大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle 作:蘭沙
思い出す。
アクアの母、決意を込めた花、きょうだいの父、自分の母─
もし、自分の進む道が違っていたら、救えなかったきょうだいともこうして相対していたのかもしれない。
死者として操られるという最悪の形で──!
「この…!」
許せない。許せない。誰が、一体誰か使っている。誰か死者の尊厳を踏み躙っている。
「カムイ、大丈夫?」
「うん… やっぱり透魔兵だったよ…!」
歯軋りしながら向かってくる敵に夜刀神・終夜を振るう。カムイの目にはしっかり見えていた。水面の如く揺らめく紫炎の陽炎。破壊を望むだけの尖兵。
とはいえ、カムイは怒りに囚われたりしない。背後から斬りかかってくる剣士を一刀両断する。揺らいだ姿は消えてその奥にはダークマージ。竜化して水流で押し流す。3人に対して過剰すぎる数十はいるような数にも全く負けていない。
「あれは… 竜族だったの?」
「うん、カムイはファやイドゥンと同じように竜の血を引いているんだ」
彼らのことは知っていても、神祖竜の力のことは知らなかったそうだ。敵に雷を落としながら、リリーナが呆然と呟く。
『話してる暇はないよ!』
「うん… 敵が多いから指示を出す暇もないんだ…!」
「そうだわ、どうにか敵を一箇所に集められない?」
はっ、とロイはリリーナの方を向く。そうだ、この状況でも、リリーナの持つ
「カムイ! トドメはリリーナがどうにかする! どうにか敵を集めよう!」
『わかった!」
竜化を解くと、カムイは何かを取り出す。剣でも竜石でもない。それは魔道書だった。ロイの知るものとは少し違うが、秘められた魔力は知っているものだった。
「魔法も使えたの?」
「うん、あんまり威力はないけどね!」
弓聖に電撃が襲う。その魔法はロイでも知っている。実は魔導士志望だった過去があるロイは基本の魔法であるサンダーくらいは知っていた。
そう、ファイターのルールにとらわれないここでならば、普段使えるというのに大乱闘では使えない力もちゃんと使用できるのだ。
魔法に多少の適性があったカムイは、剣、竜石のほかに、魔法と杖が使える。
遠距離から攻撃された弓聖がこちらに気づく。まっすぐに飛んできた矢をロイは回避し、カムイとともに飛び出す。
殴りつけてきた拳を避け、さらに敵陣の真ん中へ進もうとするが…
「ぐぅ…!」
鋭いものが左腕に突き刺さる。レイピアのような細身の剣だった。咄嗟に封印の剣を動かし、下手人を弾き飛ばす。
「ロイ! 大丈夫!?」
「だい、大丈夫。利き腕じゃない」
一番深いのは先程の傷だが、他にも細かな傷が重なっている。人数差のせいだ。一人一人はそこまで苦戦しない。だが、大勢で囲まれているせいで普段なら避けられる傷がつく。他の仲間達はどうなっているのだろう。こちらの事情などお構いなしの連発されている襲撃は、確実に軍の士気を奪っていた。
「ああ! もう鬱陶しい! どれだけいるんだこれは!」
攻撃的な思考が折られて、段々と守備的な思考に移り変わっていくのを気づくことはない。無意識的な出来事だったのだ。
少し手を出して敵を集めることはできているが、このままでは抜け出せない。
「…! カムイは防御を頼めるかい? 僕が攻撃に入る!」
「防御に? …防陣! わかった!」
ロイは前衛に、カムイは後衛に。
ロイは適当に前方にいた巨体の剣使いの方へ駆け出した。横っ面へ飛んできたファイアーをカムイは斬り払う。鍔迫り合いで隙をつくったロイのカバーに入り、裂こうとしていた刃を押し留める。
「(やっぱり… カムイが防御に入ってくれると調子がいい。)」
マルスとどことなく似た雰囲気を感じるとは思っていた。きっとこのことだ。
「ロイ! カムイ! そのあたりで大丈夫!」
「わかった! カムイ!」
まっすぐに力を込めていた剣で、敵の得物をいなす。流れをつくって地面を抉らせた。即座に竜化したカムイに乗り、空へ飛び出す。
『…っ!?(この力は…!)』
下にいるリリーナの元へ魔力が集まっているのをカムイは感じ取っていた。これはドラゴンキラーなどとは比にならない。神祖竜の血を濃く受け継ぐ自分が受けたら、きっと骨も残らない。だってほら、現に自分に向けられてもいない武器に本能的な恐怖を感じる。一人でに矛先がズレて自分に当たってしまうんじゃないかと思わせるほどだった。
その武器、魔道書は竜を殺すための道具。
リリーナの手から離れた獄炎が相手を焼き尽くす。
神将器。神の力を宿した武具。全盛期に世界の秩序を乱し、終末の冬を呼び起こした武具の一つ。竜を殺すための兵器。
「…さすが。」
ロイがポツリと漏らした。
力を失った今の状況でこの威力なら全盛期はどれほどの力を持っていたのだろう。
数十もいた敵側の戦士はもはやいなかった。大地はクレーターの如く抉れ、元の姿を忘れて真っ黒になっている。黒煙が上がり、未だに完全に鎮火しておらず、小さな火柱が上がっている。
