大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle   作:蘭沙

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Luigi’s Mansion 3 “Revisit”
80話 勇者30


 

 

人は自分にないものを欲しがる。

覚えがあるだろう? スマッシュブラザーズは人の憧れが大集合したような団体だ。

 

ヒーローのようなカッコ良さ?

ヴィランのような強さ?

 

そこはどうでもいいや。欲しいものなんて人によるし、プレゼントする訳でもないしね。

 

 

馬の眼前に人参がぶら下がるが如く、本当に欲しいものは何を犠牲にしてでも欲しがるものさ。

 

その求めるものと本気度によって、その話は狂愛にもなるし、純愛になる。

その人は正義にもなるし悪にもなる。

 

でもさ、ちょっとした興味で針に指を刺して眠っちゃうこともあるし。一口林檎を食べて死んじゃうこともあるし。

 

軽く背中を押してしまえば、全てが本当に欲しいものになり得るのさ。

 

 

君達は何が欲しい? この世界に何を求めている?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カポッ、カポッという重い靴音がいやに大きく響く。しかし、その音は恐る恐るといった印象だ。やけに間隔が長い。

緑色がトレードカラーのルイージは震えながらその建物に入った。手も足も震えに震えている。少しずつ、少しずつ牛歩のように進んでいたルイージは後頭部をパチンとはたかれた。

 

 

「しっかりしなさい! 一度1人でどうにかした場所でしょ!」

 

「怖いものは怖いんだよー!!」

 

「大丈夫ですよ! パパッと確認してパパッと帰るだけですから!」

 

「ワン!!」

 

 

良い仲であるデイジーと、頼りになるパートナーオバ犬、それにキノピオ隊長を仲間に加えて、ルイージはオバキュームを背負って建物に突入しようとしていた。

 

その建物とはホテル、ラストリゾート。

かつてキングテレサとパウダネス・コナーと戦った舞台である。その後建物は崩壊し、オヤ・マー博士や残ったゴースト達によって再建され、真っ当なホテルとして再出発したはずなのだが……

 

 

「なんでこんなのに戻ってるの〜……」

 

 

再建されたものとは程遠い、夜の世界に建つ不気味なホテルに戻っていた。灯りは怪しい紫色で、真っ黒で不吉な鴉がこちらを睨みつけている。再建したはずのホテルと同一のものとは思えなかった。

 

 

 

 

 

 

せっかくのまとまったオフだが、ルイージは休むこともできなかった。

兄のポンプやら、自分のオバキュームやらの開発とメンテナンスでお世話になっているオヤ・マー博士からヘルプが届いたのだ。

 

 

『大変じゃ! 大変じゃぞルイージくん!! ラストリゾートが大変なんじゃ!! ……は? デート? そんなもんよりワシの身の安全を確保するのが先じゃ!!』

 

 

なんとか落ち着かせて聞いてみれば、ラストリゾートが乗っ取られたとのこと。

オバケ達が反乱でも起こしたのかと思いきや、一緒に叩き出されているので原因は別らしい。

ともかく追い払ってくれ! とのことだ。

 

 

「う〜ん……確かにおどろおどろしいけど……オバケの時ほど変化はないというか……」

 

「ワン!!」

 

 

その時唯一共にいたオバ犬に同意を求める。

確かに一見、時を巻き戻したかのような印象だが、よく目を凝らせば再建後の面影もある。

カーテンが破れていたり、飾りが壊されていたりはしているが、みなで作り直したものと同一の建物だ。幻が建てられていたようなあの時とは違う。怖がっていても、長年の経験は違和感を見逃さない。

 

 

「い、いくよ。行ってみないと終わらないし……」

 

 

オバキュームのライトを握りしめる。汗ばむ手を震わせながら、恐る恐る出した手によって扉は開いた。

 

 

──1F メインロビー

 

 

「へぇー、雰囲気あるわねー」

 

「こ、こんにちはー……誰かいますかー……いたら返事をお願いしま……やっぱりしないでー……」

 

「うう〜……やっぱり着いてこなきゃよかったかな〜……」

 

 

