかには決められない。
「ピー?」
「チュ……ピッチュピチュ!」
2匹とも疑問には思ったものの、先にやることをやろうと進んでいく。
森を抜けると、そこには古びて荒れた廃墟同然の砦と、警備するかのように辺りを見回るボディ達の姿があった。
「ピッチュ!」
「ピチュ!」
間違いない、確信した。
あまり知識のなさそうなチゲンが、即興で防陣を組めるとは思えず、元々あった何かを利用するだろう。
そう考えたベレトが導いた答えは、近場で身を守りやすい建物。かつて、マルスの目の前で亜空間爆弾が発動したあの砦だったのだ。
ピチュー達は二手に分かれる。まだ姿は見せないように、ウクレレピチューは正面から、ギザみみピチューは砦の背面から。
森ほど身を隠すものはないが、壊れたままの壁などはまだ残っている。
「ピー……」
十分に時間を待ってから、うーんと力を溜めて。
「「ピチューーー!!」」
かみなり。
「わあああーーーー!?」
挟み撃ちをするぞと轟くイカヅチ。
それは急襲と威圧の合図だった。
「さあ、いくよ!!」
○タイトル
Undertaleのパピルス戦のBGM。Gルート以外でなら聞けます。
ちょっと抜けているパピルスのように、カッコよくなりきれない感じがとても印象的なBGM。スマブラアレンジのMegalovaniaでも確かアレンジとして入っていたような。
チゲンはパピルスほど面白い子ではないのですが、憎めない感じのキャラクターにデザインしています。
○攻城戦
スマブラXの亜空の使者での、マルスのスタート地点がチゲンの逃げ込んだ場所です。ワンチャン、マルスの拠点代わりだった可能性が微レ存。
○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
ジョーカー「特に春先はフシギソウやパックンフラワーとは戦いたくないんだ。花粉が……」
ケン「スギじゃねえぞ、ジョーカー」
ジョーカー「違うんだよ! 認知的な問題なんだよ! あとジョーカーじゃなくて雨宮蓮!」