大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
「本当になんなの!? なんで僕にしゅーちゃくするの!!」
「そうねぇ……私好みの格好をしてるからかしら?」
「ぎゃあん!! あの頃の僕、本当に馬鹿!!」
神速のごときスピードで起き上がり、逃げ出したチゲンは無作為に
確かにベヨネッタの気分で追いかけ回されているブラックピットやピットと同じ見た目をしている。だが、別に天使のつもりはないのでチゲンからすればいい迷惑なのである。
「あの頃ってなにー!!」
「そりゃあ、見た目何にするーってボディ選んだ時だよ! 弟とお揃いがよかったのー!!」
「確かにそれは仕方ないっ!」
飛翔の奇跡で緊急回避したが、しっぽマリオで追いかけられる始末。回転してぶつけた尻尾で叩き落とされた。
「むう……不運と不幸はいつものことだけどさ、僕だって理不尽に対して怒ることはあるんだよ」
「同情はするわ……」
あのビビリっぷりを見ていれば、敵だということを差し置いても可哀想に思えてくる。
目を閉じ、精神を集中させる。2本の指を交差させ、縦に一つ、横に一つ、印を切るように動かす。すると、チゲンの周りを漂うように黒石が無数に出現した。
「やってやるよ、僕にできる限界まで。頼るのも逃げるのもその後にする」
「…………」
張り詰めた空気が蔓延し、歴戦の強者達はその洗練された闘志を感じ取っていた。
周りの黒石が辺り一面に飛び散る中、シルバーリップを構え、並ぶように矢を射った。弾速の違う弾が嵐のように襲いかかる。
「わあ!」
遮蔽物のない砦の頂上では防げない。多少のダメージ覚悟で各自砦から飛び降りた。
「待って……あ!」
「いらっしゃい」
後を追うように飛び降りたチゲンだったが、ベヨネッタのみ、空中で止まっているのに気づいた。宙で銃撃にあうが、遅れて衛星ガーディアンズのため射撃が展開される。
「はあ!」
「ピッチュ〜♪」
振り回した傘を屈んで避け、ウクレレの音と同時に落ちた電撃をかわす。殴りかかってきたマリオに豪腕デンショッカーで打ち返し、ベヨネッタの踵落としを防いだ。
「うばっ!?」
「……ッ!」
『まダ!』
出力を調節しながら、数を撃てるようにと調節したビームはチゲンに行動を許さない。
『(これデ……これでイイ! あの十の文字を書くような動きをさせなければ、敵は小石の攻撃ができない!)』
ロボットにも、すでにわかっていた。
ボディたるブラックピットに由来しない能力。
おそらくは元々持っていた力なのだろうが、それを使用するには、魔法の詠唱のような予備行動が必要なのだ。
それをさせない限り、彼にあるのはボディの力だけなのだ。
「これ……僕に攻撃させない気だね! そうはさせるか!!」
ピィーと指を咥えて口笛を吹くと、あたりで無事だったボディ達が戻ってくる。
多くのボディが傷だらけだったりと疲弊しているが、時間をかければかけるほど周りにいた他のボディ達もここに集結してくるだろう。
「ボディが……ベヨネッタ! マリア!!」
「いくわよ、ショータイム!!」
「うん!!」
だからこそ、ボディ達の相手をする、圧倒的な個が必要なのだ。ベヨネッタの召喚する大魔獣と、マリアの召喚する四聖獣。撃ち漏らしの撃破と2人のカバーは英雄の遺産を持つベレトが行う。
特に話し合っていたわけではない。瞬時に自分の役割を察したのだ。
「AVAVAGO!」
「おねがい!!」
あたり構わずボディへ噛みつき砕く。のしかかりを行いボディをまとめて叩き潰す。
玄武の影に隠れながら、地上には白虎、空には朱雀と青龍が暴れていく。決して邪魔はさせない。
「ソティス! 力を貸してくれ!」
『仕方ないのう! 意思を合わせよ!』
神祖の力を借りる、奥義覇天。
わずかながらに生き残っていたものの形を刈り取っていく。
「やったあ! 上手くいった……キャア!」
「あら、ウブねえ」
「……」
「そっちはつまらないのねぇ」
上手くいった喜びを分かち合おうとしたマリアだったが、大魔獣召喚に元は髪であるボディスーツを使用しているためにほとんど裸のベヨネッタを見てしまった。咄嗟に目を背け、自分とは比べ物にならないセクシーな体つきを思い出しては顔を赤くする。両手で覆おうが手遅れだ。
そんな中でベレトは涼しい顔だった。
隠しているだけか、本当になんとも思ってないのか。
「そっこ!!」
「あら」
敵と敵の隙間を抜い、貫く狙杖の射撃を鮮やかにかわす。不意を突いてもなお届かない。
「また弾かれたし……」
「ピッチュ!」
「おおっと……これ、もしかしなくても火力足りてないな……」
ウクレレの演奏により飛ばしてきた音符をあちこち飛び回って避けると、1番の問題点にようやく気づいた。