一種のお化け屋敷気分で踏み入れたデイジーと対照的に、ルイージはいまだに及び腰だ。

内部もまた灯りは最小限、怪しげな紫色の光がほのかに、蜘蛛の巣だらけのシャンデリアに灯っていた。

 

 

「ワン!!」

 

「え、あ、また行っちゃった……」

 

 

そしてオバ犬は自由気ままにどこかに行ってしまった。まあ、いつも通りであるために追っていったりはしない。壁も床も天井もすり抜けられるオバケを捕まえられる気はしない。ただ、いきなり目の前に現れて驚かせるのだけはやめてほしい。

 

 

「ホンット神出鬼没ね! ちゃんと躾してる?」

 

「う〜ん……しなきゃダメかな……?」

 

 

そういうのが苦手な自覚はある。

とはいえせいぜいいたずらっ子で済む程度だと思ってはいるのだが。

身のない会話。だが、今はそれがありがたい。なぜなら、怖さが軽減するのだから。状況が悪くなるのはいつも突然だ。こんな話をしていられるのも今だけかもしれないのだから。

 

 

ガタッ

 

「え?」

 

 

一瞬、何かの物音がした気がして、ルイージは後ろを振り向く。気のせいだっただろうか。後ろには入ってきた扉以外何もない。

一瞬のことだったから、音が鳴った場所を間違えたのだろうか。それとも音自体、単なる気のせいなのだろうか。

 

 

「勘違いかな?」

 

「うーん……」

 

「勘違い! ぜったい勘違いです!!」

 

 

デイジーは何かが引っ掛かるようだ。気の強い彼女は気のせいなんて言葉で簡単に物を片付けない。

 

 

ガタガタッ

 

 

ヒィ!? やっぱり勘違いじゃない!! こっち!?」

 

 

ただ勘違いじゃない。

今度は音源の方角もはっきりわかった。入り口から入って右側。エレベーターのある方角だ。

反射的に懐中電灯をそちらへ向けた。

 

 

「よ、よかった……何もないです……ガクガクブルブル……」

 

「いや……よかったじゃないわ……」

 

 

確かにまだ何もない。ならば先程の音はなんなのだ。エレベーターの上についている灯り。B2という場所と上向きの三角が光っている。

 

 

「まさか……」

 

 

さっと血の気が引いた。顔が真っ青になる。

B2の灯りが消えて、隣のB1が光る。ちかいっかい。

 

 

「まさかまさか……!」

 

 

キノピオ隊長が両手を頬に当てて声にならない叫びをあげる。

B1が消えて1が光る。いっかい。ここ、いっかい。

 

 

チン♪

 

『『『…………!』』』

 

「「うわああああああ!!」」

 

 

場違いなほどに軽快な音が響き、エレベーターの扉が開く。そこからギュウギュウに詰まっていた誰か達が一斉に飛び出してきたのだ。

キノピオ隊長は咄嗟に入ってきた入り口の方へ向かうが。

 

 

「なんで!? なんで!? なんで全然開かないですかぁああ!!」

 

 

ガチャガチャ押し引きするも、扉は開くそぶりもない。完全に閉ざされた扉はテコでも動かない。

 

 

「このぉ!」

 

 

デイジーは反射的にフライパンをフルスイング。確かな手ごたえがあった。想像していたオバケの手ごたえとはまったく違っていたのだ。

 

 

「え? 何よコレ」

 

 

違和感に気づいて飛び出してきた者達を見る。

薄暗くて見えづらいが、それらは確かに自分達が倒したキーラとダーズの狗達。

 

 

「デイジー、こっち!!」

 

「ええ!」

 

「開かな〜い!」

 

 

咄嗟に入り口まで戻るが、扉は開かない。

閉じ込められたのだ。

 

 

「どうしよう……!」

 

 

内心かなり焦りながら、オバキュームでそばのボディを吸い込んで、反動で発射する。出入り口は先程からキノピオ隊長が何度も叩いているが、開かない。

窓を破って逃げようにも、相手に閉じ込める意思があるために対応、対策される可能性が高い。吹き抜けの階段を登って2階に逃げようにも、結局外に出れる場所がないため時間稼ぎにしかならない。

 

 

「どうにか振り切って、エレベーターまで行くわよ! それしかないわ!!」

 

