大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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79話 ワールドオブカオス

 

「増えた……ってお揃い……もしかして弟!?」

 

「うん! 弟のチハク!」

 

「敵相手になに談笑している。本当に愚かな兄だ。手遅れだな」

 

「酷っ!!」

 

 

チゲンと双璧をなす、黒い衣を纏ったピットのボディ。チハクと、弟と呼ばれた少年が今、チゲンと並び立つ。

 

 

「私は数の利を得ながらもファイター達に敗北した。そして半身はもっと無様にやられた」

 

「もっと優しい言葉使ってよー!」

 

「とはいえ、ようやく私達は共に戦える……簡単に崩せると思うな」

 

 

指を交差させ、ぐるりと円を描く。

壁のように建つ白石は1番近くのセフィロスを弾き飛ばした。打つかり(ぶつかり)という技だ。

 

 

「……っ」

 

「続いてはこっちか……まずは削ろう、大幅に」

「了解!」

 

「「三連星(さんれんせい)!!」」

 

 

それぞれ十字と円を描き、顕現するは六つずつの白黒石。そこから分裂して放たれる弾はまるでガトリングのようだ。

 

 

「あいたたた!」

 

「密度が段違いだよ!!」

 

 

先程チゲンが単独で撃っていた、類似した裂かれ形(さかれがたち)と比べても、その弾幕の厚さは桁外れである。

敵の数が単純に増えただけではない、大きな違いがあった。

 

 

中手(なかで)……」

 

「まだまだ!!」

 

「いつの間に!?」

 

 

いつのまにかマリオに大きく肉薄していたチゲン。チハクが彼を囲うことで、擬似的な瞬間移動を果たしていたのだ。豪腕デンショッカーで殴り飛ばす。

 

 

「後ろも見ておくんだな!!」

 

「知っている」

 

 

カズヤの踵落としを回避し、(かかり)で白石をぶつけ、ダッシュアッパーで殴りつける。そのままチゲンとチハクが背中合わせで立つ。

 

 

「さっきよりも一皮剥けているわね」

 

「あっはっは! チハクと一緒ならもう何も怖くなーい!!」

 

 

ラブイズブルーの銃撃は全て黒石で防がれてしまった。それをチゲンがやったというのだ。連携だけではない。個々の能力すら高まっているように感じる。

 

チゲンの力の本性は、人の運を高める力。

不運な自分相手には使えない力であり、彼が1人では戦えない理由となっている。自動的に相手の勝運を高めてしまうのだ。ただしチハクと組めばその能力はフルに発揮されるのだ。少し包囲されていて、数で負けているぐらいがなんだ。

 

 

『ですがあなた達は囲まれていまス! 形勢はこちらが有利デス!』

 

「何を言っている、愚兄が負けている(囲まれている)などいつものことだろう」

 

「うー……」

 

 

脅しの言葉も効かない。聞いているが効かない。一瞬の戸惑いもなく、円を、交差を描く。

 

 

「あっ、あとあと! 囲うのはチハクの十八番なんだよ! 両当たり(りょうあたり)!」

 

 

ファイター達の周囲に白石が現れる。囲うように空中で静止しているそれは、まるで自分達を檻に閉じ込めているようだった。

身動きが取れなくなって、そしてようやく気付いた。黒の石を飛ばすチゲンもまた、指を動かしていた意味を。

 

 

「まずい!!」

 

「うらああああ!」

 

 

追い込んだ獲物を追い討ちする。

死角からも飛ばす黒石、ガトリングのように飛ぶ弾。硬直をつくってしまったファイター達は全身に傷が増えていった。

そしてその隙に包囲を脱出し、一方向にファイター達を視界に納める。

 

 

「この世界は私達のボディが征服した。どれだけ個が強かろうと大半の領地を私達が支配している以上、既に囲碁(私達)が勝っているようなもの」

 

「僕が敗北の化身で黒星の象徴なら、チハクは勝利の女神! チハクは僕相手に一度も負けたことはなーい!!」

 

「私はどちらかというと男だ。愚かなだけでなく、頭も足りていないのか」

 

「例えなんだからいーの!!」

 

 