竜を殺すための兵器とはいったが、相手が竜でなくても普通の武器を凌駕する力はあるのだ。
「うん、もう下がっていいよカムイ」
『…怖かった。足の先でも触れたらきっと大惨事になってたよ…』
「え? ごめんなさい、掠ってたの?」
『いや、こっちの問題だから大丈夫。なんというか… ドラゴンキラーも目じゃないぐらいの魔道書だったね…」
ロイを下ろしたカムイが、竜化を解きながら話す。まだ手の震えが止まらない。ロイの仲間のことだ。信頼に値する相手だ。だからこれは竜の血による本能的な恐怖なのだ。
「そうか、神将器は竜を倒す武器だから… でも、いつかそんなもの必要ない世界をつくる。そこではカムイみたいな存在も笑って生きていけるんだ。」
「うん、その夢すごくいいと思う。僕も応援するよ」
「ロイ、私も力を貸すわ。」
「ありがとう、リリーナ、カムイ。まずはこの戦いを終わらせないと。他にも敵がいるはずだから…」
ここにいる3人とも違う声、鳴き声を耳で受け取り、ふと会話を止めた。全員がその声の方角へ顔を向ける。大勢の戦士達に追われている小動物。
「チュウウウ〜!」
「「ピチュー!?」」
こちらに気づいたピチューは向かってくる。勿論敵も同じだ。休憩を取る暇もなく、剣を抜く。ピチューは応戦する素振りも見せず、ロイとカムイの足をぐいぐい引っ張る。
「どうして!? 残っててって言ったじゃないか! インクリングは!?」
「ピチュ、ピチュピー!!」
「何かあったの!?」
剣士を斬りながらロイが聞く。声を落ち着かせる暇はない。
「ピチューチュチュ! チュチュピーチュ!」
「もしかして… インクリングに何かあったの?」
「ピチュ!」
一気にロイは考えた。ピチューは確かに怪我をしているが、焦げによるものが多く、自分の電撃で傷ついたものがほとんどではないか。なのに敵のあの人数。つまりあの追ってきた敵に対してほとんど戦っていないのではないか。ピチュー一人なら返り討ちにしようと戦っただろう。助けは求めないのでは。
だが、もしインクリングに何かあって助けを呼びにきたのなら?
あの戦うことが好きなピチューが戦うより優先することがあるのなら?
「案内できる?」
「ピチュ!」
「ロイ、行って!」
「ここは僕たちがなんとかする!」
「わかった! 魔法主体で戦って! 決して無理はしないように!」
カムイとリリーナの力で敵がぶっ飛び、道ができるように空いた。そこを全速力で駆けていく。
「(無事でいてくれ…!)」
戦場では瞬く間に多くの命が消えていく。
それを知らない彼女に、そんな惨い現実を知らせたくなかった。
刃で命を奪う軍人にとって、命をかける必要のない大乱闘は何よりも尊いものだから。
○タイトル
テイルズオブエクシリア2のジャンル名。キャッチコピーじゃないの?って思うかもしれないけどテイルズオブシリーズはこんな感じ。
主人公がストーリーの中でさまざまな選択を迫られ、それによって展開が変わらなかったり変わったりする。テイルズでエンドが複数あるゲームはあるけど、エクシリア2はエンディングいっぱいあります。
そして、FEifもまた選択が未来を紡ぐRPGである。(Sがつくけど)
○原作能力
本作では大乱闘の世界にいない都合上、本来の能力を遺憾なく発揮できます。カムイの場合、カムイと子の専用職である白の血族、ダークブラットが使える、杖(他者の回復)と魔道者が使えます。
持ち物としては、夜刀神・終夜、竜石、夏祭、サンダーを持ってます。本職ではないので基本的なものに限る。フィギュア化のデスベホマができないので、治療ができる人材は貴重です。プロローグのピットが色々と神器を持って行かされたのもそういうことです。
○不思議な魅力
カムイの固有スキル。
後衛の時に前衛と支援レベルが上がっていれば、前衛をパワーアップさせる。カムイは割とサポーター性能が高い。
○神将器
封印の剣の神器枠。人竜戦役で八神将が使用した武器。
あまりにも強すぎて終末の冬を起こしてしまったが、長い年月で今はそれほどの力はない。最高に強い武器ではないが、最高の竜殺しの武器。
カムイがやたらと恐れていたのはそのため。カムイ竜特効喰らうから…
ちなみに封印の剣は神将器ではない。神将器より上。
○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
『ポフィンづくりにきのみにアンノーン集め…! こいつはダイパクリアする気あるのか!!』
「ピカピカ、ピカッチュ!(ヒンバス探そうかなーって言ってたよ)」
『わかった! クリアする気ないな!!』
○一ヶ月の間にあったかもしれない小話2
「崇めよ、私を崇めよ。我グラニー賞ぞ? これで私もレア物か…!」
「メタナイトが調子に乗ってる… どうしようアイク…」
「…わからん。」
「カービィカフェのメニューを投げろ! 夜な夜なパフェだ!」
「うわ、斬りかかってきた!」