ここにいる中で、彼以外は誰も知らないが、今出せる全力を出している。しかし、ボディの力を入れてもなおもう隠しダネもなく底が尽きているのだ。
決められるような決定打が圧倒的に不足していた。
「うー、やっぱり逃げた方が良かったかな……」
「おりゃああ!」
「あ、このッ!」
殴りかかるマリオの懐に入り込み、超至近距離で手早く十字を切った。
防御の構えすら取れない位置。
だが、堪えられない威力ではなかった。
「ああもう全然ダメ!! みんな怖いし! ととー組んでやってくるし!!!」
「怖いなんてレディに対して酷いこと言うわねぇ」
「その通りですわね」
「もうやだ、無理!!」
「チハク……!」
祈るように、全ての想いを込めて口にした1つの名前。それの意味を知るものはここにはいなかった。
「ピチュッ!」
「あばっ……!? あ、まずい……!」
ギザみみピチューの電撃がかわしきれない。
不運にも足にぶつかり、痺れで立っていられるのがやっとになる。
「OK! ここでちょいキツめのぐるぐる巻きだー!」
「ううっ……」
勝利を確信し、近づいていくマリオ。
例え何かしら反抗できたとしても、足が潰されている以上、抑えられる。またもや、どせいさんから譲り受けていた万能ロープで拘束する。
「さて、色々聞きたいが……まず、何が起こってる?」
「うう……マスターハンド、捕まえたかったけど逃げられちゃって……スマッシュブラザーズの誰かが持つ、ファイターの力に宿っているって言ってたから探してたんだよ……どっかの世界に散り散りにして、それで……」
「捕まえたかった?なぜでしょう?」
「僕たちがフィギュア化すると精神が追い出されちゃうから……」
言い方に目を合わせた。
この言い方は、ボディこそが本当の目的で、他の行動はただの保険のようなものだ。
極論、倒す必要すらないのかもしれない。
「
「けってん? それ、何?」
「ええっと……」
ここでチゲンが言い淀んだ。
これは核心だから隠したいのではない。彼の心の脆い所なのだ。慌ててマリアは話を変える。
「じゃ、じゃあ! ベレトお兄ちゃんのいらいにんって誰か知ってる?」
「依頼人? へ? 何の話?」
「自分のところに何か起こるから用心しろと忠告してきた者がいる」
「僕たちがそんなことして利点あると思う?」
「その通りではあるが……」
それでも釈然としなかった。
とはいえ、チゲンが隠しているようには見えない。本当に知らない様子だ。
「とりあえず、着いてきてもらおう。放すわけにはいかない」
「話すようなことは大体話したよ! だからせめてもうちょっと緩くしてキツい!!」
「そうか、ならお前は必要ないな」
「我慢しなさい……って」
チゲンの背後から、迫る長刀。
片翼の天使の獄門。
その背後には、つまらなさそうなカズヤ。
せまる、チゲンの心の臓に迫る刃。
『…………』
『……君は?』
『自覚しているからこそ、一方的に聞くか』
『自覚……ってことは、知ってるの? 君、僕の兄弟とかだったり!?』
『友にはなれない。慰めしかできない。だからこそ、望む通りとなろう』
「──待たせた。」
「なっ!!」
今まで何もいなかったのに。
間に入り、正宗の先を弾かれる。
「チハク!」
「本当に愚かだな。あっさりと捕まるとは」
「あはは……どうしていっつもひどく言うの〜……」
ロープを切り、
「何者だ、貴様」
「愚兄が、世話になったようだ」
「ここからが本戦ってこと!!」
並び立つ黒と白。
兄弟と語る心。
はじめて、物語は本格的に交差する。
○タイトル
スプラトゥーン3のサーモンランにて、くっついてきたタイトル。
スプラトゥーン3が発売されてそれなりに経ちましたが……NEXT WAVEという名前を覚えている方はどれほどおりますでしょうか……
○ちょいキツめのぐるぐる巻き
ポケモンレンジャーシリーズにでてくる拘束方法。
ロープなどで腕と胴体をまとめてぐるぐる拘束している模様。
なぜか敵味方問わずやっており、解くのもけっこう苦労している。
○獄門
まさかの妨害。本編でもできたらなー
○チゲンとチハク
3章で離脱した直後にここまで来ている。
あの色々と自由なルネを除けば、はじめて章を跨いで登場。
攻撃方法はほとんど同じで名前も似通った2人は兄弟!(多分)
○作者の気まぐれコメント
アニメ ポケットモンスター、サトシの冒険終わっちゃいましたね。
実は作者はXY時代にポケモンから離れていまして、その頃にはアニメも離れてましたね。
そのまま今まで来てましたが、せっかくなので最終回だけ見ました。
ピジョン、忘れられてなかったよ……!!
今後が楽しみでもありますが、歴史が終わる瞬間を見たようで一種の物悲しさがあります。