左手にボディ由来の神弓を握り、右手はいつでも攻撃ができるように交差した指を向けながら言い放つ。

 

 

「(でも、まだ勝ちきれてない。火力はそれほどないから。ボディに関してもそこまでないし)」

 

 

2人の弱点。

それは既に看過していた。派手なコンビネーションでわかりづらいが、今までの技には火力が足りていない。

つまり防御力を上げればゴリ押せるかもしれないのだ。しかし、マリオにはそれが実行できそうでできない。

 

 

「(こうらさっき使っちゃったんだよなー!!)」

 

 

そう、その条件にピッタリのアイテムは、ロボットとベヨネッタと合流した時の戦闘で使用していたのだ。

緊急事態で持ち出したアイテムをいくつも持っているわけもない。どせいさんの村まで戻ればまだあるかもしれないが、当然そんなことする暇もない。

 

 

「ならこれでどう!」

 

「……愚直」

 

 

ならば、石ごと弾き飛ばすまで。

マリアが呼び出した白虎が正面から襲いかかる。しかし、チハクがぐるりと円を描くと聖獣の姿は消え、セフィロスとカズヤに向かって再び走り出した。

 

 

「貴様! 利用されるぐらいなら引っ込んでおれ!!」

 

「きゃー! ごめんなさーい!!」

 

 

空に逃げたセフィロスに、腕で防いだカズヤ。しかし、彼が常人離れしていても聖獣の爪を完全に防ぎ切ることは不可能であった。

 

 

「反射まで……これでは安易に攻められないわ」

 

「これ、こうらマリオになってても跳ね返されただけだね、危なかった!」

 

 

飛び道具の擬似的な反射まで使いこなす。

予備動作が大きいためにつけいる隙はあるが、反射があるのとないのとでは全然違う。

 

 

「ふっ」

 

「ふっ、ってなにさふっ、って! カッコ、つけないでよね!」

 

『ちょっと待っテ、ア』

 

「ピィーー!!」

 

 

セフィロスから飛んできたフレアを衛星ガーディアンズで跳ね返す。反射したフレアはかわしたセフィロスを通り抜けてロボットとウクレレピチューを巻き込む。

 

 

「あ! 衛星あったじゃん! どっちにしても反射してくる!!」

 

「いや、そっちはわかってたことだから別に問題ないが、それよりこっちの連携が取れていない方が問題だ」

 

 

うっかり忘れていたマリオは置いといて。

目的はほとんど同じはずなのに、バラバラに動いていた弊害で、セフィロスカズヤとその他の連携が取れていない。

素直に連携するような者たちではないが、互いに邪魔をしている状況はあまりにも良くない。

 

対して相手は示し合わせたかのように抜群のコンビネーションであった。

チハクが正宗を抑えている間に、チゲンの猛攻。白石を防御壁のように纏ったチゲンに手出しができず、あのセフィロスが得物を手放すしかなかった状況だ。

 

 

「───ッ! ねえ! この場だけでも協力できない!?」

 

「虫唾が走るわッ!」

 

「もう!」

 

 

フライパンを振り回し、パルテナの神弓との金属音が鳴り響く。もう片方の左手に握られていたテニスラケットがチハクを殴打する。

離れて行った隙にセフィロスが正宗を拾う。

 

 

「あら、大丈夫かしら? 随分と疲れてない?」

 

「え? そうなの?」

 

「……誤魔化せんか」

 

 

あまり動きにキレがないことをベヨネッタは見抜いていた。チハクは惑星PNF-404と呼ばれる場所で一戦交えており、休息もなしに連戦しているのだ。

チゲンも今までのダメージをなかったことにできる訳ではない。

 

 

「じゃあ、その分僕が戦う!」

「貴様の方が手遅れだ」

 

 

どちらも降り注ぐ小石の嵐。

それぞれの攻撃で撃ち落としていく。

 

 

「押し切れー!!」

 

「うう……おりゃあああ!」

 

 

翻したマントが小石を全て跳ね返す。

2人は飛翔の奇跡により空へ逃げる。

 

 

「うへえ……口に入った……」

 

「本当に愚兄だ……ッ!」

 