「う、うん!」

 

 

考えた結果、エレベーターまで逃げ込むことにした。間にはボディが十数体ほどいるが、しのごの言っていられない。

 

 

「ど、どけ〜!!」

 

 

慣れぬ脅し口調でオバキュームの先を構える。身構える者、横跳びで避ける者などそれぞれだが、隙はできた。

 

 

「さっさと行くわよ!!」

 

「あっ、は、は、は、はい〜っ!!」

 

 

その隙にデイジーがキノピオ隊長の傘部分を掴んでかけだした。そしてルイージは、

 

 

「こ、こっちだ!!」

 

 

ボディ達の囮を買って出た。

幸い、ボディ達の連携は取れていないのか、実害を出していない2人ではなく、ルイージの方だけを向く。

 

メインロビーの左階段を駆け上がり、中央付近でさらに挑発をかける。

 

 

「こっちこっち〜!」

 

 

愚直に跡を追うボディ達。だが、少しは頭を使う者もいるようで、逆側の階段を登る者がいた。それを見たルイージは階段を登り、カウンター前まで動く。

 

 

『……ッ!』

 

『……!』

 

「わあ!?」

 

 

ボディ達の手が届くと言ったところで、ルイージは吹き抜けから飛び降りた。

上手く着地し、エレベーターへ駆け出す。

 

 

「デイジー! 閉めて閉めて!」

 

「ルイージ!! 階数のボタンが外されてるわ!」

 

「地下以外のボタン押して!!」

 

 

そう聞いたデイジーは、地下と一階以外で残っている唯一のボタンを押した。

 

 

「だああああ、ああああ!?」

 

 

閉まり始めた扉に走り幅跳びのように飛び込んだルイージはオーバーオールのお尻部分が挟まれてしまった。

 

 

「もう!! ホンット締まらないわね!」

 

「あはは……」

 

 

呆れるしかできない。

ボディを振り切って飛び込んだ所はとってもかっこよかったのに、いつも最後は締まらない。

 

 

「ところでこのエレベーター、どこに……」

 

 

キノピオ隊長の控えめな意見に3人全員がボタンを見た。

慌てるだけで何もできなかった負目である。

 

 

「えっと〜……」

 

 

階数のボタンはデイジーの言った通り虫食いになっていた。

一階と、地下一階に地下二階。

そして、今光っている階層は。

 

 

「13、階」

 

 

そこは、ジムフロアだった。





○章タイトル
ルイージマンション3の海外名。そのままなのでわざわざ言う必要もなさそうだけど。
Revisitの意味は再訪。再訪なのはルイージとオバ犬だけですが。

○タイトル
勇者30というゲームからそのまま。
三十秒勇者というフリーゲームが元となったゲームで、4つのゲームを三十秒という短い間でクリアするゲーム。ようするに勇者なのは30秒だけ。


○ラストリゾート
再び記載。
ルイージマンション3の舞台。6階くらい上からホテルのエリアじゃない砂漠とか海とかある。
原作のラスボス戦にて崩壊。エンディング後再建され、オバケ達やオヤ・マー博士はそこに住むことになったが、本作では再び乗っ取られる形に。構造とか新たに考えるのは大変なので、おおまかな構造はほとんど変わっていないことになります。
ちなみにラストリゾートの本来の意味は、最終手段、最後の切り札とかいう意味。原作の他にはFF11のスキルやKHにてアリスモチーフのキーブレードの名前に使われたりしている。


○オヤ・マー博士
ルイージマンションシリーズに登場。
オバキュームの他にも、マリオサンシャインのポンプなどを作った人。
その上、オバケの絵を収集している変わり者。


○オバ犬
ルイージマンション2から登場。
キングテレサのせいで暴走していたが、改心して以降はルイージのペットに。3ではチュートリアル後はルイージから離れてあちこち冒険?していた。


○キノピオ隊長
初登場はマリオギャラクシー。マリオの手助けにパワースターを探している。が、隊員が迷子になっているなど、微妙に役に立ってなかったり立ってたり。人気のおかげか外伝の主役も張り出した。
本作ではライトの補助のほか、場も和ませてもらいます。なんせ作者自身ホラゲー苦手なので。


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