 

空を飛ぶ2人の兄弟が、

相対するファイター達がそれを見た。

 

 

「えっ、なに?」

 

「「ピチュ?」」

 

 

空を貫くような輝き、轟く音はなく雷ではない人為的な光。何かを訴えるような光は氷山の方角から見えた。

 

 

「あの光……行くぞ」

 

「逃すかァ!」

 

「ぐっ!」

 

「チハク!!」

 

 

立ち去ろうとするチハクの首に絞首台の縄がかかる。吊られそうな彼にカズヤの追い討ちがかかる。

 

 

「これで終わりだ……!!」

 

「……!」

 

 

悪魔の翼が生えたカズヤのフィストが奇跡が切れて宙ぶらりんになったチハクに殴りかかった。

 

 

「……なにっ……!?」

 

「え?」

 

 

その瞬間、チハクの体は完全に脱力した。

がらんどうになったからだへの一撃。そこには手応えはあっても歯応えはなかった。

あの瞬間、チハクはボディから抜け出していたのだ。

 

 

「わっ!」

 

「行くぞ」

 

 

消えたと思ったチハクはチゲンのそばから現れた。先程とそっくりの、ただし別のボディの姿を借りて。

驚いたチゲンは一瞬固まったものの、チハクに促されて光を追っていく。

 

 

「あ、待って!!」

 

 

遅れてファイター達も2人の跡を追う。

チゲンの、チハクの正体。

光の原因。

世界の異変とその全貌。

創造主の失踪と姿の見えないスマッシュブラザーズ。

 

まだ、真実を追い求める旅は続く。





○タイトル
初代KHのラスボス。闇の探求者アンセムが巨大化したハートレス。
ダブルセイバー化したソウルイーター振ってくるわ、ドナルドグーフィーとはぐれるわ色々あるけど、1番の強敵は飛行戦特有の独特過ぎる操作性。


○チゲンとチハク
元ネタは囲碁の付喪神です。それ故に攻撃方法、技名も囲碁関係となります。ちょっとわかりづらいのですが、
チゲンが兄、ボディがブラピでカラーが白。
チハクが弟、ボディがピットでカラーが黒。
となっています。月桂樹を外しているのは共通。
チゲンは無自覚に他者の勝運を高めるために、戦闘では誰かとのチーム戦が基本です。そのためチハクと離れて個々で行動すること自体かなり計算外だった模様。実は作者も計算外。(後述)
実は35話にてチゲンの声が入っていました。透明にして誰か気づくかなって思っていたけど誰も気づくわきゃねーだろとセルフツッコミ。


○今章の裏話
ちょっと強引ですが、今章は今話にて終了です。
ちょっとリアルで色々ありまして、執筆意欲が下がっていましてちょっと乱文になってる感が否めない……
彼らの続きは最終章にあたる話で語られることになります。
チゲンとチハクが個々で戦っていたことが作者にとっての計算外のことですが、3章の話がそもそもピクミン3の世界ではなく大乱闘の世界を舞台にしていたということに起因します。
つまり予定通りなら、この兄弟が2人で大乱闘の世界を担当しているはずだったのです。しかし、舞台の変更の結果、チゲンのワンオペになりました。過労死するぞ。
さて、今までの章では、スマッシュブラザーズから数人を出演していても、明らかに優遇されていた、いわゆる主人公枠がほとんどの場合いたわけです。
1章ならインクリング、2章はシュルク、3章はアイクラ、4章は不在、5章は微妙だけど神トラリンク、6章ならレッド。
あまり意識していなかったんですが、今章も露骨に目立っていたファイターはいなかったわけで。マリオというMr.ニンテンドーがいながら、強いて言えばベレトになるかと。なんかスマブラ長編小説で全員にフォーカスを当てるのは難しいので、数人だけフォーカスを当てるのオススメです。


○作者の気まぐれコメント
祝! バケツ超強化!!
必ず二確が保証されるの強過ぎる! 宇宙人派勝つぞ!! ……そろそろフェス勝ちたい……
あとペルソナ5の外伝がソシャゲで登場したとか。しかし日本語未対応だそうで。ほんと悲しい。
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